ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

154 / 225
Episode153 山岳の緑竜

メルキドに戻って来て4日後、先日の悠久の竜の襲撃によって破壊されたメルキドの町は、ほとんど修復することが出来ていた。

ロロンドとロッシの新たなゴーレムを作る計画も、大分進んできている。

それぞれがメルキドの2度目の復興のために活動している中、俺とケッパーは飛天斬りの練習を続けていた。

 

「大分きれいな動きになっていると思うよ。威力も上がって来ている」

 

ケッパーは俺の放った飛天斬りを見て、そんなことを言う。

動きを覚えたての時と比べれば、俺もケッパーもかなり上達することが出来ていた。

 

「ケッパーの飛天斬りも、うまくなってると思うぜ」

 

このまま練習を続けていけば、さらに威力を高めることが出来るだろう。

悠久の竜やエンダルゴにも、確実に大ダメージを与えられるようになるはずだ。

俺たちはそんなことを思いながら、何度も飛天斬りを放っていった。

 

だが、練習を始めてしばらくして、ロロンドの慌てた声が聞こえてきた。

 

「みんな、大変なことになったぞ!我輩たちの町に、大量の魔物が迫って来ておる!」

 

ロロンドの声はとても大きいので、練習に集中していた俺たちの耳にもはっきりと届く。

魔物が襲って来ていると聞き、俺とケッパーはすぐに彼のところに向かっていった。

 

「こんな時に魔物か…雄也、迎え撃ちに行くよ!」

 

「ああ。せっかく立て直した町を、また壊される訳にはいかないからな」

 

まだ飛天斬りは練習の途中だが、メルキドが再び壊されるのは防ぎたいので、魔物たちを倒さなければいけない。

魔物たちはいつも通り町の西から来ているようで、ロロンドは魔物たちの様子を見ていた。

 

「まだゴーレムも出来ていないのに、もう魔物が来ちまったのか…」

 

俺たちが町の西に着いたと同時に、他の場所で作業をしていたロッシもやってくる。

襲ってくる魔物の群れを見ると、ビッグハンマーとスターキメラが12体ずつ、あくまのきしが8体、ドラゴンが6体おり、奴らの中心には深緑の体を持った禍々しい雰囲気のドラゴンがいた。

 

「あいつは…この前メルキドを破壊したドラゴンじゃねえか…」

 

「まだ飛天斬りも練習中なのに、まずいことになったね…」

 

ロッシとケッパーは、深緑のドラゴンを見てそんなことを言う。

どうやらあいつが、チェリコの言っていた悠久の竜みたいだな。

メルキドシールドで守られたこの町を破壊し、ロッシとケッパーに大怪我を負わせるほどの力を持っているので、最大限に警戒して挑まなければならなさそうだ。

俺はメルキドを守るために剣を構えるが、二人は怯えた様子を見せていた。

 

「せっかく立て直したのに、また壊されちまうのか…?」

 

一度戦って勝てなかった相手なので、そうなるのも仕方ないだろう。

だが、今日は俺とロロンドがメルキドに戻って来ているし、練習中とは言え飛天斬りもある。

 

「確かにあいつは強そうだ。でも、例えこの前勝てなかったとしても、今回は俺とロロンドもいる。今度こそ奴を倒して、メルキドをもう一度復興させるぞ」

 

俺がロッシたちにそう話すと、後ろで聞いていたロロンドも続けて言う。

 

「我輩たちは、お主が人間には勝てないと言っていたゴーレムをも倒したのだ。誰が相手であろうと、勝てないはずはあるまい。力を合わせて、必ずあの竜を打ち倒すのだ」

 

「確かに今回は二人もいる…力を合わせて戦えば、あのドラゴンだって倒せるかもしれねえな」

 

懐かしいな、メルキドのみんなでゴーレムを倒し、町を守り抜いたのは。

今日もあの日のように、みんなと共にメルキドの町を守りたい。

ロッシも町を大切に思う気持ちは強い。俺たちの話を聞いて、ロッシは不安な表情をしながらも剣を構えた。

 

「厳しい戦いにはなりそうだけど、僕もメルキドの兵士として、諦めたくはないね」

 

ケッパーもメルキドの衛兵として、魔物たちとの戦いに備え始める。

魔物たちも、かなりメルキドの町に近づいて来ていた。

 

「そろそろ魔物たちが来る、みんな行くぞ!」

 

どんな苦しい戦いになっても、必ずメルキドの2度目の復興を達成してやるぜ。

俺が参戦する中では6回目の、メルキドの町の防衛戦が始まった。

 

メルキドの町ははがねの守りとメルキドシールドの二段構えで守られている。

悠久の竜は町のすぐ近くにまで来ると、巨大な闇の火球を吐いてメルキドシールドを攻撃してきた。

奴が放った闇の火球は前衛の魔物の上空を飛んでいき、メルキドシールドに着弾した瞬間爆発する。

 

「あの威力だと、メルキドシールドでもそう長くは持ちそうにないな…」

 

メルキドシールドは一撃では壊れなかったが、何発か受けたら耐えられないだろう。

前の戦いの時も、あの火球で防壁と町が壊されたのかもしれない。

俺たちは悠久の竜の火球を止めに行こうとするが、前衛のビッグハンマーたちが立ち塞がってくる。

俺たちは4人いるので、12体のビッグハンマーたちは3体ずつに分かれて襲いかかって来た。

 

「もう町を作るのは諦めな!」

 

「いくら作り直したところで、ボクたちが全部壊す!」

 

ビッグハンマーはブラウニーやブラックチャックよりも大きなハンマーを振り回し、俺たちに殴りかかってくる。

ハンマーはかなり威力が高そうで、当たったらかなり危なそうだ。

しかし、大きなハンマーを振り回すのには力がいるためか、あまり攻撃速度は早くなかった。

 

「攻撃力は高そうだけど、このくらいのスピードなら避けられるな」

 

俺はビッグハンマーたちの攻撃を回避しながら、おうじゃのけんとビルダーハンマーで攻撃していく。

強力な武器での攻撃を受けて、奴らはすぐに弱っていった。

ビッグハンマーは新しく見る魔物だが、ラダトームやサンデルジュの奴らと比べたら強くはない。

しかし、決して気を抜かないようにしながら、俺は攻撃を続けていく。

傷を負ってもビッグハンマーは攻撃を続けて来るが、攻撃速度はさらに落ちていた。

 

「ぐぬぬ…攻撃が当たらない…」

 

「しつこいぞ…人間め…!」

 

俺は攻撃速度が落ちたビッグハンマーたちの腕を攻撃していき、持っているハンマーを叩き落としていく。

俺と戦っている3体ともがハンマーを落としたのを見て、俺は腕に力を溜めた。

そして、奴らが体勢を立て直す前に力を解き放ち、薙ぎ払って行く。

 

「回転斬り!」

 

弱っていたところに二刀流での回転斬りを受けて、3体のビッグハンマーは青い光に変わっていった。

メルキドのみんなも、ビッグハンマーにはあまり苦戦していない。

 

「これ以上、我輩たちの町に近づくでないぞ!」

 

「このヒゲ男…強いな…」

 

「だが、ボクたちは人間どもには屈さない!」

 

力の強いロロンドはビッグハンマーの持つハンマーを弾き落とし、無防備になっているところを倒していく。

まだハンマーを持っている奴は抵抗を続けているが、じきに倒されるだろう。

ロッシとケッパーも、素早い動きで次々にビッグハンマーたちを攻撃していった。

このまま行けば、ビッグハンマー軍団を壊滅させることが出来そうだ。

 

だが、俺たちがビッグハンマーと戦っている間に、悠久の竜の炎によって、メルキドシールドの耐久力は限界になっていた。

闇の火球が何度も直撃し、メルキドシールドはついに破壊されてしまう。

もう少し耐えられると思っていたが、急いで悠久の竜のもとに辿り着かなければいけないな。

 

「メルキドシールドが…早くしねえと、町が…」

 

ロッシもメルキドシールドの破壊に気づき、そんなことを言った。

はがねの守りはメルキドシールドほど耐久力がないので、すぐに壊されてしまうだろう。

俺は早く悠久の竜のところに向かおうと、ビッグハンマーたちの後ろにいたあくまのきしたちに斬りかかって行く。

8体いるあくまのきしのうち、4体が俺と戦いに来て、残りの4体はまだビッグハンマーと戦っているロロンドたちのところに向かった。

 

「貴様はなかなかやるな…だが、我らに勝てると思うなよ!」

 

「我らの斧で叩き斬ってやる!」

 

あくまのきしは強力な魔物だ…しかし、今戦っているあくまのきしは昔メルキドで戦った隊長のあくまのきしや、この前戦った飛天斬りを使うあくまのきしと比べて体が小さい。

攻撃力も、あいつらに比べたら低いかもしれないな。

俺はなるべく早く奴らを倒すため、回避しながら攻撃していくのではなく、斧を弾き飛ばして無力化させようとする。

最初に攻撃してきたあくまのきしの斧を、俺はおうじゃのけんを使って受け止めた。

 

「体は小さいのに、結構重いな…!」

 

攻撃力はやはり大きなあくまのきしに比べたら低かったが、俺の腕にはかなりの衝撃が走る。

だが、防ぎきれないということはなく、腕に力をこめて奴の斧を弾き飛ばすことが出来た。

 

「でも、弾き返せないほどじゃないぜ」

 

1体の斧を弾き飛ばすと、俺は左腕のビルダーハンマーも使ってあくまのきしたちの体勢を崩していく。

あくまのきしがみんな体勢を崩すと、俺は再び回転斬りを放とうとした。

回転斬りを使えば、奴らに大きなダメージを与えられるだろう。

 

「もう一度だ、回転斬り!」

 

あくまのきしたちは鎧を引き裂かれたり叩き潰されたりして、瀕死の重症を負う。

体勢を立て直されると厄介なので、俺は動けなくなっている奴らに追撃を行い、とどめをさしていった。

俺があくまのきしたちを倒した頃には、みんなもビッグハンマーとあくまのきしを倒しており、悠久の竜の前に立つ6体のドラゴンの前に向かっている。

 

悠久の竜の炎はもうはがねの守りを突き破っており、これ以上放たれたら町が破壊されてしまう。

一刻も早くドラゴンを倒そうと思っているロロンドたちは、グレネードを使って攻撃を行っていく。

 

「お主たちもあの竜も、我輩たちを倒すは出来ん!」

 

「せっかく町を立て直したんだ…もうお前たちの好きにはさせねえ!」

 

俺の考えたグレネードは爆発範囲がそこまで広くなく、素早く小柄な魔物には避けられてしまうが、巨体で移動速度がそこまで早くないドラゴンには効果が高い。

 

「お主もグレネードを使うのだ!早くあの竜を止めに行くぞ!」

 

みんなのところに近づいて行くと、ロロンドは俺にもグレネードを使うように指示した。

 

「ああ、町の被害を最小限に留めたい」

 

指示を聞くと、すぐに俺はポーチからグレネードを取り出し、ドラゴンの背中に向かって投げていく。

俺たちが投げたグレネードの爆風はドラゴンたちに直撃し、大きなダメージを与えられた。

ドラゴンたちは火炎を吐いて抵抗して来たが、俺たちは横に避けてグレネードを投げ続ける。

 

「炎を吐いてきたか…でも、このくらいで俺たちは止められない」

 

普通のドラゴンはダースドラゴンなどと比べて耐久力も低く、爆風を何度か受けると怯んで動きを止めた。

奴らが動きを止めたのを見て、俺たちは持っていたグレネードを一斉に投げつける。

 

「怯んだな…今のうちに一気に倒すぞ!」

 

大量のグレネードの爆発に巻き込まれ、ドラゴンたちは生命力が尽きて消えていった。

 

6体のドラゴンが倒されたのを見て、悠久の竜は町への攻撃を止めて俺たちを睨みつけてくる。

町の西側にある建物はいくつか壊されてしまっているが、この前のようにメルキドの町全体が被害を受けてはいない。

奴を倒して、これ以上町が壊されないようにしないとな。

 

「よくも我輩たちのメルキドを破壊してくれた…お返しはたくさんしてやらないとな」

 

ロロンドもそう言って、悠久の竜に剣を向けた。

だが、俺たちが悠久の竜に斬りかかろうとすると、後ろにいたスターキメラたちも炎を吐いて来る。

 

「くっ…。せっかくここまで来たのに、こいつらも邪魔して来やがったか…」

 

全員でスターキメラと戦えば悠久の竜が町への攻撃を再開してしまうだろうから、誰か一人が悠久の竜を引き付けて、残りの3人でスターキメラを倒さなければいけなさそうだ。

ラダトームやサンデルジュでドラゴンの魔物とは戦い慣れているので、俺が悠久の竜を引きつけようとみんなに言う。

 

「みんなはスターキメラを倒してくれ。俺がその間、悠久の竜を引き付ける」

 

「分かった。スターキメラを何とかしないと、あのドラゴンも倒せなさそうだからね」

 

俺の指示を聞くと、ケッパーたちはすぐにスターキメラたちに斬りかかって行った。

スターキメラの炎は強力だが、近接戦闘に持ち込めば簡単に倒すことが出来る。

みんななら、奴らを倒しきるのにそんなに時間はかからないだろう。

みんながスターキメラのところに向かったのを見て、俺は悠久の竜に近づいた。

 

悠久の竜は俺が近づいて来たのを見て、直線状に闇の炎を吐き出す。

普通のドラゴンと同じような動きだが、炎の勢いも熱さも桁違いだ。

 

「火球以外でも、強力な闇の炎を扱って来るな…」

 

さすがに闇の戦士の闇の爆炎ほどの威力はないものの、直撃したらひとたまりもなさそうだ。

俺は悠久の竜の炎をジャンプで避けて、奴の前足へと近づいていく。

 

「でも、何とか近づけそうだぜ…」

 

動く速度はゴールデンドラゴンくらいなので、接近することは不可能ではない。

変異したことにより足の肉質も固くなっているだろうが、おうじゃのけんならかなりのダメージを与えられるだろう。

俺は奴の足に向かって剣を振り下ろし、反撃して来る前にビルダーハンマーも叩きつける。

しかし、ラダトームを襲った滅ぼしの騎士と同様に、全く怯む様子を見せず、俺に爪を振り下ろして来た。

俺は動きを見てすぐに避けたが、奴は連続して牙での噛みつきも行ってくる。

 

「くっ…連続攻撃か…」

 

悠久の竜の口内には常に闇の炎があり、噛まれれば大きな火傷も負うことになるだろう。

俺は牙での攻撃もジャンプして回避しようとするが、連続攻撃はそれでは終わらない。

悠久の竜は力をこめて飛び上がり、俺を叩き潰そうともして来る。

ドラゴン系の魔物が飛び上がるなんて、今まで見たこともなかったな。

飛びかかり攻撃の後は、3連続で闇の火球を放ってくる。

 

「くそっ、どれだけ連続で攻撃して来るんだ…!?」

 

連続攻撃にも限界があるはずだと思い、俺は飛びかかりや火球もかわしていくが、3発目の火球を避けきれず、俺は足に傷を負って怯んでしまった。

俺が怯んだのを見て、悠久の竜は口に力を溜めていく。

そして、俺が体勢を立て直しきる前に、辺りの全てを焼き払うような広範囲の闇の炎を、放射状に吐いてきた。

俺は直撃だけは避けようと体勢を立て直せぬままにまたジャンプを行ったが、体中に大きな火傷を負ってしまう。

 

「連続攻撃だけじゃなく、こんな広範囲に炎を吐くことも出来るのか…」

 

奴はメルキドの地で長い年月を生き、さらにエンダルゴの力で変異した個体だ…連続攻撃を行ってもそう簡単に疲労はしないのかもしれない。

この前のロッシとケッパーも、この連続攻撃に対応出来なかったのだろう。

火傷を負った俺に見せつけるかのように、悠久の竜はメルキドの町に向かって火球を吐く。

火球は町の中央にまで到達し、ルビスの加護を失ってボロボロになった希望のはたが燃え上がっていた。

 

「でも、どんな強敵であっても、俺たちのメルキドを壊させたくはないぜ…!」

 

俺は町を守らなければいけないという思いで立ち上がり、少しでも奴にダメージを与えられないかとサブマシンガンを取り出す。

はがねの弾丸を連射すると、少しは悠久の竜も傷を負っていた。

だが、やはり怯むことはなく、奴は火炎での攻撃を続けてくる。

一人では奴を引き付けることすら難しいみたいだな…。

俺は痛む全身を動かして回避しながら、何とかみんなが戻って来るまで持ちこたえようとした。

 

「大丈夫かい、雄也?ここまで引き付けてくれてありがとう」

 

そして、俺の体力が残り僅かになった時、ついにスターキメラを倒し終えたケッパーが戻って来た。

4人がいれば、戦いの前に言っていた通り、戦いに勝てる可能性は上がる。

しかし、奴の連続攻撃を見ると、苦しい戦いになるのは間違いないだろう。

 

ロロンドとロッシもスターキメラ軍団を打ち破り、悠久の竜に斬りかかって行った。

 

「ようやく町を壊された礼ができるな。覚悟するのだ!」

 

「今日はこの前のようにはいかねえ…絶対に倒してやる」

 

3人は悠久の竜の側面にまわり、奴の体に次々にダメージを与えていく。

ロロンドはメタルのけん、ロッシとケッパーははがねのつるぎを使っているが、それでも傷をつけることは出来ていた。

悠久の竜もさすがに3人同時に攻撃することは出来ないのか、まずはケッパーを倒そうと、さっき俺にしたような連続攻撃を仕掛ける。

 

「あの連続攻撃は危険だ。ロロンド、雄也、何としてでも止めるぞ!」

 

ロッシもやはり連続攻撃の危険性を知っているようで、俺たちにそんなことを言った。

悠久の竜はケッパーを爪で薙ぎ払い、炎で焼き付くし、飛びかかって叩き潰そうとする。

体力の限界で動きを止めていた俺も再び攻撃に加わり、ロロンドたちと共に奴の後ろ足や尻尾に武器を叩きつけていった。

だが、3人でどれだけ攻撃を行っても、悠久の竜はなかなか怯まない。

ケッパーも最初は簡単に避けられていたが、あまりに連続して行われる攻撃に苦しそうな表情になる。

ケッパーが苦しんでいるのを見て、悠久の竜は力を溜めた。

おそらく、さっき俺に放ってきた放射状の闇の炎を吐くつもりなのだろう。

 

「こうなったら、飛天斬りだな…」

 

飛天斬りはまだ練習中だが、それでも通常の攻撃よりはかなり威力が高い。

飛天斬りを使えば、もしかしたら悠久の竜の動きを止められるかもしれないな。

ケッパーも大けがを負ってしまえば、奴に勝てる可能性はさらに下がってしまう。

ケッパーを助けるには他に方法はないと思い、俺は腕に力を溜める。

そして、悠久の竜が炎を吐き出す直前に大きく飛び上がり、両腕の武器を垂直に思い切り叩きつけた。

 

「飛天斬り!」

 

奴の背中に、伝説の武器の二刀流での飛天斬りが直撃する。

すると、力を溜めていた悠久の竜はついに怯んで体勢を崩し、動きを止めた。

さらに、溜まっていた闇の炎が体内で爆発の起こし、大きなダメージを受けていた。

 

「よくやったぞ雄也!今のうちに奴を倒してやろう!」

 

ロロンドたちは悠久の竜が怯むと、肉質の柔らかい腹部への集中攻撃を行う。

俺は傷ついた体で飛天斬りを使ったので、着地と同時に体に激しい痛みが起こったが、苦痛に耐えて攻撃に参加した。

ケッパーも体勢を立て直し、俺と同じように飛天斬りを使う。

 

「僕もやるよ、飛天斬り!」

 

悠久の竜は顔面に強力な一撃を与えられ、体勢を立て直すどころかさらに怯んだ。

それを見て、俺とケッパーはもう一度飛天斬りを放つ。

ロロンドたちも可能な限りの攻撃を叩き込み、奴を弱らせていった。

 

体勢を立て直した頃には、悠久の竜はもう瀕死の状態になっていた。

追い詰められた奴は、メルキドの町の反対側に逃げ出そうとする。

 

「ここで逃がしてもまた襲ってくる…みんな、とどめをさすぞ!」

 

「ああ!」

 

この前ロッシたちが町を破壊されながらも撃退した悠久の竜が、今日再び襲いかかって来ている。

ならば、今日ここで逃がしたら、確かに奴はまた戻って来るだろう。

俺たちは悠久の竜にとどめをさそうと、剣を構えて向かっていった。

すると、悠久の竜ももう逃げられないと思ったのか、再び火を放って攻撃して来る。

 

「炎の範囲も狭くなっているな…連続攻撃も、もう使えないかもしれない」

 

だが、炎の範囲も威力もさっきより弱まっているので、近づきやすくなっていた。

俺たちは再び奴を包囲し、可能な限りの攻撃を叩き込む。

ロロンドたちも、このままとどめをさせそうだと思っていた。

 

しかし、悠久の竜はただでは倒れてはくれない。

包囲している俺たちを一度に薙ぎ払おうと、全身を回転させて攻撃してきた。

 

「まだ攻撃出来る力があるのか…!?」

 

ラダトーム城の1度目の防衛戦で襲いかかって来た、ダースドラゴンも使っていた技だ。

俺はすぐに気づいて避けることが出来たが、尻尾の近くにいたロッシは攻撃を受けて地面に叩きつけられる。

それだけでなく、悠久の竜は回転攻撃の直後に火炎での攻撃を行い、避けた直後であり、体力がほとんど尽きている俺はさらなる火傷を負ってしまう。

 

「くそっ、連続攻撃もまだ使えるのかよ…!」

 

連続攻撃は使えるものの、やはり弱ってはいるので、悠久の竜の動きは少し止まっていた。

ケッパーはその隙を逃がさず、腕に力を溜める。

奴はもう一度回転攻撃を使おうとしていたが、ケッパーはその前に高く飛び上がり、剣を叩きつける。

 

「今度こそ、飛天斬り!」

 

高威力の技を受けて悠久の竜はもう一度怯み、そこをロロンドとケッパーは残った力を全て使って攻撃を行う。

そして、二人の体力が尽きるのとほぼ同時に、悠久の竜の強大な生命力と闇の力はついになくなり、奴は青い光を放って消えた。

 

「何とか…勝ったんだな…」

 

悠久の竜が倒れるのを見て、俺たちはメルキドの町に戻っていく。

俺たちは強大な魔物を打ち倒した、あの時ゴーレムを倒したように。

しかし、メルキドの町を破壊した強敵を打ち破った嬉しい瞬間ではあるが、それを喜び合う力ももう残っていなかった。

チェリコの話によると、悠久の竜は残り2体もいるらしい。

恐らく今度はさらに多くの部下を引き連れて、2体同時に現れることになるだろう。

ゴーレムの製造や防壁の強化を、急がなければならなさそうだ。

俺たちはそんなことを思いながら、足を引きずりながら町の中に入っていった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。