ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode168 希望を断つ者たち

リカントマムルたちに見つからないようにしながら、俺はリカント道場に入っていく。

すると、中にはリムルダールの女兵士のミノリと、黄色いリカントである、キラーリカントの姿があった。

イルマの予想通り、ミノリはここに逃げていたみたいだな。

隣にいるキラーリカントが、リカント道場の創設者なのだろうか。

そう思っていると、俺が近づいていく前にミノリはこちらに気づき、話しかけて来た。

 

「あなたは、雄也さん…?ここに戻って来ていたんですか?」

 

「ああ。アレフガルド各地で強力な魔物が現れたから、リムルダールが心配になったんだ」

 

ミノリもイルマと同じように、俺がリムルダールに戻って来たのを知って驚く。

彼女は邪毒の病にもかかっておらず、元気そうだった。

リムルダールの町にまた魔物が襲って来ることもありそうだが、一緒に戦ってくれるだろう。

俺のことを知らないキラーリカントは、ミノリに俺のことを聞いていた。

 

「知り合いのようだが、この男は誰なのだ?」

 

「ビルダーの雄也さんです。昔あたしたちと一緒に、リムルダールの町を作ってたんですよ」

 

俺もミノリに続いて、キラーリカントにいつもの自己紹介をする。

 

「あんたとは初めて会うな…俺は影山雄也、いつもは雄也って呼ばせてる」

 

「ビルダーのことは聞いていたが、そなたがそうだったのか…わしはクロティム、この道場の主をしておる」

 

キラーリカントも、自分の名前を名乗った。

クロティムとも、これから町の仲間として協力していくことになるだろう。

だが、道場の主と言っているが、弟子のリカントたちの姿は1体も見かけられない。

既に邪毒の病で、全滅してしまったのだろうか…?

 

「町の仲間から聞いたけど、リカントマムルと戦うためにリカントを鍛えてたんだろ?リカントたちは、どうなったんだ…?」

 

「多くが戦いで死んでしまった…以前はわしらを襲うのはリカントマムルだけだったが、最近は人間に味方するわしらを潰すために、見た事のない魔物も多数襲って来たのだ。戦いを生き延びた者も、暗黒魔導とやらが振りまいた病で息絶えていき、残ったのはわしだけだ…」

 

やっぱりリカントたちは全滅していたのか…。

邪毒の病だけでなく、多数の魔物の襲撃があったようだな。

恐らく、リムルダールの町やリリパットの里を壊滅させた時のような、大軍勢が襲って来たのだろう。

このままここで戦い続ければ、ミノリもクロティムも危ない。

俺は二人に、リムルダールの町に来ないかと聞いた。

 

「そうだったのか…。…それなら、このままここにいたらあんたたちも危ないと思うし、俺とリムルダールの町に来ないか?暗黒魔導の襲撃で破壊されたけど、俺たちで建て直しているんだ。旅のとびらもなくなったけど、俺の作った小舟って乗り物があれば大丈夫だ」

 

「あの町を作り直せるなら、あたしはもちろん行きますよ。クロティムさんは、どうですか?」

 

ミノリもリムルダールに住む者として、町を立て直したいと思っているようで、着いて来てくれると言う。

クロティムも、ミノリの質問に頷いた。

 

「弟子はもうおらぬし、そなたの言う通りここにいてはわしも死んでしまう…弟子たちの仇を討てるよう、そなたらに協力しよう」

 

道場の主であるクロティムがいれば、リムルダールの町の戦力はかなり上がるだろう。

もう何をしてもリカントたちが戻って来ることはないが、俺もせめて仇は討ちたい。

二人の返事を聞くと、俺はさっそくリムルダールの町に戻ろうとした。

 

「ありがとう、二人とも。小舟に乗るために、まずは海までついて来てくれ。リカントマムルに見つからないよう、慎重に行くぞ」

 

「奴らから隠れるのは苦手だが、なるべく気をつけよう」

 

俺を先頭にして、ミノリとクロティムも道場から出ていく。

人間よりも体の大きいクロティムが見つからないように歩くのは大変で、いつも以上に俺は周囲を警戒していった。

岩や木の影にも隠れながら、音を立てないように進んでいく。

かなり時間がかかり、海にたどり着くまでには20分以上かかっていた。

 

何とか魔物に見つからずに海までやって来ると、俺はポーチから小舟を取り出し、海に浮かべる。

クロティムは人間より体重も重そうだが、この小舟は4人乗りなので大丈夫だろう。

 

「ここからリムルダールの町に向かう。二人とも、乗ってくれ」

 

「これが小舟とやらか…ビルダーの力というのは、すごいものだな…」

 

ビルダーの力で作られた小舟を初めて見て、クロティムはそんなことを言う。

この力は本当に便利だ…ルビスが遺してくれたこの力を使って、何としてもエンダルゴを倒す武器を作りたいな。

クロティムが小舟に乗り込むと、ミノリも後に続いた。

 

「二人とも乗ったな…さっそく出発するぞ」

 

二人が乗ったのを見て、俺は小舟を漕いでリムルダール近くの岩山に向かっていく。

南国草原とジャングルの地域に逃げた仲間たちは、これで全員救出することが出来たな。

今日はまだ時間があるし次は赤い旅のとびらの先にあった、水没した密林に向かおうと俺は思っていた。

 

今後のことを考えながら小舟を漕ぎ続けて、俺たちは30分くらいでリムルダールの町の近くの岩山にたどり着く。

岩山を越えればすぐに町だが、二人は崖を登ることが出来るだろうか。

 

「目の前に見える岩山を越えればリムルダールの町だ。二人とも、この岩山を登れそうか?」

 

「あたしは兵士ですし、体力には自信ありますよ」

 

「わしも力には自信がある。このくらいの岩山なら、簡単に越えられるぞ」

 

俺が聞いてみると、二人とも岩山を登れると答えた。

もし登れないのであれば岩山を通らないルートを使わなければいけないが、その必要はなさそうだ。

 

「それなら良かった。町までもう少しだし、頑張って行くぞ」

 

俺たちは崖の下に上陸すると、また俺を先頭にして岩山を登っていく。

確かに二人の体力はかなり高いようで、十メートル以上の段差を登り続けてもほとんど疲れていないようだった。

崖を登りきると俺たちはキメラやどくやずきんに警戒しながら、リムルダールの町に向かっていく。

クロティムは何度か魔物に見つかりそうになっていたが、岩山に着いてから30分くらい経って、俺たちはリムルダールの町に帰って来た。

 

リムルダールの町に戻って来ると、ミノリとクロティムは外に出ていたコレスタと話を始める。

コレスタたちはもう病人のベッドを作り終えたようで、建物の修復作業の続きをしていた。

みんなの力があれば壊された町も、数日で元通りになることだろう。

俺はこれから密林地帯に向かうが、その前にノリンたちの様子を見に行くことにする。

 

「ノリンたちは、まだ大丈夫なのか…?」

 

邪毒の病は発生から数日でリリパットの里とリカント道場を滅亡に追い込んだ、極めて強力な病だ。

4人の容態が、急変してしまう可能性もあるだろう。

俺は部屋のとびらを開けて、ノリンたちの様子をしばらく観察した。

 

「まだ大丈夫か…でも、急がないとな」

 

すると、衰弱は進んでいるもののまだ危険な状態にはなっておらず、もう少しは持ちこたえられそうだった。

しかし、治療を急がなければいけないのは変わりないだろう。

何としても、今日中にエルとゲンローワを見つけ出したいな。

 

4人の容態の観察を終えると、俺は部屋を出てまた町から出発しようとする。

だがその時、俺と病人たちのいる部屋に、焦った顔をしたコレスタが飛び込んで来た。

 

「大変だ、雄也さん!まずいことになった…!」

 

こんなに焦っているということは、ただ事ではなさそうだな。

もしかして、リムルダールの町に魔物が迫って来ているのだろうか。

 

「そんなに急いで、何があったんだ?」

 

「町の東から、結構な数の魔物が近づいて来ている。僕たちと一緒に、迎え撃ちに行こう!」

 

俺が戻って来てまだ2日目なのに、リムルダールの魔物は動きが早いな。

さっきは町の近くに魔物はいなかったので、ノリンたちの様子を見ている間に来たのだろう。

もしかして魔物の群れの中には、暗黒魔導もいるのだろうか?

 

「魔物の群れか…奴らの中に、暗黒魔導の姿はあったか?」

 

「いや、普通の魔物だけだった」

 

俺はそう聞いたが、コレスタは暗黒魔導は来ていないと話す。

リムルダール中に邪毒の病を振りまくのに、忙しいからだろうか。

暗黒魔導がいないのならば、あまり苦戦はしないかもしれないな。

だが、ルビスの死後に現れた新種の魔物は間違いなく来ているだろうし、気を抜かないようにしよう。

 

「分かった…それでも気を抜かず、今すぐ迎え撃ちに行くぞ」

 

俺はそう言うと、ポーチからおうじゃのけんとビルダーハンマーを取り出して、リムルダールの町の外に向かう。

町の東からはコレスタの言う通り、多数の魔物が襲いかかって来ていた。

ドロルリッチが16体、メイジドラキーが12体、リカントマムルが8体、キャタビウスが11体の、合計47体もいる。

最後方のキャタビウスは体が大きく、この群れの隊長になっているみたいだな。

 

「やっぱり新種の魔物が多いな…」

 

「はい。でも、大事なこの町を、2度と壊されたくはないです…あたしたちと一緒に、魔物たちを倒しましょう」

 

俺が魔物を観察していると、先に剣を構えていたミノリがそんなことを言った。

町が目の前で壊されていく悲しさを、もう感じたくはないのだろう。

イルマもクロティムも、町を失うことがないよう、魔物たちとの戦いに備える。

 

「ああ。必ずこの町を守り抜こう」

 

俺たちがここで魔物の群れに負けたら、ノリンたちは確実に死ぬだろう。

メルキドでもリムルダールでも、俺たちは多くの仲間を亡くした…俺もこれ以上、大切な町や仲間を失いたくはない。

必ずみんなを救って、リムルダールの2度目の復興を達成してやるぜ。

そう思っている間に、魔物たちはリムルダールの町のすぐ近くまで来る。

俺の後ろから来たコレスタも剣を構え、俺が参加する中では5回目の、リムルダールの防衛戦が始まった。

 

前衛のドロルリッチたちは俺たちに近づいて来ると、口から毒液の塊を吐き出して来た。

塊は地面に当たると炸裂し、周りに毒液が撒き散らされる。

 

「この毒液、かなり範囲が広いな…」

 

攻撃範囲は毒の病を振りまいていた巨大ドロルより広く、走って避けるのは難しそうだ。

俺はジャンプしてかわしながら、少しずつドロルリッチたちに近づいて行く。

その間にも奴らにダメージを与えられるよう、俺はポーチからサブマシンガンを取り出した。

 

「サブマシンガンで弱らせて、近づいたら剣で切り裂こう」

 

サブマシンガンの弾は最近補充していないが、まだかなりの数が残っている。

俺ははがねの弾丸を連射して、ドロルリッチたちを撃ち抜いていった。

金色と言えども奴らの肉質は柔らかく、かなりのダメージを与えられる。

サブマシンガンを持っていないみんなも、少しずつドロルリッチたちに近づいていった。

人間より体の大きいクロティムも、今のところはダメージを受けていない。

しばらくサブマシンガンでの攻撃を続けると、8体のドロルリッチは俺に攻撃を集中して来た。

 

「集中攻撃か…これだと、近づくのが難しいな」

 

遠距離からも攻撃が出来る俺を、何としても潰したいのだろう。

近くで大量の毒液を飛ばされたらさすがに避けきれないので、俺は大きくジャンプして奴らから距離を取る。

だが、毒液攻撃には予備動作が少なく、いくら距離をとったとしても、8体の攻撃を全て避けるのは難しいな。

 

「少しでも減らせたら、近づきやすくなるんだけどな…」

 

俺は1体でも奴らを減らせるように、何とか回避を続けながらサブマシンガンを撃ち続けていった。

コレスタたちは自分を狙う奴らの数が減ったので、一気にドロルリッチたちに近づいて行こうとする。

 

だが、奴らに斬りかかろうとする4人に、後ろのメイジドラキーたちも攻撃を放った。

奴らは呪文を唱えて、炎でコレスタたちを焼き尽くそうとして来る。

 

「ドロルリッチだけじゃなくて、こいつらも遠距離攻撃して来るのか…!」

 

「これでは、なかなか近づけないですね…」

 

詠唱時間は長いものの、だいまどうのメラミくらいの大きさの火球であり、イルマたちはドロルリッチに近づくのが困難になってしまった。

どうやらメイジドラキーの中でも、かなり強力な個体みたいだな。

このまま攻撃を避け続けているだけでは、みんな体力が尽きてしまうだろう。

俺もサブマシンガンでドロルリッチを3体倒すことが出来たが、まだ残っている5体は毒液を吐き続けている。

 

「あのメイジドラキー、結構強いな…早くこいつらを倒して、みんなを助けに行かないと」

 

俺は目の前にいる奴らを倒して、コレスタたちを助けに行こうとした。

だが、ドロルリッチは体力がかなり多く、はがねの弾丸を受けても簡単には倒れない。

このままでは助けに行く前に、誰かが毒液や炎を受けてしまうかもしれないな。

炎はともかく、ドロルリッチの毒液を食らうのは非常に危険だろう。

そう思っていると、クロティムが何か考えがあるようで、奴らの攻撃を回避しながら俺に話しかけた。

 

「雄也!少しだけでいい、わしを狙っている魔物を引き付けてくれ!」

 

クロティムは2体のドロルリッチと3体のメイジドラキーに狙われており、そいつらを引き付ければ、俺は10体もの魔物に狙われることになり、かなり危険だ。

だが、クロティムは確実に魔物たちにダメージを与える方法を考えていることだろう。

何とかしてドロルリッチたちを止めるため、俺は彼の話を聞くことにする。

 

「分かった。魔物たちは引きつけるから、みんなを助けてくれ」

 

そう答えると、俺は目の前にいる5体のドロルリッチの動きも見ながら、クロティムを攻撃している魔物たちにサブマシンガンを放った。

突然死角から攻撃を受けて奴らは怯み、攻撃の対象を俺へと変える。

ドロルリッチもメイジドラキーも俺が引き付けたのを見て、クロティムは全身に力を溜め始めた。

しばらくして力が溜まりきると、クロティムは数メートルも飛び上がり、ドロルリッチの群れに目掛けて思い切り鋭い爪を叩きつける。

 

「わしの道場を潰し、人間の町も狙う者ども…まだまだそなたらにはやられんぞ!」

 

ミノリを狙っていた2体のドロルリッチは爪の直撃を受け、大きく怯んだ。

さすがはリカント道場の創設者だ…長い溜め時間があるとは言え、あんな大技が使えるとはな。

仲間が攻撃されたのを見て、コレスタとイルマを狙っていたドロルリッチたちも、クロティムへの攻撃を始める。

クロティムは攻撃を避けながら、次々に奴らを爪で引き裂いていった。

 

「近づきさえ出来れば、大したことない相手だな」

 

ドロルリッチたちは簡単には死なないが、だんだんと弱っていく。

後ろの9体のメイジドラキーは炎を使うとドロルリッチを巻き込んでしまうので、今度は牙を使って、クロティムを攻撃しようとしていた。

ミノリたちはクロティムを援護するため、奴らへと近づいていく。

 

「ありがとうございます、クロティムさん。これであたしたちも魔物に近づけますし、援護しますね」

 

「助かるが、ミノリ、そなたは雄也のところに向かえ。あやつも多くの魔物に狙われている」

 

だが、クロティムはミノリに、俺のところに向かうように指示した。

俺はサブマシンガンでまた2体のドロルリッチを倒したが、まだ8体の魔物に狙われている。

このまま一人で戦い続ければ体力が尽きてしまいそうだが、ミノリの助けがあれば大丈夫だろう。

 

「分かりました。雄也さんにも、怪我はさせません!」

 

ミノリは俺のところに向かって来て、イルマとコレスタはクロティムを援護する。

もうすぐ後衛のリカントマムルたちがやって来るが、それまでになるべく魔物の数を減らしておこう。

ミノリは俺と戦っているドロルリッチの背後に来ると、持っている剣を思い切り突き刺した。

背後から攻撃を受けて、そのドロルリッチは動きを止める。

 

「助かった、ミノリ。後衛の魔物が来る前に、こいつらを倒すぞ」

 

俺はミノリの攻撃を受けた奴にはがねの弾丸を連射し、とどめをさしていった。

残った7体の魔物のうち、2体のドロルリッチと2体のメイジドラキーは攻撃対象をミノリへと変える。

残りは今まで通り俺の接近を防ごうと毒液と火炎を放って来たが、3体くらいなら避けながら接近することも十分可能だ。

俺はサブマシンガンを撃ちながら、ドロルリッチたちへと接近していった。

そして、近接武器での攻撃が届く位置まで来ると、俺はおうじゃのけんとビルダーハンマーに再び持ち替え、力強く叩きつける。

 

「やっと近づけたな…厄介な奴らだったけど、俺たちの町を壊させはしない」

 

伝説の武器での攻撃を受ければドロルリッチも大ダメージを受けるようで、怯んで動きを止めた。

接近された奴らは体当たりで攻撃して来ようとするが、攻撃速度はあまり早くない。

俺は回避してドロルリッチたちの側面にまわり、次々に斬り刻んでいく。

近接武器での連続攻撃を受けて、俺と戦っていた2体のドロルリッチは青い光に変わっていった。

 

「倒したか…これでドロルリッチの数も減って来たな」

 

ドロルリッチは死に際に、金色のねばつく液体を落としていく。

素材として使えるかもしれないが、回収は後にしよう。

奴らを倒すと、俺はミノリと戦っているドロルリッチも倒しに行こうとする。

だが俺のところには、1体のメイジドラキーと3体のリカントマムルも迫って来ていた。

 

「後衛の奴らも来たか…回転斬りを使って、一気に薙ぎ払おう」

 

ここで回転斬りを使えば、奴らにも大ダメージを与えられるだろう。

俺はミノリと戦っているドロルリッチの背後にまわり、腕に力を溜め始める。

近づいて来たリカントマムルたちは、爪で俺を斬りつけようとしていた。

 

「その武器…お前はビルダーだな。2度とエンダルゴ様に逆らえぬよう、バラバラに引き裂いてやる!」

 

「我らに屈するがいい、ビルダー!」

 

リカントマムルたちは、俺がビルダーであることに気づいたみたいだな。

俺の武器に関する情報は、もう多くの魔物に知れ渡っているのだろう。

奴らはリカントマムルと言えども強そうだが、俺は屈するつもりはない。

魔物たちが至近距離にまで入って来ると、俺は腕の力を解放して、奴らを薙ぎ払った。

 

「回転斬り!」

 

二刀流での回転斬りが直撃し、ミノリと戦っていたドロルリッチとメイジドラキーは倒れ、リカントマムルも重傷を負う。

メイジドラキーは魔法は強力だが、耐久力は普通の奴と変わらないみたいだな。

リカントマムルは怯んでも何とかすぐに体勢を立て直し、俺を攻撃し始める。

 

「おのれビルダー…!いきなりこんな技を…!」

 

「あんたたちがどれだけ強くても、俺は復興をやめないぞ」

 

リカントマムルの爪には混乱させる効果があり、気をつけなければいけない。

しかし、奴らは3体とももう瀕死なので、苦戦せずに倒すことが出来るだろう。

俺は爪を避けながら両腕の武器を振り下ろし、残った体力を削り取っていく。

しばらく攻撃を続けて、俺は爪を受けることなく、リカントマムルたちを倒すことが出来た。

 

「これでリカントマムルも倒すことが出来たし、あとはキャタビウスだけだな」

 

ミノリもリカントマムルを1体倒し、魔物の数は残り少なくなって来ている。

そんな魔物たちを追い詰めた俺とミノリのところに、今度は5体のキャタビウスが迫って来た。

キャタビウスもドロルリッチと同様に、キャタピラーより強力な技を使って来るかもしれない。

慎重に戦って、怪我をしないようにしないとな。

キャタビウスたちは近づいて来ると、俺たちに向かって回転しながら突進して来る。

 

「回転突進か…キャタピラーでも見た技だな」

 

この突進はキャタピラーも使っていたし、避けるのは慣れている。

キャタピラーより回転速度が早く、マヒの森の巨大キャタピラー以上だったが、ジャンプを繰り返すことで回避することが出来た。

勢いよく突進したキャタビウスたちは、リムルダールの町の建物にぶつかる。

この隙に攻撃しようと、俺は奴らに近づいていった。

 

だが、キャタビウスは町の建物にぶつかっても動きを止めず、回転の向きを変えて俺のところに突進して来る。

 

「くっ、壁にぶつかっても動きが止まらないのか…!」

 

あんな勢いでぶつかったら反動で動けなくなりそうだが、キャタビウスは平気なのか。

俺は再び連続でジャンプして、奴らの突進をかわす。

すると、さすがに永遠に回転し続けることは出来ないようで、今度は動きが止まった。

だが、高速で回転するキャタビウスを全て避けるのは体力を使うので、早めに決着をつけなければいけなさそうだ。

 

「早く倒さないと、俺の力が尽きるな…」

 

俺は動きが止まったキャタビウスの群れに近づき、腕に力を溜める。

そして一気に倒そうと、俺は奴らを薙ぎ払い、斬り裂いていった。

 

「早く決着をつける、回転斬り!」

 

二刀流での回転斬りを受けてもキャタビウスは倒れなかったが、かなりのダメージは与えられたはずだ。

大きく怯み、体勢を立て直すまでの時間も長くなったはずだ。

 

「あたしも手伝いますね、雄也さん」

 

ミノリも5体のキャタビウスを次々に斬りつけていき、弱らせていった。

このまま行けば、もう一度回転斬りを当てれば倒すことが出来そうだ。

しかし、5体のキャタビウスと戦っていた俺たちのところに、隊長の巨大キャタビウスもやって来てしまう。

 

「まずいな、隊長の巨大キャタビウスが来てる…」

 

その前に5体のキャタビウスを倒そうとしたが、もう巨大キャタビウスは回転突進攻撃を行ってきた。

奴の回転速度は非常に早く、その上巨体なので、大きくジャンプしても避けるのは難しい。

俺は一度目の回転は大ジャンプで避けることが出来たが、二度目は避けられなかった。

 

「さすがに避けきれないな…」

 

俺は両腕の武器に力をこめて奴の攻撃を受け止めようとするが、あまりに衝撃が強く、直撃こそ避けられたものの全身に激痛が走り、武器を落としてしまう。

 

「くっ…!何て力なんだ…」

 

だが、巨大キャタビウスの動きも止まったので、俺は急いで武器を拾って腕に力を溜める。

ここで痛みに耐えて攻撃しなければ、奴を倒すことは出来ないだろう。

俺は腕に力が溜まると垂直に飛び上がり、両腕の武器を叩きつける。

 

「飛天斬り!」

 

両腕を痛めた直後での飛天斬りなのでいつもほどの力は出なかったが、かなりのダメージは与えられただろう。

しかし、飛天斬りを放っている間に5体のキャタビウスも起き上がり、とどめをさす前に巨大キャタビウスも攻撃を再開してしまった。


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