ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
Episode218 真の勇者と導きの真相
エンダルゴとの戦いで疲れているので、みんなは交代しながらゆっくり船を進めていく。
行きは1時間ほどでラダトーム城の西の地域に着いていたが、帰りは1時間半以上もかかっていた。
ラダトーム城のある地域が見えて来ると、俺は船を漕ぐ速度を上げていく。
「戦いの後に漕ぐのは大変だったけど、ようやくラダトーム城が見えて来たな」
「ああ。ヘイザンたちもみんな待ってるし、早く行こうぜ」
ラダトーム城でみんなに顔を見せたら、アレフとの最後の戦いに向けても準備を進めていこう。
ムツヘタが魔法台を強化しようと考えていたので、どれくらい進んだか聞いてみないとな。
俺はそんなことを考えながら、みんなと一緒にラダトーム城の近くに上陸して、歩いていった。
「無事に戻ってきたな…まだ魔物はいるから、気をつけて進もう」
魔物の大軍勢との壮絶な戦いに打ち勝ち、エンダルゴも倒したが、魔物がいなくなったわけではない。
俺は奴らに見つからないように、慎重に城に向けて進んでいく。
みんなも体勢を下げていき、15分くらいでラダトーム城の間近にまでたどり着いた。
ラダトーム城に戻って来ると、俺たちはみんなに生きて帰って来たことを伝えようと、さっそく中に入っていく。
すると、ローラ姫たちは希望のはたが立っている場所に集まっており、俺たちの姿を見ると喜びの声を上げながら近づいて来た。
「おお、皆様!無事に戻ってきて下さったのですね…!」
「なかなか帰って来なくて心配しておったが、勝ったようじゃな!」
姫とムツヘタに続いて、ピリンたちも俺たちの無事を見て走ってくる。
サデルンとエファートは、真っ先にラグナーダのところに駆け寄っていた。
俺はエンダルゴを倒してきたと、喜んでいるみんなに大声で言う。
「ああ。本当に強力な敵だったけど、ついにエンダルゴを倒してきたぜ。こっちこそ、生きてここに戻ることが出来て本当によかった」
「精霊ルビスを失ったはずの空も、あんなにきれいに輝いています…!本当に…本当にありがとうございました!」
ローラ姫は闇の力が消えた空と大地を見て、俺たちに感謝の言葉を伝えた。
こっちこそ、ラダトーム城に生きて戻ることが出来て本当に嬉しいぜ。
闇が降った日からラダトーム城を覆っていた闇の力も、すっかり消えていた。
姫は、最後までアレフガルドの復興を諦めなかった俺たちの姿を見て、一つ思ったことがあると言う。
「どんな絶望的な状況でも諦めなかった皆さんを見て、私は一つ思ったことがあります」
「何を思ったんだ?」
「勇者だから何かを成すのではなく、何かを成したから勇者だと言うことです」
何かを成したから勇者か…1人の若者を勝手に勇者として持て囃し、厳しい責務を押し付けたことで、今までのたくさんの悲劇が生まれてしまった。
それに、勇者として選ばれなかった者達の力でも、こうしてエンダルゴを倒すことが出来た。
本来勇者とは、偉業を成し遂げて初めて与えられるべき称号なのかもしれないな。
「アレフガルドを2度も復興させ、エンダルゴも倒して下さったあなたたちは、間違いなく勇者です。勇者様たちの力があれば、これからも世界は続いていくでしょう!」
「私が勇者か…だが、ルビスに選ばれた者でなくても、ここまでのことを成し遂げられるとはな…」
かつて勇者に責務を押し付けていた人間の1人であるラスタンは、姫の言葉を聞いてそう言った。
選ばれた勇者かどうかは関係ない…誰であっても、世界を救える可能性はある。
人々の力があれば必ず世界を作り続けられると、ここにいる誰もが信じていた。
俺たちみんなが喜んでいると、ローラ姫はエンダルゴを倒せたことを祝い、アレフとの最後の戦いの士気を高めるために、また宴を開こうと言ってきた。
「そうでした。エンダルゴを倒したことを祝い、あの方…アレフとの戦いに備えるために、宴を開こうと思っております。まだ準備の途中ですが、みなさんは休んで待っていて下さい」
「そうだったのか。なら、それまでの間休んでるぜ」
俺たちがエンダルゴと戦っている間、城に残ったみんなは宴の準備もしてくれていたのか。
ここまで来たので、もうローラ姫もアレフを倒すことにほとんどためらいはないようだ。
みんなは傷を癒すために、教会に入っていこうとする。
俺もゆきのへたちについていき、宴が始まるまでの間身体を休ませようとしていた。
しかし、俺が教会の中に入ろうとしていると、後ろからムツヘタが話しかけてきた。
ラダトーム城に戻ってきた直後なのに、何か用事があるのだろうか。
「休みに入る前に、一つ聞いて欲しいことがあるのじゃ。いいかの、雄也?」
「もちろんいいけど、何かあったのか?」
みんなは宴の準備をしているが、ムツヘタは別にしなけれいけない事があるようだ。
俺がそう聞くと、ムツヘタはついに魔法台の改良方法が分かったと言ってきた。
「わしはそなたが魔法台の記録を手に入れた日から、ずっとシャナク魔法台を強化する方法を考えていたのじゃが…ついさっき、新たな魔法台を思いつくことが出来たのじゃ」
「じゃあ、これでアレフの居場所が分かるってことか…それなら、さっそく作り方を教えてくれ」
俺もさっき魔法台のことは気になっていたが、ムツヘタも俺たちがエンダルゴと戦っている間、必死に考えていてくれたみたいだな。
今日改良すれば間違いなく数日以内にアレフと戦いに向かえるだろうし、エンダルゴが復活してしまうこともなさそうだ。
俺はさっそく新たな魔法台を作りに行こうと、ムツヘタから作り方を聞き出した。
「今のシャナク魔法台を、変質したブルーメタルとダイヤモンドで改良するのじゃ…詳しい作り方も教えて行くぞ」
アビスメタルとダイヤモンドが必要なことを伝えた後、ムツヘタは詳しい作り方も教え始める。
シャナク魔法台は中央に明るい青色の宝玉があるが、新たな魔法台では深い青色になるようだった。
俺は作り方を聞きながら、ビルダーの力を使って魔法台に必要な素材の数を調べていく。
予言者の魔法台…シャナク魔法台1個、銀5個、アビスメタル3個、ダイヤモンド3個 石の作業台
アビスメタルもダイヤモンドもこの前たくさん集めて来ているので、わざわざ集めに行く必要はなさそうだ。
銀も大倉庫にたくさん入っているので、占いの間からシャナク魔法台を回収すれば、作りに行くことが出来るだろう。
「どうじゃ、今すぐに作れそうか?」
「他の素材はみんな持ってるから、シャナク魔法台を回収して作って来るぜ」
なるべく早くアレフと戦いに行きたいし、さっそく予言者の魔法台を作ろう。
俺はムツヘタにそう言うと、占いの間に入ってハンマーでシャナク魔法台を回収し、ポーチにしまっていく。
「頼んだぞ、雄也よ」
「ああ。少し待っていてくれ」
そして、ムツヘタにもう一度そう返事をすると、石の作業台のある工房の中に入っていった。
ムツヘタは俺が魔法台を加工している間、ローラ姫たちと一緒に宴の準備をしていた。
俺は工房の中に入っていくと、すぐに石の作業台のあるところに歩いていく。
そこでポーチから必要な鉱石とシャナク魔法台を取り出して、ビルダーの魔法を発動させていった。
「簡単に改良出来そうだし、本当に良かったぜ」
エンダルゴを倒した後に素材を集めに行くというのは大変なので、そうならなくて良かった。
ビルダーの力がかかっていくと、シャナク魔法台と素材が合わさっていき、ムツヘタが言っていた通りの新たな魔法台が出来上がっていく。
ビルダーの力は本当に便利なものだし、アレフを倒した後もこれを使って世界を作り続けていこう。
俺はそう思いながら、魔法台へとビルダーの力をかけ続けていった。
そうして数分間経つと、予言者の魔法台が完成する。
「これで新しい魔法台が出来たな…さっそくムツヘタに見せに行こう」
これを使えば、ムツヘタならきっとアレフの居場所を特定することが出来るだろう。
俺は一度ポーチに予言者の魔法台を入れて、占いの間に入っていく。
予言者の魔法台はシャナク魔法台と大きさは変わらないので、部屋を改築しなくても設置することが出来た。
俺は魔法台を設置すると、宴の準備をしているムツヘタを大声で呼ぶ。
「ムツヘタ!予言者の魔法台を作って、占いの間に置いたぜ」
「おお!よくやったのじゃ、雄也。すぐに向かうぞ」
ムツヘタも俺の声を聞くと、そう言って占いの間のところに足音を立てて走って来た。
すぐに入り口のとびらが開かれ、中に嬉しそうな顔をした彼が入ってくる。
エンダルゴも倒せて、アレフとの戦いへの準備も進んでいる…俺にとってもムツヘタにとっても、今日は本当に嬉しい日だな。
「確かにワシが言った通りの魔法台じゃ。これを使えば、早急にアレフを居場所を突き止められそうじゃ」
「それなら、見つかったらすぐに教えてくれ」
完成した予言者の魔法台を見て、ムツヘタはそんなことを言う。
早ければ明日にはアレフとの戦いになるだろうし、今日はゆっくり休んで身体を休めよう。
ムツヘタは、徹夜で占いの間にこもり、アレフの居場所を探すとも話した。
「あまりもたもたとはしておれぬ…今日は、徹夜でアレフを探すつもりじゃ」
老人であるムツヘタが徹夜をするのは大変だろうが、それでアレフの居場所が分かるといいな。
アレフガルドのどこにいたとしても、俺が必ず決着をつけに行く。
そう思いながら、俺は占いの間を後にして、宴の準備がどれくらい進んでいるか見に行こうとした。
「ありがとうな、ムツヘタ。俺もいつでも戦いに行けるように、身体を癒しておくぜ。これから、宴の準備をしてるみんなのことも見に行ってくる」
「待つのじゃ。そなたにもう一つ、話しておきたいことがある」
だがムツヘタはその前に、俺にもう一つ話しておきたいことがあると言った。
ローラ姫と同様に、ムツヘタもアレフガルドの2度の復興を通じて思ったことがあるようだった。
「どうしたんだ?」
「姫と同じで、ワシもそなたの活躍を見て思ったことがあるのじゃ。お主がルビスにビルダーとして導かれた理由についてじゃ」
最初にルビスは、俺に魔物と戦うための力や知識があり、魔物から隠れて進む技術もあることを見越して、俺をアレフガルドに呼んだと言っていた。
だが、それ以外にも俺がビルダーに選ばれた理由があったのだろうか。
「俺に魔物と戦ったり、魔物から隠れたりする力があるから呼んだって言ってたけど…他にも理由があったのか?」
「そなたはルビスが亡くなった後も仲間たちのために諦めず、アレフガルドをもう一度復興させて見せた。そこでワシはふと思ったのじゃ…もしかしてルビスは、そなたが仲間を思いやり、決して諦めない心を持っていることも見越して、ビルダーとして導いたのではないかとな」
確かに俺は何度も苦しい目に会いながらも、諦めずに仲間たちと共にアレフガルドを作り続けた。
昔は俺がそんな心を持っているとは全く自覚していなかったが、世界を創った精霊であるルビスはそれも見抜いていたのかもしれないな。
今となってはもう確かめる方法はないが、これが俺がビルダーに選ばれたもう一つの理由なのかもしれない。
「もう聞くことは出来ないけど、そうだったのかもしれないな…」
「そなたの諦めない心なら、必ずアレフも倒せるはずじゃ。宴の準備はもう出来ておるから、そこで身体を休めるのだ」
ビルダーに選ばれた理由の推測を語った後、ムツヘタは宴の準備がもう出来ていることを話す。
最後の戦いへの士気を高めるために、今夜は思い切り宴を楽しもう。
「ああ、分かった」
俺はそう言って占いの間から出ていき、ムツヘタもそれに続いた。
予言者の魔法台を作った後、俺たちはローラ姫たちの準備した宴を心から楽しんだ。
世界の光が消滅し、一度は絶望に沈みかけたみんなだったが、それが嘘だったかのように賑わっていた。
あまり大がかりな宴ではないが、俺は仲間たちとたくさん会話をかわし、食べ物を食べて、戦いの疲れを癒していく。
普段なら宴は翌日の朝方まで続くが、今日はみんなの傷も完治しておらず、体力を回復させるためには寝ることも必要なので、早めにお開きになった。
アレフを倒したら、この宴の続きをしよう…俺は必ずアレフを倒すと決意してから眠りにつき、ムツヘタは奴の居場所を突き止めるために占いの間に入っていった。