ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
リムルダールに来てから三日目、俺は朝起きて拠点を散歩していた。メルキドほど空気はキレイではないが、やはり外の空気はいいものだ。
「雄也よ、少しいいかの?」
散歩を終えて朝食に枝豆でも食べに行こうと思っていると、ゲンローワに話しかけられた。
「どうしたんだ、ゲンローワ?」
「お主に薬の調合をするための、調合ツボを作ってほしいのじゃ。それで、作り方を教えようと思ってな」
確かに木の作業台では薬は作れなさそうだな。きずぐすりくらいなら木の作業台でも作れるけど、様々な薬を作っていくには特殊な作業台がいる。
「そう言うことか。さっそく教えてくれ」
ゲンローワは、俺に調合ツボの作り方を説明した。俺はすぐに、その作り方を魔法で調べる。
調合ツボ···土8個、粘土5個、あおい油1個
土とあおい油はいいが、粘土って聞いたことないな。土ブロックに似てそうなので、見落としているだけなのかもしれないが。
「どうじゃ、作れそうか?」
粘土さえ見つかれば作れるので、難しいことはないだろう。
「ああ、出来たら教える。待っていてくれ」
リムルダールに来てからもゆっくりできる日はない。大変だが、復興のためなので、俺は粘土を探しに拠点を出た。
「粘土か、もしかしたら崖にあるかもしれないな」
俺は、町の東にある崖に向かった。何度か上り降りしたことはあるが、意識して何のブロックで出来ているかを見たことはない。
俺が改めてその崖の地層を見ると、所々に普通の土ブロックとは違う色をしたブロックがあった。
「もしかして、これが粘土か?」
アイテムの名前を調べることは出来ないが、これが粘土だと信じよう。俺は拠点に戻り、木の作業台のある場所に行った。
「これで調合ツボが作れるといいんだけどな」
俺は土とあおい油と粘土と思われるブロックに魔法をかけた。するとそれらは合体し姿を変えていく。そして、ゲンローワに教えてもらったのと同じ形の調合ツボができた。
「あれが粘土で合ってたんだな」
これからも粘土が必要になるかもしれないし、覚えておこう。調合ツボが完成すると、俺はそれをゲンローワに見せに行った。
「ゲンローワ、調合ツボが出来たぞ」
「おお、それはまことか!?」
俺が作った調合ツボを見て、ゲンローワは嬉しそうな表情をした。これで薬を作れるようになるだろう。
「おお、これはわしが思っていた通りの調合ツボじゃ!雄也よ、ありがとう」
調合ツボが完成し、俺は朝食の枝豆を食べていた。大した腹の足しにはならないが、食べないよりはましだろう。
「今日はメルキドの時みたいに、ちゃんとした作業部屋でも作ろうかな?」
食べながら考えていたが、石の作業台のように、木の作業台も室内においたほうがいいかもしれない。
それ以外にも、調理部屋も作ろうと思っていた。
「だが、病室に土ブロックを使いすぎたな。」
病室や寝室を作るのに大量の土を使い、調達する必要があった。取りに行こうとすると、再びゲンローワに話しかけられた。
「雄也よ、先ほどの話の続きじゃ」
調合ツボは完成したのに、まだなにかあるのだろうか?
「今度は何なんだ?」
いろいろ頼まれてばっかりで、なかなか作りたい部屋が作れないな。だが、今は大事な話かもしれないので、ゲンローワの話を聞くことにした。
「雄也よ、先ほど調合ツボを作ったじゃろう。これからは看病と診察をエルに任せ、わしとお主で薬を作っていくぞ」
エルは薬の知識はないから、確かにそのほうがいいな。俺もないが、ビルダーの力で何とかなるだろう。
「それで、薬の研究に集中できるよう、お主には薬の調合室を作ってもらいたい。そこで共に、新しい薬の開発をしよう」
薬の調合室か。確かに作業部屋と同じくらい大事だな。ゲンローワの言うこともあるし、こっちを先に作ろう。
「どんな感じの部屋がいいんだ?」
俺がそう聞くと、ゲンローワは一枚の紙を取り出した。それには細かい設計図が書かれていた。
「この設計図通りの調合室を作ってほしいのじゃ。できそうか?」
設計図に書いてあるのがたき火、ツボ、木の机、収納箱など、今まで作ったことのあるものや、さっき作った調合ツボなどだった。
「作ったことがある奴ばっかだし、簡単そうだな」
だが、これもふとい枝をやたらと使う。何故リムルダールの住民の書く設計図はふとい枝がたくさん必要なんだろうな。
「素材を集めてくるから待っててくれ」
「おお、頼むぞ」
俺は土とふとい枝を取りに拠点から出た。まず、拠点の近くにある土ブロックを壊して入手し、ふとい枝を取りにまだ行ったことのない場所へ向かった。
しばらく進むと木が全て枯れてしまっている森があった。酸性雨が降った後のような状態だ。
「この前気づいたけど、枯れ木は壊すとふとい枝になるんだな」
枯れ木をおおきづちで叩き壊してみたが、やはりふとい枝2本に変化した。俺は枯れ木を10個ほど破壊し、ふとい枝を回収した。
「素材が揃ったか。簡単に集まったな」
リムルダールではふとい枝をやたらと使うが、足りなくなることはなさそうだ。
俺は拠点に戻り、木の作業台で必要な家具を作っていく。収納箱も作るので、しばらくは素材がいっぱいになることはなさそうだ。
家具が完成すると、俺は設計図に書かれた通りに土ブロックを積んで建物を作り始めた。
この地方では雨が降るため、天井を付ける必要があり、100個以上の土ブロックを使った。そして、中に家具や収納箱、調合ツボを置いていく。
「結構簡単に作れたな」
完成した調合室を見て、ゲンローワは喜んで走って俺のところに来た。
「おお!薬の調合室を作ってくれたのじゃな!」
エルにとっては病室を作るのが夢だったが、ゲンローワにとっては調合室を作るのが夢だったんだろう。
「このリムルダールの地には、お主の見たことのない病がまだまだ存在する。お主の作ってくれた調合室は多いに役立つであろう」
ゲンローワは喜びながら話をしていたが、その後暗い表情になり、彼の過去を話し始めた。
「雄也よ、わしにはかつてウルスという名の弟子がおって、長年彼と共にこの地にはびこる病の研究をしておったのじゃ」
ゲンローワに弟子がいたのか。やはりゲンローワは昔はもっと前向きな性格だったようだ。
「それで、そのウルスとやらはどうなったんだ?」
「研究は失敗に終わり、我が弟子ウルスは···」
その先は言わなかったが、ウルスが病気になってそれを治せず、死んでしまったということだろう。
「じゃからの、わしは研究を捨て病に抗うことをやめたのじゃ···」
弟子を助けられず、何をやっても無駄だ!みたいに思ってしまったってことか。大事な人を亡くして性格が変わってしまう話は聞いたことがある。
「おっと、暗い話をしてしまったのう···話を元に戻そう。雄也よ、改めてよろしく頼む。この地の病を癒す薬の開発に共に挑もうぞ」
ゲンローワは過去の話をやめ、もとの表情に戻った。こんな性格だが、ゲンローワも大切な仲間になるだろう。
調合室が出来たので、俺は何の薬の研究をするのか聞いてみた。
「ゲンローワ、まずは何の薬を作るんだ?」
すると、ゲンローワは興奮してエルと同じようなことを言った。
「おお、それはまことか!?なんということじゃろう!」
俺は聞いただけなんだが。それにしても、美人のシスターとネガティブな老人という全然違う二人だが、どこか似ているな。
「おい、俺は少し聞いただけなんだが?」
俺が言うと、ゲンローワは落ち着いて普通に話した。
「すまぬ。調合室ができてつい興奮してしまったのじゃ。それはそうと雄也よ、最初は毒の病を直すために必要な、どくけしそうの研究をしようと思っている」
毒を直す薬か、患者だけでなく俺たちが魔物から毒の攻撃を受けた時にも使えそうだな。だが、毒の病ってそのまんまな名前だ。毒に冒されるからそう言う名前なんだろう。
「なら、さっそく始めるか?」
「いや、実は一つ問題がある。この地の毒を解析するには、どうしても毒の病原体が必要でな。その毒の病原体を持つ巨大なドロルがどうしても倒せないんじゃ」
毒の病の原因は、巨大なドロルなのか。そいつを倒せば病気の発生も止めることができ、治療も可能になるので一石二鳥だな。
「それを倒してこいってことか?」
「そう言うことじゃ。南の丘を越えた所にある毒沼にいる巨大なドロルを倒し、毒の病原体を手に入れてほしい」
南の丘はこの前ゲンローワがいたところか。毒沼なんて見えなかったし、かなり遠そうだな。
だが、巨大ドロルを倒さないと病の治療が出来ないので、俺は拠点を出発した。
「1日に何回出掛けてるんだ?」
今日1日で3回目の出発になった。作業部屋などを作るのは、また今度になりそうだな。俺はさっき通った枯れ木の森を抜け、海辺に出た。
「海辺の道を使っても行けるみたいだな」
毒沼に行くには、南の丘を越えないといけないと思ったが、海辺に普通に歩いていける道があった。何か新しい物があるかもしれないので、俺は海辺の道を進んだ。
途中、ピンク色の不味そうなキノコが生えていた。
「なんだこのキノコ?メルキドに生えている奴とは違うな。あいつらに見てもらうか」
こんな場所に生えているのでおそらく毒キノコだが、一応持ち帰ってエルやゲンローワに見せることにした。
もう少し進んでいくと、たき火が置かれている家があった。
「ここも昔、誰かがすんでたのか?んっ!?もしかして生きている人間か?」
しかもその家の前に倒れている人がいたのだ。まだ生きていそうなので、俺はその人に話しかけた。その人は、若い女性のようだった。
「おい、大丈夫か?」
その人は息があったが、病気にかかっているようだ。
「ごほっ、ごほっ。身体が、身体がものすごく熱いんだ···」
俺はその人のひたいに手を当ててみる。すると、俺がインフルエンザだった時などとは比べ物にならないほどの高熱だった。
「このままだと危険だな、連れて帰ろう」
こんな高熱が長く続けば全身に悪影響が出るだろうし、脱水症状にもなるだろう。俺が担ごうとすると、女の人はノリンと同じように生きるのを諦めたような発言をした。
「あたいもこれでもう終わりだね。墓にはケーシーって名を書いてくれ」
「いや、お前は死なせない。俺たちの拠点に連れて帰るぞ!」
俺はケーシーを背負い、拠点へ引き返した。毒の病原体のことも気になるが、人命救助が最優先だ。拠点に着くとケーシーをすぐにベッドに寝かせ、エルに報告した。
「おい、エル!新しい患者を連れてきた。重症だから早く診てくれ」
「おお、本当ですか!?今すぐに診察いたしますね」
俺の話を聞き、エルは病室に駆け込んで行った。ケーシーは何の病気か分からないが、必ず助けないとな。