ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode2 メルキドの末裔

翌日、俺はメルキドの家のベッドで目覚めた。この世界に来たのは夢なのではないかと思ったが、そんなことは無かった。

 

「おはよう、雄也」

 

俺と同じくらいの時間に、ピリンも起きた。二人で外に出た後、ピリンが今日も相談をしてきた。

 

「今日は、雄也の魔法の力で、作って欲しいものがあるの」

 

魔法の力ってことは、手動では作れないってことか。何故ドラクエビルダーズがお使いだらけなのかよくわかるな。

 

「これからたくさん物を作るようになると思うから、素材や作った物を入れて置ける箱があったらいいと思うの」

 

「それくらい、自分で作れるだろ。太い枝を集めてじょうぶな草をヒモ代わりにして縛れば、手動で作れるぞ」

 

「普通の箱じゃなくって、雄也の持っているポーチのように、なんでも入れられる箱が欲しいの。土のブロックが余ったらしまって置かないといけないでしょ」

 

何でポーチのことを知っているんだ?と思ったが、ピリンは昨日俺がポーチから土ブロックを取り出すところを目の前で見ていた。なんでも入れられる箱なら、ゲームにあった収納箱が

あればいいな。

 

「雄也、作れそう?」

 

太い枝が3つあれば作れるはずだが、魔法の力を持ったものが出来るかは分からない。でも一応作っておく価値はあるな。

 

「魔法の収納箱になるかは分からないけど、一応作ってみる」

 

俺はまず、太い枝を取りに、近くの森の中に入った。森の中には、太い枝だけでなく、じょうぶな草、モモガキの実、キノコが落ちていた。キノコは生で食べると食中毒になりそうなので、加熱する必要がありそうだ。

 

「確かゲームでは、木は切れなかったけど、試しに攻撃してみるか」

 

木も手に入れられないかと思い、ひのきのぼうを叩きつけたが、全く反応が無かった。

 

「やっぱりムリか···」

 

俺は木は諦めて、手に入れられる素材を持って、森を出た。途中、ドラキーと言うモンスターと遭遇しそうになったが、こちらから攻撃しなければ大丈夫なので、そっとしておいた。

俺は拠点に戻ると、石の作業台に太い枝3本を乗せた。ゲームにあった魔法の収納箱になるよう祈ると、太い枝はいつも通り光輝き合体し、収納箱の形になった。

 

「とりあえず収納箱にはなったな。あとはこれが魔法の力を持っているかどうかだな」

 

恐る恐るふたを開けると、中は暗い空間になっていた。ポーチも中はそうなっていた。俺はさっき拾ったキノコを試しにそこに入れてみた。

 

「問題は、これを取り出せるかだな。」

 

俺は、収納箱に手を入れ、キノコを取りだそうとした。すると、問題なく取り出すことが出来た。どうやら、魔法の収納箱が出来たようだ。

 

「おい!ピリン!収納箱が出来たぞ」

 

ピリンは家の中にいたようで、走って飛び出してきた。彼女は、手に設計図のような紙を持っていた。

 

「ありがとう雄也!これで素材をたくさん入れて置けるね」

 

俺は、ピリンの持っている設計図について聞いた。

 

「ピリン、その紙は何だ?」

 

「実はわたし、雄也が収納箱を作っている間に、作業部屋の設計図を書いていたんだ。いっしょに作ろうよ!」

 

そういえばゲームでも、そんな設計図を渡されるイベントがあったな。でもこれはゲームじゃないから、一緒に作ることも出来る。ゲームではただお使いを言うだけの存在であったピリンも、リアルでは共に町を作る仲間だ。

 

「じゃあ、その設計図を見せてくれ」

 

ピリンの見せてきたその設計図は、石の作業台と収納箱、たき火がある部屋だ。それとわらのとびらが入り口にある。石の作業台と収納箱はここにある物を使えばいいな。たき火は青い油と太い枝2本、わらのとびらはじょうぶな草3つと太い枝1つで作れる。草と枝は森でたくさんとってきているので、スライムを倒して青い油を手に入れればいい。スライムくらいなら、俺でも倒せるだろう。

 

「どう、作れそう?」

 

俺がじっくり見ていると、ピリンが心配して言ってきた。

 

「たき火はここにないから、無理だったらたいまつでいいよ」

 

「たき火と扉は俺が作っておくから、このポーチから土ブロックを取り出して、壁を作っておいてくれ。土ブロックを取り出す時は、土ブロックを取り出したいと思ってポーチに手を入れるんだ」

 

「分かった。石の作業台と収納箱も置くね」

 

そういえば、この世界のものは地球のものと比べて物凄く軽いが、石の作業台とか重そうなものでも、少女でも1人で持てるほど軽いのか。

 

「分かった。頼む」

 

ピリンが建て始めたのを見て、俺も作業に取りかかる。まずわらのとびらを作り、次にスライムを倒しにいく。スライム相手なら、ひのきのぼうでも十分そうだが、一応強い武器を作っておこう。手動なら太い枝1本で作れそうだが魔法なら2つ必要な武器、棍棒がある。手動で作ったほうが素材を節約できることもあるようだ。しかし時間がかかるし、太い枝はいくらでも入手できるので、今は魔法で作った。

 

「よし、棍棒が出来た」

 

俺は武器をひのきのぼうに持ちかえ、スライムのいる所に出かける。俺はスライムの後ろにゆっくりとしのび寄り、棍棒を叩きつけた。スライムは一発では死なず、俺に反撃してきた。

 

「そんなスピードで、俺に追い付けると思ってんのか?」

 

スライムのスピードは、人間のはや歩きと同じくらいだ。俺はすぐにかわし、もう一回スライムを殴った。今度は耐えきれなかったようで、スライムは光を放って消えた。そして、そこに青い油を落とした。

 

「リアルに魔物って、死体になるんじゃなくて消滅するんだな」

 

まあ、死体がいつまでも残っていたり腐ったりするのは嫌だが。俺は青い油を持ち帰ろうとしたが今はポーチはピリンに預けて来ている。素材か消える訳ではないので、一旦もどることに

した。

拠点に戻ると、作業部屋はほぼ完成しており、あとはたき火を置くだけだ。俺が作ったわらのとびらもすでに設置されていて、扉をあけると中に収納箱と作業台が置かれていた。

 

「あ、雄也。おかえり!素材が集まったの?」

 

「いや、スライムは倒して青い油をおとさせたんだけどな、回収するためのポーチをピリンに預けたままだったからな、とりにきた」

 

「はい、そういえばポーチが一つしかないって不便だよね」

 

確かにそうだが、ポーチの作り方は分からない。ピリンにポーチを返してもらい、青い油を回収してきた。設計図ではたき火を置くところは作業台の真横なので、作成後すぐに設置できそうだ。

俺は魔法でたき火を作り、指定の位置に置いた。これで設計図どおりの部屋ができた。

 

「ピリン!たき火を置いたぞ」

 

ピリンは完成した作業部屋に入り、大喜びしている。その姿を見て、俺も嬉しくなった。

だが、俺はここで思った。作業部屋ができたのはいいが、二人だけでは人数が足りない気がする。ピリンは頼もしい仲間だが、もっと人がいないと町どころか、集落とも呼べないだろうな。

 

「ピリン、喜んでいる時に言って悪いが、町を作るにはもっと人数が必要じゃないか?」

 

それに、ロロンドやロッシがいるのか気になる。ピリンは、心当たりがあるようだ。

 

「そのことなら、昨日ここにくるまえに人を見つけたんだ。町の東の岩山の裏で見たんだけど、ちょっと変わった人だったから、声はかけなかったんだ。」

 

おそらく、ロロンドのことだな。ゲームでも、町の東にいた。

 

「じゃあその人を連れてくる。ピリンはここで待っていてくれ」

 

俺は棍棒を手に、町の東に向かった。海沿いを歩いて行くと、木箱とたき火が置かれている場所があった。

 

「ゲームでも、こんなものが置いてあったな」

 

そこからもう少し進むと、壊れた家ような建物があった。その建物には、ベッドとたき火、何かが書かれたメモ用紙があった。

 

「何だ、これは?」

 

そのメモ用紙には、汚い文字で文章が書かれていた。

 

「うしなわれたもじをよむというのは、なんてたいへんなことなんだ。めるきどろくをよみとくには、まだじかんがかかりそうだ」

 

何故か、全部平仮名で書いてある。でも、メルキド録という本を解読しているということは、間違いなくこれを書いたのはロロンドだ。でもその家にはロロンドの姿は無かった。

俺はさらに、その家の裏にある森に入った。太い枝やモモガキ、キノコを拾いながら森を進んでいくと、土ブロックで出来た謎の建造物をみつけた。ゲームでは確か、この中にロロンドが閉じ込められているんだよな。俺は試しにその土ブロックを手で叩いた。すると、予想通り中から中年男性の声が聞こえた。

 

「そこに誰かおるのか?魔物にここに閉じ込められてしまったんだ。頼む!我輩をここから出してくれ」

 

中年男性の声は、とても苦しそうだった。中の空間にある酸素の量が残り少ないのだろう。ゲームでは放っておいても問題ないが、現実では窒息死する危険がある。俺は棍棒で土ブロックを叩き壊し、中にいる人を救出した。中からは、やはりロロンドと思われる男性が出てきた。

 

その頃···

魔物の王 竜王の間

 

竜王の配下の魔物の一体が、雄也の行動に気付き、それを報告していた。

 

「竜王様。ビルダーとやらが最近、町を作り、人々の物を作る力を復活させているようです。」

 

「そのくらい分かっておる。くそっ、ルビスの奴め、余計なことをしやがって!」

 

竜王は不機嫌そうに返事をする。

 

「さっきビルダーは町の仲間を探しに行きました。これ以上物を作る力をもつ者が増えたら大変です」

 

「わしはまだ平気だがな」

 

竜王はしばらく考えたのち、自分と同じ姿をした影の魔物を3体放った。

 

「あいつらの力を試す為に、コイツらを使ってみるか」

 

竜王の影は、メルキドの地に飛び立った。

 

 

 

一方雄也は、助けだした男性と話をしていた。

 

「おかげで助かったぞ、礼を言う」

 

彼はまず感謝の言葉を言った。だが、次に助けてくれた人に対してはちょっと酷い事を言った。

 

「ところでお主は誰なんだ?ずいぶんとぼけた顔をしているが」

 

「助けてくれた人に対してひでえな。俺は影山雄也だ。雄也って呼んでくれ」

 

この世界では、名前だけで十分だろうが、一応名字も名乗っておく。

 

「ここらへんで町を作っているんだ。あんたも来るか?」

 

俺は年上の人もだいたいあんたかお前で呼ぶ。俺は敬語とかいうのが好きじゃないからな。

 

「もちろんだ!我輩も町作りの仲間に入れてはくれないか?」

 

どうやら喜んで来てくれるらしい。俺は当然OKの返事をした。

 

「俺は仲間を探しにここまで来たんだからな。歓迎するぜ」

 

「良かった。我輩はロロンド!幻の書物、メルキド録を持つ男だ。必ず町作りの役に立とう。よろしく頼むぞ、雄也」

 

「ああ、よろしくな、ロロンド!」

 

ロロンドもゲームではお使いを頼むだけの存在だったが、リアルでは物凄く役に立ちそうだ。

俺はロロンドを連れ町へ歩き始めた。

だか、歩き始めて少し立って、ロロンドはある異変に気付いた。

 

「なあ雄也よ、空がやけに暗くはないか?」

 

ロロンドに言われて気付いたが、確かにそうだ。まだ夜にもなってないのに、あまりにも暗い。少し不安になりながらも歩き続けた。

しばらく進むと、ロロンドは、さらなる異変に気付いた。

 

「雄也、あれを見ろ!」

 

「どうした、ロロンド?」

 

ロロンドの指差した方向を見ると、謎の魔物がこの地に迫っていた。その姿がはっきり分かったとき、俺もロロンドも戦慄した。

 

「まさか、竜王か!?」

 

それは、竜王と全く同じ姿の、暗黒の魔物だった。ゲームではこんな奴ら出てこなかったのに···。現実は何が起こるか分からないな。

 

「あれは竜王本体ではないが、竜王と同じ姿を持つ最強クラスの魔物、竜王の影だ。強い奴を竜王本人の代わりに始末するんだ。」

 

竜王の影か···。俺から見ても物凄く強そうだ。こういう時は正面から戦っても勝ち目はない、隠れてやり過ごそう。

 

「ロロンド、隠れるぞ」

 

俺とロロンドは海の近くに降り、ブロックにはりついて敵の死角に入るようにした。竜王の影は俺たちの方へ来ているが、海のところまで見てはいない。このまま死角にいて、物音を立てなければ、見つからないはずだ。

竜王の影は俺たちを見つけられず森のほうに行った。だが今町に戻ればピリンも危険にさらされる。竜王の影がメルキドから撤退するまで、じっとして待った。1時間くらい経って、ようやく竜王の影の気配が消え、暗闇が晴れた。

 

「助かったようだな」

 

俺たちはほっとして、再び拠点へ歩き始めた。1時間もじっとしているのは、俺にとってもロロンドにとっても辛かった。

拠点が見えてきたところで、ロロンドに紹介した。

 

「あれが俺たちの作っている町だ。あそこには俺だけでなくピリンと言う少女も住んでいる。ロロンドにも後で紹介するよ」

 

「お主以外にもいたのか!みんなで協力すれば、町を作ることも夢ではない」

 

そういえばこの世界に来てから、俺は協力の大切さを学んだな。俺は、新たな仲間を加え、メルキドの拠点へ帰還した。

 

 

 

「竜王様、あの者達を逃がして良かったのですか?」

 

「あれはあいつらがどのくらい力を持っているか試しているんだ。生き残れば無理に追わない。死ねばそれまでだけどな。まだ奴らは必ず殺さなくてはいけないほど、力を持っていない。持っていたとしても、メルキドの魔物がなんとかしてくれるだろう。」

 

竜王はアレフガルド復興が最終段階まで進んだとき生きていたら、雄也を始末する予定だった。

 

「だが、これからも定期的に奴の力を試す。下がれ」

 

竜王の話を聞き終え、竜王の配下の魔物は立ち去った。


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