ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
リムルダールに戻って来てから2日目、俺は3人をリムルダールまで運んだ疲れのせいで、朝遅くまで寝ていた。
目が覚めた時にはみんな起きており、外で町の修復作業を行っているようだ。
ノリンたちは昨日より衰弱しているようだが、まだ命に関わるほどではない。
「みんなまだ生きてるけど、早く薬を作らないとな…」
邪毒の病の患者を救うには、エルとゲンローワの力が不可欠だろう。
それ以外のみんなも、早めに助け出さないといけないな。
俺は今日も南国草原とジャングルの地域の探索をするために、部屋の外に出ていった。
出発の前に、また病人のベッドを作っておいてくれと、みんなに頼む。
「3人とも!俺は今日もみんなを探しに行って来るから、草のベッドを作ってくれ。他のみんなも、邪毒の病に感染しているかもしれないからな」
「分かった。雄也が戻って来るまでには、作っておくよ!」
「気をつけて行って来るんだぞ」
「みんな無事だといいな」
俺の頼みを聞いて、コレスタたちは昨日と同様に草のベッドを作り始める。
作業台さえあれば俺がビルダーの力で短時間で作ることが出来るが、暗黒魔導の襲撃で木の作業台は失われてしまった。
木の作業台を再入手する方法も考えなければいけないが、今はみんなの捜索を優先しよう。
俺はみんなに草のベッドのことを頼むと、今日も岩山を超えて小舟に乗り、マヒの森へと向かっていった。
15分ほど小舟を漕ぎ続けて、俺はマヒの森の近くにやって来る。
「他にも生き残りのリリパットがいるかもしれないから、まずは森の中だな」
昨日の捜索によって、俺はリリパットの生き残りであるオラフトとセリューナをリムルダールの町に連れていく事が出来た。
だが、マヒの森の全域を調べた訳ではないので、まだ他の生き残りがいるかもしれない。
俺はマヒの森に上陸すると、昨日調べていなかった部分にも向かっていった。
「他の生き残りもいるといいな…」
昔巨大キャタピラーを倒した時に出会った2体のリリパットも、まだ発見出来ていない。
あいつらも、生きているといいんだけどな…。
俺はそう思いながら、新たに見つけたリリパットの家の残骸も、隅々まで調べていく。
「家の残骸はあるけど、誰もいないな…」
しかし、いくつかの家の残骸を調べても、生きているリリパットの気配は全くしない。
1時間くらいかけて森を歩き続けるが、リリパットたちの姿はまったく見られなかった。
そしてとうとう俺はマヒの森の全ての場所を歩き回り、生き残りの捜索を終えることになってしまう。
「これで全部調べたけど、結局誰も見つからなかったか…あの二人を除いて、リリパットは全滅みたいだな」
オラフトとセリューナが、最後のリリパットだったという事だろう。
あの二人が死んだら、リリパットの里は全滅してしまうので、何としても助けてやりたいな。
リリパットたちを助けるためにも、次はみんなを探しに行くか。
「マヒの森は調べ終えたし、今度は草原の方に行ってみるか」
オラフトの話では、ノリンを除いても3人の仲間がこの地域に来ている。
この森にいないことから、彼らはリリパットの里が壊滅した後、草原の方に逃げた可能性が高いだろう。
俺はキャタビウスたちから隠れながら、南国草原へと向かっていった。
また15分くらい歩いて川と丘を越え、俺は草原地帯にやってくる。
ここにもたくさんのキャタピラーやキャタビウスがおり、進むのは大変そうだ。
見つかる可能性を下げるため、俺はポーチから草原の箱を取り出した。
「魔物が多いから、草原の箱を使って行くか」
ここの草原はメルキドの草原と少し色が違うが、草原の箱の効果もない訳ではないだろう。
魔物から隠れながら、俺は広い草原を歩いていった。
「みんなが隠れているとしたら、洞窟の中だろうな」
みんなも魔物には警戒しているだろうし、隠れているなら洞窟の中だろう。
俺は草原の向こう側にある山を目指して、ゆっくり進んでいく。
途中、かつて青の旅のとびらの出口になっていた場所にも来たが、リムルダールの町の青いとびらが破壊されたことで、こちらからも町に行くことは出来なくなっていた。
草原を歩き続けて30分くらいたって、俺は洞窟のある山にたどり着く。
「洞窟に着いたな…みんな、無事だといいんだけど」
魔物の襲撃を生き延びたリリパットも邪毒の病でほとんどが死んでしまったし、みんなも死んでいる可能性もある。
だが、生きていることを信じて、俺は洞窟の中も調べていった。
最初に見つけた洞窟には誰もいなかったが、俺は他の洞窟にも向かっていく。
「この洞窟には誰もいないか…でも、あっちはどうだ?」
洞窟には石炭の鉱脈もあったが、今は3人の捜索を優先した。
この山にはかなりの数の洞窟があるが、俺は一つ一つ調べていく。
しかし、山にある全ての洞窟を調べても3人の姿は見つからず、何の痕跡も発見することは出来なかった。
「洞窟は全部探したけど、誰もいないな…どこに行ったんだ?」
マヒの森にも草原地帯の洞窟にもいないとなれば、3人はどこに行ったのだろうか。
しばらく考えた後、俺は草原地帯の山のタルバのクイズがあった場所の奥に、未探索の地域があったことを思い出す。
ここまで探して見つからないとすれば、みんなは俺が行ったことのない場所に向かったのかもしれないな。
その場所に何があるかは気になっていたし、行ってみよう。
「結構遠い場所だけど、クイズの場所の先に行ってみるか」
俺は洞窟を出ると、再び草原の箱を被ってタルバのクイズがあった場所に向かっていった。
山にはブラウニーの群れも生息しており、より慎重に進んでいく。
20分くらいでタルバのクイズがあった場所にたどり着くと、俺はその先にある岩山に向かっていった。
「この岩山の奥には、何があるんだ?」
岩山に草があったら不自然なので、俺は草原の箱を取って進む。
生息しているキメラたちは、白い岩の影に隠れながら回避していった。
しばらく進んでいくと、俺は周囲を岩山に囲まれた、小さな盆地のような場所を発見する。
「岩山に囲まれた場所か…何だ、この屋敷は?」
その場所を覗きこむと、俺は人間が作った物と思われる、大きな屋敷を見つけた。
ところどころ欠けているが、きれいな赤色の屋根に覆われている。
屋根の近くには、二つの宝箱が置いているのも見つかった。
俺たちはこんな屋敷を作っていないので、大昔にリムルダールに住んでいた人の物なのだろう。
「もしかしたら、ここに誰かいるかもしれないな…」
破壊されている部分も少なく、魔物から隠れるなら絶好の場所だ。
リリパットの里から逃げ出した3人は、ここにいるのかもしれないな。
屋根にある宝箱も気になるが、俺はみんなの無事を確認するため、岩山を降りて屋敷の中に入っていく。
すると、俺は屋敷の1階で、かつて共に魔物たちと戦った仲間である、イルマの姿を見つける事が出来た。
彼はウルスの研究の犠牲となりかけたが、俺の作った浄化の霊薬で回復し、今まで生き延びている。
俺はイルマに近づき、話しかけた。
「おい、イルマ。ここにいたのか」
「あなたは、雄也さん!?どうしてここに?」
突然声をかけられて、イルマは驚いた声を出す。
リムルダールに戻って来るのは事前に伝えていなかったし、驚くのも無理ないだろう。
俺はノリンの時と同じように、イルマにリムルダールに戻って来た経緯について話した。
「世界を裏切った元勇者のせいでルビスが死んで、各地に強力な魔物が現れ始めたから、リムルダールが心配で戻って来たんだ。暗黒魔導のせいで町が壊されたみたいだけど、俺たちで作り直している。今は離れ離れになった町のみんなを探しているんだ」
「ドロルリッチやキャタビウスが現れたのは、それが原因だったのか…。雄也さんがいれば魔物は何とかなるかもしれないけど、この地にはそれ以上に深刻な問題があるぜ…」
ドロルリッチというのは、この前見つけた金色のドロルの事だろう。
強力な魔物が多いが、みんなで強力な武器を使って戦えば、勝ち目は十分にあるはずだ。
暗黒魔導にしても、今まで多くの強敵を倒してきたおうじゃのけんとビルダーハンマーがあれば、倒せる可能性はあるだろう。
深刻な問題というのは、邪毒の病のことだろうか。
「リリパットの生き残りから聞いたけど、邪毒の病のことだろ?」
「ああ…。おれはザッコ、ノリン、ミノリと一緒にリリパットの里にいたんだけど、魔物の攻撃で里は壊滅した。その時に魔物が、『ここを生き延びても、お前たちは邪毒の病で死ぬだろう』って言ったんだ。おれはノリンやミノリとは別れてしまったけど、ザッコとは一緒に行動してた。でも、この屋敷に着いてしばらくして、ザッコは高熱を出して倒れて、どんどん弱っていった…」
ノリンの他にこの地域にいた3人と言うのは、イルマ、ザッコ、ミノリの事だったのか。
邪毒の病にかかったザッコは、死んでしまったのだろうか?
「ザッコは、死んでしまったのか…?」
「いや、まだ生きてて、屋敷の2階のベッドに寝かせてある。でも、治療法がないから、弱っていく一方だ…」
まだ生きているのは良かったが、ノリンたちと同じで、早く薬を作らなければならなさそうだ。
まだ見つかっていない、ミノリの居場所についても気になるな。
俺はイルマに、ミノリの居場所について心当たりがないかも聞いてみた。
「そうか…。あんたたちと別れた二人のうち、ノリンは邪毒の病に感染していたけど、リムルダールの町で保護した。ミノリの居場所に心当たりはあるか?」
「多分、この辺りの岩山の奥の草原にある、リカント道場だ」
リカント道場…この屋敷からさらに奥に行ったところに、そんな場所があったのか。
リカントは魔物の名前だが、彼らが道場なんて作っているのだろうか。
「リカント道場…?何なんだそれ?」
「この奥の草原では青色のリカントと赤色のリカントマムルが縄張り争いをしていて、劣勢なリカント側を鍛えるために、1体のキラーリカントが道場を作ったんだ。そのリカントたちはリカントマムルとの戦いに必死で、おれたちを襲っては来なかった。そこでおれたちはリカント道場を支援して、仲良く出来ないか試みたんだ」
リリパットとキャタピラーもそうだったが、魔物同士の縄張り争いというのも結構あるんだな。
それで、リムルダールの町とリカント道場は協力関係になったということか。
「それで、試みがうまくいったのか」
「うん。おれもリカントたちと一緒に、リカントマムルと戦ったぜ」
イルマは頷いて、そう答える。
俺がリムルダールを去った後に、そんなことがあったとはな。
人間に味方する魔物という事であれば、他の多くの魔物から狙われていてもおかしくないな。
ミノリも助け出したいし、後で見に行って来よう。
ミノリの居場所についても聞いた後、俺はイルマとザッコをリムルダールの町に連れていこうとする。
「教えてくれてありがとう。ザッコを治す方法はまだないけど、一緒にリムルダールに戻って来てくれないか?俺は小舟って物を持ってるんだけど、それがあればあんたもザッコも連れて行けるぜ」
「おれもあの町を壊されたままにはしておきたくなかったし、もちろんいいぜ。ザッコを連れて来るから、少し待っててくれ」
強力な魔物と邪毒の病のせいで厳しい状況だが、イルマもリムルダールの町を立て直したいとは思っているようだ。
イルマは2階に上がり、ザッコを連れに行った。
しばらく待っていると、イルマはザッコを背負って降りてくる。
ザッコはやせ細り、やはり身体中が黒紫色に変色していた。
「ザッコを連れて来たぜ、雄也さん」
「ありがとう、イルマ。小舟に乗るために、海に向かうぞ」
ノリンたちより症状が重そうで、残された時間はあまりなさそうだ。
エルやゲンローワの捜索も、急がないといけないな。
ザッコは俺の姿を見ると、口を何とか動かして話しかけて来た。
「雄也さん…久しぶりだべ…。最後にあんたに会えて、良かったべ…」
彼は最後になんて言っているが、助けてこれからも一緒に町を作りたい。
「最後にはさせない。必ずエルとゲンローワも探して、治療法を見つける。まずは、リムルダールの町で休んでくれ」
俺はザッコを背負ったイルマと共に屋敷を出ていき、海へ向かっていった。
ザッコを背負って崖を登るのは大変そうで、イルマはかなり体力を使ったようだが、無事に上までたどり着く。
キメラから隠れながら岩山を歩いていき、俺たちは10分ほどで海岸にまでたどり着いた。
海に着くと俺はポーチから小舟を取り出し、イルマたちを乗せる。
「イルマ、これに乗ってくれ」
「こんな乗り物があったんだ…ありがとう、雄也さん」
二人が乗ると俺は小舟を漕ぎ始め、リムルダールの町を目指していく。
世界地図を見ながら進んでいき、俺は30分ほどで町の近くの岩山にたどり着くことが出来た。
「この岩山を超えたらリムルダールの町だ。二人とも、もう少しだぞ」
朝遅かったのでもうすぐ昼頃だが、午後からも他のみんなを探しに行こう。
ミノリを見つけたら、赤色や緑色の旅のとびらの先にも行った方がいいかもな。
そう思っていると、ザッコは自分がリムルダールの町まで連れて行くとイルマは言った。
「それなら、おれがザッコを町まで連れていく。雄也さんは、ミノリを助けに行ってくれ」
「ありがとう、それは助かるな。町までは近いけど、気をつけてくれよ」
イルマはさっきもザッコを背負って崖を登っていたし、多分町までたどり着けるだろう。
ミノリのことも気になるし、イルマに任せたほうがいいかもしれないな。
俺はそう返事して、イルマとザッコを小舟から下ろす。
二人が小舟から降りると、俺はまた岩山から離れていった。
「イルマの言っていた、リカント道場に行ってみるか…」
二人と別れた後、俺はミノリがいるであろう、リカント道場を目指していく。
生き残っているリカントがいたら、彼らもリムルダールの町に連れて行かないとな。
俺は世界地図で岩山の奥の草原の位置を確認し、舟を進めていく。
地図に従って数十分漕ぎ続けると、確かに目の前に、リカントマムルが生息している草原地帯が見えてくる。
恐らくリカント道場のリカントたちは、このリカントマムルたちと縄張り争いをしているのだろう。
「この辺りに、リカント道場があるんだな…」
俺は草原地帯に上陸すると、リカントマムルたちから隠れながら探索をしていく。
草原の箱も使って、リカント道場の場所を探していった。
そして、しばらく探し続けると、岩山の近くにかなり大きな建物があるのが見えてきた。
「これがリカント道場か…入ってみよう」
建物の入り口には、2体の火をふく石像も置かれている。
他に目立つ建物もないので、これが恐らくリカント道場なのだろう。
ミノリもリカントたちも、生き残っているといいな…。
俺はそう思いながら、リカント道場に向かって近づいていった。