ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
俺たちはそれぞれの武器を使って、残ったキラークラブやブラックチャックを攻撃していく。
大勢のブラックチャックに囲まれたバルダスも、暗黒に染まった棍棒を使って応戦していた。
「バルダス…!お前みたいな裏切り者を、オレたちは許さない!」
「エンダルゴ様に逆らったことを後悔させてやる!」
ブラックチャックたちは、強い怒りのこもった声を上げながらバルダスを攻撃する。
奴らにとって種族の裏切り者であるバルダスは、ビルダーである俺と同じくらい許せない存在なのだろう。
ブラックチャックの中でもそこまで強い存在ではなかったバルダスも、変異したことで高い攻撃力を得ることができ、かつての同胞たちの武器を弾き落としていった。
「ボクは人間と一緒に暮らして、昔より幸せに生きている…絶対に後悔なんてしないんだ!」
人間と共に暮らして来たバルダスは、同族と戦うのにもためらいはないようだ。
棍棒を落としたブラックチャックに、バルダスは何度も追撃を加えていく。
まだ倒していなかったキラークラブ相手にも、さらなるダメージを与えていった。
何度も奴らの攻撃を弾き返し、バルダスは少し苦しそうな表情をしていたが、腕に力をこめて戦いを続けていく。
「裏切り者のくせに、オレたちをここまで追い詰めやがって…!」
「お前みたいなブラックチャックの出来損ないは、いさぎよく消え失せろ!」
ブラックチャックたちも、裏切り者のバルダスを倒そうと諦めずに攻撃をしていた。
しかし、変異によって得られた力は大きいようで、バルダスは奴らの棍棒を次々に弾き落としていった。
多くのブラックチャックの動きを止め、そのうちの何体かを瀕死にまで追い詰めたバルダスは、囲まれている状況から脱して、闇の呪文を唱えていく。
「苦しい戦いだけど、ボクは人間のために戦い続ける!」
俺は裏切り者として追われていたバルダスを助け、バルダスは俺たちのことを大切な仲間だと思ってくれている。
仲間たちと、彼らの住む城を救うために放った闇の呪文は、多くの魔物たちを吹き飛ばしていった。
弱っていたキラークラブと一部のブラックチャックは倒れ、まだ動ける奴らも大ダメージを受ける。
呪文を使った後も、バルダスは棍棒を持って奴らを攻撃しに行った。
「こんな呪文まで使って気やがったか…でも、変異したといっても、こいつは子供のブラックチャック」
「一斉に叩き潰せば、逃れられないはずだ!」
裏切り者には負けられないと、ダメージを負ったブラックチャックたちも反撃する。
バルダスを一気に叩き潰そうと、奴らは一斉に棍棒を振り上げ、飛びかかっていった。
すると、バルダスは避けようとするのではなく、腕に力を溜め始める。
そして、棍棒が振り下ろされる直前に、回転斬りのように辺りを薙ぎ払っていった。
「変異しただけじゃないよ!」
バルダスと敵のブラックチャックの棍棒が、何度も激しくぶつかり会う。
どちらにも強い衝撃が走っていたが、バルダスはそう叫んで耐えて、奴らの棍棒を叩き落としていった。
体勢を崩して動けなくなったブラックチャックたちに向けて、バルダスは言う。
「ボクはゆきのへやルミーラほど戦いの役に立てなくて、ずっと悩んでいたんだ。だから、ボクを救ってくれたみんなのためにも、毎日死ぬ気で何時間も体を鍛えて、戦いの訓練をしていたんだ!」
確かに戦いの時、バルダスはゆきのへやルミーラより苦戦している様子も見かけられた。
そんなバルダスが、こうして大勢のブラックチャックたちと戦うことが出来ている。
変異しただけでここまで出来るのかと思っていたが、バルダスは俺がラダトームを去った後、そんな訓練もしていたのか。
バルダスはそう話した後、弱っているブラックチャックたちにとどめを刺していった。
「その訓練の成果を発揮して、人間たちのことを守り抜いてやる!」
もうバルダスは子供のブラックチャックではなく、一人前の強靭な魔法戦士だと呼べるだろう。
バルダスはこのまま、ブラックチャックを倒しきることが出来そうだ。
俺も残っているブラックチャックを、警戒を怠らずに倒していく。
「ビルダーも人間どもも、オレたちをここまで怒らせやがって…!」
「どうせお前たちは死ぬんだから、早く諦めた方がいいぞ!」
奴らも全力を出して、かなりの攻撃速度で攻撃をして来るが、残っている数も少ないので、俺は回避し続けることが出来ていた。
みんなも、ブラックチャックたちを次第に追い詰めていく。
「みんなも苦戦していないし、押し切ってしまおう」
戦いはまだ続くし、体力の消耗は最小限にしておきたい。
俺はそう思いながら、奴らへの攻撃を続けていった。
しかし、そうしていた俺たちのところに、ルミーラの叫ぶ声が聞こえてきた。
「危ない!みんな避けて!」
俺たちはすぐに反応して、大きく後ろに飛ぶ。
みんなが回避した直後に、俺たちが立っていたところには何本もの矢が飛んできていた。
ブラックチャックに当たらないような、精密な角度で狙って来ている。
何かと思って側方を見ると、30体を超えるアローインプたちが俺たちを狙って来ていた。
「くそっ、今度はアローインプか…。次から次へと魔物がやって来るな」
アローインプは弓を使って攻撃して来るので、危険度の高い魔物だな。
ルミーラのものと同様矢に麻痺毒が塗られているかもしれないので、特に気をつけなければならない。
速やかに倒そうと俺はアサルトライフルに持ち替えて、ルミーラにも指示を出した。
「あいつらは厄介な魔物だし、銃で早く倒しておかないとな…。ルミーラも、一緒にアローインプたちを倒してくれ!」
「分かってる。結構な数がいるから、気をつけて戦おうね!」
アローインプやマイラの機械兵器など、俺は弓を使う魔物と何度も戦ってきた。
今回は腕輪の力もあり、さらに回避がしやすくなっている。
俺は矢を避けながら、アローインプたちの頭を狙って銃を連射していった。
ルミーラもバルダスと同様、かつての仲間たちと戦うのにもうためらいはなく、正確な射撃で奴らの体を撃ち抜いていった。
「よくもここまで、ワタシたちの仲間を…!」
「ビルダーに裏切り者め…必ずやここで仕留めてやる…!」
アローインプはコスモアイより耐久力が低く、5発ほど弾丸を当てれば倒すことが出来た。
残ったブラックチャックたちも攻撃をして来るが、俺たちは囲まれないように動き続けていく。
最初は俺たち全員を狙っていたアローインプたちだったが、何体も倒していくと俺とルミーラに攻撃を集中させてきた。
「俺とルミーラに攻撃を集中させてきたか…ルミーラが狙われないように、なるべく全員を引きつけよう」
いくら手慣れの射手とはいえ、ルミーラは体の構造上人間よりは動きの速度が遅い。
まだアローインプはたくさん残っているので、攻撃が集中すれば危険だろう。
それに、さっきはルミーラ一人にメーダクインを引き付けてもらった…俺も出来る限りの援護をしていこう。
今までの戦いで使い慣れてきたアサルトライフルでほとんどのアローインプを狙い撃ちしていき、注意を俺1人にひきつけた。
「ビルダーの奴め…恐ろしい兵器を使って来やがる…!」
「これだから物作りの力は、消しされなければいけない!」
前方からブラックチャックに、側方からアローインプに狙われ、俺は回避し続けるのが少し困難になってしまう。
しかし、俺は大きなジャンプを繰り返して回避を続け、アローインプたちの頭を撃ち抜いていく。
ブラックチャックに関しては、アローインプの狙いから外れたゆきのへたちも引き付けに来てくれた。
「ブラックチャックはみんなに任せて、俺はアローインプに集中しよう」
アローインプの矢を確実に避けていきながら、アサルトライフルで体力を削っていく。
ルミーラも攻撃を続けて、アローインプたちの数をだんだんと減らしていっていた。
追い詰められたアローインプたちは、攻撃の手を強めて来るだろう。
だがそう思っていると、奴らのリーダーと思われる個体がルミーラに問いかけて来た。
「ワタシたちの裏切り者、ルミーラ…!お前はワタシたちを倒したところで、変異体たちには勝てず死んでいくだろう。お前の射撃能力はワタシたちから見ても素晴らしいものがある…人間どもを撃ち殺してやったら、お前のことは助けてやるぞ!」
確かに厳しい戦いを生き延びて来たルミーラの射撃能力は、アローインプの中でも右に出る者はいないだろう。
ブラックチャックたちは人間に寝返ったバルダスを最後まで殺そうとしていたが、アローインプたちはルミーラを再び仲間に入れようとしているようだな。
確かにこの後には3体の変異体との戦いも待っており、ルミーラも生き残れるか分からない。
だがバルダスと同じでルミーラも、最後まで人間と共に戦う覚悟が出来ていた。
「確かに人間に味方したことで、厳しい戦いに巻き込まれることになった…でも、それ以上にわたしは、人間たちと一緒に暮らせて楽しかった。どんな敵が待ち受けているとしても、わたしは人間と一緒に戦い続けるよ!」
ルミーラはそう言うと、リーダー格のアローインプの頭を矢で撃ち抜く。
俺のアサルトライフルでも弱っていた奴は、力尽きて倒れていった。
ルミーラが裏切ったらさらなる危機になってしまうとか、俺はそんなことを考えはしなかった。
ここまで人間と仲良く暮らして来た彼女なら、決して魔物側に戻ることはないだろう。
「どうしてもワタシたちやエンダルゴ様と敵対すると言うのか…!」
「お前のような力のある者を殺したくはないが、始末してやる!」
アローインプはルミーラの説得を打ち切り、再び攻撃を始めていく。
俺もアサルトライフルでの射撃を続けて、ルミーラへ向かう攻撃を少しでも減らしていった。
俺とルミーラの攻撃を頭に受けて、アローインプは次々と倒れていく。
ブラックチャックも、ゆきのへやラスタンたちの攻撃で残り少しになっていた。
「ブラックチャックもアローインプも残り少しか…このまま終わらせてやる」
ルミーラもバルダスも、これからも人々と仲良く暮らしていくことだろう。
人間に味方してくれる数少ない魔物たちの力も借りて、俺たちの復興は進んでいく。
そう思いながら、アローインプの群れをルミーラと共に全滅させていった。
俺たちがアローインプを倒したころには、ゆきのへたちもブラックチャックを倒し切っていた。
何度もジャンプで回避を行い結構体力を使ってしまったが、まだ休むわけにはいかない。
俺たちのところに、今度はドロルリッチたちも近づいて来ていた。
「魔物たちの数も大分減ってきたな…次はドロルリッチたちか…」
ドロルリッチは毒沼の辺りにしか生息していない魔物だ。
ラダトームの毒沼はリムルダールの物より小さく、ドロルリッチは20体ほどしかいなかった。
さっさと倒してしまおうと、俺たちはそれぞれの武器を構えて攻撃に向かう。
しかし、ドロルリッチたちの横を通って転がって来て、オーロラウンダーたちが先に迫ってきた。
「先にオーロラウンダーが近づいてきたな…巨体の魔物だし、気をつけて戦わないとな」
オーロラウンダーもドロルリッチと同様、20体くらいが襲って来ている。
オーロラウンダーはばくだんいわの上位種であり、巨体で潰されれば非常に危険だろう。
しかし、まほうの光玉を作るためのオーロラストーンを集めるために何度も戦っており、今は伝説を超える武器も持っている…あまり苦戦せずに、倒しきることが出来そうだ。
「倒した後は、オーロラストーンも集めておこう」
まほうの光玉はこれからも必要になりそうなので、倒したら忘れずにオーロラストーンも回収しておこう。
俺はそんなことも考えながら、オーロラウンダーたちに斬りかかっていった。
俺のところには3体の奴らがやって来て、体当たりで押しつぶそうとして来る。
俺は回避すると横にまわり、ふめつのつるぎでオーロラウンダーの体を斬り裂き、ビルダーズハンマーで叩き潰していった。
「結構硬いけど、かなりのダメージを与えられてるな」
オーロラウンダーは岩の魔物のため、かなりの防御力は持っている。
しかし、伝説を超える武器での攻撃をしのぐことは出来ず、だんだん体力を削り取られていった。
武器はそこまでのものではないが、体が俺より強靭なみんなの攻撃でも、奴らは確実にダメージを受けていく。
「そんなに強力な攻撃もないし、このまま倒せそうだぜ」
オーロラウンダーは突進攻撃も使って来たが、大きくジャンプすればかわすことが出来た。
あまり苦戦せずに、俺たちは奴らの体力を削り取っていく。
しかし、追い詰められたオーロラウンダーは、奇妙な動きを始めた。
「ん?何をするつもりなんだ…?」
3体のオーロラウンダーの内の2体が離れていき、1体だけが俺のところに残る。
ラスタンたちのところでも、奴らは似たような動きをしていた。
何だと思っていると、近くに残ったオーロラウンダーが呪文を唱え始める。
「こいつら、自爆する気だな…!みんな、急いでオーロラウンダーから離れてくれ!」
ばくだんいわの上位種なので、こいつらも自爆呪文のメガンテを使えることだろう。
追い詰められているとはいえ、こんな呪文まで使うようになって来るとはな。
奴らの命と引き換えとはいえ爆発の威力は絶大なので、必ず避けなければならない。
俺はみんなにそう叫ぶと、自爆の範囲外に逃れるために走り出す。
だが、オーロラウンダーはばくだんいわと違って、メガンテを唱えながら動くことが出来るようだった。
「唱えながら動くことも出来るのか…何とか逃げ切らないとな…」
しかし、全力で動くことは出来ないようで、みんなはオーロラウンダーから少しずつ距離を引き離すことが出来ていた。
腕輪を装備している俺は、一気に距離を遠ざけていく。
そして、呪文を唱えてからしばらくした後に、オーロラウンダーたちは自らの命と引き換えに、大爆発を起こしていく。
爆発は広範囲に及び、オーロラウンダーのいた場所の地面をも大きく破壊していった。
俺は爆発の直前に大きくジャンプをして、範囲外に逃れることが出来ていた。
ゆきのへたちもわずかに爆風に当たったが、転んで足を地面にぶつけるくらいでそこまでの大きなダメージは受けていなかった。
しかし、足が人間やアローインプより短く、みんなより走るのが遅かったバルダスは、直撃は避けられたものの吹き飛ばされて体を強く打ちつけていた。
「俺は何とか避けられたけど、バルダスが怪我してしまったか…しかも他のオーロラウンダーたち、ラダトーム城に転がっていってるな」
そこまでの重傷ではないが、この後の戦いに支障があるかもしれないな。
さらに、先ほど俺たちから離れたオーロラウンダーたちが、ラダトーム城に向かって転がっていっていた。
恐らく、ラダトーム城をメガンテで破壊する気なのだろう。
ラダトーム城にはローラ姫たちがいるし、それは防がなければならない。
「このままだとラダトーム城が破壊される…みんな、追いかけるぞ!」
「わたしたちがせっかく作り上げた城だからね…必ず守りきろう!」
ルミーラが最初にうなずき、みんなもオーロラウンダーたちを追いかけ始める。
みんなは足の痛みをこらえて走り出し、奴らがラダトーム城を破壊するのを阻止しようとした。
大きなダメージを負ったバルダスも、戦いを続けようと懸命に走っていた。
しかし、オーロラウンダーはかなりのスピードで転がっているので、怯ませて動きを止めなければ全員で追いつくことは難しそうだ。
「結構な速度で転がってるな…ルミーラ、また遠距離攻撃を使って止めるぞ」
「分かった。一緒にラダトーム城の破壊を防ごう!」
さっきからアサルトライフルを何度も使い、残った弾は残り少なくなって来ている。
しかし、ラダトーム城が狙われている以上、使うのも惜しむわけにはいかない。
俺はアサルトライフルで、ルミーラは弓矢で、オーロラウンダーを背後から貫いていく。
さっきの俺たちの攻撃で弱って来ているのもあり、奴らはすぐに怯んで動きを止めていた。
「動きが止まったね。今のうちにみんなで倒すよ!」
「ああ、行くぞ!」
ルミーラの掛け声で、俺たちはオーロラウンダーたちを倒しにいく。
ルミーラは弓での攻撃を続けて、ゆきのへたちはそれぞれの武器で渾身の連撃を叩き込んでいった。
怪我をしたバルダスも、動きを止めずに全身の力を腕に溜めて、さっきのような回転攻撃を放っていく。
俺も2体のオーロラウンダーに近づき、両腕に力を溜めていった。
「俺も回転斬りを使って、こいつらにとどめを刺そう」
城にかなり近い位置まで来ており、再び動き始めたらラダトーム城の破壊は止められないかもしれない。
何としても、ここで倒しきらないといけないな。
俺は両腕に力が溜まりきると、回転斬りを放って奴らの体を斬り裂き、叩き潰していく。
「回転斬り!」
伝説を超える武器の二刀流での回転斬りを受けて、オーロラウンダーたちは倒れていく。
みんなも攻撃を続けて、奴らの生命力を削りきることが出来ていた。
これで、メガンテでラダトーム城を破壊されるかもしれないという危機は去ったな。
「これでオーロラウンダーは倒れたな…残りの魔物のところに向かおう」
多くの魔物たちを倒し、いよいよ変異体との戦いも近づいて来ている。
まずは20体ほどのドロルリッチを倒そうと、俺たちは魔物の大軍勢のところに戻っていった。