ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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9章 エンダルゴ編
Episode198 復興の果てに


トロルギガンテを倒した翌日、マイラに戻って来て12日目、俺たちは昼頃になってから目を覚ました。

昨日の戦いは本当に厳しいものだったし、宴も朝方になるまで続いたからな。

まだ疲れは取れていないが、今日はいよいよラダトームに戻ろう。

俺が寝室から出ると、アメルダが話しかけてきた。

 

「起きたみたいだね、雄也。アタシはまた頭がガンガンするけど、アンタは大丈夫なのかい?」

 

アメルダは本当にたくさんの酒を飲んでいたし、二日酔いしても仕方ないだろう。

俺も酒を飲んでしまったとはいえそこまでの量でもないので、酔いはとっくに抜けていた。

 

「ああ。俺はそんなにたくさんは飲んでないからな」

 

「やっぱり飲み過ぎちまったみたいだね…。でも、一晩飲み明かして過ごせるってのは、世界がまだ続いてるからだとも思ったよ」

 

確かに世界があのまま終わっていたら、こんな宴が行われることもなかったはずだ。

飲み過ぎで二日酔いに悩まされてるとはいえ、アメルダの顔は幸せそうだった。

こんな幸せな気持ちになれるのは、世界がまだ続いている確たる証と言えるだろう。

 

「ああ、俺もそう思うぜ」

 

2度目の復興を遂げた3つの町…それらを守るために、俺はエンダルゴとアレフを倒しに行かなければならない。

ルビスを、世界の光を守れなかった自分の罪を償うためにも。

アメルダにうなずいた後、俺はこれからラダトームに向かうことを伝えた。

 

「そうだ。トロルギガンテを倒した事だし、俺はそろそろラダトームに向かおうと思う。この前言ってたエンダルゴやアレフと、決着をつけないといけないからな」

 

「やっぱりそうなのかい…アンタの事情も分かってるけど、寂しくなるね…」

 

マイラを去る話をすると、アメルダは少し悲しそうな顔をする。

マイラはとても明るい人々が集まった場所だし、俺ももう少しここにいたい。

しかし、ラダトームのみんなも俺を待っているだろうから、そう言うわけにもいかない。

 

「俺ももう少しここにいたいけど、エンダルゴとアレフを倒さないとこの町がまた壊されるかもしれないからな…ただ、奴らとの決着が着いたら、またここに戻って来るつもりだぜ。みんなにもあいさつしたいから、呼んできてくれ」

 

「分かった…アンタにはまた会いたいし、必ず生きて帰って来るんだよ」

 

俺もマイラのみんなにまた会いたいし、絶対に生きてエンダルゴたちに勝とう。

アメルダはそう言うと、建物の中に入ってみんなを呼びに行った。

町を去るのは今まで何度も経験しているが、やはり寂しい気持ちは抑えられないな。

そう思いながらしばらく待っていると、アメルダがみんなを連れて戻ってきた。

 

「雄也、みんなを連れて来たよ!」

 

荒くれたちの表情は分からないが、コルトたちは寂しそうな顔をしていた。

今までアレフガルドの復興を共にして来たピリンとヘイザンは、ラダトームにも一緒に行こうとして来る。

 

「ラダトームには親方も待っているからな、ワタシも一緒に向かうぞ」

 

「ここまで旅をして来たんだから、最後まで一緒に行くよ!」

 

ヘイザンはアレフガルドの2度目の復興の中、鍛冶屋としての腕を確実に上げてきている。

ラダトームで待つゆきのへと協力すれば、必ず伝説を超える武器を開発することが出来るだろう。

みんなの力を合わせて、エンダルゴやアレフに挑もう。

 

「ありがとうな、ピリン、ヘイザン」

 

アレフガルドの各所で、二人には助けられている。

俺が二人に感謝した後、アメルダも別れの言葉を言ってきた。

 

「アタシたちはここに残ることになるけど、アンタのことは応援してるよ。ここで作った兵器を、ラダトームでの戦いにも役立てておくれ」

 

「ああ、もちろんだ」

 

極げきとつマシンは絶大な威力を持っているし、ラダトームでの戦いにも確実に役立つことになるだろう。

それだけでなく、アレフガルドの2度目の復興で手に入れたものは、どれも強力なものばかりだ。

俺がそろそろ出発しようとしていると、ガロンも話しかけてきた。

 

「確かにお前とアネゴが作った武器は強い…でも、お前には筋肉が足りねえ。お前に筋肉をつけさせるために、これを作って来たぜ。受け取ってくれ」

 

そう言うとガロンは、ダンベルを取り出して手渡して来る。

荒くれたちが使っているものよりは軽いが、かなりのトレーニングが出来そうだ。

本当にガロンは昔から、筋肉中心の考えをしているな。

俺はそこまでの筋肉をつける気はないが、断るのは申し訳ないので、受け取ってポーチに入れる。

 

「…ありがとう。これから使うかもしれないし、受け取っておくよ」

 

「これで筋肉を鍛えて、絶対に生きて戻って来るんだぜ」

 

ガロンたちにとって、筋肉の強化に終わりはない…これからも訓練を続けて、自分たちのアジトであるマイラの町を守り抜いていくことだろう。

ガロンからダンベルを受け止ると、俺はそろそろラダトームに向けて出発しようとする。

 

「じゃあ、俺はそろそろラダトームに向けて出発するぜ。俺も必ず生きて戻って来るから、みんなも元気でな!」

 

俺はそう言うと、ピリンとヘイザンを連れて小舟に乗りにマイラの町の東の海に向かっていく。

エンダルゴやアレフとの決戦に向かう俺を、みんなも手を振って見送っていた。

 

「戦いが終わったら、またオレたちのアジトで盛り上がろうぜ!」

 

「ダンベルを有効に使うのだぞ!」

 

「会いたくなったらいつでも来るのよ!」

 

「アンタと兵器があればどんな敵にも勝てるって、信じてるからね」

 

「また会いましょう、雄也さん!」

 

「私たちも頑張って、この町を大きくしますね!」

 

力強い者達によって、マイラの町はこれからも発展を続けていく。

そう思いながら、俺はみんなに手を振ってマイラの東の海へと向かっていった。

魔物たちから隠れながらも、20分くらいで小舟に乗り込むことが出来た。

3人で小舟に乗り込むと、世界地図を見ながらラダトームを目指して、漕ぎ出していく。

 

 

 

そして、1時間半ほど小舟を漕ぎ続けて、俺たちの前に灰色になった大地が見えてきた。

その大地にはかげのきしやしにがみのきしと言った魔物の他、スライムやブラウニーのような弱い魔物もうろついている。

アレフガルドの中央にあるラダトームの地のすぐ近くまで、俺たちはやって来ていた。

 

「もうすぐラダトームか…みんな、どうしてるんだろうな?」

 

「ここは魔物も強いし、少し心配だな」

 

俺がそうつぶやくと、ヘイザンもラダトーム城が心配だと言う。

リムルダールやマイラのように、ラダトームも壊滅している可能性もあるな。

魔物のこともそうだが、ラダトームにはエンダルゴの闇が降ったことがあった。

またあのようなことがないか、闇に侵蝕されたオーレンたちがどうなったのかも気になるな。

 

「ああ。とりあえず、みんなの無事を確かめよう」

 

俺たちがいるのはラダトーム城の東の海であり、ここからは城の様子は見えない。

城の様子をまず確かめようと舟を進めていき、ラダトームの大地に上陸した。

 

ラダトーム…世界を裏切った勇者の旅が始まった地。アレフガルドを統治する、人と物に満ちた城があった地。

メルキドとリムルダール、マイラを巡り、アレフガルドの2度の復興の冒険の旅の末に、再びこの地に戻って来た。

そう思うと、1度は決して倒せないと思っていたエンダルゴやアレフとの戦いも、もうすぐ何だと実感するな。

 

「…今まで厳しい戦いだったけど、ついにここまで来たんだな」

 

1度は失敗に終わってしまったアレフガルドの復興を、今度こそ成功に終わらせる時だ。

もう平和な世界を作れないとしても、少しでも人々が生きやすい世界に変えたい。

そうも強く思いながら、俺はラダトーム城へと向かっていった。

ピリンたちも、魔物たちから隠れながら俺について来る。

25分くらい歩いて、俺たちはラダトーム城の近くにたどり着いた。

 

近くに来て見てみると、ラダトーム城は前のように禍々しい気に覆われてはいるものの、壊されている様子はなかった。

だが、全員が無事であるかはここからは確認出来ない。

 

「城は無事みたいだな。でも、みんなが生きてるかは中に入らないと分からない」

 

「親方もみんなも、無事だといいな」

 

「うん。戦いが終わったら、みんなで楽しく暮らしたいね」

 

ピリンとヘイザンもラダトームのみんなと一緒に暮らした時間は長いし、みんなの安否を心配していた。

俺たちはみんなの無事を祈って、ラダトーム城の中へと入っていく。

すると、城の見回りを行っていた兵士のラスタンが、俺たちに気づいて話しかけてきた。

 

「もしかして、お前は雄也か?戻って来たんだな!」

 

「ラスタン、無事だったんだな。アレフガルドの3つの町を立て直して来て、今帰って来たぞ」

 

ラスタンは目立った怪我もなく、元気そうであった。

ラスタンの他にも、希望のはたのところで話しているチョビとルミーラ、バルダス、ラグナーダ、サデルン、エファートの姿も見かけられる。

俺が去った後に何があったかも、ラスタンに聞いていった。

 

「俺が去った後、そっちでは何があったんだ?」

 

「雄也たちが去った後も、私たちは迫り来る魔物と何度も戦って城と姫様を守り抜いていた。伝説の武器を上回る武器の開発も、大分進んでいるぞ」

 

やはり魔物の襲撃はあったようだが、ここまで勝ち抜いて来たようだな。

俺たちがおおきづちの里から連れてきた、ラグナーダの活躍もあったからだろう。

伝説を超える武器の作り方が分かったら、ビルダーの力で作り上げよう。

闇に侵蝕された3人がどうなったかも、俺は聞いていく。

 

「闇に侵蝕されたオーレンたちは、どうなったんだ?」

 

そう言うと、ラスタンは暗い顔になってしまった。

彼は、闇に侵蝕された3人のうち1人しか助からなかったと言う。

 

「バルダスは耐えきって、逆に強大な力を手に入れることが出来た。だが、オーレンとプロウムは耐えきれず、あのまま亡くなってしまった」

 

バルダスの方をよく見て見ると、彼の体毛の白かった部分が黒紫色になっており、体もこれまでより大きくなっていた。

闇の力に耐えて自分の物とし、変異体と同じ存在になったのだろう。

しかし、オーレンとプロウムは、あのまま死んでしまったのか…。

全員無事であることを祈ったが、そううまくはいかないものだな。

 

「そうだったのか…俺がアレフ…闇の戦士を倒せなかったせいで、二人まで…」

 

「あれは仕方のなかったことだ。私もオーレンとプロウムが死んでしまったのは残念だ…だが、今は今度こそ勝てるように、準備を進めるしかない」

 

数百年前の戦いを見てきて、たくさんの人の死に立ち会ったであろうラスタンでも、仲間を失った悲しみは深い。

ラスタンの話を聞いて、アレフを倒せなかったことを悔やむ気持ちが強くなってしまう。

仕方のないことだったと言われても、その気持ちを抑えることは出来なかった。

しかしラスタンの言う通り、いくら悔やんだところでもう仲間が戻って来ることはないので、彼らの分もエンダルゴを倒す準備を進めなければいけない。

過去を引きずりながらも、未来に進んでいくしかない。

ラスタンは話の後、俺が戻って来たことを城のみんなに伝えようとする。

 

「…分かってる。エンダルゴを倒す準備を進めていこう」

 

「私も出来る限りのことをする。みんなもお前を心配していたし、これから呼ぶぞ」

 

こっちもラダトームの人々のことが心配だったし、みんなも俺たちのことを心配していただろう。

無事に戻って来たということを、みんなにも教えてやらないとな。

 

「ああ、そうしてくれ」

 

「みんな。雄也たちが戻ってきたぞ!」

 

俺がうなずくと、ラスタンは大声でみんなに俺たちの帰還を伝える。

すると、その話を聞いたみんなはすぐに動き出し、チョビたちはこちらに走ってきて、ゆきのへは工房から、ムツヘタは占いの間から出て来た。

 

「オオ!おかえりナサい、雄也ドロル!生きテ戻っテ来るト、信じテいまシタ!」

 

「遅かったから心配していたが、無事だったみてえだな。ヘイザンの方も、元気そうで何よりだぜ」

 

「アレフガルド中を、もう一度復興出来たようじゃな」

 

アレフガルドをもう一度復興させて、エンダルゴと戦う準備を進める。

それを達成してみんなに元気な姿を見せることが出来て、本当に良かったぜ。

 

「厳しい戦いの連続だったけど、何とかなった。強力な装備や兵器も、いくつも手に入れて来たぞ」

 

アレフガルド中で手に入れた装備や兵器と、これから開発する伝説を超えた武器、その全てを活用してエンダルゴやアレフに挑もう。

再会を喜んだ後ゆきのへは、伝説を超える武器の開発状況について話す。

 

「こっちもあれから開発を続けて、もう少しで伝説を超えた武器の作り方を思いつけそうだぜ。お前さんが戻って来るまでにはと思っていたが、もう少し待っていてくれ」

 

「ワタシもアレフガルドを巡る中で、修行を続けてきた。開発を手伝わせてくれ、親方」

 

伝説の超える武器…どれだけの強さになるのか楽しみだな。

各地で修行を続けて来たヘイザンは、一緒に開発を行いたいとゆきのへに言う。

俺から見るとヘイザンは既に伝説の鍛冶屋を継げるほどの腕前を持っており、ゆきのへも納得していた。

 

「ワシの家系の技術を継ぐお前さんの力もあれば、さらに強力な武器になるはずだからな、もちろんいいぜ。修行の成果を、ワシに見せてくれ」

 

「武器の作り方が分かったら、すぐに教えてくれ。ビルダーの力で完成させるぞ」

 

これから武器の開発を行なうとする鍛冶屋の二人に、俺はそう言う。

みんなと協力して、闇に満ちたこの世界を少しでも明るく変えていこう。

 

「もちろんだぜ。またこれからよろしく頼むぞ、雄也。さっそく工房に向かうぜ、ヘイザン」

 

あいさつの後、ゆきのへとヘイザンは城内の工房へ向かっていく。

俺もここまで舟を漕いできて疲れたので、みんなとの再会のあいさつを済ませた後、教会の中に入って休んでいた。


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