ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
リムルダールの跡地へ希望の旗をさすと、またルビスが話しかけてきた。
「雄也よ。その地に生きる人々は身に迫る病に絶望し、生きる希望を失っています。メルキドにおけるあなたの働きで人々はわずかに物を作る力を取り戻していますが、はびこる病に抗う力はなく、ほとんどの人が病と戦うことを諦めているのです」
ほとんどの人が諦めているって、医学が進歩している日本では考えられないな。ここはどう考えてもメルキドより深刻だな。
「さあ、雄也。その地にも光に導かれた人々が集まってくるでしょう。そこに新たな町を作り、リムルダールの地を浄化するのです。すべては精霊の導きのままに」
ルビスはいつもの口癖を言って去っていった。とりあえず、新しい住民が来るまでに最低限の設備を作っておくか。
「おい、ピリンとゆきのへ。そこにわらベッドがある廃墟があるだろ。そこの壁を修理してくれ」
俺は二人に、寝室の修復を頼んだ。まずは寝る場所がないと何も出来ないからな。だが、今は3人いるのにそこにはわらベッドが2個しかなく、とびらもない。
「ここにはじょうぶな草が生えてないんだよな」
メルキドではいくらでも生えていたじょうぶな草も、この毒に侵された地では、1つも見つからなかった。俺はまず、わらベッドとわらのとびらの作り方を調べた。
わらベッド···じょうぶな草3個 石の作業台
しっかりした草3個 木の作業台
砂の草切れ3個 鉄の作業台
わらのとびら···じょうぶな草3個、ふとい枝1個 石の作業台
しっかりした草3個、ふとい枝1個 木の作業台
砂の草切れ3個、ふとい枝1個 鉄の作業台
近くにふとい枝が落ちていたのでそれを使えばいいが、草の種類が違っているな。木の作業台では、しっかりした草と言うもので作れるようだ。それにしても適当な名前だな。
「毒沼の近くに生えていた紫色の草か?」
さっきここに来る前に、毒沼の近くで紫色の草を見つけた。おそらくはそれのことだろう。俺はその草を20個ほどと、ふとい枝5本くらいを集めて、木の作業台に向かう。この地には枯れ木はたくさんあるのにふとい枝はあまり落ちていなかった。
「これで合ってるよな?」
木の作業台で紫色の草3本に魔法をかけると、わらベッドに変化した。
「これがしっかりした草であってるようだな。でも、なんでメルキドと同じ色になるんだ?」
魔法なので気にしても仕方がないが、違う草で作ったのに出来上がったわらベッドはメルキドで作ったものと同じ色だった。ピリンたちの様子を見ると、寝室のかべが出来上がっていたので、俺はわらのとびらも作り、置きにいった。
「ありがとうな、二人とも」
もし俺1人だったら、かなりの時間がかかっていただろう。ピリンたちがついてきて本当に良かった。
そして俺たちはリムルダールで初めての建物を完成させた。
「わあ、新しいおうちが出来たね!」
「メルキドほど豪華じゃねえが、いい家だ」
俺たちが喜んでいると、誰かの走ってくる足音が聞こえてきた。
「ん、誰か来たのか?」
足音のする方向を振り向くと、ドラクエの教会でよく見るシスター服を着た女性がこちらに向かっていた。
「ここに住んでる人なのかな?」
そのシスターは、俺たちに気づくと心配そうに話しかけてきた。
「おお、なんということでしょう!こんな所にも患者様がいらしたなんて!」
患者っていきなりどうしたんだ?別に俺たちは病人じゃないんだけどな。
「あなたたちはどこがお悪いのですか?おなかですか?胸ですか?それとも、頭が!?」
何か、急に頭が悪いって言われたぞ。俺は地球にいたとき通知表はかなり悪かったが、初対面の人に言われるとショックだな。まあ、美人に心配されるというのも良いものだが。
「確かに俺は頭は悪いけど、病気にはなってないぞ」
「患者様ではなかったのですね。では、あなたはいったい···」
あなたはいったいって言われてもな···。地球から来た高校生といっても訳分からないだろうし、一応ビルダーだって言っておくか。
「俺は影山雄也。この世界では伝説って言われてるらしい、ビルダーって奴だ」
彼女もビルダーの存在を知っているらしく、俺の話でとても驚いた。どこの地方でも、ビルダーは有名なようだ。
「なんと、あなたは伝説の物を作る力を持つもの、ビルダーだというのですか?それでは、その後ろの二人は?」
「この二人は俺の仲間だ。いっしょにメルキドを復活させた」
俺の紹介に続き、ピリンとゆきのへも自己紹介をする。
「わたしは、ピリン!雄也とは、最初のころから知り合いなんだ」
「ワシはゆきのへ、伝説の鍛冶屋の子孫だ」
「お仲間もいたのですね!あなたが本当にビルダーであるのなら、これこそ神のお導きに違いありません!」
正確には、神じゃなくて精霊の導きなんだが、似たようなものか。
俺たちが自己紹介を終え、そのシスターも名前を名乗る。
「私は、エルと申します。私と共に病に侵されたこの地をお救いください!」
病に侵された地を救うってことは、シスターって言うより、医者みたいなものか。病を直すには医者は必要不可欠だからな。仲間になってくれてありがたい。
「よろしくね、エル!」
「よろしく頼むぜ」
「普段は、雄也って呼んでくれ。よろしくな」
いきなり美人が仲間になってくれて嬉しいな。エルは、俺たちが作った寝室を見に行った。
「これが雄也様の作ったお部屋のようですね」
雄也様だとっ!?俺のことを様付けで呼んでくれた人なんてこれまで1人もいなかったな。アレフガルドでも、地球でも。
そんなことを考えていたが、よく見るとエルは何か痛そうな表情をしていて、足を引きずるように歩いていた。
「なあ、エル」
「どうされたのですか?」
「なんか足が痛そうに見えるんだが、大丈夫なのか?」
もしかして、魔物の攻撃を受けて怪我をしてしまったのかもしれない。
「実は、ここに来る時に転んでケガをしてしまったのです。きずぐすりでもあればいいのですが、病に苦しむ人々のことを思えば、このくらい···」
魔物ではなく、単に転んでしまっただけか。本人はがまんしているが、かなり痛そうだな。きずぐすりを作ったほうがいいだろう。
「無理はしないほうがいいぞ。ケガをしてたら、病人の治療もしにくいだろ?」
「それはそうですけど、雄也様に迷惑をかける訳にも行きませんし」
「別に気にするな。少し材料を取ってくる」
別にいいとエルは言うが、放ってはおけない。こんな環境の悪い場所で傷を放置すれば、それこそ病気になりそうだ。
俺は材料である白い花びらを取りに、拠点から出た。しかし、毒沼だらけのこの場所には白い花は全く生えていなかった。
「あんなこと言ったものの、全然白い花がないな」
スライムや新しく見つけたカタツムリ型のモンスター、ドロルに見つからないように探すが、一向に見つからない。だが、白い花によくにたピンク色の花が生えていた。
「もしかして、ここでは違う素材で作れるのか?」
別の素材の可能性もあると思い、俺は魔法できずぐすりの使い方を調べた。
きずぐすり···白い花びら3個 石の作業台 木の作業台 鉄の作業台
「やっぱり白い花びらか。どこにあるんだ?」
もしかして、この地方ではきずぐすりは作れないってことか!?と思いかけた時、崖の上に草原がまだ残っている場所があった。毒沼と離れているので、汚染を免れたのだろう。
「もしかして、この上か?」
俺はそこにあったつたを使い、崖の上に登っていった。
「お、ここにあったか。でも危険なモンスターがいるな」
そこには、白い花や薬草の葉、綿のような白い植物などがあった。しかし、リリパットという弓を使う危険な魔物もいた。
「見つかるとまずいな。視界から入らないようにしよう」
俺はリリパットに見つからないように、3つの白い花びらを手に入れた。他の素材は、また今度に取りに来よう。
「後はこれに魔法をかければいいな」
崖を降りると、今はキメラのつばさがないので、歩いてリムルダールの拠点(まだ町とは呼べない)に戻った。俺は木の作業台を使い、きずぐすりを作り上げる。
「よし、できたな。後はエルに渡してくるか」
俺は、寝室で待っていたエルにきずぐすりを渡しにいった。
「きずぐすりが出来たぞ、使ってくれ」
「おお、なんとすてきでしょう!ありがとうございます」
俺がきずぐすりを渡すと、エルはそれをぬりながら話した。
「その素材から物を作り出す力···。あなたは本当に伝説のビルダー様なのですね」
まだ信じていなかったのか。初めて出会った時のゆきのへと同じだな。俺の事をビルダーだと信じると、エルは強くお願いをしてきた。
「ビルダーである雄也様がいれば、出来ないことはないでしょう。どうか、この地を恐ろしい病苦からお救いください!」
「もちろんだ。ここの復興が俺たちの目的だからな」
もちろんだ。は俺の口癖になってきていた。この地方では、町の再建と病人の治療、その2つを行う必要がありそうだな。病人が治れば、仲間になってくれるだろうし。
「そこでなのですが、私は病に侵された人々のために、患者様をお迎えする病室を作りたいのです」
病室か、まずは病人を寝かせる場所が必要だからな。
「どんな感じの病室なんだ?」
「ここに設計図があります。どうか、設計図の通りに病室を作ってください」
エルは、病室の設計図を見せてきた。そこには木のベッド、たらい、木の机、いけ花などの作ったこともないものがたくさん書かれていた。
「これは結構難しいかもしれんな。頑張ってはみるが。エルは、ピリン達にブロックの積みかたを教えて貰って、壁を作ってくれ」
最近、壁を作るのはみんなに任せることが多い。そのほうが、早く作れるからな。
「お願いします、雄也様」
いけ花はピンク色の花なので、さっき見たピンク色の花があれば作れるだろう。他の奴は木材があれば出来そうだ。
「この枯れ木が木材になるのか?」
俺は近くに生えていた枯れ木をおおきづちで破壊した。しかし、枯れ木は太い枝2個に変わり、原木にならなかった。
「マジかよ、今取れる素材じゃ、あの病室は作れないってことか?」
もしかしたら別の素材かもしれないと、俺は魔法で一応調べてみる。
木の机···ふとい枝3個 木の作業台
木のベッド···ふとい枝3個、毛皮1個 石の作業台
ふとい枝3個、綿毛1個 木の作業台
たらい···ふとい枝2個、ひも1個 木の作業台 鉄の作業台
いけ花···ピンクの花びら3個、ふとい枝1個
「は!?ふとい枝で作れるだと!?」
どう考えても大型の木材がいるはずの木のベッドや木の机も、何故かふとい枝で作れるらしい。
「ビルダーの魔法って、こんなスゴいことまでできるのかよ」
改めて、ビルダーの魔法の凄さが分かった。まずは枯れ木を壊して、ふとい枝を集めるか。
「枯れ木なら山ほど生えてるしな、あとでふとい枝が足りなくならないようにたくさんとっておくか」
枯れ木なら取っても環境に悪影響はなさそうだ。俺は近くにある枯れ木や落ちている枝をおおきづちで殴り、ふとい枝を集める。拠点のまわりだけで、20個くらい集まった。
「あとはひもとピンクの花びらと綿毛だな」
俺はふとい枝を全てポーチにしまい、さっきの崖のあたりに行った。崖の下にはピンクの花びらがあった。
「花そのものじゃなくて、花びらを使うんだな。まあ、叩いたら必ず花びらになるからそうじゃないと困るけどな」
そんな疑問を抱きながら、俺はピンクの花びらを集めた。必要な数の3つを集め終わると、今度は崖の上に行き、隠れながら前に見た白いの綿のような植物を刈り取った。すると、綿のような物に変化する。
「予想通り、これが綿毛か」
綿毛を取ると、俺はつたを取りながら崖を降り、拠点へ戻っていく。作れないんじゃないかと思ったが、無事に素材が揃った。
「あとはこれを加工すれば···」
俺はまずつたでひもを作り、それからたらいを作る。それから木のベッドとわらのとびらを2個ずつ、木の机といけ花を1つずつ作った。魔法とはいえそれなりに時間はかかるので、10分以上は作業台の前にいた。
「結構時間はかかったけど、完成したな」
それにしても、やたらとふとい枝を使った。20本あったのに、15本以上使ってしまった。でもこれがあれば、病室も満足して治療を受けられるだろう。
「エル、必要な物はできたぞ」
俺は3人が組み立てていた病室に、設計図の通りに作った物を設置した。たき火も必要なようだが、廃墟に置いてあったものがあるのでそれを使った。
「だけどこのたき火、設置場所がおかしいな」
何故か、たき火の設置位置がベッドのすぐ近くになっていた。これは危険なので、俺は少し設置場所を変え、何もない病室の奥のほうにたき火を置いた。
「これで病室は完成だな!」
俺のその声を聞いて、エルやピリン達が、中に入ってきた。
「へえ、これが病室っていうものなんだ」
「おお、雄也様!病室が完成したのですね。病室を作ることは私の長年の夢でした。本当にありがとうございます!」
みんなは、特にエルは病室の完成をとても喜んでいた。