ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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次回から6章に入っていきます。

6章では途中から、メルキドなど今まで復興させてきた町に戻る話も書きます。






Episode141 光が消える時

今までの戦いで体力の限界になった上に、闇の爆炎で全身に火傷を負った俺は、力尽きて動けなくなってしまっていた。

ルビスも闇の爆発に焼かれ、倒れ伏している。

立ち上がらなければ死んでしまう…そう思って体に力をこめようとしたが、立ち上がることは出来なかった。

動けなくなった俺たちを見て、闇の戦士はひかりのたまに近づいていく。

 

「やはりお前たちの抵抗は無駄だったな。世界は永遠の闇に閉ざされる…その瞬間を見ているがいい」

 

俺たちを殺す前に、ひかりのたまを破壊する気なのか。

世界の光が消えるところを見て、絶望しながら死んでいけということなのかもしれないな。

闇の戦士はひかりのたまの前に立つと、闇に染まったロトのつるぎを振り上げる。

その時に奴は、なぜ竜王がひかりのたまを破壊するのではなく、闇に染めるだけにとどめたのかについて話した。

 

「オレの先祖から聞いた話だが、もともとひかりのたまは竜王の母である、竜の女王と言う奴の物だったらしい。母親の形見だから、竜王も完全に破壊するのは躊躇われたんだろう。だが、そんな思いのせいで空の光を失うことになり、魔物たちも封印されそうになってしまった」

 

そう言えば、ドラクエ3の竜の女王の卵から、竜王が生まれたという話があったな。

母親の形見を破壊するのは、世界を闇に閉ざすためとはいえ嫌なのかもしれない。

でもそれなら、エンダルゴはひかりのたまの破壊を許してくれたのだろうか。

エンダルゴには竜王の魂も含まれているので、いくら闇の戦士の行動とは言え、母親の形見を破壊して良いとは言わないだろう。

そう言ったところで止めてくれるかは分からないが、俺は声を振り絞って聞いてみることにする。

 

「…それなら、エンダルゴはひかりのたまの破壊を許してくれたのか?…あいつには、竜王の魂も入っているはずだぞ」

 

すると、全ての闇の集合体であるエンダルゴを構成する竜王の魂は、かつての竜王とは思考が違っていると言う。

 

「この前も言っただろ、エンダルゴは魔物の魂の集合体ではなく、全ての闇の集合体であると。数百年の間に渡って作り続けられた闇の力は絶大だ…竜王ですら制御しきることは出来ない。だから、絶大な闇の力の影響を受けて、竜王は昔とは変わったんだ」

 

制御しきれないほど闇の力のせいで、竜王は性格が変わり、世界を闇に染めるためには母親の形見の破壊もいとわなくなったというのか。

恐らくエンダルゴを構成している他の魔物の魂についても、絶大な闇の力の影響で以前とは変わっているのだろう。

だが、闇の戦士は自分を人間から救ってくれた存在として、竜王を大切に思っていたはずだ。

闇の戦士なら、竜王が制御出来る分だけの闇の力を集めることも出来ただろう。

大切な者の性格を、どうして無理やりのような方法で変えたのだろうか。

なぜ竜王として蘇らせるのではなく、エンダルゴという存在にしてしまったのだろうか?

 

「…お前は竜王が大切なんじゃないのか?…何で大切な人の性格を、闇の力で変えようとしたんだ?」

 

「本当はオレだって、竜王の魂を竜王として蘇らせたかった。…でも、それだとまたお前たちに倒されてしまうだろ!?ひかりのたまのせいで、魔物たちが封印されることもあるかもしれない…。だから仕方なかったんだ…もうオレを助けてくれた、魔物たちを失いたくなかった」

 

確かに俺は竜王を一度倒したことがあるので、竜王が蘇ったところでまた倒しに行き、闇を消し去り、魔物を封印するためにひかりのたまを取り返すだろう。

闇の戦士は、そうなる事が嫌だったと言うことか。

もう二度と魔物たちが封印されることがないように、竜王たちをエンダルゴという存在にし、ひかりのたまを破壊しようとしている。

声を荒げて俺の話に答えると、闇の戦士はひかりのたまに剣を叩きつける。

 

「…これでもう、魔物が封印されることはない。世界は、永遠に闇に閉ざされるんだ」

 

「闇の戦士にも理由はある…でもひかりのたまが破壊されたら、アレフガルドが…」

 

俺は何とか闇の戦士を止めたいと思ったが、やはり立ち上がることは出来なかった。

闇の戦士の攻撃力は非常に高く、叩きつけられた瞬間ひかりのたまにヒビが入り、砕け散ってしまう。

ひかりのたまが砕け散った瞬間、空がだんだん暗くなっていった。

闇の戦士はひかりのたまを破壊すると、倒れているルビスに近づいていく。

 

「次はルビス、お前だ。お前はオレを捨て駒のように扱い、ビルダーなんてものを生み出して闇を消し去ろうとした。復讐とこれからの魔物たちのために、お前を殺す!」

 

「ひかりのたまだけでなく、ルビスまでも…何とかしないと…!」

 

最初にアレフガルドに連れて来られた時には、俺はルビスに腹を立てたりしていたが、彼女のおかげでみんなに出会い、ここまで復興を進めることが出来た。

ルビスも間違いなく、俺たちの大切な仲間だ。

そんな彼女を、ここで死なせる訳にはいかない。

俺は這いつくばってでも動き、闇の戦士のところに向かっていく。

 

「お前がルビスを恨む理由は分かっている…でも、俺はルビスを死なせる気はないぞ…!」

 

「そんな体で、何をすると言うのだ?オレに抵抗しても、無駄だと分かっただろ?」

 

近づいてきた俺に向かって、闇の戦士はそう言って笑って来る。

確かに武器も持っていない俺には、何かができるとは思えない。

しかし、ここでルビスが殺されるのを黙って見ていることも出来なかった。

ルビスを守らなければいけないという思いで、俺は奴に近づいていく。

だが、ルビスは俺に逃げてと言って来た。

 

「来てはいけません!このままでは、あなたも死んでしまいます。…あなただけでも逃げて、世界を作り続けてください」

 

「俺はあんたを見捨てたくはない…ここで逃げることはしないぞ」

 

だが、俺がそう言ってもルビスは聞こうとはせず、呪文を唱えて、俺とローラ姫をラダトーム城に帰そうとする。

 

「逃げてください…そして、大切な仲間と共に闇を払う強力な武器を作ってから、もう一度戦いを挑むのです!」

 

「だめだルビス!あんたも俺たちにとって、大切な仲間なんだ!」

 

「あなたは私たちの世界を作ってくださったお方…どうか死なないでください!」

 

確かにみんなと共に兵器の開発を続けてから闇の戦士に挑めば、今ここで立ち向かっていくより勝てる可能性は高いだろう。

しかしそれでは、ルビスを見捨てることになってしまう。

俺もローラ姫も強い口調でそう言ったが、ルビスは呪文の詠唱をやめない。

ついに呪文が発動して、俺たちの体はラダトーム城の方向へと飛ばされる。

 

「行きなさい、雄也!ローラ!あなたたちの力があれば、必ず世界を救うことが出来るはずです」

 

俺たちを呪文で飛ばして、ルビスは最後にそんなことを言った。

俺はそれでも戦い続けたいと言おうとしたが、もうルビスには聞こえない。

 

飛ばされている途中、ルビスが闇の戦士のロトのつるぎで刺されるのが見えた。

体を何度も刺されながらも彼女は最後の力の振り絞って呪文を唱え続け、俺たちはラダトーム城の近くへと着地する。

 

「くそっ、ルビス…!」

 

「ルビス様…」

 

必ず助けに行くと言ったのに、ひかりのたまは破壊され、ルビスを救うことも出来なかった…。

この前エンダルゴが現れた時のように、闇の戦士の計画はまたしても達成されてしまった。

ルビスはみんなと共に強力な武器を作れば、必ず闇の戦士を倒すことが出来ると言っていたが、俺は本当に世界を救うことが出来るのか、不安になってしまう。

エンダルゴや闇の戦士を倒すのは、不可能なのではないかと思ってしまう。

俺がそんなことを思っていると、ローラ姫はラダトーム城に戻ろうと言ってくる。

 

「…雄也様、まずはラダトーム城に戻りましょう…精霊ルビスのことを、みなさんにお伝えしなければ」

 

「ああ、分かった…」

 

確かに、ここで突っ立っている訳にはいかない。

ルビスが死んだことを聞けば、みんなもアレフガルドの復興を諦めようとするかもしれないが、それでも黙っている訳にはいかないだろう。

俺は痛む足を引きずりながら歩いていき、ラダトーム城に向かう。

ラダトーム城は一部が壊されており、俺がいない間に魔物の襲撃があったのだろうか。

 

「ラダトーム城も被害を…何があったんだ?」

 

「監視塔やみなさんの力があっても壊されたということは、それだけ魔物の数が多かったということなのでしょうか…?」

 

俺とローラ姫がそんなことを言いながらラダトーム城の中に入ると、みんなが希望のはたのところに立っており、心配そうな顔をしていた。

ムツヘタは俺たちの会話を聞いていたようで、ラダトーム城で何があったか話してくる。

 

「戻ってきたか…雄也、姫。そなたらがいぬ間に、この城に150体ほどの魔物が押し寄せて来てな…監視塔のおかげで早く襲撃に気づき、ロロンドという男の持っていたまほうの玉やグレネードと言った兵器もあったのじゃが、被害は受けてしまったのじゃ…」

 

150体もの魔物が…そんなに多くの魔物が来たのならば、被害を最小限に抑えられただけでも幸いだろう。

ピリンとヘイザンは無傷であり、非戦闘員にまで危険が及ぶことにはならなかったようだ。

グレネードとまほうの玉を持ってきたみたいだし、ロロンドが来たのは幸運だったな。

ムツヘタはラダトーム城への魔物の襲撃について話すと、俺たちが闇の戦士との戦いで何があったのか聞いて来た。

 

「そなたらには何があったのじゃ?先ほどから空が暗くなり、精霊ルビスの加護が失われてしまったのじゃ…」

 

ひかりのたまの破壊とルビスの死による世界の異変は、みんなも感じていたようだな。

俺がラダトーム城を出発した時には青かった空が、今は灰色になっている。

また、希望のはたの周辺は暖かく感じられるはずなのに、今は城の外と同じ気温になっていた。

希望のはた自体も、ぼろぼろになっている。

みんなもショックを受けるだろうが、俺は闇の戦士との戦いで何があったか話し始めた。

 

「俺はみんなが集めてくれたブロックを使って竜王の城の上空に行って、ルビスと共に闇の戦士と戦ったんだ。俺はおうじゃのけんやサブマシンガンでかなりの傷を与えて、ルビスも剣で奴を攻撃出来ていた。でも、あいつの闇の力は強すぎて、俺たちは攻撃を防ぎきることが出来なかった…」

 

「私はあの人に人間の世界に戻ってくるように説得したのですが、彼は聞く耳を持たず、私に斬りかかってきました」

 

間違いなくダメージは与えられていた訳だし、あの時もっと強力な兵器があれば、奴を倒すことが出来たかもしれない。

ローラ姫は、闇の戦士を説得した時のことについて話した。

俺たち2人の話をそこまで聞くと、ムツヘタはルビスはどうなったのかと聞いて来る。

 

「ルビスは…精霊ルビスは、どうなったのじゃ?」

 

「ルビスは…死んだ…。闇の戦士に追い詰められた時、最後の力で呪文を唱えて、俺たちを逃がしたんだ。ひかりのたまも、破壊されてしまった…」

 

俺は隠すことはせず、みんなにルビスが死んだことを伝えた。

そのことを聞くと、みんなとても暗い顔に変わっていく。

ひかりのたまも破壊されたことを聞いて、よりショックを受けていた。

ラスタンとオーレンは、アレフガルドはもう滅びるのではないかとも言い出す。

 

「ルビス様が亡くなられただと…ルビス様のいない世界で、私たちはどうしていけばいいのだ?」

 

「もうアレフガルドは、終わりなのでしょう…」

 

二人はルビスを信仰していた数百年前の人間なので、余計にショックが強いのだろう。

俺もこの先、魔物たちに立ち向かって行けるかは分からない。

アレフガルドの人類は、このまま絶滅を迎えるのだろうか。

…ここまでのアレフガルドの復興は、無駄だったのかもしれない。

 

「ルビスは最期に、人々が協力して強力な武器を作っていけば、必ず闇の戦士に打ち勝つことが出来ると言っていた。…でも、俺ももう、世界を救える自身はない」

 

ルビスの最期の言葉を伝えても、みんなは暗い表情のままだった。

俺も、いくら強力な武器があったとしても、もう無理なのではないかと思う。

闇の戦士にかなりのダメージを与えられたとは言え、それはルビスの力があったからだ。

 

「我輩も、こうなったらどうしていいか分からぬ…」

 

いつもはテンションの高いロロンドでも、暗い口調になっていた。

みんな悲しい顔のままであり、やはりこのまま滅びを待つしかないのだろうか…。

 

だが、しばらくみんなが落ち込んだまま無言でいると、ゆきのへはまだ諦めないほうがいいと言って来る。

 

「…ワシは、まだ諦めるのは早いと思うぜ。ワシにだって、世界を救えるかなんて分からねえ…だが、少しでも可能性はあるんだから、出来る限りのことはするべきだ。アレフガルドの復興を、無駄になんてしたくはねえだろ?」

 

確かに、俺もせっかく成し遂げたアレフガルドの復興を無駄にはしたくない。

わずかな可能性ではあるが、それに賭けてアレフガルドを復興させ続けたほうがいいのかもしれない。

俺がそう思っていると、ピリンも復興を続けていきたいと言う。

 

「わたしにも分からない。でも、わたしは雄也と一緒に、町づくりを続けたい。みんなが楽しく暮らせる町を作りたいって、ずっと思ってたから」

 

ピリンはみんなが楽しく暮らせる町を作りたいとずっと言っていたが、その気持ちは今になっても消えてはいないみたいだな。

ヘイザンも、ゆきのへと同じようにここで諦めるつもりはなさそうだ。

 

「親方がアレフガルドの復興を続けるのなら、ワタシも続けるぞ。ワタシたちの鍛冶の技術があれば、きっと今まで以上に強い武器も作れるはずだ」

 

多くの人々がアレフガルドは終わりだと思っても、抗い続ける者達はいる。

一人でもそのような者がいるのならば、俺はビルダーとして、共にアレフガルドの復興を進めていきたい。

だが、闇の戦士の強大な闇の力を見た俺の中には、大きな不安があった。


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