ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode154 石の心臓

悠久の竜を倒した翌日、メルキドに戻って来てから5日目の朝、俺は昼頃になってようやく目を覚ました。

昨日の戦いで俺は体力を限界まで消耗し、その疲れはまだ取れていない。

傷もきずぐすりや薬草で治療したものの、完全には治っていなかった。

 

「体力も傷も治ってないけど、昨日の襲撃で壊された場所を修復しないとな」

 

だが、次に魔物たちが襲って来る前に、なるべく早くメルキドの守りを固めなければいけない。

まずは悠久の竜の攻撃で壊されたメルキドシールドやはがねの守りを修復しようと、町の西に向かっていく。

 

するとその途中、焼け落ちた希望のはたの台座に、会ったことのない若い女が立っているのが見えた。

髪が長く静かそうな雰囲気で、昔のピリンたちと同じようにボロボロの茶色の服を来ている。

 

「見たことない人がいるな…あいつは誰だ?」

 

メルキドの人で、まだこの町に暮らしていない人がいたのか。

その女はメルキドの町を見渡しながら、不思議そうな表情をしていた。

 

「光の中に入ったと思ったら…何なのでしょう、ここは?」

 

光の中に入ったと言っているので、恐らくは旅のとびらを通って町に辿り着いたのだろう。

町の仲間になってくれるかもしれないし、俺はその人に話しかけてみる。

 

「あんた、ここに来るのは初めてだな?」

 

「私以外にも人がいたのですか。あなたは、ここが何だか知っていますか?」

 

今まで町にやってきた人々は町の中を光に溢れた暖かい場所だと言っていたが、彼女はそう感じてはいないようだ。

ルビスの加護が失われたことで、町の中の気温も明るさも町の外と同じになっている。

俺はその人に、ここがメルキドの町であることを伝えた。

 

「ここは俺たちが作っている、メルキドの町だ。俺以外にもたくさんの人が、ここに住んでいる」

 

「メルキドの町…?私は鉱山の洞窟に住んでいたから知らないのですが、町って何ですか?」

 

この人も昔のチェリコみたいに、町という物は知らないみたいだな。

鉱山の洞窟に住んでいたと言うので、緑の旅のとびらの先から来たようだ。

俺は町について説明し、一緒に暮らさないかと提案する。

 

「町って言うのは、人々が協力しながら建物を作り、共に暮らしている楽しい場所だ。良かったら、一緒に暮らさないか?」

 

「私が住んでいた洞窟にも魔物が入って来ましたし、他に暮らせそうな場所はありません。私もここで暮らしましょう」

 

メルキドの峡谷地帯でも、やっぱり魔物の数は増えているようだな。

一緒に暮らしてくれるようなので、俺はいつもの自己紹介をする。

 

「あの峡谷地帯でも魔物が増えているのか…。一緒に暮らすんなら、自己紹介をしないとな。俺はビルダーの影山雄也、普段は雄也って呼んでくれ」

 

「私はエレカ、よろしくお願いします、雄也さん」

 

エレカも自己紹介をし、あいさつをする。

あいさつの後、エレカは峡谷地帯の今の状況を話してくれた。

 

「私が住んでいた場所の近くでは魔物が増えるだけでなく、虹色のばくだんいわも見られるようになりました。黒く変質して、今までよりも硬度を増しているオリハルコンもありましたね」

 

虹色のばくだんいわか…山岳地帯のビッグハンマーのように、峡谷地帯でも新種の魔物が現れているのか。

滅ぼしの騎士や悠久の竜のようにエンダルゴの力で変異した個体以外にも、ルビスの死後いくつもの新種の魔物が現れている。

それに、黒く変質して硬度を増したオリハルコン…硬度を高めて人間が採掘できないように、魔物たちが魔力をかけたのだろう。

何とかしてその変質したオリハルコンを採掘出来れば、メルキドの町をさらに強固に出来そうだ。

 

「それなら何とかして、その黒いオリハルコンを採掘したいな。とにかく、これからよろしくな」

 

峡谷地帯についての話を聞いた後、俺もエレカにあいさつした。

お互いにあいさつが終わった後、俺は昨日壊された部分の修復に向かう。

エレカは、町のみんなにもあいさつに行っているようだった。

 

悠久の竜の攻撃で壊された部分はかなり多く、修理には時間がかかっていた。

ロッシとケッパーも手伝ってはいるものの、すぐには終わらない。

 

「壊された町はまた作り直せると言うけど、今度こそは被害がないようにしたいな。…そう言えば、まだロロンドは起きて来ないのか?」

 

「いつもは早く起きることが多いから、珍しいな」

 

3人で作業を行っている間、ロロンドはまだ起きて来なかった。

俺がアレフガルド各地を巡っている間、ずっとロロンドと共に暮らして来たロッシは、彼は早く起きることが多かったと言う。

昨日の戦いで疲れてはいるものの、こんなに遅くまで起きてこないと言うことは、何があったのだろうか?

俺たちがそう思っていると、ロロンドの個室の扉が勢い良く開かれた。

 

「ぬおお!雄也よ、ロッシよ、ついに分かったぞ!」

 

個室から飛び出してきたロロンドは興奮して喋りながら、こちらに向かってくる。

彼は右手にメルキド録を持っているようだが、また解読が進んだのだろうか?

 

「どうしたんだロロンド、そんなに興奮して?」

 

「昨日のような強大な魔物がまた来てもいいように、ゴーレムの製造を急ごうとしてな、我輩は徹夜でメルキド録のゴーレムについて書かれた部分を解読していたのだ。そしてさっきついに、ゴーレムの製造に不可欠な、石の心臓のありかを突き止めたのだ」

 

俺たちが町の修復をしている間、ロロンドはメルキド録の解読を進めていたのか。

ロロンドの顔は興奮しながらもかなり疲れたように見えるが、それは徹夜で作業をしていた影響もあるようだ。

彼がありかを突き止めた石の心臓と言うのは、どのような物なのだろうか?

 

「石の心臓って、どんな物なんだ?」

 

「ゴーレムの動力となる物でな、それがなければ生きたゴーレムを作ることは不可能なのだ」

 

確かに、ただゴーレム岩を組み立てただけでは、それは単なる岩の塊であり、生きたゴーレムにはならない。

メルキドの守護者たる生きたゴーレムにするためには、心臓が必要だと言うことか。

ゴーレム作りも急ぎたいし、場所を聞いたらすぐに取りに向かおう。

 

「俺もゴーレム作りは早くしたいし、今から取りに行ってくるぞ。さっそく場所を教えてくれ」

 

「メルキドの峡谷地帯の奥にある森、その近くの海に面した崖に、石の心臓が隠された洞窟がある。古代の人々は二つの石の心臓を作り、一つは我輩たちが倒したゴーレムの動力にして、もう一つは予備としてその洞窟に隠したらしいのだ」

 

峡谷地帯の森と言うのは、昔スラタンを救出したところのことだろう。

その近くには、海に面した崖もあったな。

俺はアレフガルド復興の間にいくつもの岩山や崖を登って来ているので、崖にある洞窟でも問題なく行けるはずだ。

 

「分かった。俺が石の心臓を取ってくる間、ロロンドは町の修復を手伝ってくれ」

 

「その洞窟には石の心臓と一緒に、ゴーレムの詳しい設計図もあるそうだ。そちらも手に入れて来てほしい」

 

ゴーレムの設計図か…俺はゴーレムの形はだいたい覚えているが、確かに詳しい設計図があった方がいいだろう。

俺はロロンドの話を聞いた後、メルキドの峡谷地帯に向かうため緑の旅のとびらに入る。

峡谷地帯に行くのだから、さっきエレカが言っていた話も確認出来そうだ。

 

緑の旅のとびらに入ると、一瞬目の前が真っ白になり、俺はメルキドの峡谷地帯に移動する。

 

「ここに来るのも、数ヶ月ぶりだな…。まずは、森の方に向かうか」

 

昔メルキドを復興させていた時、ばくだん石やオリハルコンを集めに来た場所だ。

俺はポーチから砂漠の箱を取り出して被り、魔物に見つからないようにして進んでいく。

途中にはアルミラージやばくだんいわと言った見慣れた魔物が多かったが、エレカの言っていた通り、輝くばくだんいわも見かけられた。

 

「あれはオーロラウンダーか…ばくだんいわよりも強力そうだな」

 

オーロラ色の体を持つ、ばくだんいわ等の岩型の魔物の上位種、オーロラウンダーだ。

エレカはオーロラを見たことがないだろから、虹色と言ったのだろう。

強さはばくだんいわより上だろうし、戦いは避けようと、俺はより慎重に動いていく。

スラタンがいた森までは結構な距離もあり、辿り着くのに時間がかかりそうだ。

 

森に向かっている間、俺は黒く変質したオリハルコンを確認するため、鉱脈の方も見ながら歩いていった。

すると、確かに多くの金色だったオリハルコンは、黒色に変化している。

まだ金色のままのオリハルコンも残されているが、これから変質していくんだろうな。

 

「これが黒いオリハルコンか…どれ位硬くなっているんだ?」

 

エレカは黒くなったオリハルコンは硬度を増していると言っていたが、どのくらい硬くなっているのだろうか?

それを確かめるために、俺はビルダーハンマーで黒いオリハルコンを叩いてみる。

すると、ビルダーハンマーは弾かれ、黒いオリハルコンはびくともしなかった。

 

「ビルダーハンマーでも壊れないか…何とかして採掘出来ればいいんだけどな」

 

ビルダーハンマーで壊せないのならば、まほうの玉も効果がないだろう。

もし採掘出来ればメルキドの防衛に大いに役立つだろうが、今は手に入れる方法がない。

ひとまず今は採掘を諦めて、石の心臓が隠されているという洞窟に向かった。

 

45分くらい慎重に歩き続けて、俺は峡谷地帯の森に辿り着く。

この近くの海に面した崖に石の心臓がある洞窟があるそうなので、俺はまず海のほうに行った。

 

「魔物に見つからずにここまで来たか…確か、ここにはスライムがたくさんいたな」

 

この峡谷地帯の森はスライムばかりが生息している。

スライムは弱い魔物なので戦っても苦戦はしないだろうが、俺は今まで通り隠れながら進んでいく。

この森はあまり大きくないので、ゆっくり動いてでも5分ほどで海に辿り着くことが出来た。

海に出ると、俺は崖を歩きながら石の心臓がある洞窟を探し始める。

 

「森の近くの崖って言っていたし、すぐに見つかるだろうな」

 

崖を歩くのは結構久しぶりだが、慎重に歩いていけば安全に進める。

森の近くの崖と言っていたので、洞窟を探すのにはあまり時間がかからないだろうと思っていたが、案の定すぐに洞窟の入り口を見つけることが出来た。

 

「ここが石の心臓がある洞窟だな…さっそく入ってみよう」

 

洞窟の入り口を見つけると、俺はすぐに中に入っていく。

エレカの住んでいた洞窟には魔物が入って来たそうなので、この洞窟は大丈夫だろうかと思っていたが、魔物の姿は見かけられなかった。

崖にある洞窟なので、魔物も来にくいのだろう。

だが、それでも俺は警戒を怠らず、奥へと進んでいく。

そうして洞窟の一番奥までたどり着くと、並んで置かれている二つの宝箱が見つかった。

 

「この宝箱に石の心臓とゴーレムの設計図が入っているのか…ゴーレムが出来たら、町を守れる可能性も上がるだろうな」

 

石の心臓と設計図を手に入れれば、ついに新たなゴーレムを作り出すことが出来る。

俺はまず、左の宝箱を開けて中身を見てみた。

するとそこには、石で出来た丸い物が入っていた。

見た目はただの岩のようにも見えるが、手に取ると強い力が感じられる。

 

「不思議な力を感じるな…これが石の心臓か」

 

これが石の心臓なのだろう。

俺はポーチに石の心臓をしまうと、右の宝箱を開けてみる。

そちらのほうには、古びた何枚かの紙が入っていた。

古代の文字で書かれており、ロロンドに解読して貰わなければ内容は分からなさそうだ。

 

「この設計図は古代の文字で書かれてるけど、ロロンドなら大丈夫そうだな」

 

メルキド録をここまで解読してきたロロンドならば、このゴーレムの設計図を解読出来るだろう。

俺はゴーレムの設計図も手に入れると、メルキドの町に戻っていく。

帰るのにもかなりの時間がかかったが、魔物と戦うことなく町に帰ることが出来た。

 

メルキドの町に戻って来ると、俺はロロンドを大声で呼ぶ。

ロロンドたちのおかげで、昨日の襲撃で壊された部分はだいたい直すことが出来ていた。

 

「ロロンド、石の心臓とゴーレムの設計図を手に入れて来たぞ!」

 

「おお、よくやったな雄也!これでもうすぐ、ゴーレムを再建出来る!」

 

俺の声を聞くと、ロロンドはさっきのような興奮した声を出しながら走って来る。

一度は頓挫したゴーレムを作り直す計画が成功目前となり、とても嬉しいのだろう。

近づいて来たロロンドに、俺は石の心臓とゴーレムの設計図を見せた。

 

「これが石の心臓とゴーレムの設計図だ。設計図は古代の文字で書いてあるけど、解読出来そうか?」

 

ロロンドはしばらく設計図を眺めた後、解読出来そうだと言う。

 

「このくらいなら、少し時間はかかるが、解読出来る。なるべく急ぐから、もう少し待っていてくれ」

 

「それなら良かった。解読が出来たら、俺にも伝えてくれ」

 

解読が終わったら、俺もゴーレム作りを手伝おう。

ロロンドに設計図を見せた後、俺はロッシたちと共にメルキドの修理に戻った。


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