ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode157 決戦の前に

メルキドの町に戻ってくると、俺は黒いオリハルコンが採掘出来たことを、調理室にいるショーターたちに教えに行く。

二人にそれを伝えたら、さっそく新たな防壁について考え始めよう。

戻ってきた俺を見て、二人は少し不安そうな顔をしていた。

 

「戻って来ましたか、雄也さん。黒いオリハルコンは採掘出来ましたか?」

 

「ああ。まほうの光玉の威力は、本当にすごかった。これが黒いオリハルコンだ」

 

俺はショーターにうなずくと、ポーチから黒いオリハルコンを取り出す。

二人は黒いオリハルコンを見ると、不安そうな表情が消えて、喜びの声を上げた。

 

「おお、うまくいったんですね!爆発力が足りないのではとも思っていましたが、心配無用でしたね!」

 

「私たちの考えが役に立って良かったです」

 

まほうの光玉はこの先、鉱物の採掘だけでなく魔物との戦いにも役立つかもしれない。

強力な道具を考えてくれた二人に、感謝しなければいけないな。

俺は喜んでいるショーターたちに、感謝の言葉とこれからの予定を言う。

 

「二人とも本当にありがとうな。俺はこれから、このオリハルコンを使った防壁を考える。この硬さの防壁があれば、メルキドを守れる可能性も大きく上がるからな」

 

次の魔物の襲撃までに防壁を完成させて、今度こそ町の被害がないようにしたいな。

すると、ショーターは新たな防壁については、町のみんなで話した方がいいと言ってきた。

 

「それに関しては、皆さんと共に考えた方がいいのでは?皆さんの力を借りた方が、より強固な防壁を作れるでしょう」

 

確かに今のメルキドシールドもピリンと共に開発した物だし、みんなと一緒に考えたほうがいいかも知れないな。

俺がショーターに賛成すると、彼はみんなを呼んで来ようとする。

 

「確かにそうだな。ここで、みんなと一緒に考えよう」

 

「では、私は皆さんを呼んできますね」

 

「私も行って来ましょう」

 

みんなが集まるなら、町の中で一番の広さを持つこの調理室がいいだろう。

ショーターに続いて、エレカも町のみんなを呼びに行った。

 

みんなを呼びに行って数分後、ショーターとエレカは調理室に戻ってくる。

 

「雄也さん、皆さんを呼んできました」

 

二人に続いて、ピリンやロロンドたちも次々に調理室の中に入ってきた。

 

「聞いたぞ雄也、新たな防壁の素材が手に入ったんだってな」

 

「メルキドシールドの時みたいに、また一緒に考えようね」

 

「もちろんだ。どんな魔物でも破壊出来ないような、最強の防壁を作ろう」

 

黒いオリハルコンを使ったとしても、悠久の竜の攻撃に耐えうる防壁を作るのは非常に難しいだろう。

だが、メルキドの町のみんなとなら、必ず思いつくことが出来るはずだ。

ゴーレムは流石に部屋には入れないので、外で待っている。

 

みんなが集まったのを見ると、ロロンドはさっそくある提案をした。

 

「みんな集まったな。さっそく提案するのだが、我輩は新たなる防壁を作るために、黒いオリハルコンの他に使いたい素材があるのだ」

 

他に使いたい素材か…そちらも非常に硬度が高い物なのだろうが、どんな素材なのだろうか?

 

「どんな素材なんだ?」

 

「メルキドシールドが、岩石と金属から作られていることは知っておるな。だから新たな防壁にも、金属だけでなく岩石を使おうと思うのだ」

 

「確かメルキドシールドは、ゴーレム岩とオリハルコンで出来ていたよね」

 

ピリンも覚えているようだが、今のメルキドシールドはゴーレム岩とオリハルコンから作られている。

黒いオリハルコンだけで防壁を作るとなると、黒いオリハルコンの必要数がすごいことになりそうなので、確かに今回も岩石と組み合わせたほうがいいかもしれないな。

ロロンドは黒いオリハルコンと組み合わせるのには、黒よう岩という岩石がいいだろうと言う。

 

「我輩が使いたいのは、黒よう岩という物だ。オリハルコンに勝るとも劣らない硬度を持っている」

 

黒よう岩か…地球にも黒曜岩という物があるが、それと似たような物なのだろう。

オリハルコン並の硬度を持っていると言うのは、地球の物にはない性質だが。

メルキドシールドのゴーレム岩より硬そうなので、新たな防壁に使っても問題なさそうだな。

場所が分かったら、さっそく採掘しに行って来よう。

 

「そんな岩があったのか…。役立ちそうだから今から採掘しようと思うけど、どこにあるんだ?」

 

「この町の東の山に、古代の墓地のような遺跡がある。その遺跡の壁に、大量の黒よう岩があったぞ」

 

メルキドの東にある古代の墓地…恐らく俺がアレフガルドに来て、最初に目覚めた場所のことだろう。

あの場所の壁には黒い岩があったが、あれが黒よう岩だったのか。

場所も分かるし町のすぐ近くなので、すぐに集めに行くことが出来そうだ。

 

「それなら今から集めに行ってくる。みんなはその間に、新たな防壁の形状を考えていてくれ」

 

「町のすぐ近くだけど、気を付けてくれよ」

 

俺はみんなにそう伝えて、黒よう岩を集めに行くために一度調理室を出る。

町を出る俺に向かって、ロッシはそう言った。

 

「ああ、分かってる」

 

町のすぐ近くにもドラゴンが生息しているので、確かに気をつけたほうがいいだろう。

俺が調理室を出ると、みんなは新たな防壁について話し合いを始めていた。

 

俺はメルキドの町を出ると、草原の箱を被って東の山に向かっていく。

草原地帯であれば、これを使えば魔物に見つかる危険性は大きく下がるだろう。

町のまわりを彷徨いているドラゴンは、町を睨むような動きをしていた。

 

「いつ襲って来るか分からないし、早く防壁を作らないとな」

 

悠久の竜が再び町を襲撃して来るまで、もうあまり時間はなさそうだ。

新たな防壁を作るのを急がなければいけないなと思いながら、俺は慎重に歩いていった。

 

そうして10分くらい歩き続けて、俺は町の東にある山の、墓地の入口にたどり着く。

ここに戻ってくるのは、俺がアレフガルドに転移させられた日以来だな。

 

「魔物に見つからずに着いたか…。懐かしい場所だな」

 

俺はあの日この中で、俺を勝手にアレフガルドに連れてきたルビスに文句を言っていた。

あの日の俺は、アレフガルドの人々のために二度も世界を復興させることになるなんて、思ってもいなかったな。

もし今の俺があの時の俺のままだったら、虹のしずくを作った時かエンダルゴが出現した時に、この世界を見捨てて地球に帰っていただろう。

アレフガルドの復興が始まった日を思い出しながら、俺は遺跡の中に入っていく。

遺跡の奥にすすむと、さっそく黒く煌めく岩…黒よう岩を見つけることが出来た。

 

「これが黒よう岩か…まほうの光玉を使って採掘しよう」

 

黒よう岩はビルダーハンマーでも壊せるかもしれないが、攻撃範囲の広いまほうの光玉を使ったほうが時間はかからないだろう。

俺は黒よう岩の近くにまほうの光玉を置き、爆発までに大きく距離を取った。

数秒後にまほうの光玉が炸裂すると、大量の黒よう岩は壊れて、採取可能な状態に変わる。

 

「結構な数が集まったな…でも、まだ集めておくか」

 

まほうの光玉の爆発範囲は広く、一度に20個くらいの黒よう岩を集めることが出来た。

だが、なるべく多く集めておいた方がいいと思い、俺はたくさんの黒よう岩をまほうの光玉で採掘していった。

50個くらいの黒よう岩が集まると、俺はそれらをポーチにしまって、遺跡を出てメルキドの町に戻っていく。

 

「だいぶ集まったな。これくらいあれば、新しい防壁を作るのにも十分だな」

 

帰り道もドラゴンに気をつけながら、草原の箱を被って俺は歩いていった。

ドラゴンが増えたからか、もともと草原地帯に生息していたスライムは数が減っている。

帰り道も10分くらいかかったが、無事にメルキドの町に帰ってくることが出来た。

 

メルキドの町に戻ってくると、俺はみんなが待っている調理室に向かっていく。

調理室の中ではみんなの話し声が聞こえ、新たな防壁に関して考えているようだった。

わらのとびらを開けて中に入ると、一番とびらの近くに立っていたチェリコが最初に話しかけて来る。

 

「戻ってきたのね、雄也。黒よう岩は集まった?」

 

「ああ。防壁に必要な分は多分集まったと思うぞ」

 

黒よう岩が集まったのを聞いて、調理室の奥の方にいたロロンドも嬉しそうに近づいて来た。

 

「おお、よくやったな雄也!これで素材は集まった、共に新たな防壁を考えようではないか」

 

「ああ、外のドラゴンもいつ襲って来るか分からないし、なるべく早く開発しよう」

 

黒よう岩と黒いオリハルコンを使った新たな防壁…今日のうちに開発出来ればいいな。

みんなはそう思いながら防壁の形状についての話し合いを進め、俺もそれに参加する。

 

しかし、夕方になっても考えはまとまらず、まだ新たな防壁を作ることは出来なかった。

みんなも、もうすぐ再び悠久の竜が来るのではないかと思っており、焦りと不安の中で夜を明かすことになってしまった。

 

メルキドに戻って来てから9日目の朝、俺はいつもより早く目が覚めてしまう。

早く新たな防壁を作らなければいけないと、焦っているからだろうな。

 

「まだ防壁は出来ていないし、今日も調理室に行かないとな…」

 

今日もみんなと話し合うために、俺は調理室へと向かっていった。

しかし、調理室のとびらを開けても、まだみんなは集まっていなかった。

みんなも急いでいるとは言え、まだ早朝なので仕方のないことだろう。

だが、ピリンだけは既に起きており、何かを作っているようだった。

 

「ピリン、何を作っていたんだ?」

 

「新しい防壁を考えるのに、みんな疲れているでしょ。だからみんなを元気付けるために、美味しい料理を考えていたの」

 

俺が聞くと、ピリンは苦労しているみんなのために、料理を考えていると言う。

昔のメルキドでもそうだったけど、俺たちが戦いの前で焦っている時も、ピリンは落ち着いてみんなのことを考えるのを忘れないな。

昔の俺だったら今日も、「そんなことをしている暇があったら防壁を考えろ」と怒鳴っていたかもしれない。

しかし、一度落ち着いて美味しい料理を食べた方が、新しい防壁も思いつき安くなるだろう。

 

「どんな料理を考えているんだ?」

 

「2枚のパンの間にうさぎの肉とえだまめを挟んだ、うさまめバーガーっていう料理だよ」

 

俺はピリンに、どんな料理を作っているのかと聞いた。

うさまめバーガー…俺は昔ピリンにハンバーガーを作って見せたことがあるが、それのアレンジ版ということか。

ピリンはロッシが逃げ出すほどの異様な料理を作っていたこともあったので少し警戒したが、心配はいらなかったようだ。

 

「俺も食べてみたいし、手伝えることがあるなら手伝うぞ」

 

「それなら、えだまめとお肉が足りないから、集めて来てくれる?みんなの分を作るには、たくさんいるの」

 

ピリンは小麦をこねて、具材を挟むためのパンを作っているようだった。

でも、ピリンはうさまめバーガーを作るのに、えだまめと肉が足りないと話す。

確かに最近俺たちは町の近くにあるキノコやモモガキの実ばかり食べていて、それらの食材は集めに行っていないな。

どちらも旅のとびらを抜けたすぐ近くで採れるので、すぐに集めて来られそうだ。

 

「分かった。なるべく早く集めて来るぜ」

 

パンを作っているピリンを見ながら、俺は調理室を出て旅のとびらのある部屋に向かう。

えだまめは確か、おおきづちの里があったメルキドの山岳地帯に生えていたはずだ。

まずはえだまめを集めに、俺は青色の旅のとびらに入った。

 

青色の旅のとびらを抜けて山岳地帯にたどり着くと、俺はえだまめが生えていないかと辺りを見渡す。

すると、やはり旅のとびらのすぐ近くにもえだまめが生えており、すぐに集めることが出来そうだった。

 

「近くにも結構生えているな。さっそく集めて行こう」

 

まわりにはブラウニーやビッグハンマーといった魔物も生息しているので、俺は気づかれないように隠れながら、えだまめを回収していく。

みんなの分のうさまめバーガーを作るには20個くらい必要だろうから、俺は少し奥の方にまで向かっていった。

そこからは、この前助けたおおきづちの長老たちが住んでいた家も見えて来る。

 

「おおきづちの長老の家…やっぱりあの後壊されたんだな」

 

長老の家の目印だった屋上のかがり火が無くなり、彼らが住んでいた部屋も大きく壊されていた。

今おおきづちの長老たちは、ラダトーム城に暮らしている。

ラダトーム城はいい場所だが、故郷であるこの地にも戻ってきたいと思っていることだろう。

あの4匹がこの地に戻って来られる日は来るのだろうか…俺はそんなことも考えながら、えだまめを集めていった。

 

「いつかおおきづちの里も、再建出来るといいな」

 

おおきづちの里のことを考えながら歩いていると、20個ほどのえだまめもすぐに集まる。

 

「えだまめは集まったし、あとは肉だな」

 

えだまめが集まると、俺は一度メルキドの町に戻り、そこからドムドーラの砂漠地帯に向かった。

 

砂漠地帯にやって来ると、俺はいっかくうさぎを探して、背後に迫っていく。

いっかくうさぎはそんなに強い魔物ではないので、正面から戦っても問題なく勝てるだろうが、背後から襲ったほうが早く倒せるだろう。

俺は奴の真後ろに移動すると腕に力をためて、思い切りおうじゃのけんを突き刺す。

強力な武器で体を貫かれて、いっかくうさぎは青い光を放って消えていき、生肉を落とす。

 

「一撃で倒せたし、生肉も手に入ったな。このまま集めて行くぜ」

 

生肉を一つ手に入れると、俺は他のいっかくうさぎも同じように狩っていき、次々に生肉を集めていった。

10個ほどの生肉が集まると、俺はそれらを持ってメルキドの町に戻っていく。

 

「これでみんなの分のうさまめバーガーが作れるな…ピリンのところに戻ろう」

 

ピリンがどのくらい料理が上手になっているのか、俺も気になるぜ。

メルキドの町に戻ってくると、俺はピリンの待つ調理室に入っていった。

 

調理室に入ると、もうみんなも起きて来ており、俺に話しかけてきた。

 

「戻ってきたか、雄也よ。ピリンのために、食材を集めて来ていたのだろう?」

 

「こんな時に豪華な料理って言うのも驚いたが、楽しみだぜ」

 

みんなも、ピリンがうさまめバーガーを作っているのは知っているみたいだな。

早く新たな防壁を開発したいがために、そんな料理いらないと言っている人はいないようだった。

ロロンドとロッシに返事をした後、俺はピリンに集めてきた食材を渡す。

 

「ああ。ピリン、えだまめと肉を集めて来たぞ!これでうさまめバーガーが作れるだろ」

 

「ありがとう雄也!このくらいあったら、みんな分も作れそうだよ。出来上がるまで、もう少し待っててね」

 

もうパンは出来上がっているようで、後は肉を焼いてえだまめを添えるだけのようだ。

ピリンはえだまめと生肉を受け取ると、嬉しそうな顔で肉を焼き始める。

出来上がるまでまだ少し時間がかかるが、俺は調理室の中で楽しみに待っていた。

 

そして、ピリンに食材を届けてから20分ほど経って、ついに出来上がる時がやって来る。

お腹を空かせて待っていた俺のところに、調理を終えたピリンの声が聞こえてきた。

 

「みんな、うさまめバーガーが出来たよ!いっぱい食べてね」

 

調理室の椅子に座っている俺たちのところに、ピリンはうさまめバーガーを持ってくる。

パンも綺麗に出来上がっており、肉も丁度いい焼き加減になっていた。

 

「これがピリンのハンバーガーか…すごく美味しそうだな」

 

モンハンで言うところのこんがり肉の状態であり、とても美味しそうだ。

ロロンドたちも、うさまめバーガーを見てすごく美味しそうだと話す。

 

「こんなにうまそうな物は、我輩も作ったことがないな」

 

「あのピリンが、こんなにうまそうな物を作るとはな」

 

ピリンに異臭を放つ料理を食べさせられそうになったことのあるロッシは、特に驚いているようだった。

俺もピリンの料理の腕がここまで上がるとは、思ってもいなかったな。

しばらくうさまめバーガーを見た後、俺は食べ始める。

 

すると、パンも肉も柔らかくて食べやすく、味においても非常によい物だった。

俺は地球にいたころ枝豆を良く食べていたので、豆が入ったことでより美味しく感じられる。

ここまで美味しいハンバーガーを食べたのは、今までで初めてかもしれないな。

 

「やっぱりすごくうまいな、これ」

 

みんなも、ピリンのハンバーガーを食べた感想を呟いていく。

 

「ぬおお!うまいぞおお!」

 

「見た目だけじゃなく、本当にうまいな」

 

「力が湧き上がって来るような味ですね!」

 

「こんなにうまい物を食べたのは、どれだけぶりでしょうか」

 

「なかなかいい味ね」

 

「こんな料理を作れるなんて、素晴らしいですね、ピリンさん」

 

「すごく美味しいよ!ピリンは将来、いいお嫁さんになれるよ!」

 

ピリンのハンバーガーを食べた後なら、新たな防壁も思いつけるかもしれないな。

みんなが食べ終わったら、昨日の話を再開しよう。

何としても、次に悠久の竜が襲って来る前に新たな防壁を完成させたいな。


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