ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode149 崩れ落ちた町

俺たちはみんなの無事を確認するため、廃墟と化したメルキドの町を歩いていく。

メルキドには世界が平和になってからもう一度行くのだと思っていたので、こんな感じで訪れることになるとは考えてもみなかったな。

昔俺がメルキドにいた時にはなかった建物もいくつかあったが、それらも全て大きく壊されていた。

俺が他の町を復興させている間に、ロロンドたち作った物なのだろう。

町の中を進んでいくと、気になる物も見つかった。

 

「ロロンド、この転がっているたくさんのゴーレム岩はなんだ?」

 

ぼろぼろの旗となってしまった希望のはたの近くに、たくさんのゴーレム岩が転がっているのだ。

ゴーレム岩は建築には使わないだろうし、一体何に使おうとしたのだろうか。

俺がそう聞くとロロンドは、メルキドでゴーレムを作り直す計画があったのだと話す。

 

「我輩とロッシはメルキドに光が戻ってしばらくした後、この地の守護者や象徴として、新たなゴーレムを作る計画を始めたのだ。…この様子から考えると、計画は頓挫してしまったようだがな」

 

新たなゴーレムか…確かにゴーレムがいれば、メルキドの象徴になるし、魔物に勝てる可能性も上がるな。

みんなが仲良く暮らしている今のメルキドなら、ゴーレムもちゃんと守ってくれるだろう。

町が半壊したことで計画は頓挫してしまったようだが、何とか計画を再開させて、新しいゴーレムを作り上げたい。

 

「そんな計画があったのか…ゴーレムは強力な味方になるだろうし、何とかして計画を再開させたいな…」

 

ゴーレムを作るためにも、まずはみんなの安否確認をしないとな。

メルキドの町の様子を見ているうちに、俺たちはみんながいると思われる建物にたどり着いた。

 

その建物に着くと、ロロンドは俺やピリンを連れてきたことを伝えながら、わらのとびらをノックする。

 

「ラダトームで色々あって遅くなったが、帰ってきたぞ。雄也とピリンも、一緒に来ておる」

 

ロロンドがノックをすると、中からショーターの大声が聞こえて来た。

 

「二度と会えないと思っていたんですが、帰って来てくれたんですね、ロロンドさん!雄也さんもピリンさんも来ているって、本当ですか!?」

 

どうやらショーターは、無事だったみたいだな。

声が聞こえてからしばらくすると、ショーターはわらのとびらを開けてくれる。

彼は俺とピリンが本当に来たのを見て、とても驚いていた。

 

「おお、雄也さん!本当に来てくださったんですね!」

 

ロロンドもショーターの顔を見ると、少しは明るい顔になっていく。

 

「町が壊されているのを見た時はまさかと思ったが、お主は無事であったか」

 

町は壊されてしまったが、ショーターが生きていたのは不幸中の幸いだな。

他のみんなの無事も確認するため、俺は建物の中に入っていく。

すると、チェリコとスラタンも生きていたようで、俺たちに声をかけてきた。

 

「久しぶりね。私も何とか生きてるわ」

 

「また会えて嬉しいよ、雄也!ピリン!」

 

「二人も無事だったか…本当に良かったぜ」

 

3人は怪我も負っておらず、元気そうだった。

さっきは町のみんなが全滅しているという最悪の事態も考えてしまったが、そうはならなかったようだな。

だが、部屋の奥では大怪我を負ったロッシとケッパーが寝ているのも見えた。

 

「でも、ロッシとケッパーは怪我してるみたいだな…」

 

生きているのは良かったが、二人は体中に切り傷ややけどを負っている。

俺がロッシたちの方を見ていると、スラタンは昨日メルキドの町で大きな戦いがあったと話した。

 

「昨日この町で大きな戦いがあったんだ…あくまのきしとドラゴンが襲ってきて、町を壊していっちゃった。ロッシとケッパーも、その時に怪我しちゃったんだ」

 

メルキドには今回も、あくまのきしとドラゴンが襲ってきていたのか。

だが、あくまのきしやドラゴンはかなり強力な魔物ではあるが、ゴーレムを倒すことが出来た二人がそこまで苦戦するとは思えない。

はがねの守りやメルキドシールドと言った、強固な防壁もあるからな。

そう思っていると、スラタンとの話を聞いていたショーターは、ドラゴンの中に一体だけ非常に強力な者がいたとも話す。

 

「お二人ははがねの守りやグレネードも使って、次々に魔物を倒していました。ですが、魔物の群れの最後尾にいたドラゴンが異様なまでの力を持っており、苦戦を強いられてしまったのです。何とか傷を負わせて撃退することが出来ましたが、また襲って来ることでしょう…」

 

ドラゴンなのに、上位種のダースドラゴンなどと同じか、それ以上の力を持っている個体だったと言うことか。

メルキドの町がここまで破壊されたのも、そいつが原因だろう。

次に襲ってきたら、メルキドの町は完全に壊滅してしまうかもしれない。

それまでに何とかして、町の設備を立て直さなければいけないな。

チェリコは、その強力なドラゴンについて聞いたことがあると言った。

 

「多分、メルキドに昔から住んでいた3体のドラゴンのうちの一体ね。彼らは長い年月を生きているから、他の魔物とは比べ物にならないほど強力だと聞いているわ」

 

メルキドに昔から住んでいた3体のドラゴン…そんな奴らがいたのか。

ゲームのドラクエビルダーズの体験版にいたドラゴンも、そのうちの1体だったのかもしれないな。

非常に長い年月を生きたことで、最近現れたドラゴンとは比較にならないほど強くなっているので、魔物たちからはドラゴンではなく、別の名前で呼ばれていると言う。

 

「手下の魔物たちからは、最近増えだしたドラゴンと区別するために、悠久の竜と呼ばれているのが聞こえたわ」

 

3体の悠久の竜を倒さなければ、メルキドの2度目の復興は達成できないだろうな。

しかし、どれだけ長い年月を生きたとしても、ドラゴンが強固な防壁を破壊出来るほど強力になるのだろうか?とも俺は思った。

 

「悠久の竜か…でも、どれだけ長い年月を生きても、そんなに強力な力を得ることってあるのか?」

 

「体が黒く染まっているのも見えたわ。何者かから、新しい力を授かった可能性もあるわね」

 

黒く染まっていると言うことは、この前の滅ぼしの騎士と同じように、エンダルゴの闇の力で変異しているのかもしれないな。

それなら確かに、メルキドの防壁を破壊出来るほどの力を得ていてもおかしくはない。

3体いる悠久の竜のうち、全員が変異している可能性もありそうだ。

そんなことを考えていると、ショーターはどうしてこんなことになってしまったのだろうと、暗い顔で言う。

 

「せっかく竜王も倒れて、これからさらに町を大きくしようと思っていたのに、どうしてこんなことになってしまったのでしょう…?」

 

「かつて人類を裏切った勇者が、エンダルゴという最強の魔物を生み出してしまったんだ…。そのエンダルゴの影響で、アレフガルド各地の魔物の動きが激しくなっている」

 

メルキドのみんなは知らないので、俺はエンダルゴのことを伝えていった。

ショーターの悲しそうな声を聞いて、もしサンデルジュで闇の戦士を倒し、エンダルゴの出現を阻止していれば、こんなことにはならなかったのにと思ってしまう。

だが、後悔したところで何も変わらないので、必ずエンダルゴと闇の戦士を倒したいとも、みんなに伝えた。

 

「メルキドに来たのはエンダルゴを倒す力をつけるためだ。町が壊されたのは悲しいけど…もう一度みんなでメルキドを復興させて、エンダルゴや手下の魔物を倒したい」

 

俺がそう言うと、ショーターは悲しい表情でありながらも、これからも協力していきたいと話す。

 

「そんなことがあったんですか…私もずっと悲しんでいる訳にもいかないので、一緒にもう一度メルキドを復興させていきましょう」

 

メルキドのみんなの力があれば、必ず新たなる力を得て、エンダルゴを倒せる可能性を上げることが出来るだろう。

だが、メルキドの町を立て直す前に、俺はおおきづちの長老をラダトームに連れて行かなければいけないので、そのことも俺は伝えた。

 

「もちろんだ…みんなの力があれば、必ず出来るはずだ。…でも、メルキドの町を立て直す前に、行かなければいけないところがある」

 

「どこに向かうつもりなのですか?」

 

「青の旅のとびらの先にあるおおきづちの里の、おおきづちの長老のところだ。今ラダトームは俺とロロンドがいなくなったことで、守りが手薄になっているからな…城を守るために、おおきづちの長老を連れて行くんだ」

 

ラダトーム城はいつ襲われてもおかしくないので、なるべく早くおおきづちの長老を連れていったほうがいいだろう。

俺がおおきづちの里に向かうと言うと、ショーターは里も無事ではないかもしれないと話した。

 

「おおきづちの里ですか…メルキドの町も襲われたのですから、彼らの里も無事ではないかもしれませんね…。何が起こるか分かりませんし、気をつけて下さい」

 

確かに長老を含めたおおきづちが全滅しているという、最悪の可能性も俺は考えている。

だが、そこはもうおおきづちたちの力を信じて、生きていると祈るしかない。

魔物たちに気をつけながら、おおきづちの里に向かっていこう。

 

「ああ。長老を連れて、なるべく早く帰ってくるぜ」

 

俺はそう言うと、ショーターたちがいた建物を出て、旅のとびらが置いてあるところに向かった。

旅のとびらは壊されておらず、すぐに使うことが出来るだろう。

青の旅のとびらに入ると、俺の視界は一瞬真っ白になり、メルキドの山岳地帯へと移動した。

 

山岳地帯に移動すると、俺はまわりの魔物に警戒しながらおおきづちの長老の住む家に向かっていく。

ブラウニーやスライムベス、がいこつと言った弱い魔物も生息していたが、ここでもこの前は見なかった強力な魔物の姿があった。

 

「この前は見なかったビッグハンマーとあくまのきしがいるな…」

 

紫の体に赤色の毛を持つブラウニーの上位種、ビッグハンマーや、あくまのきしが何体か歩いているのが見えてくる。

倒せない魔物ではなさそうだが、今はおおきづちの長老のところに急ぎたいので、俺は隠れながら進んでいった。

だが、強力な魔物がこんなに現れたのであれば、おおきづちの里が壊滅してしまったのではないかという不安も、大きくなってしまう。

 

「…おおきづちの案内所は、無事なのか?」

 

心配になり、長老の家に向かう途中、俺はおおきづちの里の案内所も見にいった。

案内所は、俺が初めて出会ったおおきづちがいた場所だ。

無事だといいな…と思いながら、俺は案内所の方向に向かっていく。

 

だがそこでは、俺が恐れていたことが起こってしまっていた。

おおきづちの里 案内所と書かれていた看板は壊され、建物も原型を留めてはいなくなっている。

 

「壊されているか…中にいたおおきづちは、どうなっているんだ…?」

 

中にいたおおきづちは無事なのだろうかと思い、俺は壊された案内所の中に入っていく。

しかし、中におおきづちの姿は見えず、生きているか確かめることは出来なかった。

 

「誰もいないか…生きているといいんだけどな…」

 

生きているか死んでいるかは分からないが、何とか生き延びていてほしいな。

案内所のおおきづちとは、もう一度会って話をしてみたい。

おおきづちの里の案内所が壊されていたので、俺は長老の家も壊されていないか遠くから見てみる。

すると、長老の家の屋根にあるかがり火は無事であり、壊されてはいないようだった。

 

「長老の家は無事か…案内所のおおきづちも、あそこに逃げたのかもしれないな」

 

案内所のおおきづちが生きているとすれば、長老の家にいるのだろう。

俺は壊された案内所を出て、魔物に見つからないようにしながらおおきづちの長老が住む家に向かっていった。

魔物の数はサンデルジュほどではないので、そこまでゆっくり進む必要もなさそうだ。

 

10分くらいメルキドの山岳地帯を歩き続けて、俺はおおきづちの長老の家にたどり着く。

 

「魔物に見つからずに、ここまで来れたか…」

 

長老の家に着くと、俺はすぐに白い岩で作られた階段を登っていき、家の入り口に向かった。




メルキドに昔から住んでいる3体のドラゴンは原作1章のチェリコの、ゴーレムを作り直す計画は原作4章のロロンドのセリフから考えました。

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