ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode13 砂漠の料理人

3度目の防衛戦を勝ち抜いた日の夜、俺は再び不思議な夢を見た。この前と同じように、裏切り勇者の記憶を追体験しているのだろう。

夢の中では、恋人同士だと思われる若い男女が出てきた。彼女がいない俺にとっては、うらやましい話だ。二人のうち、まず男のほうが勇者に話しかける。

 

「彼女といつまでもこうしていっしょにいたい。こんな僕の気持ちも、魔物たちに踏みにじられる時がくるのでしょうか···」

 

この人も、竜王や魔物たちを恐れて、奴らを勇者に倒してほしいと願っているのだろう。でも、兵士や町人たちみんなから期待されて、辛いこともありそうだ。

 

「ああ、でもあなたなら、竜王を倒してくれる!僕はそう信じています!」

 

本当に、何でも勇者に任せられてるな。こんなに重い期待をされたら、自分だったら耐えきれないだろう。男が話し終えた後次は隣にいた女が話しはじめた。

 

「彼といっしょにいたら、世界が闇がおおうなんて嫌なことも忘れられるわ。でも、それはウソ。世界が滅べば私たちの愛も終わってしまうなんて、彼がそう言うんです。」

 

この男、結構暗いこと言ってんだな。あっちでは愛は地球を救う、なんて言われているのに。その後、彼女も勇者に期待を持っているような発言をした。

 

「だけど、きっとあなたなら何とかしてくれる。だってあなたは伝説の勇者の子孫ですもの!」

 

家系や血筋に縛られるって、嫌なことだな。自分から望んでその家系に生まれて来たわけでもないのに。俺は昔ドラクエ1をやったことがあるが、何でもかんでも行ってくる村人には相当イラついた。本人なら尚更のことだろう。

勇者はカップルの近くを去り、今度は緑の服をきた中年くらいの男性に話しかけられる。

 

「闇の竜、つばさ広げる時、ロトの血を引くもの来たりて、闇を照らす光とならん」

 

ロトの血を引くものか···こいつも血筋のことを言っているな。世界が危機だから仕方ないのかも知れないが、本人の気持ちも考えるべきだろ。

その時、勇者が、こんな声をあげた。

 

「もう、やめてくれよ···」

 

俺にはそう聞こえた。やっぱりみんなの期待を背負っていて辛いのだろう。

 

「おお、神よ。古き言い伝えの勇者となりしあなたに光あれ!!」

 

さっきのカップルも、この中年男性も応援しているのだろうが、本人にとっては苦痛なようだ。

勇者の夢を見てそんなことを考えていると、目の前が真っ暗になり俺の意識は現実に戻ってきた。

 

「また変な夢を見ちまったな···まあいいか。今日は赤の旅のとびらの先の探索をしないといけないな」

 

俺が個室から出ると、ピリンやロッシ、ケッパーは起きていたが、ロロンドは昨日の怪我のせいでまだ休んでいるようだ。

 

「あんな怪我がもう起こらないようにもっと装備を強化しないとな」

 

俺はどうのつるぎ、おおきづちを持ち、探索の準備をする。準備が完了し、赤の旅のとびら、恐らく名前は旅のとびら·赤に入ろうとすると、急に調理部屋からロッシが飛び出してきた。

 

「あ、あいつ何を食わせる気なんだ!?」

 

何かと思い、調理部屋に入ると、謎の異形の物体をもつピリンがいた。

 

「ピリン、何をやってるんだ?」

 

俺は恐る恐るピリンに話しかける。すると、ピリンはいたって普通のあいさつをした。

 

「おはよう、雄也!」

 

「その謎の物体は何だ?」

 

その異形の物体について聞いても、ピリンは普通に話した。

 

「わたし、このころ料理に凝ってるの。それで、わたしが思い付いたのがキメラのくちばしにバッタとモモガキを入れて、あおい油と土で煮込んだ料理で、それがこれなの」

 

ピリンはその物体を俺に近づける。悪気がないのは分かっているが、あまりのひどい見た目と匂いで吐き気を催してくる。

 

「それで、ロッシに食べさせようとしたら、こんなの食べたら死ぬって言うの···」

 

だからさっきはロッシが慌てて調理部屋から逃げ出してきたのか。そんな物を与えるって、毒殺みたなものだ。ロッシが気に入らないからといって狙ってやった訳ではないようだが。

 

「だから、美味しい料理が出来たらわたしに見せてくれない?それを真似すれば、わたしも美味しい料理が作れると思うの。」

 

この世界に来てからは、1種類の食材を生で食べるか焼いて食べるかだけで、複数の食材を使った料理は食べたことがないな。もし作れるようになったら教えよう。

 

「分かった。探索のついでに考えておくよ」

 

ピリンの料理の話で遅れてしまったが、俺は改めて旅のとびら·赤に入った。青色の扉と同じように最初は目の前が真っ白になる。その後、今回は砂漠地帯に移動した。

 

「ここは、砂漠のようだな。どんな素材があるんだろうな?」

 

山岳地帯より、探索は楽そうだ。俺はまず、砂漠地帯で初めて見かけるものを手に入れていくことにした。旅のとびらの近くには、砂に似ている色の草が生えていた。その場所以外にも、たくさんの場所で生えている。

 

「この草を使えばまたカモフラージュできる箱が作れるかもな」

 

前に作った草地の箱はあまり使う機会はなかったが、役に立たないこともなかったので、俺は砂漠でカモフラージュ効果を持つ箱の作り方を調べた。

砂漠の箱···砂の草切れ5個 石の作業台 木の作業台、鉄の作業台

砂の草切れ?今手に入れたこれの草のことか。石の作業台でも作れるようなので、俺はいくつか砂の草切れを集めた。

 

「他にも何か素材はないのか?」

 

俺が少し歩いて行くと、ここで初めて見る魔物がいた。いっかくうさぎとおおさそりという魔物だ。見たことのある魔物だと、スライムベスがいた。

 

「とりあえずコイツらを倒して素材を手に入れてみるか」

 

俺はまず、いっかくうさぎと戦うことにした。俺はよこからいっかくうさぎを切りつける。すると、奴は怒って俺に突進してきた。突進スピードは非常に早いが、突進までの溜め時間が長いので簡単にかわすことが出来た。しかも、いっかくうさぎには角があり、岩にその角が刺さった。

 

「間抜けな魔物だな」

 

俺は角が刺さって動けなくなっているいっかくうさぎの背後を切り裂き、倒した。いっかくうさぎは、青い光になって、肉のような物を落とした。

 

「肉か、やっと栄養の多いものが食べられるな!」

 

俺はこの世界に来てからは地味なものしか食べていない。肉はさすがに普通に焼くことが出来るので、作り方を調べる必要はなさそうだ。

特に食材などは落とさなさそうだが、おおさそりも倒すことにした。やや固い殻を持つので、俺は背後に忍び寄り、回転斬りで倒した。すると、魔物が何故持っているのか分からないものだった。

 

「ん、なんだこれ?」

 

囚人を捕らえておくためのくさりのような物を落とした。手がないため使えないはずのおおさそりが持っているのは何でだ?

 

「お、ストーンマンがいるな。それに鉱脈もあるぞ」

 

砂漠の中心のようなところでは、ストーンマン2体と、そのボスと思われる巨大ストーンマンが生息していた。

 

「さすがにこいつは固すぎるからな。今は戦わないことにしよう。」

 

ストーンマンはてつのさそりやよろいのきしより固いだろう。特に巨大ストーンマンはほとんど攻撃が効かなそうだ。

ストーンマンを無視して近くの小さな山を見ると、鉱脈が存在していた。近づいて見てみると、俺も見慣れている金属だった。

 

「これはどう見ても鉄だな。ってことは、てつのつるぎとか作れるってことか?」

 

俺は鉄を手に入れたので、てつのつるぎの作り方を調べた。

てつのつるぎ···鉄のインゴット1個

銅の時のように、インゴットに加工しないといけないようだ。鉄のインゴットは鉄3個と石炭1個で作れると出た。

 

「木材もそうだけど、いちいち加工しないといけない素材があるのは面倒だな」

 

俺が近くにある鉄の鉱石を集めていると、途中オアシスのような物を発見した。そこには、若い男がいた。

 

「お、人がいるな。もしかして、幽霊かしれないけど」

 

俺はオアシスにいた男に話しかけた。

 

「お前、このオアシスで何やってんだ?」

 

「へえ、君は私の姿が見えるのかい?幽霊であるわたしが見えるなんて、君は他の人間とは違うようだね。」

 

やっぱり幽霊だったか。この世界、生き残っている人々はほとんどいないな。

 

「私は生前料理の研究をしていた美食家でね。長年の研究の末考えた至高の料理器具、レンガ料理台を作っていたら、美味しい料理を求める魔物に襲われ、命を奪われてしまったんだ」

 

レンガ料理台は、パンを作るときに必要って出てたな。作り方を知っておいたほうがよさそうなので、聞こうと思った。

 

「料理と言うものは魔物をも狂わせる。君も気をつけたまえ···」

 

そう思っていた矢先、突然オアシスに2体のてつのさそりが襲ってきた。

 

「てつのさそりだとっ!?」

 

一体でも苦戦したてつのさそりが2体もいるが、この前戦った奴よりも、体は小さくてそこまで強くなさそうだ。俺は近づいてきた2体に向けて、また特技を使った。

 

「回転斬り!」

 

回転斬りを使えば、てつのさそりの装甲を剥がすことはできるが、一撃でたおすことは出来ない。てつのさそりは反撃に、俺と同じような回転攻撃を行う。

 

「お前らの攻撃は分かってるよ!」

 

1体が回転攻撃を行ったら、俺はもう片方のてつのさそりの傷口に剣を突き刺した。だが、なかなかの生命力で死なない。俺の動きに気付かれたのかてつのさそりは回転攻撃をやめ、ハサミや尻尾で俺を攻撃する。しかし、前の大きなてつのさそりほどは強くない。

 

「2体いるが、そんな強くないな」

 

俺はさそりの攻撃を避けながら斬りつけていく。傷口を突き刺されたほうのてつのさそりは、3.4回切るとたおれた。

もう片方のてつのさそりは、喋らないが相当怒っているようだ。それでも正確に俺を狙ってハサミを振り回す。

 

「結構速いな!でもこれならどうだ?」

 

俺は降り下ろされたハサミを思いきり弾き返した。それでもすぐにもう片方のハサミで攻撃してくるが、俺はその前に奴の弱点の顔を斬り裂いた。そこで動きが一時的に止まったので、俺はもう一撃回転斬りを叩き込んだ。てつのさそりは、今度こそ生命力が尽きる。

 

「まあまあ強かったな」

 

「魔物を倒してしまったのかい?君もこちらの世界の住人になれたというのに」

 

せっかくてつのさそりを倒したのに、この幽霊がふざけたことを言ってきた。俺に死ねとでも言いたいのかよ···。

 

「アホなことを言うな。俺がそう簡単に死ぬと思うな」

 

レンガ料理台のことを聞きたいが、こんな幽霊信用できないな?俺はオアシスを離れ、一旦町に戻りに歩いた。

 

「おい、待て、待てって!」

 

すると、美食家の幽霊が追いかけてきた。

 

「待て、もうそんなことは言わない。君に頼みたいことがあるんだ」

 

頼みたいこと?一体何だ?

 

「私が長年続けてきた料理の研究とその極意を受け継いで、これからアレフガルドで最高の料理人を目指してくれないか?悪い話じゃないだろう?」

 

いきなり最高の料理人とか言われてもこまるのだが···。

 

「俺は料理なんて出来ないぞ」

 

「今すぐにとは言わない。でも、料理はただ空腹を満たすだけでなく、人の心に光を与えるものなのだ!君がもしこの世界を救おうとするのなら、私の料理を継承し、作り出していってほしい。レンガ料理台の作り方も教える。」

 

「仕方ないな。俺もレンガ料理台は欲しかったし、教えてくれ」

 

さっきの発言でイラつく幽霊だなと思ったが、彼なりにアレフガルドのことを考えているようだ。俺は、しばらくの間レンガ料理台の作り方の説明を受けた。説明が終わると、最後に彼は言った。

 

「頼む、どうか私の料理の力もアレフガルドの復活に役立ててくれ···」

 

そう言い残し、美食家の幽霊は消えていった。

 

「料理の力か。確かにウマイ物を食べると幸せになるって言うのを聞いたことがあるな」

 

俺は美食家からレンガ料理台の形も教えて貰ったので、俺は作り方を調べる。

レンガ料理台···料理用たき火1個、レンガ5個、鉄のインゴット5個 石の作業台 木の作業台 鉄の作業台

料理用たき火は今あるし鉄のインゴットは帰ってから作ればいいな。レンガはどうやって作るんだ?

レンガ···粘土5個、石炭1個 炉と金床

石炭はあるけど、粘土なんて持ってないな。おそらくは山岳地帯にあった色が違う土か。

俺は町に戻ると、すぐに旅のとびら·青に入った。

 

「崖にあるはずだったな」

 

俺はツタを使って崖を降りる。そこには予想通り、粘土と思われる土があった。

 

「これがレンガの材料か。さっさと作ろう」

 

俺は今度こそ町に帰還し、炉と金床で鉄のインゴットとレンガを作る。その時に、戦闘が出来る3人の分のてつのつるぎを作った。その後、一旦調理部屋の料理用たき火を回収し、レンガ料理台に強化する。レンガ料理台は、料理用たき火の上位版と言ったところのようだ。

 

「てつのさそりと戦ったりレンガ料理台作ったり大変だったな」

 

レンガ料理台を調理部屋に設置すると、俺は腹が減ってきた。俺はパンを作った。ビルダーの魔法だと、一度に5個もできた。

 

「そういえば、ピリンは何か複数の食材を使った料理がしたいって言ってたな。なにか作れるか?」

 

少し考えて、思い付いた。パンの間に焼いた肉を挟めば、ハンバーガーになる。俺はさっそく作り、ピリンにみせにいった。肉を焼くのと、ハンバーガーをつくるのは手動でもできるのでそうした。

 

「ピリン!新しい料理が出来たぞ。今日作ったレンガ料理台で作ったハンバーガーだ」

 

「はんばあがあ?どんな料理なの?」

 

ピリンはハンバーガーも知らないのか。俺はレンガ料理台やハンバーガーの作り方をピリンに教えた。

 

「ハンバーガーは作れそうか?」

 

「うん!わたしも美味しいものをつくれるように頑張るね!」

 

その日の夜は、もう一つハンバーガーを作り、ピリンと一緒に食べた。ピリンの料理も、少しずつ上手くなっていくだろう。


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