ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode223 異形との決着と勇者伝説の終わり

弱っていたところにさらに爆風を受けて、俺の身体全体に再び強い痛みが走る。

それでも俺は足に力をこめて立ち上がり、アレフ・ガルデスに立ち向かって行こうとした。

だが、そうしている間にも奴は核に力を溜めて、強大な攻撃を行なおうとする。

 

「あの攻撃をかわせなかったら、俺に勝ち目はないな…」

 

あの攻撃はおそらく、さっきの闇の爆炎並みの広範囲を破壊し尽くすものだろう。

魔物の楽園の入口近くまで逃げ切れば助かるだろうが、今の俺の力ではそこまで走る前に消し飛ばされてしまうかもしれない。

自力ではどうしようも出来ない…俺は何とか生き残るために、ここで何か使える道具がないか一瞬のうちで考えていった。

 

「…極げきとつマシンなら、ここから離脱出来るかもしれないな」

 

そこで、俺は極げきとつマシンでこの空間の入り口側に向かって突撃すれば、アレフ・ガルデスの強力な攻撃を避けられるのではないかと思いつく。

壁に向かって高速で激突すれば俺自身にも相当な衝撃が加わるが、衝撃を軽減するための加工もされている。

俺は立ち上がるとすぐにポーチから極げきとつマシンを取り出し、入り口側に発進させて奴との距離を引き離していった。

 

「消えろ!どこまでもしつこい人間め…!」

 

アレフ・ガルデスもすぐに力を溜め終えて、闇の力を解放して大爆発を起こしていた。

先ほどの闇の爆炎よりも威力が高そうであり、魔物の楽園全体が大きな揺れに襲われる。

だが、考えは上手くいったようで、俺自身は爆風の外に逃れることが出来た。

壁への激突ですさまじい衝撃が走り、俺は車体から投げ出されそうになるが、掴まって必死に耐えていた。

 

「くっ…やっぱりすごい衝撃だな…。でも、これで爆発は回避出来たし、今のうちにあいつを弱らせよう」

 

強力な攻撃を放ったことで、アレフ・ガルデスも反動で動けなくなっている。

この隙を逃してはいけないと思い、俺はすぐに極げきとつマシンから降りて、奴に近づいていった。

激痛の走り続ける足を引きずるようにして移動しているので動きは遅く、距離が詰まるまでの間はアサルトライフルを使って攻撃していこうとする。

 

「結構距離があるし、銃を使って攻撃していくか…」

 

はがねの弾丸も残り少なくなって来ているので、銃だけでアレフ・ガルデスを倒すことは出来ないはずだ。

だが、生命力をさらに削っていくことは出来るだろう。

特に今は奴が動きを止めているので、容易に頭や核を狙うことが出来る。

俺は頭を何度も貫いていき、大きなダメージを与えていった。

アサルトライフルを連射しながらも、俺はアレフ・ガルデスに近づいていく。

 

「銃で弱らせて、両腕の武器でとどめをさそう」

 

そろそろ奴の攻撃速度も落ちて来るだろうから、接近戦に持ち込んでもうまく戦えるかもしれない。

距離が詰まっていくと、俺はポーチのふめつのつるぎとビルダーズハンマーに持ち替えようとする。

しかし、その前にアレフ・ガルデスも再び動き始めて、闇の炎を吐いて攻撃して来た。

 

「お前は終わりだと思っていたのに、あんな兵器まで使うとはな…だが、もう何をしたところで意味は無い!」

 

「また近づけなかったな…でも、炎の勢いもかなり弱まっている」

 

しかし、炎の威力はさっきよりさらに落ちて来ているので、今の俺でもかろうじてかわし続けることが出来た。

闇の炎に燃やされないようにしながら、俺はアサルトライフルを撃ち続けていく。

奴は光線も放とうとしていたので、俺はその前に近づいていこうとしていった。

 

「また光線も来そうだな…それまでに近づいて、あいつに斬りかかろう」

 

光線の炸裂をかわすのはもう不可能だろうし、発射を止めなければ今度こそ俺は動けなくなってしまうかもしれない。

俺は少しは闇の炎に焼かれてしまうことも覚悟しながら、奴との距離を一気に詰めていった。

すると、左腕と左足の1部に火傷を負ってはしまったが、光線の発射される前に至近距離にまで入ることが出来る。

俺はそこでふめつのつるぎとビルダーズハンマーに持ち替え、奴の核に向かって深く突き刺していった。

 

「ぐっ…!ここまでオレの炎を受けても、まだ立ち向かって来るとは…!」

 

「本当に強い敵だけど、ここまで来たからには必ず倒してやるぜ…!」

 

アレフ・ガルデスは元々生気のない顔なので表情の変化は見られなかったが、かなり苦しそうな顔をしていた。

必ず勝てると確信して、俺はハンマーも振り回して奴の頭も叩き潰していった。

奴も再び両腕の翼を振り回して攻撃して来るが、やはり攻撃速度は先ほどより落ちていた。

 

「オレの破壊の邪魔を諦めない人間は、オレの腕で葬り去ってやる…!」

 

「相変わらずの威力だな…でも、攻撃速度は確実に落ちて来ている」

 

だが、すさまじい威力があるのは変わりないので、俺は確実に避けられるように慎重に動いていった。

そうして、奴が僅かな隙を見せたところに大きな一撃を叩き込んでいく。

無数の銃弾で弱点を撃ち抜かれた上に伝説を超える武器での連撃を受けて、アレフ・ガルデスの生命力も残り少なくなって来ていた。

弱らせていくと、奴は俺への、そして人間への憎しみをさらに強めて来る。

 

「おのれ…どこまでも目障りな人間め…!滅びを受け入れ、絶望に沈め!」

 

だが、これ以上の闇の力はもう生み出すことは出来ないのか、さらなる強力な攻撃は放って来なかった。

俺は最後まで油断せずに、両腕の武器を使って奴の残った生命力を削り切っていく。

追い詰められたアレフ・ガルデスは、再び両腕に力を溜めて回転斬りを放って来ようとしていた。

 

「お前がどれだけの力と勇気を持っていようと、最後に勝つのはオレだ…!」

 

「くそっ…ここまで来てまた回転斬りか…!」

 

こいつの回転斬りは溜め時間が短いので、弱った俺が範囲外まで逃げるのは不可能に近いな。

極げきとつマシンを使ったら回避出来るが、また接近するのが難しくなってしまう。

しかし、奴からあまり離れずに攻撃を防ぐ方法を、俺は思い出していた。

 

「こうなったらエンダルゴの時みたいに、闇の刃をブロックで防ごう」

 

エンダルゴとの戦いの時、奴が飛ばしてきた巨大な刃の威力を、俺は砦のカベを使って軽減していた。

そうして軽減することで、俺は両腕の武器を使って闇の刃を受け止め、反撃に転じていた。

アレフ・ガルデスでも同じようにして攻撃を受け止め、反撃出来るのではないかと思い、俺は自身と奴の間に砦のカベを置いていく。

そして、奴が回転斬りを放った瞬間に全身の力を両腕にこめて、受け止める構えをしていった。

 

「そんな壁を置いても無意味だ、斬り刻んでくれる…!」

 

アレフ・ガルデスはそう言って、巨大な闇の刃でこの空間全体を薙ぎ払っていく。

砦のカベは一瞬のうちに破壊され、威力が軽減されたとはいえ俺の腕にはとてつもない衝撃が加わった。

 

「くっ…軽減してもこれほどの威力なのか…!」

 

俺は倒れ込んでしまいそうになるが、この回転斬りの後の隙に攻撃を叩き込めなければ、俺の勝ち目は薄くなってしまうだろう。

俺は歯を食いしばり、足に力をこめて踏ん張って闇の刃を弾き返そうとする。

腕には骨が折れそうになるほどの衝撃が加わり続けるが、必ず勝って生きて帰るという思いで、懸命に耐えていった。

 

「でも…、あんたを倒してラダトーム城に生きて帰ってやる!」

 

そうしていると、闇の刃はついに消えていき、俺はすぐさま奴に飛びかかる。

俺の体力ももう限界だが、何とかして耐えることが出来た…今のうちにさらに体力を削ろうと、アレフ・ガルデスの身体に渾身の連撃を放っていった。

回転斬りの後の隙をさらしている奴に向かって、さらなる大ダメージを与えていく。

アレフ・ガルデスも体勢を立て直すが、奴はもう瀕死の状態になっていた。

 

「どこまでも忌まわしい人間が…滅びろ、滅びろ…!」

 

「…大分弱って来ているし、最後まで油断せずに倒そう」

 

奴は翼での攻撃を続けて来るが、その速度も威力も大幅に落ちてきている。

俺ももう動くのがやっとの状態なので、回避し続けるのはかなり難しかった。

しかし、それでも腕輪の力や必ず勝たなければいけないという思いで少しでも素早く動き、確実にダメージを与えていく。

そして、瀕死のアレフ・ガルデスに連続で両腕の武器を振り回していくと、ついに奴は力尽きて倒れ込んだ。

 

「これで動けなくなったか…今のうちにとどめを刺さないとな」

 

これ以上戦いが長引けば俺ももう動けなくなり、アレフ・ガルデスに殺されてしまうだろう。

生きてラダトーム城に帰るためには、ここで奴にとどめをさすしかない。

俺は奴にとどめをさすために、両腕に力を溜め始めていく。

そして、力が溜まり切ると大きく飛び上がり、思い切り垂直に両腕の武器を叩きつけた。

 

「飛天斬り!」

 

ふめつのつるぎからは紅色の光の刃が生み出され、アレフ・ガルデスの身体を叩き斬っていく。

ビルダーズハンマーでも頭を叩き潰し、相当なダメージを与えられていた。

だが、伝説を超える武器の二刀流での飛天斬りを受けても、アレフ・ガルデスはまだ死なない。

俺はそこで再び力を溜めて、奴の身体を薙ぎ払っていった。

 

「回転斬り!」

 

アレフ・ガルデスは起き上がろうとしていたが、回転斬りも受けてさらに大きく怯む。

今までの攻撃を受けて、奴はもう全身が傷だらけの状態になっていた。

後一撃与えれば、今度こそ生命力を全て削りきることが出来るだろう。

俺は身体に残った力を全て腕に溜めて、今まで以上に大きな紅色の刃を生み出していく。

そして、再び大きく飛び上がり、アレフ・ガルデスの身体を二つに引き裂いていった。

 

「これが最後の、飛天斬り!」

 

回転斬りと2度の飛天斬りを受けて、アレフ・ガルデスの生命力はついに完全に消えていく。

奴からは青い光が放たれ、闇の力の暴走によって変異して出来た異形の肉体は、だんだん崩壊していった。

 

アレフ・ガルデスは倒れ、これで人々の脅威となる強大な存在はいなくなった。

ルビスやひかりのたまが戻って来ることはないが、これで世界を作り続けられる可能性は少しは上がっただろう。

 

「本当に厳しい戦いだったけど、ついに終わったんだな…。みんなの待つラダトーム城に戻ろう」

 

俺はポーチに両腕の武器をしまい、みんなのところに戻ろうとする。

だがそうしていると、崩壊したアレフ・ガルデスの中から1人の人間の姿が見えてきた。

 

「ん…?あれは…!?」

 

俺より身長の高い、兜と鎧を身にまとった青年。

この姿を見るのは初めてだ…しかし、これが恐らくアレフの元々の姿なのだろう。

暴走した肉体を消し去ることは出来たが、アレフ自身はまだ生きているみたいだな。

 

「倒したと思っていたけど、まだ生きていたのか」

 

「…オレは全ての力を使い果たした、放っておいても死ぬ…」

 

ここまで来て逃がすわけにはいかないと、俺はアレフにとどめを刺そうとする。

だが、アレフは息をするのもやっとの状態になっており、彼の言う通り放っておいても時期に死ぬだろう。

力を失ったアレフは、俺を憎そうに、そして羨ましそうに睨みつけた。

 

「…お前はいいよな、人間どもと仲良くすることが出来て。オレは人間どもに世界を救うための存在としてしか扱われず、次第に追い詰められていった。オレに初めての選択肢を与えて救ってくれた竜王も倒され、最後にはオレ自身もこうして負けてしまった…」

 

暴走した闇の力が消えたことで、アレフ自身の人格も戻ってきているみたいだな。

アレフも俺もルビスに導かれたという点では変わらない…しかし、アレフは人間に絶望して世界を裏切り、俺は人間と仲良くして世界を作り続けた。

仲間の魔物たちも自身も人間によって倒され、彼は人々を憎みながら死ぬだろう。

どうすれば良かったのかと、アレフは涙を流しながら叫ぶ。

 

「人間どものせいで、人間としても…、魔物としても幸せに生きられなかった…!…オレは、オレはどうしたら良かったんだよ…!」

 

もしかしたら、もっと強く人々に言えば、どこか人々のいない場所に逃げ出せば、勇者としての責務から解放されていたのかもしれない。

だが、何を言っても人々は聞いてくれなかったかもしれないし、逃げ出しても人々が勇者を探し出そうとしたかもしれないので、確実に逃れられる方法は思いつかなかった。

人々に持て囃されるままに竜王を倒したとしても、新たな厳しい責務を押し付けられたかもしれない。

 

「それは、俺にも分からないな…」

 

「…オレの幸せを奪っておいて、結局それかよ…!まあ、オレを倒したところで、どうせ人間どもは滅びる運命にあるんだけどな」

 

「確かにこの世界にはもうルビスもひかりのたまもない。でも、俺たちはこれからも世界を作っていくから、簡単に滅びる気はないぞ」

 

アレフは俺の答えに怒り、彼が死んだところで人間が滅びる未来は変わらないと言った。

この世界には確かな希望など存在していないが、それでも俺たちは物を作り続けていく。

だが、アレフは俺たちの世代はそうでも、未来の世代はどうなるか分からないと話した。

 

「お前たちが生きている間はそうかもしれない…でも、お前たちの子孫の世代はどうだ?お前たちのような力は持っていないかもしれないし、また誰かを勇者として持て囃すかもしれない」

 

確かに俺たちの子孫が、世界を作り続けられるかは不安なところがあるな。

アレフが死ねばロトの血筋は途絶えることになるが、それでも勇者の伝説があれば、誰かがまた勇者として選ばれる恐れもなくはないだろう。

 

「そうなれば、第2、第3のオレがまた人間どもに絶望し、世界を滅ぼそうとするまでだ…。それでも世界を作り続けたいと言うならば、作り続けるがいいさ…」

 

世界のためにも、その人自身のためにも、アレフのような人が今後現れないようにしなければならないな。

そこまで言ったところでついにアレフは、話す力もほとんどなくなってしまう。

 

「…どうせ…、無駄な努力に終わるん…だろう…けど、な…」

 

アレフは最後にそう言うと、頭を地につけて少しも動かなくなってしまった。

もう息もしておらず、力を完全に失って死んでしまったみたいだな。

魔物になっていた影響か、アレフの遺体は小さな青い光を放って消えていった。

 

「…これで今度こそ終わったみたいだな…みんなに、アレフを倒したことを伝えよう」

 

これで長きに渡ったアレフとの戦いは終わり、数百年続いたロトの血筋は途絶えることになる。

だが、伝説がある限り、勇者は生まれ続ける可能性がある。

そして、人々はアレフの悲劇を繰り返してしまうかもしれない…そうなれば、俺に出来ることは一つだ。

俺はそう思って、ラダトーム城に戻るために魔物の楽園を後にしていった。


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