ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode19 鉱山の峡谷

気がつくと、俺は自分の個室で寝ていた。あれ、さっき俺はあくまのきしと戦っていたはずなのに。ピリンとロロンドが、俺を心配そうに見ていた。

 

「雄也、気づいたんだ!」

 

「俺はどうしてたんだ?」

 

「お主はさっきあくまのきしの攻撃を受けて意識を失っただろ?我輩たちがきずぐすりを塗って、ここに寝かせていたんだ」

 

そうか、俺はあくまのきしの最後の反撃を受けて倒れていたのか。本当にあの攻撃は痛かった。死にかけたかと思った。今は夜のようだから、結構な時間気を失ってたんだな。

俺が起き上がろうとすると、ピリンに止められる。

 

「雄也は怪我をしてるんだから、今日はゆっくり休んで」

 

確かにまださっきの傷が痛んでいる。俺はピリンの言う通り、もう休むことにした。

 

翌朝、俺の傷はまだ治っていなかったが、痛みはおさまり、普通にあるけるようになっていた。ピリンたちがきずぐすりを塗ってくれたおかげだな。

 

「ん、また新しい人がいるな」

 

部屋から出ると、希望のはたの所に見知らぬ女が立っていた。この人もいれば、メルキドは8人になるのか。

 

「おい、あんた誰だ?」

 

その女は俺に気づくと、いろんなことを聞いてきた。

 

「ここは何なの?あなた、ここに住んでるの?暖かい光があふれる素晴らしい場所じゃない!」

 

「ああ、ここには俺以外にも人が住んでいる。町ってやつだ」

 

町という言葉を聞いて、その女は首をかしげる。町というものの存在自体を知らないのだろう。それにしても、ここまで来て新しい住人とはな、役にたつ奴だったらいいが。

 

「ここには建物もあるし、人もいる、光もあってとても素敵な場所に見えるけど···」

 

「それが町って奴だよ」

 

どうやらこの場所を気に入ってくれているようだ。その一方で、こんなことを聞いてきた。

 

「でも、住んでる人たちはずいぶんとピリピリしているのね。」

 

この女は人の様子を見るのが得意なようだな。町の状態をすぐに分かるとはな。

 

「もうすぐこの町で魔物との決戦があったり、町の中で対立が起こっていたりするからな。少し前までは平和だったんだけどな」

 

最初に俺とピリンで町を作りはじめた時、まだあの時は魔物のことなんて考えていなかったな。

 

「そうなの。でも私はもう歩き疲れてヘトヘトよ。私も今日からここに住ませてもらうわ」

 

この女も町の仲間になってくれるようだ。俺は、新しい住民が来たときにいつもしている自己紹介をした。

 

「よろしくな。俺は影山雄也。いつもは雄也って呼んでくれればいい。」

 

「雄也ね。私はチェリコ、なんの取り柄もないけど、空気だけは読める女よ、よろしくね」

 

俺はチェリコと自己紹介をしあうと、昨日の魔物たちが落としたものを拾いに行った。大した素材はなかったがウォーハンマーの材料のさそりの角やキメラのはねなどが落ちていた。そして、俺がなんとか倒した狂ったあくまのきしは3つ目の旅のとびらが落ちていた。

 

「また旅のとびらだな。今度は縁の紋様が緑色だな」

 

旅のとびらはそれぞれ縁の色が違った。赤·青·緑は光の三原色と言われるから、この色になっているのだろうか。メルキドの復興も大詰めなので、旅のとびらはこれが最後だろう。

 

「雄也よ、また旅のとびらを手に入れたのか」

 

俺が旅のとびらを設置すると、ロロンドが話しかけてきた。

 

「ああ、ロロンドこそどうしたんだ?」

 

「実は雄也よ。お主に素晴らしい知らせがある!昨日の防衛戦で、鋼の守りも壊されてしまっただろう」

 

あれは誰も予想していなかったな。魔物の親玉どころか、あくまのきしなんかに壊されてしまうとはな。さらに強固な防壁が必要なのは明らかだ。

 

「それでだな、ついに我輩はメルキド録を読みとき、最強にして最大の防壁の記録を見つけたのだ」

 

「それって、どんな奴なんだ?」

 

最強の防壁か···それなら今度こそ町を破壊されずに済みそうだ。

 

「その名も、メルキドシールドと言う。なんともおごそかで品のある名の防壁であろう!」

 

「それほどでもないだろ」

 

メルキドシールドとか、そのまんまな名前だな。ロロンドからみれば品がある名前なんだろうけど。

 

「名前はともかく、これさえあれば、どんな魔物の攻撃からも町を守ることができ、かつての城塞都市、メルキドを完全に復活させられる。」

 

どんな魔物の攻撃からも町を守れるか。あのあくまのきしの攻撃でもびくともしないんだろうな。

 

「それで、どうやって作るんだ?また大量の鉄とかがいるのか?」

 

俺が作り方を聞くと、ロロンドは深刻な顔をした。

 

「実は、雄也よ。その細かい製法までは、メルキド録には書かれておらぬようなのだ。このままでは、せっかくのメルキドシールドも作り出すことはできぬ···」

 

メルキド録にも書いてないか、初めての事態だな。これまでの防壁のこととかは、全てメルキド録に記載されていたのに。

 

「だったら、メルキドシールドはどんな形をしているかは分からないか?形状が分かれば魔法の力でなんとかできる」

 

「それが、盾の形をしているということ以外、何も書かれていないのだ。素材も形状も製法も、一切不明ということだ。」

 

詳しい情報が何もないのなら魔法の力も使うことが出来ない。製法も分からないなら、自力で作ることも出来ないな。

 

「だが、お主なら必ずメルキドシールドの作り方を閃いてくれると信じているぞ」

 

そんなことを言われても、難しい気がするが。でも、やるしかないんだよな。必ずメルキドシールドの作り方を見つけないと。

 

「ああ、何とか作れるように頑張るな」

 

ロロンドとの話を終えた後、俺は緑のとびらを探索することにした。俺が作業部屋から武器を取り出したり、昨日のてつのさそりが落としたさそりの角で、自分の分のウォーハンマーを作っていたりした。するとショーターが中に入り、俺に話をした。

 

「雄也さん、ちょっといいでしょうか?」

 

また探索ができなくなるのだろうか。短い時間で終わる話だと願うばかりだ。

 

「何だ、ショーター?」

 

「雄也さんは、また新しい旅のとびらを手に入れたのですね?」

 

ショーターはもう旅のとびら·緑のことを知っていたか。俺が拾っているのを見たか、町の端に置いてあるのを見たのか?

 

「ああ、今度は緑色の紋様が彫られていた。」

 

「雄也さんにはそこで素材を集めて、作ってほしいものがあるのです。ロッシさんはメルキドを滅ぼしたのはゴーレムだと言っていました。と言うことは、このメルキドを支配する魔物こそ、かつてのこの地の守り神、ゴーレムでしょう」

 

ショーターも、ゴーレムが魔物の親玉だと思っているのか。まあ、根拠がないわけではないけど、断定は出来ない。

 

「そして、ゴーレムを倒すためにまほうの玉と言うものを作って欲しいのです」

 

まほうの玉って言うくらいならすごい力がありそうだな。

 

「それって、どんな物なんだ?」

 

「玉と言っても、立方体の形をしているのですが。ばくだんいわというモンスターから取れる爆発する危険がある石を鉄で囲んで、導火線を付ける。導火線に火を付ければ鉄が砕けて破片になり、魔物の体を貫くと言うものです」

 

ショーターの話を聞いて思ったのだが、それってただの爆弾じゃないのか?この世界では爆弾も魔法みたいなものなんだろうけど。グレネードも、そんな作りだったはずだ。

確かに爆弾だったら、非常に固そうなゴーレムも砕けそうだ。

 

「あなたにその製法を教えます。作り方を閃いたら形にして見せてください。旅のとびらは自分の必要なものがある場所にとびらを開くと聞いたので、ばくだんいわがいるところへ行けるでしょう。」

 

俺はまほうの玉と言う名の爆弾の作り方を教えてもらい、その作り方を魔法で調べる。ついでにグレネード、地雷、C4などの作り方を調べた。

まほうの玉···鉄のインゴット3個、ばくだんいし3個、ひも1個

グレネード···鉄のインゴット3個、ばくだんいし3個

地雷···鉄のインゴット2個、ばくだんいし2個

どれも同じような作り方だな。まほうの玉とグレネードはどう考えてもグレネードのほうが小さいのに必要数が同じだな。いつもの一度にいくつも出来るってやつだろう。C4は調べても出てこない。この世界には無線機能がないから、無線で起爆させる仕組みのC4は作れないってことのようだな。

 

「雄也さん、作り方を閃きましたか?」

 

「ああ。探索とついでにばくだんいし取ってくる」

 

俺は旅のとびら·緑の先の探索を始めた。旅のとびらをくぐると、こんどは深さ20メートルほどの峡谷に着いた。

 

「ここは谷底なのか。どんな素材があるんだろうな?」

 

崖を見ると、鉄や銅、石炭などが眠っていた。それでけではなく光り輝く謎の鉱石が存在していた。

 

「なんだこの鉱石は?」

 

俺はその鉱石をウォーハンマーで叩きつけてみたが、まったく壊れる気配がしない。ここまで固いとは、ダイヤモンドか何かだろう。今は壊せないので、無視して先に進んだ。

そして、途中まで進んでいくとショーターが言っていた魔物、ばくだんいわが生息していた。

 

「あの固すぎる鉱石も気になるが、今はこいつを倒して素材を集めるか」

 

とりあえず地雷、まほうの玉、グレネードを1つずつ作るために、8個は必要だな。俺は目の前にいたばくだんいわを倒しにいく。正面からいくと攻撃を受けたり自爆されたりする可能性があるので、背後から回転斬りで倒すことにする。

 

「回転斬り!」

 

爆弾岩はかなり大きいサイズで、回転斬りでも真っ二つにはならなかった。不意の攻撃を受けた爆弾岩は転がって攻撃してくる。そこまでのスピードはなく、俺は避けながら何回か斬りつけ、ばくだんいわを倒した。

 

「こんなふうに倒せばいいのか、他にもいるはずだな。」

 

俺はばくだんいわを倒しながら、峡谷地帯の奥へとすすんで行く。途中、自爆魔法のメガンテを唱えられたことがあったが、すぐにはは発動しないらしく、問題なく倒すことができた。

 

「森か、スライムとか、ずいぶん弱い魔物がいるな」

 

俺は探索をしている途中に、スライムばかり住んでいる森を見つけた。俺がその森に入っていくと、目の前を何かが高速で走り去った。

 

「ん、何だったんだ?」

 

その方向を見ると、ドラクエで大量の経験値がもらえることで有名なモンスター、メタルスライムがいた。メタルスライムは俺を見るなりすぐに逃げていった。

 

「逃がすかよっ!」

 

俺はメタルスライムを追いかけていく。しばらくメタルスライムが逃げて、俺から逃げ切ったと思ったところでメタルスライムは動きを止めた。

 

「喰らえ!」

 

俺は回転斬りをし、動きを止めて何回も斬りつけ、メタルスライムを倒した。だが、ゲームのようにレベルが上がったりはしなかった。銀色の液体を落としたが、使い道はわからない。

 

「これは何に使うんだろうな?」

 

必要になる可能性もあるので、俺はその液体をポーチにしまった。

俺がその森の奥を探索していると、何かに怯えているスライムがいた。

 

「なんだこいつ?もしかして、回りに強い魔物でもいるのか?」

 

俺が回りを警戒していると、そのスライムは突然言葉を話した。

 

「わあ、人間だ!僕はスラタン!君は?」

 

スライムって喋れるのかよ···しかも名前まで名乗られたし。どうやら敵ではなさそうなので、俺も自分の名前を名乗る。

 

「俺は影山雄也だ。いつもは雄也って呼んでくれ」

 

「雄也かあ、素敵な名前だね!お顔だって凛々しくてかっこいいや!」

 

そのスライムは、地球では全くモテない俺の顔をほめてくれた。

 

「それで、なんでここで怯えているんだ?」

 

「実は僕、人間のことが大好きで人間と友達になりたくって、仲間たちに話をその話をしたら僕は竜王様にさからう悪いスライムだって」

 

他のスライムは人間の敵だからな。友好的なスライムは奴らにとっては裏切りものってことか。それにしても孤立している状態なので、助けてやったほうがいいな。

 

「人間にとってはいいスライムってことだな」

 

こいつも仲間になってくれるのか?と思っていたら、スラタンが急に逃げ出した。

 

「いつも僕をいじめているスライム達が来たよ!気を付けて!」

 

それを聞いて前を見ると、たくさんのスライムやスライムベスがいた。スライムは弱い魔物なので、俺はスラタンが離れたのを見て攻撃した。

 

「回転斬り!」

 

スライムたちは俺の攻撃で両断され、あかい油やあおい油になった。それを見たスラタンが、俺のところに駆け寄ってきた。

 

「うわあ、雄也ってとっても強いんだね!助けてくれてありがとう。でも、ここにいたらまた他のスライムにいじめられるかもしれないね」

 

やはり、スラタンは保護してあげたほうがいいな。

 

「だったら俺たちが作った町に来ないか?」

 

「雄也の作った町に?僕は魔物だよ、ホントに住んでもいいの?」

 

そうか、スラタンも一応魔物だからな。でも味方だからいいだろう。

 

「町のみんなも、人間の味方なら歓迎してくれるぞ」

 

「やったあ!ありがとう!」

 

俺はスラタンを連れて町に戻った。いきなり町にスライムがいたらみんな驚くと思うので、みんなに説明することにした。

 

「こいつは人間の味方で、他のスライムからいじめられていたから助けたんだ。こいつを住ませてもいいか?」

 

人間の味方だと言うことで、みんなは歓迎ムードだった。

 

「味方なら大歓迎だぞ!」

 

「よろしくね!」

 

みんなにも受け入れられて、スラタンはこの町の住人(?)になってくれた。

俺はスラタンを紹介した後、作業部屋でまほうの玉、グレネード、地雷を作った。まほうの玉と地雷は一度に10個、グレネードは一度に20個もできた。

 

「なんか大量にできたな」

 

予想よりもたくさんの兵器を作ることができた。俺はまず、それをショーターに見せにいった。

 

「まほうの玉が完成したぞ」

 

「本当ですか!?さすがは伝説のビルダーですね。必ず作ってくれると信じてましたよ。」

 

まほうの玉の完成を喜ぶと、ショーターは改めて言った。

 

「雄也さん。メルキドを支配するゴーレムは必ず来ます。ゴーレムに勝てば空の闇も晴れる。負ければメルキドは再び滅びるでしょう。」

 

負ければ滅びるか、いつも分かっていることでも、改めて言われると決戦が目前に迫っていることが実感できるな。

 

「きたる戦いの勝利を祈っています。どうかその、まほうの玉を役立ててください」

 

「そうだな。だが肝心のメルキドシールドはどうやって作るんだ?」

 

「どうなさったのですか?」

 

「いや、何でもない」

 

俺はショーターと別れて、夜になりそうな時間だったので俺は個室に入った。

ショーターのおかげで、爆発系の武器がつくれるようになった。しかし、メルキドシールドの作り方は、依然として思い付かない。

 

「どんな形なら、魔物の攻撃をより防げるんだ?」

 

俺の思考力では思い付けないのだろうかという不安な気持ちと、どうして作れないんだ!?という苛立ちが俺の中で出来ていた。


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