ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode200 常闇の進軍(前編)

魔法台の記録を手に入れた翌日、ラダトームに戻って来てから2日目の朝、俺は工房のマシンメーカーの前に立っていた。

トロルギガンテとの戦いでライフル弾を使い切ってしまったので、補充しなければならない。

ラダトームでの魔物との戦いも、相当厳しいものになるだろうからな。

 

「ラダトームにはミスリルがないし、はがねインゴットで作るか」

 

ブラッドミスリルはガライヤにしかない…わざわざ取りに戻るのも大変なので、はがねインゴットで弾丸を作っておこう。

はがねインゴットもかなりの硬さを持つので、大きく威力が下がることはないだろう。

俺は城の大倉庫からはがねインゴットを取り出し、ライフル弾に加工していった。

たくさんの弾が出来ると、俺は今日は何をしようかと思いながら外に出る。

 

そうして城の中を歩いていると、希望のはたのところにチョビやルミーラといった、魔物の仲間たちが集まっていた。

俺がラダトームに戻って来た時も集まっていたが、何を話しているのだろうか。

少し気になり、俺はチョビに話しかける。

 

「チョビ、みんな。ここに集まって、何の話をしてたんだ?」

 

「オオ、おはヨウございマス、雄也ドロル。実ハワタシみなサンに、人間二変身スル方法ヲ教えテいたのデス」

 

そう言えば人間に変身することが出来るのは、みんなの中でチョビだけだな。

どこで覚えたのかは知らないけど、それをみんなにも教えていたのか。

チョビが人間の姿に変身したのは、ドロルの姿では人々に嫌がられるのではないかと思ったからだったが、今ではすっかり人間の姿での生活になれているようだ。

 

「人間の姿での暮らしも楽しいって言われたから、ボクも興味が湧いたんだ」

 

「わたしはこのままでいいって思ってたけど、強く勧められたからね」

 

闇の力で変異したことでバルダスは身体が黒く染まり声も変わったが、口調は今までと同じだった。

バルダスたちから聞いたわけではなく、チョビの方から勧めていたみたいだな。

町の建物や設備は人間が使いやすいように設計されているので、人間の姿の方が暮らしやすいとチョビは感じていたのだろう。

 

「人間ノ姿デ暮らス楽しさヲ、みんなニモ知っテ欲しかッタのデス」

 

「そうだったのか。後どのくらいで、変身能力を手に入れられそうだ?」

 

暮らしが便利になる以外にも、どこかで役立つ時が来るかもしれないな。

前から変身の訓練を行っているようだが、もう少しで変身能力を手に入れられるのだろうか。

 

「もう変身は出来るが、数秒で元に戻ってしまう。チョビのようになるには、まだ時間がかかりそうだ」

 

俺が聞くと、ラグナーダはそう答える。

チョビがどのようにして変身能力を手に入れたかは知らないが、かなり苦労したことだろう。

みんなが変身した姿も見てみたいし、早く出来るといいな。

俺に手伝えることはなさそうだが、ルミーラたちを応援しようとする。

 

だがそんな時、監視塔からまわりを眺めているラスタンの、焦った大声が聞こえた。

 

「みんな、まずいことになった。また城の西から多くの魔物が近づいてきている。しかも今日は、闇を纏った魔物もいるぞ!」

 

城に戻った翌日なのに、もう魔物たちか襲撃してきたのか。

闇を纏った魔物ということは、変異体とも戦わなければならなさそうだな。

変異体を送り込んで来ると言うことは、エンダルゴたちは俺がラダトームに戻ってきたことをもう知っているのかもしれないな。

ラスタンの声を聞いて、さっそく武器の開発を行っていたゆきのへがハンマーを持って工房から出てきて、チョビは剣を構える。

 

「今の話は聞いてたな。雄也が戻って来た矢先にここを失うわけには行かねえし、戦いに行くぜ」

 

「変身ノ話ハ後にシテ、今ハ魔物ヲ倒し二行かナイと。行きマしょう、雄也ドロル、みなサン!」

 

「ああ、もちろんだ」

 

エンダルゴを倒す武器を開発するためにも、ラダトーム城を守り抜かないといけないな。

まだ魔物は城から離れた場所にいるだろうし、急いで倒しに行こう。

ルミーラとバルダスもそれぞれの武器を構え、城の外に走っていこうとする。

 

「せっかく作り上げた城なんだし、もう壊されたくないからね」

 

「どんな魔物が相手でも、ボクは戦ってやるんだ!」

 

変異したバルダスの攻撃は、かなり強力になっていることだろう。

ルミーラの弓の腕も、前より上がっているかもしれないな。

ラグナーダもサデルンとエファートを建物の中に避難させてから、戦いへと向かう。

 

「わしも戦いに行ってくる。おぬしたちは、建物の中に隠れているのだ」

 

「気をつけてくれ、長老」

 

「無事に戻って来てね」

 

サデルンとエファートは普通のおおきづちだし、流石にラダトームの魔物とは戦えないみたいだな。

心配する二人にうなずき、ラグナーダは大型の木槌を構えて魔物の群れのところに近づいていった。

監視塔を降りたラスタンを先頭にして、俺たちはラダトームを守る戦いに向かう。

 

「変異体以外にも、かなりの魔物がいるな…」

 

近づきながら見てみると、コスモアイとしにがみのきし、だいまどう、ブラバニクイーンが16体ずつ、ダースドラゴンとエビルトレントが8体ずつ、ボストロールとゴールデンドラゴンが4体ずつ、トロルキングが2体いた。

後方には黒い葉を持った巨大な樹の魔物もおり、合計95体の魔物が襲ってきている。

滅ぼしの騎士の時より数は少ないが、それでも決して油断出来ない相手だな。

 

「アレフガルドの2度目の復興で手に入れた物も使って、この城を守り抜こう」

 

でも、アレフガルドの2度目の復興の中で、俺はその時にはなかった技や兵器のたくさん手に入れている。

それらの力があれば、必ずラダトーム城を守り抜き、エンダルゴとアレフを倒しに行けるはずだ。

俺が参戦する中では4度目の、ラダトーム城の防衛戦が始まった。

 

監視塔を使ったことで、かなり遠くの魔物の動きを発見することが出来た。

俺たちは魔物の群れに近づいているが、まだ結構な距離がある。

接近して戦う前に出来るだけダメージを与え、魔物の数を減らすために、俺はスナイパーライフルを構えて奴らに向けた。

 

「スナイパーは結構強そうだし、試してみるか」

 

マイラではアサルトライフルしか使っておらず、こちらの威力はまだ分からないが、大きなダメージを与えられることは間違いないだろう。

俺は弾を詰めて狙いを合わせ、前衛にいるコスモアイの目玉を撃ち抜いていく。

奴の目玉は大きいので、離れた場所からも当てることが出来た。

弱点を貫かれたコスモアイは倒れはしなかったものの、怯んで動きを止める。

 

「かなり効いてるな…このまま撃って数を減らそう」

 

弱点に当てれば一撃で怯ませられるということは、やはりかなりの攻撃力だな。

数発当てれば倒せると思って俺はスナイパーライフルを何度も撃ち、コスモアイたちの身体を貫いていった。

4回目玉を撃たれると奴らは力尽き、青い光を放ちながら消えていく。

奴らに接近したころには、3体のコスモアイを倒すことが出来ていた。

魔物たちとの距離が近づくと、俺はアサルトライフルに持ち替えて攻撃していく。

 

「そろそろ近づいて来たし、今度はアサルトライフルを使うか」

 

アサルトライフルはスナイパーほど威力と射程距離はないが、連射が出来る。

敵との距離が縮まったら、こちらを使った方が有利だろう。

俺はまだ残っているコスモアイたちの目玉を狙って、アサルトライフルを撃ち放っていった。

目玉を外して触手などに当たることもあったが、それでも少しのダメージを与えることが出来た。

コスモアイを次々と倒していくと、奴らもこちらに接近して来て目から光線を放ってくる。

 

「あいつらも光線を使ってきたか…でも、今なら簡単に避けられるぜ」

 

だが、コスモアイの光線は何度も避けがことがあるし、今はほしふるうでわもある。

威力は高いだろうが、当たらずに攻撃を続けることが出来ていた。

素早く動きながらアサルトライフルを連射し、さらに奴らの数を減らしていく。

コスモアイが追い詰められているのを見て、その後ろにいたブラバニクイーンも突進で近づいて来ようとしていた。

コスモアイとブラバニクイーンを同時に相手するのは、少し厳しいことになりそうだ。

 

「後ろの魔物も近づいて来てるね…わたしも手伝うよ!」

 

「ああ。一緒にコスモアイを倒しきるぞ」

 

だが、奴らの様子を見て、俺の後ろにいたルミーラも弓での攻撃を始める。

力を溜めて弓を撃ち放ち、俺と同様にコスモアイの目玉を貫いていった。

ほとんどが目玉に命中しており、射撃の精度は俺をはるかに上回っている。

俺がアレフガルドを回っている間、みんなも強くなっているみたいだな。

 

「残り少なくなって来てるな…このまま全員撃ち落とそう」

 

コスモアイが残り少なくなり、ブラバニクイーンは突進の速度を上げる。

俺たちも射撃の手を緩めず、コスモアイたちの目への攻撃を続けていった。

 

しかし、奴らを倒しきる前にブラバニクイーンは突進を当てて、俺たちを角で突き刺そうとして来る。

俺とルミーラに集中しているので、腕輪を装備している俺はともかく、ルミーラはかなり危険だな。

だがそう思っていると、ブラバニクイーンの目の前で、突然大きな闇の爆発が起こる。

 

「ん?何が起こったんだ?」

 

ドルモーアほどの威力はなかったが、突然の爆発で奴らは動きを止める。

俺が驚いていると、闇の侵蝕を生き延びたバルダスが、自分が手に入れた新たな力だと言った。

 

「闇の侵蝕から助かった後、使えるようになったんだ。雄也とルミーラは今のうちに、コスモアイを倒して!」

 

そう言えば本来魔法を使えない種族でも、変異体は闇の魔法を使っていたな。

奴らと同じ存在になったバルダスにも、魔法が使えるようになったみたいだな。

バルダスの魔法から立て直したブラバニクイーンは再び突進しようとするが、ゆきのへたちが奴らに殴りかかって止める。

 

「こいつらはワシらが止めてやるぜ!」

 

ゆきのへたち4人は、それぞれ4体ずつのブラバニクイーンを引き付けていた。

これで、俺とルミーラを狙っているのは残り少ないコスモアイだけになる。

俺はバルダスやゆきのへたちに感謝して、奴らに弾を撃ち続けていく。

 

「みんなありがとう。コスモアイを倒したら、すぐに援護するぞ」

 

「他の魔物も近づいて来ているし、急ごう雄也」

 

しにがみのきしやだいまどうもこちらに向かっており、まだ急がなければならない。

だが、生き残っているコスモアイも今までの攻撃で弱っているので、すぐにとどめを刺すことが出来た。

俺のライフルとルミーラの弓で、次々に奴らは撃ち落とされていく。

コスモアイを倒しきると、俺とルミーラはブラバニクイーンと戦っているみんなを助けに行った。

 

「これでコスモアイは全員倒したな…ブラバニクイーンも倒して、後ろの魔物との戦いに備えよう」

 

アレフガルドの2度目の復興で手に入れた武器、みんなの新たな力のおかげで、ここまでの戦いはかなり順調に進んでいる。

変異体の樹の魔物も、このまま倒せるといいな。

俺はそう思いながら、一番近くにいたゆきのへを助けにいった。

ゆきのへは4体のブラバニクイーンの突進を避けながらハンマーで反撃しており、奴らを弱らせることが出来ている。

 

「ゆきのへ、コスモアイは倒して来たぞ。一緒にこいつらと戦おう!」

 

俺はゆきのへと戦っている4体の奴らのうちの2体に、ビルダーハンマーとビルダーアックスを叩きつける。

ビルダーの名を冠する武器の強力な一撃を食らった2体は、大きく怯んで動きを止めていた。

2体の動きが止まったところで、ゆきのへはまだ動いている奴らに攻撃を集中させていく。

 

「もうあいつらを倒したのか。ワシはこっちの2体を倒すから、雄也はそっちを頼んだぜ」

 

「ああ、分かった」

 

ゆきのへの連続攻撃を受けて、ブラバニクイーンたちは追い詰められて来ていた。

俺も両腕の武器を振り回し、怯んだ奴らにさらなる攻撃を与えていく。

このまま倒せるかと思ったが、ブラバニクイーンも体勢を立て直し、身体中に力を溜めて突進して来ようとする。

 

「また突進だな…確実に避けて反撃しないと」

 

弱っているとはいえブラバニクイーンの突進はかなり攻撃力が高いので、俺は大きくジャンプして確実に回避していく。

突進の後は隙が出来るので、俺はそこで奴らにまた攻撃を叩き込んでいった。

さらに弱らせていくと、突進のスピードも大きく下がっていく。

 

「かなり弱って来てるな…コスモアイみたいに、こいつらにもさっさととどめを刺すぜ」

 

しにがみのきしたちも、かなり俺たちのところに近づいて来ていた。

乱戦になるのは避けたいので、ブラバニクイーンたちはここで倒しておかないとな。

俺は弱ったブラバニクイーンたちに両腕の武器を思い切り叩きつけ、大きなダメージを与えて動きを止める。

そして、動きを止めたところで両腕に力を溜めて、一回転して敵を薙ぎ払う。

 

「回転斬り!」

 

追い詰められていたところで回転斬りを受けて、奴らは力を失って倒れて消えていった。

ゆきのへもブラバニクイーンを倒しきり、近づいて来るしにがみのきしの方を見る。

バルダスもルミーラの援護を受けて、奴らを倒しきることが出来ていた。

 

「バルダスたちも倒したみたいだし、かなりうまく行っているな。しにがみのきしたちも倒して、城を守り抜くぞ」

 

「ああ。厄介な魔物も多いが、このまま倒して行くぜ」

 

しにがみのきしやだいまどうも戦いなれた魔物なので、そんな苦戦せずに倒せるだろう。

俺がそう思いながら武器を構えていると、だいまどうたちがメラミやベギラマの呪文で攻撃して来る。

 

「ビルダーに城の人間ども!エンダルゴ様とアレフがいる限り、お前たちに未来はない!メラミ!」

 

「エンダルゴ様に逆らうことも出来ず、お前らはここで焼き尽くされるのだ!ベギラマ!」

 

だいまどうの放つ火球は大きいが、詠唱時間もあるし火球の飛ぶ速度もそんなに早くはない。

しかし、しにがみのきしとの戦いを妨害されると、厳しい状態に陥るかもしれないな。

ラスタンとチョビも、まだブラバニクイーンと戦っている途中だ。

俺はまずだいまどうを倒して行こうと、再びアサルトライフルを構えて撃ち放つ。

 

「だいまどうの遠距離攻撃は厄介だな…こっちも遠距離攻撃を使って倒してやろう」

 

「わたしはあっち側のだいまどうと戦うね」

 

中央にしにがみのきしがおり、その左右にだいまどうがいるという形だ。

俺はサブマシンガンで左の奴らを、ルミーラは弓で右の奴らを狙って攻撃していく。

ここまで苦戦していないが、俺たちは警戒を怠らずに魔物たちとの戦いを進めていった。


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