ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode170 救済者の帰還

リムルダールに戻って来てから3日目の朝、俺はさっそくまだ探索していない、緑の旅のとびらの先に向かおうとする。

一晩寝たことで、傷は治りきっていないものの、痛みはほとんどなくなっていた。

今日こそエルとゲンローワを見つけて、邪毒の病の治療法を見つけないとな。

 

「ノリンたちの症状も、どんどん悪化しているな…急いで治さないと」

 

ここまで持ちこたえて来たノリンたちも、衰弱が激しくなって来ている。

エルたちが薬を思いついたら、すぐに作らないといけないな。

俺はそう思いながら、リムルダールの町を出て、小舟に乗りに東の岩山へと向かっていった。

岩山を越えて海にたどり着くと、俺はポーチから小舟を取り出して乗り込む。

世界地図によると緑の旅のとびらの先の山岳地帯はここから南なので、俺はそちらに舟を漕ぎ始めていった。

 

45分くらい経って、俺の目の前に草木が生えていない岩だらけの山岳地帯が見えてくる。

山の上には墓石のような物も立っており、ゾンビの魔物がうろついていた。

 

「ここが緑の旅のとびらの先だな。相変わらず不気味なところだぜ」

 

かつて聖なるしずくを作るために訪れた、緑の旅のとびらの先の地域だ。

病に侵食されたリムルダールの中でも、ここはひときわ不気味だったな。

だが、不気味だからといって避けてはいられず、エルたちを探さなければいけない。

俺は山岳地帯に上陸すると、ゾンビたちから隠れながら探索を始めていった。

 

「ここには洞窟も多いし、みんなも洞窟の中かもしれないな」

 

ここは山岳地帯なので洞窟が多く、みんながいるとしたら洞窟の中だろう。

まだ見つかっていないエル、ゲンローワ、ケンの3人が、同じ場所にいるといいな。

俺は洞窟を見つけては中に入り、3人を探していく。

洞窟には希少な金属である金も多かったが、今は採掘せずにおいた。

俺が最初に調べた洞窟には誰もいなかったが、俺は他の場所も調べていく。

 

「ここは洞窟が結構多いけど、全部調べていくか」

 

どの洞窟でも一番奥まで進み、隅々まで調べていった。

土で出来た山だけでなく、世界樹の跡地を囲む岩山にある洞窟にも入っていく。

その探索の途中、俺は気になることがあった。

 

「ここにいたグールが、いなくなってるな…」

 

土の山と岩山の間の谷にいたはずの巨大グールが、いなくなっていたのだ。

かつての俺は巨大グールは危険だと思い、戦っていなかった。

もしかしたら暗黒魔導の手下に入り、リムルダールの町を襲って来る可能性もあるかもな。

そんなことも考えながら、俺は洞窟の探索を続けていった。

 

そして、岩山にあった洞窟の中で、俺はついに人の姿を発見する。

洞窟の中なので暗くてよく見えなかったが、近づいていくと、エルとゲンローワが立っており、ケンが倒れているのが分かった。

この3人を町に連れていけば、ついにリムルダールの仲間が全員揃う。

これでまたリムルダールの2度目の復興が近づくと思い、俺はエルとゲンローワに話しかけた。

 

「エル、ゲンローワ!ここにいたのか」

 

「あなたは、雄也様!?どうしてここに?」

 

「この地に戻って来ておったのか…!」

 

突然話しかけられて驚き、エルとゲンローワは俺の方に振り向く。

倒れていたケンも何とか頭を動かし、戻ってきた俺を見ていた。

ケンも体中が黒色に変色しており、邪毒の病にかかっているようだった。

俺が帰って来たことに驚きを隠せない3人に、俺はラダトームでエルと分かれた後、何が起こっていたかを話していく。

 

「ラダトームでエルと分かれた後、俺は世界を裏切った勇者の行方を追っていたんだ。そいつを見つけることは出来たけど、奴はエンダルゴという最強の存在を生み出し、さらにルビスを殺した。そのせいで、アレフガルド中に強力な魔物が現れ始めたんだ。それでリムルダールが心配になって、小舟っていう乗り物で戻って来た」

 

「希望のはたが朽ち果て、光の柱がなくなったのを見て嫌な予感はしておったが、本当に精霊ルビスは亡くなっておったのか…」

 

ゲンローワは世界に起きた異変を見て、ルビスが死んだことに感づいてはいたようだ。

ずっと俺たちを見守ってくれたルビスが死ぬことになるとは、俺は最初思ってもいなかった。

壊されたリムルダールの町を作り直していることも、俺はエルたちに伝えた。

 

「リムルダールの町は暗黒魔導に壊されたみたいだけど、俺たちが直している。バラバラになったみんなも、ほとんど集まっているぞ」

 

「ケン様の様な病を患った方も、いらっしゃいましたか?」

 

「その病のせいでリリパットの里とリカント道場は壊滅して、ノリンたちも感染している。町を破壊した後に暗黒魔導が振りまいた、邪毒の病って奴だ」

 

俺はエルに、邪毒の病による被害状況も話した。

一つの病がここまでの速度で拡散するなんて、かつてのリムルダールでもなかったことだろう。

 

「そうでしたか…私たちの町を壊すだけでなく、病まで振りまくなんて、なんて憎らしい…!」

 

暗黒魔導が邪毒の病を振りまいたのを知ると、エルはさっきのエディのように、強い怒りの声を上げる。

昔からリムルダールを救おうと必死になっていたエルは、特に暗黒魔導が許せないだろう。

邪毒の病を治療するためにも、リムルダールの町に戻って来て欲しいと、俺は二人に頼んだ。

 

「邪毒の病を治すためにも、二人にリムルダールの町に戻って来て欲しい。たくさんの病を治療して来た二人なら、必ず邪毒の病も治せると思うんだ」

 

「もちろん行きます。病に苦しむ人々を見過ごすなんて、私には出来ませんから」

 

力のある限り病に苦しむ人々を助けたいというエルの思いは、今も全く変わっていないみたいだな。

ゲンローワももう、病に抗うべきではないとは言わず、協力して薬を作ると答える。

 

「わしも病に抗うべきではないなどと言っておきながら、エルを見捨てられなかった身じゃ…例えそれが間違っていることでも、わしもお主らに協力し、邪毒の病と闘おう。ケンの症状を見て薬は考え始めておるから、少し時間があれば詳しい作り方も思いつくじゃろう」

 

「ありがとう、二人とも。ケンは俺が背負って行くから、小舟を使ってさっそくリムルダールの町に向かうぞ」

 

どうやらゲンローワは、もう薬を考え始めているようだな。

聖なるしずくを作ることはもう出来ないが、きっと別の治療法があるはずだ。

俺は二人の返事を聞くと、ケンを背中にかついで洞窟を出ていく。

ゾンビに気をつけながら俺たちは海へと向かい、海にたどり着くと小舟に乗ってリムルダールの町へと向かっていった。

 

45分くらい小舟を漕ぎ続けて、俺たちはリムルダールの町の近くにやって来る。

普段は岩山を越えてリムルダールに向かうのだが、年寄りのゲンローワが岩山を登るのは難しいのかもしれないな。

そこで俺は岩山のないところまで漕いでいき、そこでエルとゲンローワを下ろした。

 

「ここからは歩きだ。リムルダールの町はもうすぐだから、頑張ってくれ」

 

俺たちが上陸したのは、昔巨大ドロルを倒しに行く時に通った、枯れ木の森の近くだ。

ここからなら、山を通らずにリムルダールの町まで戻ることが出来る。

だが、ここにもドロルリッチがうろついているので、俺たちは慎重に進んでいった。

俺はケンを背負いながら歩いていたが、今までのように岩山を登り降りはしていないので、ほとんど疲れは感じない。

20分くらい歩き続けて、俺たちはリムルダールの町に戻って来ることが出来た。

 

エルとゲンローワ、ケンが戻って来たことで、はぐれたリムルダールの町の仲間たちは全員集まった。

壊れた建物も、コレスタたちによってもうほとんど修復されている。

戻って来たエルとゲンローワは邪毒の病の患者たちのいる部屋に入り、診察を始めた。

俺はケンを草のベッドに寝かせると、希望のはたの台座の近くに座って休む。

 

「町が壊れているのを見た時はどうなるかと思ったけど、みんな生きてて本当によかったな」

 

邪毒の病にかかった者もいたが、みんなを助けることが出来てよかったぜ。

壊滅した町を見た時は、みんな死んだのではないかとも思ってしまった。

メルキドに続いて、リムルダールの2度目の復興ももうすぐ達成出来そうだ。

俺は休みながら、そんなことを考えていた。

そうしてしばらく休んでいると、コレスタが話しかけて来る。

 

「雄也さん。少し相談したいことがあるんだ」

 

「どうしたんだ、コレスタ?」

 

リムルダールの発展に役立ちそうな物を、何か思いついたのだろうか?

そう思っていると、コレスタは昨日俺も考えていた、作業台の事について聞いてきた。

 

「みんなが戻って来たことだし、僕たちはもっとリムルダールの再建を進めようと思っている。でもそのためには、木の作業台が不可欠なんだ。いにしえの調合台と仕立て台も、この先必要になってくると思う。木の作業台を再入手する方法を、雄也さんは思いつかないか?」

 

コレスタの言う通り、リムルダールの町の再建には木の作業台が必要となる。

ビルダーの魔法を発動させるためにも使うので、俺にとっては特に重要な物だ。

いにしえの調合台も邪毒の病の薬を作るために、仕立て台も武器を作るために、必ず使うことになるだろう。

俺は作業台を再入手する方法がないか、必死で考え始める。

しばらく考え続けると、俺はとある場所に、木の作業台が置いてあったのを思い出す。

 

「そう言えば一つだけこの町以外に、木の作業台が置いてある場所がある。そこに行けば、手に入るかもしれないな」

 

「本当か!?それなら、この町の再建を進められる」

 

巨大ドロルがいた毒沼のまわりの山にあった、タルバのクイズ…あの場所に、木の作業台が置いてあったはずだ。

ここから歩いて行ける場所だし、すぐに取りに行くことが出来るだろう。

 

「ああ。この町からそんな離れていない場所だし、今から取ってくるぜ」

 

今日はまだ午前中なので、これから回収しに行って来よう。

俺はコレスタにそう言うと、木の作業台を手に入れにリムルダールの町から出ていった。

 

タルバのクイズに向かう途中、俺はいにしえの調合台を作るのに必要な、調合ツボを作るのに必要な素材も集めていく。

調合ツボの素材は土、粘土、あおい油であり、この地域でも集めることが出来る。

俺はまずあおい油を集めるために、町のまわりに生息するスライムを倒していった。

 

「スライムは楽勝だろうし、後ろから襲わなくても大丈夫か」

 

おうじゃのけんとビルダーハンマーがあれば、スライムくらい簡単に倒せるだろうから、俺は正面から殴りかかっていく。

スライムは俺の姿を見ると、体当たりで攻撃しようとしてきた。

だが、俺が思いきりハンマーで殴りつけると、スライムは一撃で倒れ、あおい油を落としていく。

調合ツボに必要なあおい油は1個だが、他の用途にも使う可能性もあるので、俺は何体かのスライムを倒していった。

かなりのあおい油が集まると、俺は今度は山に土と粘土を回収しに行く。

 

「あおい油はこれくらいで十分か…土と粘土も集めて、木の作業台を回収しよう」

 

土と粘土も、ビルダーハンマーを使えば一撃で破壊することが出来た。

こちらも様々な用途がありそうなので、回転斬りも使ってたくさん集めていく。

大量の土と粘土を集め終えると、俺はタルバのクイズのところに木の作業台を回収しに行った。

 

枯れ木の森を越えて、たくさんの薬草が生えている山を進んでいき、俺は45分くらいでタルバのクイズのところにたどり着く。

クイズの建物の中に入ると、そこにはやはり木の作業台が残っていた。

 

「やっぱりここには残っていたか…タルバに感謝しないとな」

 

タルバもこんな時に備えてここに木の作業台を置いた訳では決してないだろうが、本当に助かったな。

俺は回収する前に、さっき手に入れた素材を使って、調合ツボを作っていく。

調合ツボが出来ると、俺はビルダーハンマーで木の作業台を殴り、回収していった。

 

「これで木の作業台と調合ツボは手に入ったな。素材が集まったら、いにしえの調合台と仕立て台も作りに行こう」

 

いにしえの調合台と仕立て台を作るための素材はこの地域では集まらないので、また後で他の地域に行って、素材を集めて来よう。

まずは木の作業台を置いて来ようと、俺は木の作業台と調合ツボをポーチに入れて、リムルダールの町へと戻っていった。

帰り道も魔物に気をつけながら、また45分くらいで町に帰って来る。

 

リムルダールの町に戻って来ると、さっそくコレスタに木の作業台のことを教えに行った。

ビルダーの力を使うのでなければ、作業台がなくても物作りは出来るが、みんなも作業台があったほうが作りやすいだろう。

コレスタは建物にしっかりした草とふとい枝から作ったとびらを取り付けており、そこはちょうど、昔のリムルダールで工房があった場所だった。

 

「コレスタ、木の作業台を回収して来たぞ」

 

「ありがとう、雄也さん。僕も工房を立て直すため、入り口のとびらを作っていた」

 

木の作業台を手に入れたことを話すと、コレスタは嬉しそうな顔で感謝の言葉を言ってくる。

タルバのクイズの場所に木の作業台が残っていて、本当によかったな。

これで工房も再建出来たので、リムルダールの2度目の復興にまた一つ近づいただろう。

 

「こっちこそ、工房の修理を手伝ってくれてありがとう。さっそく中に、木の作業台を置いて来るぜ」

 

俺もコレスタに感謝して、修理された工房の中に入って、木の作業台を置いて来る。

昔の工房と同じようにするために、俺は町のまわりからふとい枝を集めて、収納箱も作っておいた。

 

工房を作り直してからしばらくして、俺は町の中でまた休んでいた。

これからまた素材を集めに他の地域に向かおうと思うが、ずっと動き続けるのは結構大変だ。

町のみんなを助け出せたことだし、いつも通り休みながら行こうと、俺は考えていた。

そうしていると、今度はヘイザンが俺に話しかけてくる。

 

「休んでいるところに悪いけど、少しいいか?」

 

「もちろんいいけど、何かあったのか?」

 

鍛冶屋ゆきのへの弟子であるヘイザンのことだから、何か武器についての話だろう。

リムルダールの魔物たちとの戦いの役に立つ、強力な武器だといいな。

 

「ワタシはサンデルジュで、メタルゼリーから出来たハンマーを考えていただろ?しばらく旅を続けて、メタルゼリーから出来た斧も思いついたんだ」

 

メタルゼリーから出来た斧か…俺は伝説の武器の二刀流なので使わないだろうが、斧使いのマロアに渡せば、魔物たちに勝てる可能性が上がりそうだ。

マロアが邪毒の病から回復したら、その斧を作ってあげよう。

俺はヘイザンに、メタルゼリーから出来た斧の細かい作り方を聞いていく。

 

「メタルゼリーで出来た斧か…魔物との戦いに役立ちそうだし、作り方を教えてくれ」

 

役立ちそうだと言うと、ヘイザンは嬉しそうな顔になり、さっそくメタルゼリーの斧の作り方を教え始めた。

俺はヘイザンの話を聞きながら、頭の中に形を思い浮かべていく。

形と作り方のだいたいのイメージが固まると、俺はビルダーの魔法で必要な素材を調べた。

 

メタリックアックス…メタルゼリー1個、さびた金属2個、木材1個 仕立て台

 

斧系の武器だから、作るのにはやはり仕立て台が必要みたいだな。

仕立て台があればコレスタたちの武器もメタルのけんに強化出来るだろうし、早めに作っておこう。

ヘイザンはメタリックアックスの他にも、様々な斧の作り方を教えてくれた。

 

バトルアックス…はがねインゴット1個、さびた金属2個 仕立て台

まじんのオノ…まほうインゴット1個、さびた金属2個、木材1個 仕立て台

 

これらの斧は今は必要なさそうだが、機会があったら作ってみたいな。

さらにヘイザンは、ビルダーハンマーにも匹敵するような強力な武器も考えていると話す。

 

「今考えているのはこのくらいだが、ワタシはビルダーハンマーにも及ぶような、強力な武器も考えている。作り方を思いついたら、すぐに教えるぞ」

 

それほど強力な武器なら、これからの戦いでも非常に役立っていきそうだ。

ヘイザンの鍛冶屋としての能力は、だんだん師匠のゆきのへに近づいている。

その武器を思いつくのも、ヘイザンなら必ず出来るだろう。

 

「今日は色々な教えてくれてありがとう。ヘイザンなら、その武器も必ず作れると思うぜ」

 

俺は感謝の言葉をヘイザンに言った後、そろそろ素材集めに行こうかと、リムルダールの町を出ていった。

 

俺はその日それから、仕立て台の素材となる木材や石材を集めるために、小舟で南国草原に向かった。

そこにはメタルスライムも生息しているので、メタルゼリーもいくつか回収していく。

大倉庫もあった方が便利だと思い、俺はブラウニーから毛皮も集めていった。

夕方にリムルダールの町に帰って来ると、俺は大倉庫と仕立て台をビルダーの魔法で作り、修理された部屋の中に置いていく。

それらを設置し終えると、明日はさびた金属やいにしえの調合台の素材を集めるために密林に向かおうと思いながら、俺は体を休めた。


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