ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
マイラの町を奪還した翌日、マイラに戻ってきてから3日目の朝、俺は昨日の戦いの疲れがあってかなり遅くまで眠っていた。
昼ごろに起きると、今日はこれから何をしようかと考え始める。
昨日のダークトロルの話も気になるし、トロルギガンテとの戦いもあるはずなので、それまでにさらなる兵器を作っておいた方がいいかもな。
そう思っていながら歩いているると、アメルダが話しかけてきた。
「雄也、少しいいかい?相談したいことがあるんだ」
「どうしたんだ、アメルダ?」
アメルダが、さっそく新しい兵器を思いついたのだろうか。
いつ次に魔物が襲撃して来るか分からないし、それなら早めに作っておかないとな。
しかし、アメルダは今回も新兵器の開発に行き詰まっていると言った。
「実は、トロルギガンテを倒すためのさらなる兵器を考えてたんだけど、何の手がかりもなしでは、今以上の物は思いつかなくてね…」
「でも、発明の手がかりなんてもう残っていないんじゃないか?」
アメルダは昔よりも発明の腕は上がっているが、やはり限界があるようだ。
しかし、ラライの研究記録は昔に全て手に入れたはずだし、これ以上他人の記録から手がかりを得ることは不可能だと俺は思う。
「いや、まだアタシたちが持っていない、アイツの研究記録があるかもしれないんだ。アイツがおかしくなってから竜王が現れるまで、しばらく時間があった。アタシはおかしくなったアイツを見ていられなくなってね、その間の研究内容については知らないんだ」
確かにだんだん狂っていく恋人の様子を見るのは、とても辛いことだろう。
アメルダが知らない部分の研究内容…そこに、さらなる兵器の手がかりがあるといいな。
だが、ラライも正気が失っていたのでは、まともな研究は出来なかったはずだ。
「でも、そんな状態ならまともな研究は出来なかったんじゃないか?」
「確かにそうだったかもしれないさ…でも、これ以上の兵器を自力では作れないから、役立つ記録が残っていることに賭けたいんだ」
望み薄ではあるが、もう一度ラライの研究所に言ってくるしかなさそうだ。
今の武器だけだったら、トロルギガンテとの戦いは相当厳しいものとなるだろう。
俺も役に立つ研究記録が残っていることを信じて、これから出発するとアメルダに告げる。
「分かった…じゃあ、これからまたラライの研究所に行って来るぜ。役立ちそうなものがあったら、ここに持ってくるぞ」
「ああ。頼んだよ、雄也」
ラライの研究所があったガライの町の跡地は、緑の旅のとびらを抜けてまっすぐ進んでいけばすぐに着く。
昨日城を解体している時に俺たちは旅のとびらも発見し、町の隅の方に設置し直していた。
アメルダと別れると、俺は町の隅へと歩いていき、緑の旅のとびらに入る。
旅のとびらを抜けると、俺の目の前には今も雪が降っている雪原が見えて来た。
ここも赤いとびらの先と同様、一度は氷の魔力がなくなったのだろうが、ルビスが死んだ影響で再び魔力に満ちて来ている。
かなりの寒さだが、俺はラライの研究所を目指して歩き始めた。
「ここに住んでいる魔物は、昔と変わっていないな…」
俺は歩いている途中、まわりの魔物の様子も観察していく。
すると、昔と同様にホークマンやガーゴイルが生息しており、ブリザードやメタルハンターも改造を受けていなかった。
苦戦することなく倒せるだろうが、俺は見つからないように慎重に進んでいく。
「そんなに強い奴らではないけど、気をつけて進むか…」
この雪原は視界を遮るものが少ないので、より注意しなければいけない。
しかし、ほしふるうでわで素早く動くことが出来たので、15分くらいでガライの町の跡地にたどり着いた。
ガライの町に入ると、俺はまずは昔ラライの作ったキラーマシンに出会って、最強の兵器の発明メモを受け取った場所へと向かっていく。
魔物ももうこの場所に研究記録は残っていないと思っているのか、昔来た時よりも数は少なくなっていた。
「結局ガライの町は、復興させることがなかったな」
他の町は復興したのに廃墟のままになっているガライの町を見て、俺はそんなことも思う。
最初に訪れた時は、この場所もいつか復興したいと思っていたな。
しかし、コルトとシェネリ以外のガライヤの生き残りはおらず、住民になってくれる人が一人もいないので、今後もガライの町を作り直すことはないだろう。
「ん?ここにいたはずのキラーマシンがいなくなってる」
そう思いながら進んでいくと、俺は前にここに来た時にはいた壊れたキラーマシンが、いなくなっているのに気づく。
人間に修理されたら困ると思い、魔物たちが回収したのだろうか。
もしキラーマシンを味方につけられたらかなりの戦力になりそうだとも思ったが、それは叶わなさそうだな。
キラーマシンがいた場所のさらに奥に進み、俺はラライの研究室だったと思われる場所に入る。
「前はこの部屋までは調べていなかったな…何か記録は残ってないか?」
前はキラーマシンからメモを受け取ってすぐに帰ったので、研究室を調べていなかった。
何か記録が残っていないかと思い、俺はその中を見ていく。
すると、テーブルの上にラライが書いたと思われるノートが置かれていた。
「こんなノートが置いてあったのか…何が書いてあるんだ…?」
俺はそのノートを手に取り、表紙を開いてみる。
そこには、殴り書きされたような文字で文章が書かれていた。
ついに、ついに念願だったマシンパーツが完成した!あんなに悩んで作り出せなかったのに、今は頭が冴え渡っている!発想が湧いてくる!こんなことなら、こんなことなら!もっと早く、もっともっと早く、こうするべきだった!
ここから先はもう完全に正気を失ったのか、読めるような字では書かれていなかった。
どうやらこれは、ラライが竜王の誘いに乗った時に書いた文章みたいだな。
こんな文を残していると言うことは、アメルダがラライが竜王に寝返ったと知るまで、しばらく時間があったようだ。
ラライはマシンパーツを自分では作れず、竜王の助けを得ることでようやく完成させたみたいだな。
「新しい発明品の記録は、残っていないみたいだな…」
だが、マシンパーツが作られた時のことは分かったが、さらなる兵器の手がかりになりそうなことは書かれていなかった。
やはりラライは、超げきとつマシンより強力な兵器に関しては、全く考えていなかったのだろうか。
だが、今の兵器でトロルギガンテと戦うのは厳しいだろうから、俺は研究室のまわりも調べていく。
「他に何か、記録は残っていないのか?」
研究室の外には雪が積もっているが、俺は雪をはらいながら記録を探した。
そう簡単には何も見つからないが、広い範囲の雪をはらって、俺は探索を進めていく。
そうしていると、研究室の左側にある空間の雪の中に、また別のノートが埋まっていることに気づく。
「こんなところにもノートがあったか…こっちには何が書いてあるんだ?」
俺はそのノートも手に取り、中身を開いて見に行く。
するとそこには、マシンメーカーより大きな見たこともない作業台の図と、5本もの鋭い角を持った超げきとつマシンの絵が書かれていた。
二つの絵の下には、ラライが書いたと思われる文章も残されていた。
今僕が考えている兵器では、魔物の親玉は倒せないかもしれない…でも、これさえあれば、どんな魔物だって倒せるはずだ。でも、マシンパーツすら完成させられない僕がこんな物を作るなんて、夢のまた夢。僕にはもっと知恵が必要だ…力が必要だ…
力が欲しい…力が欲しい…どんな物でも発明出来る力が…
誰でもいい、誰でもいいから…僕に力を与えてくれ…
ノートの後の方に行くほど、だんだん字が汚くなっていった。
これは恐らく、ラライが竜王の誘いに乗る直前に書いたものなのだろう。
こうしてラライは力を求めるあまり、本来の目的さえも見失い、竜王の誘いに乗ってしまったんだな。
竜王に与えられた力でマシンパーツは完成させられたが、超げきとつマシンやここに書かれている発明を作る前にアメルダに殺されたようだ。
もしラライが生きていたら、魔物たちにこれらの兵器が渡っていたかもしれない…だが、ラライを殺したことは、アメルダの心に深い傷を負わせることになった…ラライを殺したことが正しかったかどうかは俺には分からないし、アメルダにも分からないのだろう。
そんなことを思いながら、俺はこのノートを回収してポーチに入れた。
ここに書かれている兵器があれば、トロルギガンテとの戦いも少しは有利になるだろう。
「この発明は結構強そうだし、持ち帰ってアメルダに見せよう」
もう研究記録は残っていないと思っていたが、雪の中に埋もれていたとはな。
発明を形に出来なかったラライのためにも、俺たちが完成させてやらないと。
俺はまた魔物たちから隠れながら雪原を歩いていき、マイラの町に戻っていった。
マイラの町に戻って来ると、俺はアメルダに研究記録のことを教えに行く。
アメルダは町の中を歩いており、すぐに見つけることが出来た。
「アメルダ、ラライの研究所に行ってきたぞ」
「よくやったね、雄也!アイツの記録は見つかったかい?」
俺の声を聞いて歩いて来るアメルダは、少し不安そうな顔をしている。
ラライの研究所は昔も調べた場所だし、新たな記録が見つかったのか心配なのだろう。
俺はアメルダに、さっき手に入れたノートを見せた。
「研究所の近くの雪の中に埋まってたこのノートに、俺たちが知らない形の作業台とげきとつマシンが書いてあった。ラライは詳しい作り方までは思いつけなかったみたいだけど、もしこれを作れたら、トロルギガンテを倒しやすくなると思うぜ」
「アタシが知らないうちに、アイツはこんなのを書いてたのかい…中身を見てみるから、もし作り方が分かったらアンタに教えるよ」
ラライは作り方までは思いつけなかったようだが、見た目だけでも少しは手がかりになるだろう。
トロルギガンテが襲って来る前に、新しい兵器を完成させないとな。
超げきとつマシンの強化版なら、ラダトームに戻った後の戦いにも役立つかもしれない。
「ああ、頼んだぞ」
俺はアメルダにそう言うと、少し休もうと寝室へと戻っていった。
その頃…アレフガルドのどこか 魔物の楽園
ルビスを殺害した後のアレフの住処である魔物の楽園…その中で、しにがみのきしが斧を振る、だいまどうが大きな火球を飛ばす訓練をしていた。
彼らが訓練している様子を、アレフが見守っている。
しばらくの訓練の後、しにがみのきしは攻撃速度が上がっているかどうか聞いた。
「どうだ、アレフ。攻撃速度は上がってたか?」
「昔と比べると大分上がってきてると思うぜ。お前なら、新しい滅ぼしの騎士になれるかもな」
このしにがみのきしは元は周りと比べても弱く、ラダトームへの襲撃にも参加していなかった。
だが、滅ぼしの騎士がビルダーたちに倒された後、自分も人間との戦いに役立とうと、新たな変異体になろうとしていたのだ。
アレフに褒められて、しにがみのきしは嬉しそうな口調になる。
「それは良かった!早く変異出来るほどの強さを得て、人間どもを斬り倒しに行ってやる!」
しにがみのきしもビルダーや仲間たちは強力だと分かっているが、それでも戦いを諦めたりはしない。
隣で訓練しているだいまどうも、アレフに魔法が上達しているか聞いた。
「どうでしょうか、魔法の威力は上がっていますか?」
このだいまどうも他の個体より魔力が低く、人間との戦いには行かずアレフと共に過ごしていることが多かった。
だが、悠久の竜や同族の変異体である暗黒魔導が倒されたことを聞き、隣のしにがみのきしの誘いもあって、新たな変異体を目指すことにしていた。
「お前の魔法も、結構上達してる。このまま訓練を続ければ、十分変異体になれると思うぜ」
だいまどうの魔力も、訓練を始めたころに比べると上がって来ている。
人間がエンダルゴやアレフとの戦いの準備を進めるように、魔物たちも人間との戦いに備えて次々に強化されていく。
人間と魔物との決戦の日も、だんだん近づいて来ていた。