ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode32 麻痺の森

リムルダールに来て10日目、俺はゲンローワにマヒの病の原因について相談しに行った。俺は昨日見つけた、マヒの森という所にその原因があるのだと思っている。

 

「ゲンローワ、マヒの病の原因がいそうな場所が分かったぞ」

 

俺の話を聞き、ゲンローワはすぐに調合室から飛び出してきた。

 

「おお、それはまことか?さっそく教えてはくれぬか」

 

「俺の予想では、旅のとびらの先にあるマヒの森というところに、その原因があると思う」

 

マヒの森っていう名前からして、その可能性は高い。そこに何がいるのかはまだ分からないが。

 

「お主もそう思っていたか。実は、わしもマヒの森の中にマヒの病の感染源がいると思っておったのじゃ」

 

どうやら、ゲンローワも同じことを考えていたようだ。

またマヒの病にかかる人がでないように、早めに感染源を絶たなければいけないな。

それと、俺はもう1つゲンローワに言いたいことがあった。

 

「病の感染源のこともそうだが、マヒの病に効く薬の作り方は知らないか?」

 

イルマやザッコを助けるために薬の作り方を聞いたが、ゲンローワは分からないようだった。

 

「わしも知らぬのじゃ。マヒの病が、どんな仕組みで発症するかなどのことが分かっておらぬからな」

 

もう少し研究を進めないと、マヒの薬は作れないのか。あとどのくらいかかるのだろうか。

 

「なら、いつマヒの薬を作れるようになるんだ?」

 

「わしも早く作りたいのじゃが、さっきも言った通りマヒの病に関する情報なくてのう。じゃが、マヒの病の感染源が分かれば研究も進むじゃろう」

 

薬を作るのにもマヒの病の元凶と戦う必要があるってことか。魔物に支配された世界だからな、病気の治療を行うにしても魔物との戦いは避けられない。

 

「分かった。マヒの森に行ってマヒの元凶を見つけてくる」

 

俺はマヒの森にはあまり入りたくないが、病人のために行くことにした。今回は毒の病の元凶とは違い何が出てくるか分からない。気を付けていかないとな。

 

「雄也よ、頼んだぞ」

 

俺はゲンローワとの話を終えて、いしのおのを持って旅のとびらに入った。まだ草原の右側のほうも探索しきれていないが、俺は崖のほうへ向かった。

 

「この崖を登り降りするのも、もう3回目だな」

 

メルキドでもそうだったが、この世界には崖が多くて移動が大変だな。俺は落ちないように気をつけながら崖を登り、反対側の崖まで進んでいく。

 

「この下の川を越えれた先がマヒの森か···」

 

俺は昨日も思ったが、マヒの森はマヒの花やヤシの木がたくさん生えたジャングルなので、あまり入りたくはない。

だが、そう言う訳にもいかないので、俺は崖を降りて川の所へ行く。川の水で濡れないように、俺は土ブロックで川に橋をかけていった。

そして、その川を渡ると、いよいよマヒの森の中に入っていく。

 

「外から見ても思ったけど、やっぱり気味が悪いな」

 

マヒの森の中は気温も湿度も高く、非常に居心地の悪い場所だった。どこから危険生物が出てきてもおかしくない雰囲気だ。

 

「それに、キャタピラーがいたり、マヒの花がはえてたりするな」

 

森の中には、崖のところとは比べ物にならないほどたくさんのマヒの花がはえており、進むのが難しかった。だが、多くの植物のおかげで俺はキャタピラーに見つからずに進むことが出来た。

 

「そういえばこれまで、メタルギアみたいに敵の拠点に潜入することってなかったよな」

 

そこで思い出したが、俺は最初メタルギアのスネークのような行動をしようと思っていたが、これまでする機会がなかったな。いかにも魔物の拠点っぽいピラミッドでも、最深部にしか敵はいなかった。

ここは森なので魔物の拠点ではないにしろ、たくさんの敵に見つからないように進んでいく、いわゆるスニーキングミッションではあるだろう。

 

「とりあえず、キャタピラーに見つからないようにしないとな」

 

キャタピラーとはまだ戦ったことはないが、油断の出来ないモンスターだろう。俺は植物の影に隠れながらマヒの森の奥へ奥へと進んでいった。途中、変わった植物もいくつか見つけた。

 

「なんだこの巨大な花?すごく臭いな···」

 

森の中に、直径1メートルほどはあるであろう強烈なにおいを放つ巨大な花が咲いていた。恐らくラフレシアとかいう花だろう。地球にいた時にテレビで見たことはあるが、実際に見たのは初めてだ。

 

「これも素材になるかもしれないが、いらなさそうだな」

 

ラフレシアはあまり素材にならなそうだし、もしなるとしても臭そうなので、回収せずにそのままにしておいた。

ラフレシアのところを離れた後20分くらい、マヒの花とキャタピラーを避けながら、マヒの森の奥へと潜入していった。

そして、森の中心部と思われるところに木がないところがあり、大きな穴があいていた。

 

「なんだこれ?木がないぞ」

 

そこに近づくと、2体のリリパットもいた。彼らは痺れて動けないようで、俺に攻撃してくることはなかった。もしかしたら、こいつらも味方かもしれないな。

俺は、ここに何があるのか一応聞いてみた。

 

「おい、ここには何があるんだ?」

 

「ココハ、キャタピラーの巣ダ。早く壊してミンナを助けナイト、リリパットはゼンメツダ!」

 

キャタピラーの巣か。こいつらは痺れているみたいだし、キャタピラーがマヒの病の元凶なのかもしれない。

 

「そのキャタピラーがマヒの元凶なのか?」

 

リリパットは体が痺れていながらも、なんとかうなずいた。

 

「そうダ。キャタピラーが現れてから、マヒの病になるリリパットが出たんダ。ニンゲン、キャタピラーの巣を破壊してクレ」

 

このリリパットは味方みたいだし、町のみんなも助けないといけないからな。俺はもちろん、キャタピラーと戦う気でいた。キャタピラーは見た目が気持ち悪いが、なんとか我慢しよう。

 

「分かった。ちょっと待っててくれ」

 

俺がキャタピラーの巣であるらしい森に空いた穴に入ろうとすると、もう片方のリリパットが俺にこんなことを言ってきた。

 

「そこをドケ!キャタピラーの巣はワタシが破壊するのだ!ニンゲンは帰ってクレ」

 

そう言われても、放っておけばさっきの奴が言っていたようにリリパットが全滅するかもしれない。それに、こんなことを言っているリリパットも、痺れて動けない様子だった。

 

「無理はするな。俺が戦ってくる」

 

リリパットにそう返事をして、俺はキャタピラーの巣の中に入っていった。そこには、小さいサイズだがかなりの数のキャタピラーがいた。

 

「すごい数だな···それに巣穴が3つある」

 

それに、キャタピラーが次々に出てきている巣穴もあった。これを壊せば、マヒの病は終息するだろうな。

俺はいしのおのを握り、キャタピラーの群れに斬りかかっていった。

 

「全員切り刻んでやるぜ!」

 

俺を見つけると、キャタピラーは次々に体を回転させて襲いかかってくる。俺はそれをかわすか斧で受け止めるかして防ぎ、次々に切り裂いていった。

巣から出てきたキャタピラーは生まれたてなのか弱いようで、一撃で倒すことができた。

 

「こいつら、結構弱いな。赤ちゃんか?」

 

だが、子供がいるということは親のキャタピラーもいるはずだ。そいつが出てきてもいいように、気を引き締めてかからないとな。

俺は何十体もキャタピラーを倒していき、巣穴のあるところまでたどり着いた。かなりの強度がありそうだが、いしのおのでも壊せそうだ。

 

「回転斬り!」

 

俺が回転斬りを放つと、キャタピラーの巣穴にはヒビが入った。もう少し攻撃すれば壊せそうだ。他の2つの巣穴から迫ってくるキャタピラーをかわしながら、上から思い切りいしのおのを叩きつける。

 

「よし、あと2つ壊せばいいな」

 

2度も強力な攻撃を受け、キャタピラーの巣穴はバラバラに砕け散った。しかし、その事に怒ったのか、他の巣穴からものすごい数のキャタピラーが飛び出してきた。

 

「100体はいそうだな···」

 

だが、キャタピラー自体はやはり弱いので、回転斬りを使って他のキャタピラーの巣穴までたどり着くことができた。

 

「これで2個目だ!回転斬り!」

 

そのキャタピラーの巣も、回転斬りともう一発攻撃を叩き込めば壊せるはずだ。だが、そんなところでさらに激しくキャタピラーが飛び出してきた。倒せば倒すほど出てくるようになり、倒すのが追い付かない。

 

「クソッ、どんだけいるんだよ!?」

 

キャタピラーを殺すことは可能だが、巣穴を封じない限り1000体は余裕で出てくるだろう。

町のみんなを連れてこればキャタピラーも巣穴も対処できるだろうが。一度戻れば敵も戦力を増やしてくるはずだ。ここは俺一人で決着をつけないといけない。

 

「そうだ!リムルダールについた時にルビスから貰ったこれがあった」

 

俺はとっさに思いつき、ルビスに貰ったこんぼうを取り出した。この弱いキャタピラーなら、こんぼうでも倒せるだろう。俺はこんぼうを左手に持ち、それでキャタピラーを倒し、右手に持っているいしのおのでキャタピラーの巣を潰した。

 

「二刀流にすると強いな」

 

片手だけでは倒すのが精一杯だったが、両手を使えば2倍の攻撃ができる。ゲームでは出来ないことも、リアルでならできることもあるな。

 

「よし、残り1個も潰すぞ!」

 

俺はこんぼうといしのおので大量のキャタピラーをなぎはらっていき、巣穴のところに到達すると、左手で出てくる奴を倒し、右手で何度も巣穴を切り裂いた。

そして、ものすごい数のキャタピラーを倒し、すべての巣穴を破壊した時、子供のキャタピラーの何倍もの大きさを誇る、巨大キャタピラーが出現した。

 

「こいつが奴らの親で、マヒの病を振り撒いた元凶だな」

 

巨大キャタピラーは、俺を強くにらみつけていた。子供を大量に殺されたことで怒っているのだろう。

強そうだが、こいつを倒さないとマヒの病は治せない。俺はいしのおので、巨大キャタピラーに斬りかかった。攻撃は通るが、子供のように一撃で死んだりはしない。

反撃として、巨大キャタピラーは力をため始めた。回転しながら突進してくる攻撃の前兆だ。

 

「動きは子供と変わらないな」

 

だが、巨大キャタピラーの突進はとてもスピードが速く、今の俺でもかわすことは出来なかった。俺はすぐにこんぼうといしのおので受け止めたが、衝撃でこんぼうが砕けてしまった。

 

「こんぼうが壊れただとっ!?」

 

防げなかったら危なかっただろう。しかし、攻撃の反動で巨大キャタピラーも動きが止まった。ここで仕留めないと危険だろう。

いくら巨大だと言えども、キャタピラーは細長い体なので回転斬りで真っ二つにできそうだ。

 

「くらえ、回転斬り!」

 

俺は巨大キャタピラーの顔に向かって攻撃を放った。当たる寸前に巨大キャタピラーは体制を立て直し、俺を尻尾の針で突いてきたが、その尻尾も斬り飛ばすことが出来た。

そして、巨大キャタピラーを真っ二つにして倒すことが出来たが、俺の持っていたいしのおのも砕けちってしまった。

 

「いしのおのも壊れたか。敵に遭遇したら危険だし、キメラのつばさで帰るか」

 

俺がキメラのつばさを取り出すと、後ろにいたリリパットが文句を言ってきた。さっきそこをどけなんて言っていた奴だ。

 

「ジャマをするなと言ったはずだぞ、ニンゲン」

 

全く、苦労して巨大キャタピラーを倒したというのに、何て失礼な奴だ。そう思っていると、人間に友好的なもう一体のリリパットがそいつを注意する。

 

「オイ、助けてくれたニンゲンに対して失礼ダゾ。オマエにとってはジャマだったかもしれんが、助けてくれたことに変わりはナイ」

 

そして、そのリリパットは俺に感謝の言葉を言う。

 

「ありがとうナ、ニンゲン。レイを言うヨ」

 

「ああ、そっちも元気でがんばれよ」

 

俺はリリパットにそう言うと、キメラのつばさでリムルダールの町へ帰還した。そして、すぐにゲンローワにキャタピラーのことを話に行った。

 

「ゲンローワ、マヒの病の元凶を倒してきたぞ!」

 

「よくやったぞ、雄也!それで、マヒの病の感染源はなんだったのじゃ?」

 

俺の話を聞き、すぐにゲンローワは部屋から飛び出してくる。最初は暗い人だったが、今はそうでもなくなって来ている。

 

「キャタピラーがマヒの病の元凶だった。ドロルみたいに病原体は手に入らなかったが、それでもいいか?」

 

俺はさっき巨大キャタピラーを倒したところを見たが、病原体らしき物は落ちていなかった。

 

「大丈夫じゃ。これから薬の作り方を考えてくる。ちょっと待っててくれ」

 

今回は病原体がなくても大丈夫なのか。ゲンローワは、薬の作り方を考えに調合室に入っていった。

1時間くらいたって、ようやくゲンローワは調合室から出てきた。

 

「雄也よ、マヒの薬の作り方を閃いたぞ。さっそくお主に作り方を教える」

 

これでイルマとザッコに薬をあげることができるな。ゲンローワに薬の話を聞くと、今回は草を集めた物ではなく、まんげつ丸と言う黒色の丸薬らしい。俺はその作り方を確かめる。

まんげつ丸···白い花びら1個、銀遊魚1個、マヒ針1個

白い花びらはたくさんあるし、銀遊魚も釣り名人から貰ったものがあるな。マヒ針は名前からして通常の大きさのキャタピラーが落とすだろう。確か旅のとびらに入ってすぐのところにもいたはずだ。

 

「どうじゃ雄也、作り方は分かったか?」

 

「ああ、素材が集まったらすぐに作る」

 

ゲンローワの話を聞き終えると、俺は作業部屋でおおきづちを作り、再び旅のとびらに入った。すると、やはり入ってすぐのところにある草原に、キャタピラーが生息していた。

 

「こいつも後ろから忍び寄って回転斬りで倒せばいいな」

 

おおきづちで殴ってもかなりの威力はあるので、すぐに倒せるだろう。俺はキャタピラーの背後にまわり、おおきづちに力をためた。

 

「回転斬り!」

 

そういえば打撃武器なのに回転斬りというのはおかしいが、あまり気にすることではなさそうだ。回転斬りだけでは死ななかったが、胴体を何発か殴ると、キャタピラーはついに倒れた。

 

「お、やっぱり針を落としたな」

 

そのキャタピラーは、大きな針を落とした。おそらくこれがマヒ針だろう。俺はそれをポーチに入れて町へ戻り、調合室に入った。

 

「これでまんげつ丸が作れるはずだ」

 

3つの素材を調合ツボに入れて魔法をかけると光を放ち、姿を変化させていく。そして、ゲンローワから聞いた通りの、黒色の丸薬が3つできる。

 

「これがまんげつ丸って奴か。さっそくあの二人にあげないとな」

 

一度に3つ出来たので、もう一度素材集めに行く必要もない。俺は病室に入って、二人にまんげつ丸を飲ませた。

 

「これで治るといいんだが···」

 

ザッコは確実にマヒの病らしいのでこれで治るだろうが、イルマは原因不明なので治るか分からないな。今は彼が回復することを祈るしかない。

 

その日は、地球時間でいう午後4時ごろになっていたため、それ以上探索には行かず、夕食を食べて俺たちは眠りについた。


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