ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
清めの光薬とビルダーアックスを作った翌日、リムルダールに戻って来てから11日目の朝、寝ている俺の耳にエルの大きな声が聞こえて来た。
「雄也様、雄也様、起きてください!」
まだ眠かった俺もその声で目が覚め、エルの方を見る。
まさか魔物の襲撃かと思ったが、彼女は嬉しそうな顔をしていた。
もしかして、邪毒の病にかかったみんなが回復したのだろうか?
「…こんな朝からどうしたんだ、エル?」
「ゲンローワ様たちが回復して、起き上がれるようになったのです!みなさま、雄也様に感謝したいと言っておられます」
エルの考えた清めの光薬は、効果があったみたいだな。
ゆきのへの鍛冶の技術がヘイザンに受け継がれたように、ゲンローワの製薬の技術も、確実にエルに受け継がれている。
一時はリムルダール全滅の可能性もあったが、本当に良かったぜ。
「薬が効いたのか…昨日はまだ不安だったけど、本当に良かった」
「はい!みなさまは外で待っておられます、さっそく会いに行きましょう」
外にいると言うことは、もう歩けるくらいまで回復したということか。
邪毒の病が治った6人の力があれば、リムルダールはこれからも発展していくだろう。
「ああ、分かった」
俺はエルにそう返事をすると、みんなに会いにいくために寝室を出ていった。
外に出ると、明るい顔をしたコレスタたちが俺を待っている。
黒紫色に変わっていた身体も元に戻り、病気であったのが嘘だったかのように元気そうだ。
6人の中でも一番前に立っていたゲンローワは、みんなを代表して感謝の言葉を言ってきた。
「起きて来たようじゃな、雄也よ。お主とエルのおかげで、わしらは邪毒の病から立ち直ることが出来た。わしら全員、心から感謝しておる」
「おはよう、みんな。こっちこそ、みんなを助けられて良かった」
ノリンたちの命を奪った邪毒の病を、俺たちはついに克服することができた。
ゲンローワに続いて、マロアたちも喜びの声を後ろであげていた。
「もうダメかと思ってたけど、本当に助かったよ」
「セリューナたちノことハ残念だったガ、死んダみんなノ分モ生きナイとナ」
「ああ、そうだな…」
オラフトの言う通り、4人を助けられなかったのは本当に悔しい。
でも、だからこそ生き残った者達が頑張って、4人の分もリムルダールの町を作っていかなければいけないな。
俺たちがそう思っていると、後ろからエルが話しかけてきた。
「皆さん、少しいいですか?皆さんの病が治ったところで、一つ提案したいことがあるのです」
「どうしたんだ、エル?」
清めの光薬を思いついた翌日に、もう次の作りたい物が思いついたのだろうか。
リムルダールの2度目の復興に、役立つものだといいな。
「清めの光薬を作ったことで、私たちは邪毒の病を治すことが出来るようになりました。しかし、リムルダールの空気や水は、未だ汚染されたままです」
確かに、リムルダールの空気は淀み続け、湖の水も禍々しい黒色に染まったままだ。
町の中にいても、また邪毒の病に感染してしまう恐れもあるはずだ。
治療法が出来たので死にはしないが、清めの光薬の素材を何度も集めに行くのも大変だろう。
「そこで、私は空気や水を無毒なものに浄化出来る装置を作りたいのです」
その装置があれば、新たな邪毒の病の発生を抑えられるな。
いずれは、リムルダール全域を数百年前と同じ美しい大地に戻すことが出来るかもしれない。
これからのリムルダールの復興に間違いなく役に立つものだし、さっそく作りに行きたいな。
「結構いい考えだと思うぜ。さっそく作り方を教えてくれ」
「いえ、そのような装置があればいいと思っただけで、作り方はまだ思いついていないのです。今日は、皆さんと共に相談しようと思ったのです」
一日でそんなすごい装置を思いつくのは、確かに難しいだろうな。
メルキドウォールの時もそうだったし、みんなで考えた方が良さそうだ。
ゲンローワたちも、一緒に考えてくれるといいな。
「そういうことか。みんな、一緒に考えてくれるか?」
「町にきれいな水は不可欠だし、もちろん考えるよ。あたいたちの町に、美味しい水と空気を取り戻そう」
「これ以上病に苦しみたくはないし、僕も協力する」
昔から美味しい水が大事だと言っていたケーシーが最初に答えて、コレスタもそれに続く。
自分たちの町の未来のためなので、他のみんなもうなずいてくれた。
リムルダールのみんなの力があれば、邪毒を浄化する装置を必ず完成させることが出来るはずだ。
みんなが協力すると言ったのを聞いて、エルはさっそく話を始めようとする。
「ありがとうございます、皆さん。それでは、さっそく考え始めましょう」
いつ誰が新たに邪毒の病になるか分からないし、早めに作った方がいいだろう。
しかし、浄化装置を考え始める前に、ゲンローワが少し待って欲しいと言ってきた。
「少し待って欲しいのじゃ。わしも雄也に提案したいことがあっての…お主たちは、先に話し合いを始めていてくれ」
「そうなのですか…それでは、そちらのお話が終わったら、寝室で一緒に話し合いましょう。私たちは、先に行っていますね」
ゲンローワの提案とは、どんなものなのだろうか。
エルたちは浄化装置について話し合うために、寝室へと戻っていった。
みんなが寝室に入っていくと、俺はゲンローワの提案について聞く。
「提案したいことって何だ、ゲンローワ?」
「わしはかつてお主がリムルダールを去った後に、探究者タルバの宮殿を調べに行ったことがあるのじゃが、その時、こんな物を見つけたのじゃ」
そう言うと、ゲンローワは服のポケットから古びた紙を取り出す。
俺が農業の記録を探しにタルバの宮殿に行った時には見つからなかったが、彼はこんな物も残していたのか。
これも、タルバが後世の人間のために書いたものなのだろう。
「俺は気づかなかったけど、こんな紙もあったのか」
「よほど魔物に見つかりたくないのか、暗号化された文章で書かれておってな…解読に時間がかかったのじゃ。解読は終わったのじゃが、今までは邪毒の病の薬の開発に集中しておって、伝えることが出来なかったのじゃ」
確かに、俺は紙に目を通してみたが、よく分からない文章が書かれていた。
暗号化までしたということは、それほど強力な発明品が書かれているのだろう。
リムルダールの復興や今後の戦いに、役立つものだといいな。
「暗号化までしてるのか…それで、何が書いてあったんだ?」
「身につけた者の動きを素早くする腕輪、ほしふるうでわじゃ。これがあれば、今後の戦いも少しは楽になると思ったのじゃ」
ほしふるうでわか…ドラクエシリーズで、素早さを大きく上げる効果がある腕輪だったな。
素早さが上がれば移動時間も短縮出来るし、エンダルゴやアレフとの戦いでも勝ち目が上がるはずだ。
ルビスと共にアレフと戦った時は攻撃を避けるのがやっとだったが、ほしふるうでわがあれば攻撃を避けつつ反撃も出来るかもしれない。
これから行くマイラでも役立つことになるだろうし、作っておいたほうがいいな。
「素早さを上げるか…これから必ず必要になると思うし、これから作って来るぜ。さっそく、必要な素材と作り方を教えてくれ」
「もちろんじゃ。どのくらい素早くなるかは分からぬが、出来たら装備してみるのじゃ」
俺が作りに行きたいと言うと、ゲンローワはほしふるうでわの作り方を教え始めた。
タルバの書いた紙には、ほしふるうでわを作るには炉が必要だと書かれていたようだが、ゲンローワは仕立て台でも作れるように考えてくれたらしい。
炉はメルキドに行かなければないが、仕立て台でも大丈夫なら今すぐ作れるな。
ゲンローワに作り方を聞くと、俺はビルダーの魔法で必要な素材の数を調べていく。
ほしふるうでわ…金10個、銀5個 神鉄炉と金床 金10個、液体銀5個 仕立て台
装備者の素早さを高める力を持った腕輪でも、金と銀だけで作ることが出来るようだな。
この世界の金属は、みんな何かの魔力を帯びているのだろうか。
でも、特別な素材が必要ではないということは、作るのに時間はかからないということだ。
ビルダーアックスを作る時に金は大量に集めているし、大倉庫にある銀を加工すれば液体銀もすぐに用意出来る。
「どうじゃ、ほしふるうでわは作れそうか?」
「ああ、素材はもう揃ってるし、仕立て台で作ってくるぜ」
俺はゲンローワにそう言うと、まずは銀を加工するために調合室に向かっていった。
調合室に入ると、俺はポーチを通して大倉庫から銀を取り出し、いにしえの調合台を使って液体銀に加工しようとする。
今回必要な液体銀は5個だが、リムルダールでは銀は多くの場合液体銀の状態で使うので、俺は大倉庫に入っている銀のほとんどを加工していった。
「大量の液体銀が出来たし、これでわざわざ加工する必要がなくなるな。仕立て台を使って、ほしふるうでわを作って来よう」
ほしふるうでわを装備したら、どのくらい素早くなるのか確かめてみないとな。
俺はそう思いながら、仕立て台のある部屋へと向かっていった。
仕立て台のある部屋に入ると、俺はさっき作った液体銀と金を取り出す。
そして、仕立て台の上にそれらの素材を乗せて、ビルダーの魔法を発動させていった。
すると、金と液体銀が合わさっていき、腕輪の形へと変わっていく。
特殊な力を持っている物だが大きいものではないので、加工にあまり時間はかからなかった。
「これがほしふるうでわか…さっそく試してみないとな」
ビルダーの魔法をかけ続けると、金と銀の光沢が美しい腕輪が出来上がる。
俺はほしふるうでわが完成すると、どのくらい素早さが上がるのか確かめるために、さっそく腕にはめてみた。
アレフの剣のスピードに、ついていけるほどになるといいな。
俺はほしふるうでわを腕にはめた瞬間全身が軽くなったように感じ、さっそくおうじゃのけんを構えてみた。
「体が軽くなったみたいだな…どのくらいのスピードになるんだ?」
俺は部屋の中の物に当たらないようにしながらまず剣を振り、それから横へと跳ぶ。
すると、今までとは比べ物にならないほど素早くなっており、戦いでもかなり有利になりそうであった。
さすがにエンダルゴやアレフが相手であれば楽勝とはいかないだろうが、間違いなく勝てる可能性は上がっただろう。
「結構な素早さになったな…ルビスが死んだ時にはもうだめだと思ったけど、アレフに勝つのも不可能じゃないかもな」
魔物に製法を絶対に知られたくないというのも、納得の強さだ。
農業の記録やいにしえの調合台でタルバにはお世話になったが、こんな強力な装備まで考えていてくれたとはな。
本当に、タルバには感謝してもしきれない。
「ゲンローワにも見せたら、エルたちと浄化装置を考えないとな」
タルバの記録を解読してくれたゲンローワにも、ほしふるうでわを見せてこよう。
それからは、エルたちと一緒に邪毒の浄化装置を考えて、リムルダールの2度目の復興を進めないといけない。
暗黒魔導は倒れたし、浄化装置が完成したら、俺はマイラの2度目の復興に向かおう。
今後のことも考えながら、俺はゲンローワにほしふるうでわを見せに行った。
「ゲンローワ、ほしふるうでわを作って来たぞ」
「おお、わしが教えた通りの腕輪じゃな。どうじゃ、素早い動きは出来そうか?」
ゲンローワは俺がほしふるうでわを作るのを、建物の外で待っていた。
ほしふるうでわを見ると、ゲンローワは嬉しそうな顔をしながら、素早さが上がったか聞いてくる。
「ああ、これならこの先どんな強力な敵が現れても、動きについて行けそうだぜ」
「それなら良かったのじゃ。あまり待たせ過ぎても悪い、共にエルたちの所に向かうのじゃ」
タルバにはもちろんだが、解読してくれたゲンローワにも感謝しないとな。
「解読してくれてありがとう。浄化装置を作る時も、一緒に頑張ろう」
俺はゲンローワにそう言いながら、エルたちの待つ寝室に向かっていった。