ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
リムルダールに来てから9日目、俺が朝食の後町の中を歩いていると、ノリンに話しかけられた。
「なあ、雄也よお。今のこの町の空気を読まずに、不謹慎なことを言ってもいいか?」
不謹慎なことって、何を考えているのだろうか。改まって言うってことは、相当ふざけた話なのだろう。
俺は真面目な話よりもふざけた話のほうが好きなので、もちろん言ってもいいが。
「いいぜ。俺はそういう話は大好きだからな」
「絶対に怒らないって、約束してくれるか?」
ふざけた話が好きな人でも、怒るレベルの話なのか?それでも一応聞いてはみるが。
「もちろんだ。とりあえず言ってくれ」
俺がそう言うと、ノリンはしばらく息を吸い込んだ後、大声で言った。
「病気だかなんだか知らねえけど、この町なんか空気が重いんだよおおおー!リフレッシュしてえよお!自然と戯れてキャッキャウフフしてえよお!はあ、はあ、はあ」
大声で言い過ぎたのか、ノリンは言ったあとは少し息を切らしていた。急に大声を出していたので、俺は一瞬ノリンがおかしくなったかと思った。
この町の空気が重いか、俺は意識していなかったが、よくよく考えるとそうかもしれない。病気だのなんだので、暗い雰囲気が漂っていることは確かだ。だが、そんなことを言われてもこんな環境なんだから仕方がない。
「それは分かるが、病気の流行っている場所だから仕方ないぞ」
「いや、そんな中でも、リフレッシュする方法を思いついたんだ!」
こんな場所でリフレッシュする方法?俺には思い付かないな。
「オレは釣りができればリフレッシュ出来ると思う。お前もそう思うだろ?」
魚釣りか。確かに病気のことなども忘れて楽しめるかもしれない。俺は魚釣りにはあまり興味がないが、魚をとれるようになれば、食料危機になることもなさそうなので、できたら便利かもしれない。
「俺はあんまり興味はないが、釣りが出来たら確かにいいな」
この世界ではどんな魚が連れるか分からないが、食べられる魚もあるだろう。
「やっぱりそうだろ!そこでだ、リリパットの里にいる釣り名人に、釣竿の作り方を聞いてきてほしいんだ」
リリパットの里なんて聞いたことないな。今ある旅のとびらで行けるかどうかも分からないし。
「リリパットの里ってどこにあるんだ?」
きのうみんなで旅のとびらの先に探索に行ったが、その時に見つけたのだろうか。
「昨日マヒの花を見たから間違いない。リリパットの里は、マヒの森と同じ場所にあるからな」
やはりその時に見つけたのか。みんなで行くと俺だけでは探索しきれない場所も見つけられていいな。
「そのマヒの森って言うのは、どこにあるんだ?」
俺が聞くと、意外に行ったことのある場所の近くのようだ。
「旅のとびらからまっすぐ進んだ所に高台があるだろ?マヒの森はその高台を越えた向こう側だ」
その高台にはザッコを救出した時に登ったあのマヒの花が咲いている場所のことだろう。そう言えば、反対側は見ていなかったな。
「分かった。その釣り人が魔物に襲われてるかもしれないし、行ってくる」
釣竿は地球で何度も見たことがあるので作れるから行かなくてもいいと思っていたが、そう言う訳にはいかないようだ。
リリパットの住処なんかに迷いこんだら、弓で殺されてしまうだろう。早めに見つけて、救出してやらないとな。
「頼んだぜ!釣竿の作り方を聞いてきてくれよ」
俺の目的はそこじゃないんだけどな。とりあえず俺は、旅のとびらに入り、南国の草原へ移動した。昨日は避けていったが、油が不足する可能性もあるので、たくさんいるスライムベスを倒しながら進んで行った。
途中、メルキドでもみたことのある銀色のスライムもいた。
「メタルスライムか···リムルダールにもいるんだな」
現実にはレベルの概念がないので特に狩る意味はないが、メタルゼリーというのも何かに使えるかもしれない。俺はメタルスライムの背後に忍び寄り、いしのおのを持って力を込めた。
「回転斬り!」
体が小さいため真っ二つにされて、メタルスライムは青い光になった。そして、やはり銀色の液体、メタルゼリーを落とした。これを武器に使えれば結構便利なんだが。
俺は一応、作り方を調べてみた。
メタルの剣···メタルゼリー1個、鉄のインゴット1個 神鉄炉と金床
メタルゼリー1個、さびた金属1個 仕立て台
おっ、メタルゼリーで武器が作れるようだな。しかもメルキドであった素材で作れたようだ。あの時に作っておけばよかったな。
「リムルダールで作れるかは、微妙だな」
リムルダールでは銅や鉄を見かけていないので、炉は作れなさそうだ。もう1つの仕立て台とやらを作れればいいのだが。
俺はメタルゼリーをポーチにしまい、昨日も登った崖の上に行った。この崖の反対側は、まだだれも探索したことがない。
「ん、なんか看板があるな」
進んでいくと、崖の反対側に降りられる場所に、また魔物が立てたと思われる看板があった。
それには、この先マヒの森。近づくべからず。と書かれていた。
「マヒの森か···いかにも危険そうな名前だな」
俺が崖の下を見下ろすと、川があり、その先にたくさんのヤシの木が生えた大きなジャングルがあった。そのジャングルには、多くのマヒの花が咲いている。ノリンいわく、ここにリリパットの里があって、釣り名人がいるらしい。
「広い森だな。調べるのは時間がかかりそうだ」
それと、ジャングル以外にも人がいそうな場所があった。川を渡る前のところに、海に面した壊れた家があるのだ。とびらもついていないが、人がいる可能性はある。
「森は大変そうだし、さきにあの家を調べるか」
俺はつたを使って崖を降り、その家に向かった。ここに釣り名人がいるといいのだが。
外から覗くと、中にわらベッドも置いてあり人が住んでいる痕跡があった。
「おい、誰かいるか?」
俺が声をかけてその中に入ると、人間ではない者がいた。なんと、リリパットがいて、俺の方へ振り向いてきたのだ。
「おお、ニンゲンじゃネーカ!」
何か声もかけられたが、俺は反射的にいしのおのを取り出してしまった。だが、よく見るとそのリリパットには俺を攻撃する気はないようだ。
「いきなり慌てるナンテ、オマエおもしれーやつダナ!」
それどころか、普通に話しかけてきた。リリパットも会話ができるモンスターのようだ。
おおきづちだけでなく、リリパットにも人間に友好的な奴がいるようだ。もしかしたら、釣り名人の居場所を知っているかもしれない。
「ソンデ、何しにここに来たンダ?」
「リリパットの里に釣り名人がいるって聞いたんだが、知らないか?」
すると、そのリリパットは釣竿を取り出して言った。
「間違いネエ、それはオレのことダナ」
え!?釣り名人って言ったのに、人じゃないのかよ。こいつが本当のことを言っているかは分からないが。
「本当なのか?」
「ああ、名人ナンテ言うから、ヒトのことだと思ったんダロ?でも、ヒトじゃねえがオレがこの里の釣り名人ダ」
リリパットはそう言うが、簡単には信じられないな。俺がそう思っているのに気付いたのか、リリパットはこう言った。
「じゃあ、オレが釣りをするところをみせてヤルヨ!」
そう言って、リリパットは釣竿の先を海に入れた。俺はしばらく見ていたが、3分くらいで魚が食いついた。
「今ダナ!」
リリパットは釣竿を一気に引き上げ、食いついた魚を釣り上げる。食いついたのは、俺が見たことのない銀色の魚だった。
「何だこの魚?」
「このマヒの森の近くの海で釣れる、銀遊魚っていう魚ダナ」
この世界で釣れる魚は、地球のものとは異なるようだ。これ以外にも、たくさんの種類の魚が釣れるのだろう。
俺がいろいろ考えていると、リリパットは釣れた銀遊魚を渡してきた。
「この魚ヤルヨ!この魚はマヒの薬の原料になるンダ。もしマヒの病を患っているヒトがいたら使ってヤレヨ」
これがマヒの病に効くのか。まだ薬の作り方や他の原料は分からないから、後でゲンローワに聞こう。
「ああ、ありがとうな」
俺は銀遊魚をポーチに入れ、帰ろうとしたが、リリパットは俺に頼みたいことがあるらしい。
「ちょっと待ってクレ。実はこの前大物を釣り上げて、この釣り場の壁を壊しちまってナ!」
この家の壁に所々穴が空いていたのは、そう言う理由だったのか。それを直してほしいということだろう。
「それを直せばいいのか?」
「そう言うことダ。仕事サボって釣りしてんのが仲間にバレるからな···」
確かに見つかったら怒られそうだな。銀遊魚をくれたこともあるし、壁を修理してやるか。
俺は土ブロックを使い、壁の隙間を埋めていった。10個くらいの穴だったので、すぐに塞ぐことができた。
「これで壁が直ったぞ」
これで見つからずに釣りができると、リリパットは安心する。
「ありがとう!これで釣りにボットウできんナ!そうだ、オマエにオレの使ってる釣竿の作り方を教えてヤルヨ!」
リリパットはお礼に釣竿の作り方も教えてくれるらしい。釣竿は形が分かっているので作れるが、リリパットの釣竿のほうが性能は良さそうだ。
「分かった。教えてくれ」
リリパットの釣竿は、俺が知っている地球の釣竿とは少し違う形だった。作り方を聞くと、俺は必要な素材を魔法で調べた。
つりざお···ふとい枝1個、ひも1個、巨大なツノ1個 石の作業台
ふとい枝1個、ひも1個、ニガキノコ1個 木の作業台
ふとい枝1個、ひも1個、サボテンフルーツ1個 鉄の作業台
何か、巨大なツノとか食べ物が混じっているな。ふとい枝は持ち手で、ひもは釣糸の役割だろうが、ニガキノコなどは何なのだろうか?エサなのかもしれないが、それだと1回で無くなるはずだ。それに、巨大なツノがエサになる訳がない。
とりあえず、ふとい枝もひももニガキノコもあるので、俺とノリンの二人分作れそうだ。
「教えてくれてありがとうな」
「バンバン魚を釣って、イダイな釣り人になれよ!」
俺は作り方を教えてもらった後、お礼を言ってリリパットの家を去った。偉大な釣り人か···ノリンならなるかもしれないな。
「戻ったら早速作るか」
俺はキメラのつばさで町に戻り、作業部屋に入った。
「二人分作ったら、早速釣りに行くか。食い物が枝豆とニガキノコしかないしな」
これまではうまいものは食べられなかったが、今日からは魚が食べられるようになるな。
俺は魔法でつりざおを作り、ノリンに渡しに行った。
「ノリン、つりざおを作ってきたぞ」
俺がつりざおを渡すと、ノリンはロロンドくらいにハイテンションになった。よっぽど釣りをしたかったんだろうな。
「うおおおーーー!よくやった雄也!これで釣りを楽しめるぜ!」
「ああ、食料に困ることもなさそうだな」
うまく釣れれば、の話だが。つりざおを受けとると、さっそくノリンは俺を釣りに誘った。
「オレは今から釣りに行ってくる。雄也も来るか?」
俺はその予定だったので、もちろんOKの返事をする。
「もちろんだ。そのほうがたくさん魚を釣れるしな」
俺たちは、つりざおを持って旅のとびらに入った。旅のとびらに入ってすぐのところに海があるからな。
「おおーー!ここならうまい魚が釣れそうだ!」
俺たちは海につりざおの先を入れる。しばらくは釣れないんだろうな、と思っていたが、ノリンのつりざおに、始めて5分くらいで反応があった。
「お!何かかかったぜ!」
ノリンがさおを引き上げると、地球でも見たことのある魚、イワシが釣れた。地球と同じ魚も釣れるようだ。
初めて魚を釣って、ノリンはものすごく喜んでいる。
「おお!うまそうな魚だな!もっと釣って、今日は魚まつりだ!食って食って食いまくるぜ!」
ノリンは結構大食いなのかもな。それに結構テンションが高いし、ふざけた話もしている。
防衛戦の時に逃げ回っていてなんだこいつ?と思ったが、ノリンとは気があいそうだ。
「そうそう、魚ってのは栄養満点でな。病気の患者にも食べさせてやるよ」
それに、ノリンも病人のことを考えてくれているようだ。たくさん釣って、病室にいる四人にも食べさせてやらないとな。
その日、俺とノリンで夕方まで釣りをし、25匹くらいのイワシを釣り上げた。この海域には、イワシしか生息していないらしい。
「そろそろ夜だぞ、戻らないといけない」
「分かった。帰ったら焼いて食うぞ」
ノリンはかなり腹が減っているようだった。イワシもポーチに入るらしく、俺たちは中に入れて持ち帰った。帰ったら、みんなで魚を食べるか。俺たちは魚を食べるのを楽しみにしながら旅のとびらをくぐり、町へと戻った。
「オレが調理するぜ。イワシを11匹渡してくれ」
確かにオレは料理はピリンよりはマシだけど上手くないからな。俺はノリンにイワシを渡し、料理を任せた。11匹ってことは、俺たち7人と病人4人の分か。
その日の夜、俺たちは1人一匹ずつ魚を食べた。まだ満腹にはならないが、これまでの食料よりはお腹いっぱいになった。俺が食べ終わった後は、病室にいるエディ、ケン、イルマ、ザッコに食べさせた。これで治るとは思えないが、少しは体力がついただろう。
そして全員が食べ終わった後は、明日に備えて寝室で寝た。明日で10日目だ。早く病人を治してやらないとな。