ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
小舟で海を渡り続けて2時間ほどたって、俺の目の前にラダトームの大地が見えてくる。
漕ぎ疲れて俺は腕が痛くなって来るが、早く城を確認しようと、手を止めずに進んでいった。
ラダトームに上陸すると、俺は魔物たちから隠れながら城へと向かっていく。
「ラダトームに着いたか…相変わらずここは魔物が多いな」
ラダトームのみんなのおかげか前よりは減った気がするが、それでもメルキドよりも多くの魔物がうろついていた。
ここの魔物は強力だし、戦いはなるべく避けたい。
慎重に歩いていき、15分くらいかけてラダトーム城の近くまでやって来る。
ラダトーム城に近づくと、俺はそこで異変が起きているのに気づいた。
「ん…?何ヶ所も地面が壊されているな」
何ヶ所かの地面が破壊され、大きな穴が空いていたのだ。
さっきの黒い流星で破壊されたのであれば、近くにあるラダトーム城も危ないだろう。
穴が空いているだけでなく、せいすいで緑の大地に戻したはずの地面が、呪われた死の大地に戻っているのも見えた。
一層ラダトーム城が心配になり、俺は移動を早める。
そして、ラダトーム城の目の前にまでたどり着くと、さっきの地面と同じように、城も大きく壊されているのが見えた。
それだけでなく、城全体が禍々しい気配に包まれているのも感じられる。
「やっぱり城も被害を受けていたか…それに、何なんだこの気配は?」
城の中にある地面も、灰色の大地に変わっていた。
あの黒い流星は恐らく、大地を蝕む闇と呪いの力なのだろう。
エンダルゴか闇の戦士が、ラダトームを滅ぼすために放ったのかもしれない。
俺はみんなの安否を確かめるために、城内に入っていった。
「おい、みんな!無事なのか!?」
城の中に入ると、俺は大声でみんなを呼ぶ。
俺の声を聞いてしばらくすると、ムツヘタが教会の扉を開けて出て来た。
教会だけは修復されているようで、みんなもその中にいるのかもしれないな。
「やはり雄也の声じゃな。ここに戻ってきておったのか」
「ああ。ラダトームに黒い流星が落ちたのが見えて、心配だったんだ。城が壊れているようだけど、何があったんだ?」
ムツヘタは怪我は負っておらず、無事なようだった。
俺はムツヘタに、ラダトーム城に何が起きたのか、みんなも大丈夫なのか聞いていく。
「エンダルゴが空を覆う闇の魔力を吸収し、この城に向けて放ったのじゃ。放たれた闇の力は城を破壊した後爆発するのではなく、大地を侵食していった」
ひかりのたまの消滅後、アレフガルドの空は闇の戦士と魔物たちの影響で再び闇に覆われ始めた。
それを吸収して地上に降らせる…エンダルゴはそんなことも出来るのか…。
闇の戦士は人類を滅ぼすためにエンダルゴを生み出したと言っていたが、ついに直接攻撃を行ってきたみたいだな。
爆発させるのではなく大地を侵食させたということは、ラダトーム全域を再び死の大地に戻そうともしているのかもしれない。
「この城のみんなも、大丈夫なのか?」
みんなの無事を尋ねると、ムツヘタは辛そうな顔になってしまった。
そして、何人かは降って来た闇の魔力に当たって重症を負い、意識不明だと話す。
「…いや、プロウムとバルダスは逃げ遅れ、オーレンは姫をかばって重症を負い、意識を失っているのじゃ。今は教会のベッドに寝かせ、必死に手当てをしておる」
やっぱりあれだけの闇が降って、全員が無事で済むというのは有り得ないのか…。
だが、死んではいないのならば、治療して助けることは出来るはずだ。
ムツヘタは他のみんなは無傷で、やはり教会の中にいると言った。
「そうか…。他のみんなは、どうしたんだ?」
「他のみんなは何とか闇をかわし、傷を負わなかった。彼らも、ワシと共に教会にいるのじゃ。久しぶりなのじゃから、そなたも会っていくといい」
ムツヘタは教会の中に戻っていき、俺も彼について行く。
教会の中では、ゆきのへやルミーラと言った見慣れた仲間たちが、座って休んでいた。
教会の奥ではローラ姫とラスタンが、重症を負った3人の治療をしているようだ。
教会の中に入って来た俺を見て、約10日ぶりに会うゆきのへが話しかけてくる。
「お前さんも無事だったか、雄也。メルキドの町は、どうなってたんだ?」
ゆきのへは最初はメルキドの町に住んでいたので、あの町が気になるのだろう。
「悠久の竜っていう強力な魔物が3体もいたけど、全部倒したぜ。ロロンドたちの力で、これからもメルキドは発展していくと思う」
俺もロロンドも、メルキドの町が発展し続けていくことを願っている。
メルキドが無事なことを聞いて、ゆきのへは少しは明るい顔になった。
メルキドのことを聞いた後、ラダトームのみんなが何をしていたのか彼は話す。
「それなら良かった。ワシらはお前さん達がメルキドに向かった後、エンダルゴを倒すために、伝説を超える剣とハンマーを考えてたぜ」
伝説を超える武器か…確かに闇に染まった伝説の剣を持った闇の戦士と、膨大な闇の力の集合体であるエンダルゴを倒すには、伝説の武器をさらに超える力を持つ武器が必要になるだろう。
そんな武器を作るには、最近出現した非常に硬い金属が不可欠だとゆきのへは言った。
「もう少しで思いつきそうなのか?」
「いや、もう少し時間はかかると思うぜ。それに伝説を超える武器を作るには、最近出現した黒いオリハルコンや紺色のブルーメタルといった、まほうの玉でも採掘不可能な硬さの金属が必要なんだ。そいつらを採掘する方法も、ワシらは考えないといけねえ」
オリハルコンだけでなく、ブルーメタルも変色して硬度を増していたのか。
だが、そちらもまほうの光玉があれば、採掘することが出来るだろう。
俺はまほうの光玉を作ってきたことを、ゆきのへに伝える。
「それに関しては大丈夫だぞ。メルキドのショーターたちが、黒いオリハルコンを採掘出来るまほうの光玉って奴を考えてくれた」
「そんなことがあったのか…それならワシらは、剣とハンマーの解説に集中出来るってことだな」
まほうの光玉が、エンダルゴを倒す武器を作るためにも役立つことになるとは思わなかったな。
ベテランの鍛冶屋であるゆきのへなら、必ず伝説を超える武器を開発することが出来そうだ。
しかし、ゆきのへは教会の奥のベッドを見て、不安そうに言った。
「だけど、一緒に武器を考えていたみんなが、エンダルゴの闇にやられちまった…あの様子を見ると、3人とも危険な状態だぜ」
ムツヘタからバルダスたちは重症だと聞いていたが、そんなに危険な状態なのか?
俺はまだ3人の容態を詳しく見てはいないが、どうなっているのだろうか。
「危険な状態って、どう言うことだ?」
俺は教会の奥に入り、ローラ姫たちに手当てされている3人の様子を見に行った。
すると俺は、思ってもいなかった異様な状態になっている、オーレンたちの姿を見てしまう。
3人の体が滅ぼしの騎士や悠久の竜といった変異した魔物のように、おぞましい闇の色に染まっていたのだ。
「体が闇に染まってる…?何が起きてるんだ?」
俺が彼らの姿を見てそうつぶやくと、近くにいたムツヘタは体が闇の力に侵食されているのだと答える。
「強い闇の力を受けて、体中が侵食されているのじゃ…。先ほどまでは体を蝕まれる苦しみにうめき声を上げていたのじゃが、それすら出来ないほどに衰弱し、意識を失っておる」
緑の大地が死の大地に変わる現象…あれが3人の体に起きていると言うことか。
エンダルゴが闇の魔力を爆発させるのではなく、侵食させたのは、ラダトームのみんなを苦しませて殺すためなのかもしれないな。
だが、闇の力による呪いなのであれば、せいすいで治すことは出来ないのだろうか。
「それなら、せいすいで治すことは出来ないのか?」
「私もさっき試してみたのですが、効果がありませんでした…」
「多分、闇の力が強すぎるからだ。侵食された城の地面も、元に戻すことは出来なかった」
しかし、3人の治療に当たっていたローラ姫とラスタンは、せいすいも効果がなかったと話した。
あまりに闇の力が強すぎると、せいすいも無効化されてしまうのか…。
何とかして、オーレンたちを助ける方法はないのだろうか?
「どうにかして、3人を助ける方法はないのか?」
「完全に体が変質するまで、3人が耐えきるしかない。…じゃが、侵食に耐えきった人間は、今まで一人としておらぬ。魔物であっても、強すぎる闇の力は猛毒となる。ルミーラの白花の秘薬も使っておるが、助かる可能性は低いじゃろう…」
確かに体の変質に耐えきれば、滅ぼしの騎士のように今までと姿が変わってしまうかもしれないが、生き残ることは出来そうだ。
でも、闇の侵食に耐えきった人間が今までいないとなれば、希望は薄いな。
3人の力を信じて、回復するのを祈るしかなさそうだ。
「今はもう、3人が耐えきるのを信じるしかないのか…」
オーレンたちは3人とも、ラダトーム城の大切な仲間だ。
3人が死んでしまったら、みんな絶望に沈んで、エンダルゴを倒すことを諦めてしまうかもしれない。
それだけは、絶対に避けなければいけないな。
オーレンたちの容態だけでなく、俺にはもう一つ不安なことがあった。
エンダルゴは人間の徹底的な排除を目指しているのだから、直接攻撃がこれで終わりだとは思えない。
ラダトーム城に、また闇が降ってくる恐れもあるだろう。
「それとムツヘタ、エンダルゴがまた攻撃を仕掛けて来る恐れもあると思う。ラダトーム城から、逃げた方がいいんじゃないか?」
ラダトーム城も、サンデルジュ砦のように放棄しなければいけないのではないか、俺はそんなことも考えてしまった。
しかしムツヘタは、ラダトームを放棄したところで無駄だと言う。
「逃げたところで無駄じゃろう…。エンダルゴほどの力があれば、アレフガルドのどこにいても闇の力を降らせて来るはずじゃ」
確かにエンダルゴの力は絶大なので、アレフガルドのどこにいても攻撃を受けるかもしれない。
それなら、せっかく復興させたメルキドも危ないかもしれないな。
メルキドに戻ったら、みんなにその事を伝えておこう。
俺たちの話を聞いていたゆきのへは、逃げても無駄なのならラダトーム城で戦い続けると言った。
「どこに逃げても無駄なんだから、ワシらはここで戦い続けるつもりだぜ。せっかく作り上げた場所を捨てる思いは、もうしたくねえからな。お前さんは引き続き、アレフガルドの2度目の復興に向かってくれ」
俺も、みんなと共に作ったラダトーム城をなるべく捨てたくはない。
どこに逃げても無駄であり、ゆきのへたちがここで戦い続けたいのなら、ラダトーム城は今まで通り彼らに任せておこう。
俺もこれから予定通り、1度メルキドに戻って、それからリムルダールやマイラに向かうか。
「分かった。オーレンたちとラダトーム城は、みんなに任せた。俺はそろそろ、メルキドに戻るぜ」
ゆきのへとムツヘタとの会話を終えると、俺はラダトーム城を出て海の方に向かっていく。
さっきと同じように魔物たちから隠れながら、15分くらいで海にたどり着いた。
海に出ると、俺はメルキドに向けてゆっくりと小舟を漕ぎだしていく。
舟を漕いでいる間、俺はオーレンたちが助かることを祈り続けていた。
1話番外編を挟んだ後、リムルダール編に入っていきます。