ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
目覚めたゴーレムは、どんどんメルキドの町に迫って来ていた。今だに信じられないが、奴が魔物の親玉ならば、戦って倒すほかない。
「どうやら、メルキドの守り神だった、ゴーレムが目覚めたようだな」
俺とロロンドのところに、ロッシが駆けつけて来る。
「本当にゴーレムが魔物の親玉だったとはな···俺もその可能性はあると思っていたがやっぱり信じられないぜ」
俺は最初、あくまのきしのさらに上位種あたりが魔物の親玉だと思っていた。それが本当に、かつての守り神だったとはな。
「雄也、お前はどうして守り神だったはずのゴーレムが、メルキドを滅ぼしたと思う?」
「いろいろ考えてみたけど、はっきりとした理由は思い付かないな。あんたの言い方からして、操られた訳ではないんだろ?」
この前のロッシの言い方からして、それは明確だった。そして、次のロッシの発言で、ようやく1つの仮説が浮かび上がってきた。
「ああ。きっとメルキドを守るために、メルキドに住んでいた人間を滅ぼしたのさ」
メルキドを守るためか。あのシェルターにいた人間たちは、魔物の攻撃がないから安全だったはずなのに、今度は人間同士で殺しあった。ゴーレムは、外の魔物よりも、人間たちのほうがメルキドとって危険な存在だと思ったんじゃないのか?
「つまり、外にいる魔物たちよりも、自分たちで殺しあっていた人間のほうが、メルキドにとって危険だったからか?」
そう考えると、城塞の中に現れた魔物と言うのは、人間自身を指しているのだろう。
「そう言うことだ。ゴーレムは、人間こそがメルキドの敵だと判断したんだ」
「やっぱりそう言うことだったのか。やっと分かったぜ」
「お前も行ったんだろう?おおきづちの里の向こうの、あの壊れた城に」
お前もってことは、ロッシも行ったことがあったんだな。この町に来る前の話だろうけど。
「ああ、人間同士が争った痕跡があったな」
「世界が闇に支配され、竜王の軍団がメルキドに迫った時、人間たちは最後の力で城塞を作り、シェルターとして閉じこもった。だけど、閉鎖された城塞で暮らすうちに、人間たちは最低の争いを始めた。限られた食料を奪い合い、些細なことで憎しみあうその有り様は、まさに地獄絵図だったって話だ」
男の子が大人たちに呼び出されたなんて話があったが、あれは食料にされたか、消費を押さえるために殺されたのかなんだろうな。本当に悲惨な話だ。昨日の俺もそうだったが、人間は精神的に追い詰められると狂ってしまう。
「そりゃ酷かったんだろうな」
「ああ、その醜い争いを見て、ゴーレムは人間こそがメルキドを滅ぼす敵だって判断したのさ」
ゴーレムがそう思うのも仕方ないことなのかもしれない。
「そして、メルキドの地で人間が再び発展したら、もう一度滅ぼしに来る。···メルキドを守るためにな。それがガキのころから聞いていた話の全てさ」
人間にとっては敵だが、ゴーレムも完全に悪意があってメルキドを滅ぼそうとしている訳ではないんだな。それでも、負けられないことに変わりはないが。
それと俺は、ロッシに気になることがあった。
「でも、何でお前は逃げ出そうとしなかったんだ?ゴーレムの脅威も知っていたはずだし、俺たちはお前を追い出そうとしたりした」
「危険なのは分かってたよ。だけど、みんなと一緒に暮らしたり、お前やロロンドに言われたりして気づいたんだ。人と協力することがどれだけ大切で、どれだけ楽しいかがな!」
ロッシもついに俺たちの気持ちを分かってくれたようだ。人と協力することの大切さは、俺もこの世界に来てから学んだ。
「俺も、何も考えずにすぐにお前に怒ったりしてごめんな。今日からはお前も本当に仲間だ!」
「それと、オレはな、あの城塞で起きたいろんな出来事を聞いて、武器を持つのが怖くなっちまったんだ」
最初ロッシに武器を渡そうとしていたとき、何かに怯えていたのはそう言うことだったのか。しかし、ロッシはその気持ちを克服したようだ。
「だけどもう、そんなことは言ってられない。オレもこの町のために戦うぜ!」
「単なる臆病者だと思って悪かったな。ロッシもいたら勝てる可能性も上がる。よろしくむぞ!」
俺とロッシがようやく和解すると、後ろで俺たちの話を聞いていただけだったロロンドが、口を開いた。
「雄也よ、ロッシよ、我輩はお主たちに謝らねばならぬことがある」
急に改まっていうロロンド。いったい何だろうか。
「我輩はいつでも否定していたが、本当は分かっていた、このメルキドを支配するのが、かつての守り神、ゴーレムであると。我輩は認めたくなかったのだ、かつての守り神が人間を滅ぼしたなど···」
俺だって認められなかったんだ。この世界に住んでいたロロンドならなおさらだろう。
「我輩は、なぜかピリンの言葉を思い出したぞ。あやつはよく言っておった、わたしはただ、みんなで仲良く暮らせる町を作りたいだけだと」
ピリンの言葉か、昨日も思い出したけど、それが一番の目的だったんだよな。
町の外を見ると、ゴーレムはもう目の前に迫って来ていた。
「では行くぞ雄也!みなが楽しく暮らせる町を守り抜くぞ!」
「ああ、もちろんだ!」
ついに、メルキドの町での最後の戦いが始まった。
ロロンドとロッシとゆきのへにメルキドシールドを渡し、俺とケッパーは剣や爆弾を用意する。
町にギリギリまで接近すると、ゴーレムは巨大な岩を投げつけてきた。
「我輩の町を壊させはせぬぞ!」
そこに、ロロンドが立ちふさがりメルキドシールドを設置した。巨大な岩も、メルキドシールドの前では砕け散った。するとゴーレムは、町の至るところに岩を投げまくる。
「ここはオレが!」
「ワシの力を甘くみるなよ」
3人は次々にメルキドシールドを移動させ、ゴーレムの攻撃を防いでいく。
「メルキドの真なる敵であるお前ら。必ず叩き潰してやろう」
攻撃が防がれていることに怒ったゴーレムは、体を超高速で回転させ、こちらへ近づいてきた。
「何をやろうと無駄だ!」
ロロンドがゴーレムの前に、メルキドシールドを設置した。だが、岩とは違いさすがのメルキドシールドもだんだん耐久力が削られてきていた。
「このままだと壊れるかもしれねえ、3つとも置くぞ!」
そのことに気づいたゆきのへは、ロッシに指示をだしゴーレムをメルキドシールドで囲んだ。メルキドシールドは壊れかけたが、その前にゴーレムは目を回し、動きが止まった。
「モンスターも目は回すんだな」
今がチャンスだと思い、俺はメルキドシールドを取り外すとケッパーと一緒にゴーレムに切りかかった。
「回転斬り!」
だが、鋼の武器での回転斬りも、ゴーレムには通用しなかった。普通の剣では倒せないようだな。
「おい、ケッパー!俺が渡したグレネードを使ってくれ!」
巨大ストーンマンを簡単に破壊した爆弾ならゴーレムでも倒せるかもしれない。
「グレネード?これのことかい?」
ケッパーはまだグレネードのことを覚えていないようだが、ゴーレムの胴体に向かってグレネードを投げつけた。数発当たると、砕けてはいないがゴーレムは大きく体勢を崩し、ひざをついた。
「今だな、これで粉砕してやる、ゴーレム!」
俺はゴーレムの下にまほうの玉を設置し、さらに遠くからグレネードも投げつける。2つの爆発が起こり、ゴーレムはバラバラに砕け散った。
「倒せたのか!?でもこんな上手くいくはずがないよな」
数秒後、俺の予想通りゴーレムは砕けた体がくっつき、もとの形に再生した。魔物の親玉だけあって、そう簡単には倒れない。
「人間め、こんなに傷を負わせてくるとは、許さぬぞ!」
だが、確実にダメージは通っているようで、ゴーレムはより怒り出した。今度は俺とケッパーとロッシでメルキドシールドを使うことにした。
ゴーレムは町の回りを飛び回りながら、巨大な岩を投げてくる。さっきと違い町の反対からも投げてくるため、走って移動しなければいけなかった。
「くそっ、どれだけ走らないといけないんだ!?」
とても疲れるが、少しでも気を抜くと、せっかく作った町が壊されてしまう。ゴーレムは石像であるため疲れることもない、何とかして止めないと。
「まだグレネードはあるし、これを一度に投げれば···」
一度に大量のグレネードを投げれば岩も破壊でき、ゴーレムにも傷を与えられるかもしれない。
「愚かな人間どもが!ここから消え去れ!」
ゴーレムが俺のいる方向に岩を投げて来たとき、俺はそれを試してみた。一度に3個のグレネードをなげ、岩を砕いてゴーレムも爆破する。
ゴーレムの体には、また大きな傷が出来る。
「やったな。グレネードが足りればいいけど」
追い詰められたゴーレムは、この前の狂ったあくまのきしのように、強いオーラを纏った。そして、俺の方向に回転してきた。
「ここまで追い詰めるとは···絶対に潰してくれるわっ!」
俺は慌ててメルキドシールドを置くが、壊されるのは時間の問題だろう。俺はゴーレムが来るであろう方向に地雷を仕掛けた。
メルキドシールドはどんどんダメージを受け、ついには壊れてしまった。これがゴーレムの本気なのか!?ゴーレムは俺の仕掛けた地雷を踏んでいき、ボロボロになっていくが動きは止まらなかった。
「くそっ、このままだと町がマズイ!」
俺は攻撃をかわせたが、ゴーレムは建物に近づいて行った。あんな回転攻撃をくらえば、ひとたまりもないだろう。今その部屋には誰もいないが、壊される訳にはいかない。しかも、そこを壊されればピリンたちが隠れている作業部屋も危ない。
「こうなったら、被害を最小限に抑えないと」
俺は持っていたグレネードを全て取り出した。町に近いので建物も壊れるだろうが、ゴーレムを止めるにはそれしかない。俺は大量のグレネードを、ゴーレムの背中目掛けて一斉に投げつけた。ゴーレムは体の大部分が激しく損傷し、さっきのようの膝をついた。
「ここでとどめをさすか!」
このダメージを受けてもまだ生きているだろうから、俺はゴーレムの足元にまほうの玉をグレネードのように全て置いた。そして、1つが爆発すると次々に爆発していき、ゴーレムの体は粉々になった。
そして、ついにゴーレムは再生力が無くなり、普通の魔物より大きな光を放って消えた。最強の防壁を破壊されてしまったが、俺たちには敵わない。
「少し壊れてしまったけど、勝てたんだな」
地雷を仕掛けたので危ないと言う理由で離れていたロロンドたちも、俺のもとに集まってきた。青い光の所を見ると、謎のメダルのような物が落ちていた。
「雄也!ついにゴーレムを倒したな!」
「オレが勝てないって言ってた奴を倒すとはな、大した奴だ」
「すごいよ、これでメルキドの町は完全に復活できるね」
「さすがだな、お前さん」
とどめを指したのは俺だったが、みんなの力があったからこそ勝てたんだが。
「みんなのおかげだろ」
俺たちが勝利を喜んでいると、ロロンドが俺の持っている錆びたメダルを見ていった。
「おい、雄也!そのメダルはもしかして、いにしえのメダルかもしれん」
「いにしえのメダル?聞いたことないな」
「そのメダルがあれば、このメルキドにかかる空の闇を晴らせるだろう!なんとかしていにしえのメダルに光を取り戻してくれ!」
ゴーレムが持っていた物だから、すごい物だとは思っていたが、そんな力があるとはな。俺はいにしえのメダルの作り方を調べたいが、それがどんな形のものなのか分からない。
「いや、でも待てよ。これってもしかしてドラクエ1に出てたロトのしるしじゃないのか?」
錆びたメダルに描かれている紋様が、ロトのしるしにそっくりだ。もしかしたらと思い俺はロトのしるしを頭に思い浮かべて、魔法をかけた。
いにしえのメダル···さびたメダル1個、オリハルコン5個、石炭3個 神鉄炉と金床
やはり、いにしえのメダルはロトのしるしのようだ。時間がたって、名称が変わったのだろう。オリハルコンもまだ在庫があるので、俺は神鉄炉を使い、いにしえのメダルを復元した。
「お、これは正しくロトのしるしだな」
出来上がったのを見ても、ロトのしるしと同じものだった。
「これがあれば、メルキドにかかった闇を晴らせるんだよな」
俺は町の中心にある希望の旗の台座に登り、いにしえのメダルを空に掲げた。すると、いにしえのメダルから光があふれ、暗かった空が晴れて美しい青空が広がった。
長かったけど、ついにメルキドの復興を達成出来たんだな。俺は泣きはしないが、とても感動していた。
「雄也よ、よくやりました。これでこの地は竜王の悪しき力から解放され、人々は自らの力で発展していくことでしょう。しかし、忘れてはなりません。この世界にはあなたの助けを待つ人が数多くいることが」
久しぶりに、ルビスの声も聞こえてきた。メルキドの復興は果たされたとはいえ、まだこれからなんだよな。これが、第1章の終わりってところか。アレフガルドには、メルキド以外にも、リムルダール、マイラ、ガライ、ラダトームと4つの町があったはずだ。
でも、今はメルキドの復活を喜ばないとな。
「うおおおおお!見るのだ!空に、光が!こんなにも広く、青く、美しく!」
俺にとっては1ヶ月ぶりくらいだが、ロロンドたちにとっては生まれて初めてなんだろうな。とてつもなく感動し、喜んでいるはずだ。
俺たちはその日の夜、メルキドの復活を祝って宴を行った。昨日まで対立していたロッシとも、それが無かったかのように仲良くなっていた。町は、これまでになかった笑顔に包まれていた。