ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
ケッパーは土ブロックを積み上げて、壊された建物を直している。
作業に集中しているようだが、俺の姿が見えるとすぐに話しかけてきた。
「やっと起きたみたいだね、雄也」
「ああ。ロロンドから聞いたけど、俺に話したいことがあるんだって?」
メルキドの立て直しや魔物との戦いのために、役立つ話だといいな。
「これから強力な魔物と戦うには、強力な武器だけでなく、武器を振るう人自身の力も必要だと思ったんだ」
確かに、どれだけ強力な武器を作ったとしても、俺自身の力もなければエンダルゴや闇の戦士を倒すことは出来ないだろう。
ケッパーがそんな話をすると言う事は、もしかして、新しい剣技を思いついたのだろうか。
「もしかして、回転斬りに次ぐ新しい技を教えてくれるのか?」
「うん。僕も最近覚えたんだけど、腕に全身の力を溜めて飛び上がり、目の前の敵を叩き斬る、飛天斬りという技さ。回転斬りと違って目の前にいる敵しか攻撃出来ないけど、威力はすさまじい物だよ」
飛天斬り…腕に力を溜めて飛び上がり、敵を叩き切る技か…。
回転斬りと違って、飛天斬りは目の前の敵にしか効果がないようだな。
だが、周囲の敵全体に傷をつけることは出来なくても、敵一体には回転斬りを上回る超特大のダメージが与えられるのなら、役に立つ強力な技になりそうだ。
「確かに役に立ちそうな技だな。早めに習得しておきたいし、さっそく教えてくれ」
いつメルキドにまた悠久の竜が襲って来るか分からないし、習得は早めにしておいたほうがいいだろう。
俺はすぐに、ケッパーに飛天斬りを教えてくれるように頼んだ。
「この前も言ったけど、僕は人に物を教えるのが得意じゃないんだ。だから君には回転斬りの時と同じように、魔物の動きを見て飛天斬りを覚えて欲しい」
そう言えば回転斬りの時も、ケッパーが物を教えるのが得意じゃないという理由で、てつのさそりと戦いに行くことになったんだったな。
飛天斬りを覚えるために、今度はどんな魔物と戦うことになるのだろう?
「ケッパーは何の魔物の動きを見て、飛天斬りを覚えたんだ?」
「ドムドーラの岩山を越えた先にある草原にいる、大きなあくまのきしさ。ロッシと僕は町の周辺にドラゴンが現れた後、他にも異変が起きている場所がないか各地を調べに行ったんだ」
大きなあくまのきしか…昨日おおきづちの里を襲ったあくまのきしよりも強いのかもしれないな。
ロッシとケッパーはメルキドで異変が起きた後、各地を見に行っていたのか。
ドムドーラに白い岩でできた岩山があるのは知っていたが、その先に行ったことは一度もなかった。
そんなことを思っている間に、ケッパーは話を続けていく。
「そこで体の大きなあくまのきしを見つけて、僕は敵の戦力を削ぐために戦いを挑んだんだけど、そのあくまのきしは大勢のしりょうのきしに守られていて、飛天斬りも使って来た。しりょうのきしを減らすことは出来たけど、結局あくまのきしを倒すことは出来なかった。もっと力をつけようと思って、逃げて町に帰って来た後、あくまのきしの動きを思い出して飛天斬りの練習を始めたんだ」
しりょうのきしに守られていたとはいえ、ケッパーが倒しきれなかったと言う事は、昔のメルキドの隊長のあくまのきしより強い可能性があるな。
あくまのきしは戦い慣れた魔物ではあるが、警戒して挑まなければいけなさそうだ。
もしかしたら、滅ぼしの騎士や悠久の竜のように、エンダルゴによって変異させられた個体なのかもしれない。
「そのあくまのきしって、体が黒く変異していたりしていなかったか?」
「僕が見た限りでは、見た目は普通のあくまのきしだったよ」
俺は聞いてみたが、ケッパーは普通のあくまのきしだったと言う。
それを聞いて少しは安心だが、気をつけて挑まなければいけないのには変わりない。
今から時間はあるので、俺はさっそく赤い旅のとびらからドムドーラに向かおうとする。
「分かった。今からドムドーラに向かって、そのあくまのきしと戦って来るぜ」
「十分気をつけてくださいね、雄也」
ケッパーのように飛天斬りを覚えて、出来るならそのあくまのきしを倒そう。
俺はケッパーにそう言うと、旅のとびらのある部屋に入り、ドムドーラに向かった。
ドムドーラの砂漠地帯に入ると、俺はケッパーの言っていた岩山に向かう。
岩山はゆきのへが捕まっていた牢屋の、さらに奥にあったはずだ。
ここでも新たな魔物が現れていないか、俺はまわりを見ながら進んで行った。
「新しい魔物は特にいないか…でも、見つからないようにしていこう」
すると、特に新しい魔物は見かけられず、スライムベスやおおさそりといった見慣れた魔物の姿しかなかった。
メルキドやドムドーラの全域で、新たな魔物が現れているという訳ではないようだな。
だが、危険な魔物ではないにしろ、俺はなるべく見つからないためにメルキドの大倉庫からある道具を取り出す。
「砂漠の箱を使えば、安全に進めるだろうな」
砂の草切れから作られる、砂漠の箱…メタルギアソリッドのダンボールをイメージしたもので、これを使えば砂漠地帯で敵に見つかる可能性を下げられる。
昔ドムドーラやマイラの荒野で使っていたが、かなり久しぶりに使うことになるな。
俺は砂漠の箱を被って、ドムドーラの砂漠をゆっくりと進んでいった。
20分くらい歩き続けると、俺は魔物に見つからずにゆきのへが捕まっていた牢屋のところにまでたどり着く。
ここでピリンに化けた魔物に出会い、奴の喉を思い切り斬って倒したのが懐かしいな。
かつてのメルキドの復興を思い出しながら、俺は目の前にそびえる岩山を眺めた。
「この岩山の先に、ケッパーが言ってた草原があるのか」
ものすごく高いと言う訳でもなく、岩山を登るのに慣れている俺なら簡単に超えることが出来そうだ。
俺は土ブロックを積みながら、慎重に岩山を登っていく。
岩山を登りきると、そこには何体かのキメラが生息しているのが見えた。
俺はそのキメラたちも避けて行きながら、岩山の反対側へと降りていく。
するとそこには、メルキドの町の周辺と変わらない、緑に溢れた草原が広がっていた。
「この草原のどこかに、ケッパーの言っていたあくまのきしがいるんだな」
草原にはたくさんの木が生えており、キノコや白い花も見かけられた。
砂漠のすぐ隣に、こんなに緑に溢れた場所があるとは思わなかったな。
そんなことも思いながら、俺はドムドーラの隣の草原を探索していく。
草原を進んで行くと、何体かのしりょうのきしが生息しているのも見つかった。
「ここにはしりょうのきしがいるのか…ここは草原だし、草原の箱を使うか」
元々いたのか、最近住み始めるようになったのかは分からないが、しりょうのきしに見つからないように、俺は今度は草原の箱を大倉庫から取り出して使う。
魔物から隠れながら進んでいくと、海に浮かんでいる島と、そこにたくさんの石の墓が立っているのも見えた。
「あんなところに島があるな…墓がたくさん立っているけど、誰かいるのか?」
墓が立っていると言う事は、それを作った者がいたはずだ。
料理用たき火も置いてあり、最近まで誰かが生活をしていた痕跡がある。
困っている人がいるのなら助けないといけないと思い、俺はその島を眺めてみた。
しかし、人間がいたのか魔物がいたのかは分からないが、その島にはもう誰の姿もなかった。
「昔は誰かいたのかもしれないけど、今はもういないな…」
この島に住んでいた者がどうなったかは分からないが、もう誰もいないので、俺はあくまのきしを再び探し始める。
草原はかなり広く、奥まで進むのはかなり時間がかかりそうだった。
しかし、急げば魔物に見つかってしまうので、俺は草原の箱を使いながらゆっくりと進み始める。
草原をさらに進んで行くと、木が生えていない開けた場所にたどり着いた。
「結構進んできたけど、まだあくまのきしは見つからないな…」
かなり広い場所だが、そこにもあくまのきしの姿はない。
その開けた場所には白い花や薬草がたくさん生えていたが、一ヶ所植物が全く生えていないところもあった。
もしかしたら昔そこに、悠久の竜のうちの1体がいたのかもしれないな。
そんなことを思いながら、俺は白い花や薬草を集めつつ、草原の先へと歩いていった。
そして、メルキドを出てから1時間くらい経って、俺は海の近くにまでたどり着く。
そこで辺りを見回すと、ついに2体のしりょうのきしに囲まれた、大きなあくまのきしが見かけられた。
「こんなところにいたのか…さっそく戦いに行こう」
しりょうのきしが2体しかいないのは、ケッパーが減らしてくれていたからだろう。
俺は奴らと戦うために、草原の箱をポーチにしまい、おうじゃのけんとビルダーハンマーを構える。
武器を持って近づいて行くと、奴らも俺に気づいて来た。
「こんなところに人間だと…!?何をしに来たのだ!」
「ここに強いあくまのきしがいるって聞いてな、戦いに来たんだ」
俺が戦いに来たことを告げると、あくまのきしたちはそれぞれの武器を構える。
やはりあくまのきしはケッパーの言っていた通り、見た目は普通だった。
だがあくまのきしは、これからエンダルゴのところに向かうつもりだったと言った。
「これからエンダルゴ様の元に行き、さらなる強さを得るところだったと言うのに…面倒な奴だ」
悠久の竜だけでなく、このあくまのきしも闇の力で変異してしまえば、メルキドはさらなる危機に落ちいることになるだろうな。
そうなる前に、戦いに来ることが出来てよかった。
必ずここで倒して、あくまのきしの変異を阻止しなければいけなさそうだ。
「エンダルゴのところには行かせないぞ」
「何とでも言うがいい、人間め…貴様ごときが我らを止めることはできん。お前たちも、そこの人間を殺せ!」
このあくまのきしも、ビルダーがメルキドに戻って来たとは思っていないようだな。
奴は手下である2体のしりょうのきしたちに命令を出し、俺を殺そうとして来る。
飛天斬りを使うという、大きなあくまのきしたちとの戦いが始まった。
まず最初に、あくまのきしの命令を受けたしりょうのきしが斬りかかってくる。
しりょうのきしは昔メルキドの防衛戦で戦った個体と、同じくらいの強さだろうな。
「メルキドの町もお前も、もうおしまいだ!」
「我らに逆らったことを後悔しろ!」
しりょうのきしは強力な魔物だが、俺は上位種のかげのきしとも何回も戦っている。
攻撃を弾き返して、動きを止めることが出来るだろう。
俺は奴らが剣を振り下ろして来た瞬間に、両腕の武器を使って攻撃を防いだ。
そして、しりょうのきしたちが次に攻撃をして来る前に、俺は腕に力をこめて奴らの剣を弾き飛ばす。
「結構強い攻撃だけど、弾き返せたな…今のうちに倒してやるぜ」
両腕にかなりの痛みが走ったが、奴らを無力化することが出来た。
あくまのきしが来る前に倒そうと、俺は体勢を崩した奴らに何度も斬りかかる。
だが、後ろにいたあくまのきしもしりょうのきしたちを守るために、腕に力を溜め始めた。
「かなりの力を持っているようだが…無駄だ、人間!」
腕に力を溜め終えると、あくまのきしは俺に走って近づいて大きく飛び上がり、斧を凄まじい勢いで垂直に叩きつけて来る。
俺はジャンプで避けたが非常に威力が高く、地面が砕けそうになっていた。
「これがケッパーの言ってた飛天斬りか…確かにかなり強力な技だな」
ケッパーの言っていた通り、腕に力を溜めて飛び上がり、目の前を叩き斬る技で、これが飛天斬りだろう。
俺がこれを使えるようになれば、確かにエンダルゴや闇の戦士にも大きな傷をつけられそうだ。
あくまのきしは飛天斬りの後も、斧で連続で斬りかかってくる。
「我が剣技を避けたか…だが貴様に勝ち目などない!」
奴の攻撃速度は他のあくまのきしより速く、武器を叩きつける隙があまりなかった。
攻撃を避けながら少しずつ攻撃を与えることは出来るが、それでは倒すのに時間がかかってしまいそうだ。
しりょうのきしが体勢を整え、剣を持ち直して来てしまう。
早く倒すには、奴の斧も弾き飛ばして無力化させないといけないだろう。
「攻撃力も高そうだけど、こいつの斧も弾き飛ばすしかないな」
奴は攻撃力も上位種のしにがみのきしと同じくらいありそうだが、今までたくさんの魔物と戦って来た俺なら問題なく弾き返せるはずだ。
あくまのきしが斧を叩きつけて来たと同時に、俺はおうじゃのけんとビルダーハンマーを使い、奴の攻撃を受け止めた。
「防ごうとしても無駄だ、人間め…!」
あくまのきしの攻撃力はやはりかなり高く、押されそうにもなるが、俺は両腕に身体中の力を込める。
奴は最初余裕そうな顔をしていたが、だんだん苦しそうになっていった。
そこでさらに力を加え続けていると、あくまのきしは耐えられなくなり、斧を落として体勢を崩していく。
「やっぱり攻撃力は高かったけど、何とか押し返せたな…今のうちに仕留めるぜ」
あくまのきしが体勢を崩したところで、俺は両腕の武器を使ってさらなるダメージを与えていった。
このまま攻撃を続ければ、あくまのきしが立ち直る前に倒すことが出来そうだ。
しかし、あくまのきしが倒れる前に、しりょうのきしたちが剣を持ち直して斬りかかろうとして来る。
「さっきはよくも我らの剣を!」
「今度こそ斬り裂いてやるぞ!」
しりょうのきしにも囲まれたら、あくまのきしを集中攻撃することが出来なくなるな。
そうなれば、あくまのきしは体勢を立て直してまた斧を叩きつけてくることだろう。
俺はしりょうのきしたちが来る前にあくまのきしを倒そうと、腕に力を溜めていった。
「あいつらもう体勢を立て直して来たのか…あくまのきしの動きを真似て、飛天斬りを放とう」
さっきのあくまのきしの動きを見て、飛天斬りの動きだいたいの動きは覚えることが出来た。
ここで飛天斬りを放てば、しりょうのきしが来る前にあくまのきしを倒せるだろう。
俺は腕に力を最大まで溜めると、大きく飛び上がって垂直に武器を叩きつける。
「飛天斬り!」
あくまのきしほどきれいな動きではないが、強烈な一撃を奴に与えられた。
二刀流での飛天斬りを受けて、あくまのきしは生命力が尽きて消えていく。
飛天斬りであくまのきしを倒した後は、今度は2体のしりょうのきしを倒すために回転斬りの構えをとった。
「これであくまのきしは倒せたな…あとは回転斬りで、あの2体を倒すか」
あくまのきしが倒されても、しりょうのきしたちは恐れずに俺に攻撃して来る。
俺は再び力を溜めていき、奴らが至近距離にまで近づいたところで解放し、周囲を薙ぎ払っていった。
「お前たちも終わりだ、回転斬り!」
さっきの俺の攻撃で弱っていたしりょうのきしたちは、回転斬りが直撃して砕けて散っていく。
これで俺と戦っていた3体の魔物は倒れて行き、俺は武器をしまった。
「飛天斬りの動きを覚えられたし、あくまのきしも倒せたな」
このあくまのきしが倒れたことで、メルキドが今以上の危機に陥ることはなさそうだ。
飛天斬りも練習を続けていけば、間違いなくエンダルゴや闇の戦士にも強烈な一撃を与えられる技になるだろう。
メルキドの悠久の竜との戦いにも、役立てて行きたいな。
俺はそんなことを考えながら、草原地帯やドムドーラの砂漠を歩いてメルキドの町へと戻って行った。
メルキドに戻って来ると、俺はケッパーにあくまのきしを倒し、飛天斬りの動きを覚えたことを伝えに行く。
ケッパーはさっきの建物の修理を終えたようで、希望のはたの近くで休んでいた。
「ケッパー。あくまのきしを倒して、飛天斬りも覚えてきたぞ」
「本当かい!?君はあの竜王も倒したって聞いたけど、本当に強いんだね。さっそく飛天斬りを見せてみてくれ」
俺があくまのきしを倒したことを聞いて、ケッパーはそんなことを言う。
だが、俺があくまのきしを倒せたのは、ケッパーが手下のしりょうのきしを減らしてくれたおかげだろう。
しりょうのきしの数が多かったら、間違いなく苦戦していたはずだ。
俺は飛天斬りを放つために、ケッパーに少し下がってくれとも伝える。
「ケッパーがしりょうのきしを減らしてくれたおかげだ。少し離れていてくれ」
ケッパーが離れたのを見て、俺は腕に力を溜め始めた。
力が溜まっていくと、俺はその場で大きく飛び上がっていく。
「飛天斬り!」
そして、そう叫んだ瞬間に両腕の武器を振り下ろし、地面に叩きつけた。
「まだ動きを覚えたばっかりだから、あんまりうまくは使えない」
「僕もまだ完璧には使えていないさ。これから一緒に練習していこう」
ケッパーは俺の飛天斬りを見て、一緒に練習していこうと話す。
確かに一緒に練習して行けば一人でするよりやる気も出るだろうし、早く上達出来るはずだ。
「ああ。今からでもさっそく始めたい」
俺とケッパーはその日の午後、日が暮れるまで飛天斬りの練習を続けた。
一日ではあまり成果が現れなかったが、毎日続けていけばだんだん威力も上がっていくだろう。