ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
サンデルジュの砦を放棄した翌日、さっそく俺はラダトームのみんなとも協力して、城を守ったり、エンダルゴの城を攻めたりするための兵器を考えようと思っていた。
戦力が増えたし、兵器も強化すれば、魔物に勝てる可能性はかなり上がるだろう。
しかし、光を消し去るという魔物の計画については、まだ何も分かっていなかった。
「新しい兵器も作りけど、魔物の計画のことが気になるな…」
この計画が達成されたら、どれだけ強力な兵器を使ったとしても平和が取り戻せなくなるかもしれない。
ムツヘタは占いの間の魔法台を使っているが、進展はないようだった。
魔物たちの計画を何とかしなければいけない…そう思いながらラダトーム城内を歩いていると、ラダトーム城に人が近づいてくるのが見えた。
顔に立派なヒゲを生やした男で、見覚えのある人物だ。
「あいつは…ロロンドか…?ここに来るのは久しぶりだな」
ロロンドは三賢者として一度ラダトームに来ていたが、魔物の襲撃が心配だと言うことでメルキドに戻ってから、会っていなかったな。
ロロンドは俺の顔を見ると、近づいて話しかけてきた。
「おお、雄也ではないか!元気にしておったか?」
ロロンドは共にメルキドとラダトームを復活させてきた大切な仲間なので、また会えて嬉しいぜ。
だが、ロロンドが遠いラダトームにわざわざ来ると言うことは、メルキドで何かがあったのだろうか?。
「久しぶりだな、ロロンド。あんたがここに来たってことは、メルキドで何かが起きたのか?」
エンダルゴが現れてからもうかなりの日数が経っているし、メルキドにも奴の配下の魔物が侵攻し始めているのかもしれないな。
俺がそう聞くと、さっきまで大声で話していたロロンドが、暗い顔になった。
「…実はな、数日前からマイラやリムルダールで魔物の動きが急に激しくなり、町が襲われるということが起きたのだ。どれだけ倒しても魔物の動きは収まらなくてな、ついには我輩たちのメルキドまでもが襲われることになった…」
やはり、エンダルゴ出現による魔物たちの活動の激化は、もうアレフガルド全域に広がっているみたいだな。
リムルダールやマイラが先に被害を受けたのは、メルキドと比べてエンダルゴの城に近い位置にあるからだろう。
3つの町は、魔物の襲撃によってどのくらいの被害を受けてしまったのだろうか?
「魔物の襲撃で、どのくらいの被害を受けたんだ?」
「ロッシやケッパーと共に戦い、襲ってきたあくまのきしやドラゴンは倒したのだが、町の一部が壊されてしまった。リムルダールとマイラも、大きな被害を受けておる」
メルキドにはメルキドシールドやはがねの守りがあるが、それでもかなりのダメージを受けたみたいだな。
ドラゴンはメルキドで見かけたことは無い魔物なので、新たな魔物も現れ始めているということなのだろうか。
もしくは、ゲームのドラクエビルダーズで見た、町から離れた場所にいる強力なドラゴンのことなのかもしれない。
そんなことを考えていると、ロロンドは魔物の動きがなぜ激しくなったのか聞いてきた。
「なぜ魔物の行動が激しくなったのか、原因は分かっておるのか?」
「あんたたちが帰った後、俺たちは逃げた闇の戦士を追うためにアレフガルドの秘境、サンデルジュに向かった。そこで俺たちは奴の手下の魔物と戦ったりして、決戦の準備をしていたんだ」
ロロンドは俺たちがサンデルジュに向かったことも、闇の戦士がエンダルゴを生み出したことも知らないだろうから、俺はそこから話していく。
その途中、サンデルジュという地名には、ロロンドは聞き覚えがないと言った。
「サンデルジュ…アレフガルドにそのような場所があったのか…。我輩のメルキド録には他の地域のことも少しは書いてあるのだが、そのような地については書いていなかったぞ…」
詳しい書物であっても、人がほとんど入らない秘境のことは書かれていなくても仕方ないだろう。
アレフガルド各地にアレフガルド歴程という書物を残したメルキドの冒険家ガンダルでさえ、サンデルジュには到達していなかった。
唯一入った記録があるのは、ゆきのへの祖先だけだ。
「サンデルジュはとても高い岩山に囲まれていて、人が立ち入ることは難しい場所だから、記録がなくても仕方ない。俺は闇の戦士と戦って、追い詰めることは出来たけど、奴は強大な闇の力を使って、エンダルゴという最強の魔物を生み出してしまったんだ」
俺はサンデルジュの説明もしながら、闇の戦士の力でエンダルゴが生み出されたことを話していく。
「エンダルゴ…?それはどのような魔物なのだ?」
「俺たちが倒した魔物や竜王の魂に、アレフガルドに満ちる全ての闇の力を捧げて生み出された、意識の集合体のような者だ。数百年の間生み出された闇の力が全て集まっているんだから、とてつもない力を持っている。そいつが、俺たちの復興活動を止めようと、魔物の活動を激しくさせている」
数百年の間に生み出された闇の力がどれほどの物なのか、それは俺にも予想がつかない。
ロロンドは、意識の集合体や世界に満ちる闇の力についてはよく分からないが、とてつもなく恐ろしい存在が現れ、そのせいで一度は収まっていた魔物の活動が激しくなっていることは分かったようで、さらに不安な顔になる。
「そのエンダルゴも倒さねば、世界に完全な平和と光は戻らぬということか…我輩の知らぬところで、そんなことが起きていたのだな。雄也は、そのエンダルゴにも挑むつもりか?」
「もちろん倒すつもりだ。でも、エンダルゴが現れてから強力な魔物が増えて、数も増えているから、俺たちはかなり苦戦している」
エンダルゴの話の後、ロロンドは奴に戦いを挑むつもりなのかと聞いてきた。
俺はもちろん戦って平和を取り戻すつもりだし、そのためにラダトームに戦力を集めた。
しかし、魔物たちがもうすぐ光を完全に消し去る計画を行おうとしているのを聞き、俺たちは不安になっている。
「それに、ムツヘタからは、魔物たちが光を消し去り、人間の繁栄を終わらせる計画を立てていると聞いた。それを止めないと、二度と光と平和は戻らなくなるかもしれないんだ」
「そのような話もあったのか…それならば、何とかせねばならぬな…」
魔物たちの計画を突き止めて、対策を立てれば、計画を止められるかもしれない。
しかし、それまでにはまだ時間がかかるだろう。
それまでに、魔物の計画が行わなければいいな…そう思うしかなかった。
だがそんな時、耳に俺を呼ぶ精霊ルビスの声が聞こえてきた。
「…雄也よ、聞こえますか!?大変なことになってしまいました!」
いつもはゆっくりとした話し方だが、今日のルビスはとても焦っているようだ。
ロロンドと話している最中なのに、何があったというのだろうか?
「どうしたんだ、そんなに焦って?」
「あの闇の戦士が、竜王の城の上空でアレフガルドを照らすひかりのたまを壊しに向かったようなのです。ひかりのたまだけでなく、私の命も狙っています。私が消えれば、太古から保たれていた光と闇のバランスが完全に崩壊し、二度と光が戻ることはなくなるでしょう」
…この前闇の戦士は、精霊ルビスを殺すつもりだと言っていたが、ついにそれを実行に移す時が来たのか。
二度と光が戻らなくなると言うことは、これがムツヘタやしにがみのきしが言っていた光を消し去り、人間の繁栄を終わらせる計画なのかもしれないな。
ドラクエ3のゾーマもルビスを封印していたが、闇の戦士は封印どころか、彼女を完全に消し去ろうとしている。
あいつはゾーマよりも強いという説もある竜王を超える力を持っているので、ルビスを倒すのも不可能ではないだろう。
だが、竜王の城上空に向かった闇の戦士を止めるなんて不可能だ。
奴はルーラの呪文か何かを使ったのだろうが、俺には呪文は使えない。
「でも、上空に向かった奴をどうやって負うんだ!?ブロックを積んでいくにしても、かなり時間がかかるぞ」
ドラクエビルダーズのオープニングの最後で、主人公がブロックを積んで雲の上に行くシーンがあり、たくさんのブロックを使えば向かうことは出来るだろう。
ラダトーム城の大倉庫にはたくさんの土ブロックなどがあり、足りなくてもみんなで集めることが出来る。
しかし、ブロックをたくさん積むのには時間がかかり、闇の戦士にたどり着く前にひかりのたまは壊されてしまうだろう。
「あの戦士の人生を狂わせたのは私です。ですが、ひかりのたまが失われれば、魔物を抑える術は失われることになります。私も狙われているのですし、出来る限りの力で、あの人を食い止めておきます」
俺が聞くと、ルビスは出来る限りの力で闇の戦士を食い止めると言った。
ルビスは精霊の力を持っているだろうから、しばらくの間は持ちこたえられるだろう。
俺たちがブロックを用意して、積んでいく時間が出来る可能性もある。
そう思っていると、これは命令ではないが、なるべく早く来て欲しいとルビスは言った。
「もう、全ては精霊の導きのままにとは言いません。ですから絶対に来なさいとは言いませんが、なるべく早く、あの戦士を止めに来て欲しいのです」
「俺も勝てるかは分からないけど、必ず行くぞ!みんなにも、なるべく早くするように伝える」
ルビスは前の闇の戦士との戦いの後、全ては精霊の導きのままにという口癖を止めて、人の行動を決めつけるようなことは言わなくなっている。
しかし、行かなくてもいいと言われたとしても、俺はルビスを助けに行きたい。
ルビスのおかげで、俺はアレフガルドのみんなと復興活動が出来たんだからな。
ルビスとの話を終えると、俺の様子を見ていたロロンドが口が半開きになっていると言ってくる。
「…急にどうしたのだ、雄也よ。突然口が半開きになって、ぼうっとしたまま独り言を呟いておったぞ」
そう言えばピリン以外のみんなは、精霊ルビスと話している間の俺の様子を知らないんだったな。
いつもなら説明しているところだが、今はそんなことをしている場合ではない。
一刻も早く、闇の戦士がひかりのたまを狙っている竜王の城上空に行かなければいけない。
「今は説明している場合じゃない!ひかりのたまとルビスが危ないんだ!」
いきなり語勢を荒らげて、ロロンドは驚いた顔をする。
大きな声だったので、監視塔に立っているオーレン以外のみんなも集まってきた。
「雄也!いきなり叫んで、どうしたの?」
「ルビスが危ないと言ったが、どう言うことなのじゃ?」
みんなを呼び集める手間が省けたし、さっそく俺は今何が起きているか伝える。
ラダトーム城にはかなりの人数がいるし、みんなで集めればブロックはすぐに集めることが出来るはずだ。
「今ルビスの声が聞こえたんだけど、闇の戦士が竜王の城の上空にあるひかりのたまを壊して、ルビスを殺そうとしているらしいんだ。これが昨日言っていた、光を消し去って人間の繁栄を終わらせる計画だ」
「もうすぐだとは言っていたが、こんなに早くその時が来ちまったのか…」
「まだ新しい武器も考えていないのに、厳しい状況になったな…」
みんなももう計画が実行されるとは思っていなかったようで、ゆきのへとラスタンはそんなことを言う。
ムツヘタはルビスが狙われることも考えていたようだが、本当にそうなるとは思っていなかったようだ。
「精霊ルビスがおわす限り、アレフガルドから光が消えることはないから、まさかとは思ったが、本当にそうなるとは…」
アレフガルドが出来てから1000年くらい経っているだろうが、ひかりのたまとルビスは闇に閉ざされたり封印されたりすることはあっても、完全に消えることはなかった。
だからみんな、これからもアレフガルドに光を照らしてくれるのだと思っていたのだろう。
俺はルビスを助けに行くために、ブロックを集めてほしいと言う。
「ルビスは竜王の城の上空で、闇の戦士を食い止めている。俺は今から助けに行くから、みんなは上空に登るためにたくさんのブロックを集めてほしい」
「まだ新しい武器を作っていないが、大丈夫なのか?」
ルビスを助けに行くと言うと、ゆきのへは心配そうにそう言ってくる。
確かにルビスさえも殺せる力を持つ闇の戦士に今の武器を持って加勢しても、勝てる可能性はほとんどないだろう。
ルビスと一緒に、奴に殺されてしまうかもしれない。
だがそれでも、俺はルビスを見捨てると言うことは出来なかった。
「勝てる可能性はほとんどない…だけど、ルビスを見捨てたくはないんだ」
ルビスとひかりのたまが失われれば、アレフガルドに二度と平和が戻らなくなることにもなってしまう。
俺がルビスを見捨てたくはないと言うと、ローラ姫も一緒に闇の戦士のところに向かいたいと言ってきた。
「私も雄也様と共にあの人の元へ行きたいです。私が説得すれば、あの人は戦いを止めてくれるかもしれません」
闇の戦士はローラ姫のことも自分を追い詰めた人間の一人に過ぎないと言っていたし、王女の愛という名の首飾りも捨てている。
だが、彼女は命を助けてくれた元勇者に恩返しをしたいと思っており、説得を諦めることは出来ないようだった。
闇の戦士との2度目の戦いの後、姫はもし今度闇の戦士に会う機会があったら、自ら説得しに行きたいと言っていた。
しかし、やはり説得は困難だろうし、失敗したら彼女の命も危ない。
「さすがにそれは危険だぞ。説得に失敗したら、命が危ない」
「雄也様も命を懸けて向かうのですから、私もたとえ危なくても行きます」
ラスタンも止めようとするが、ローラ姫はどうしても行きたいと言う。
「お言葉ですが、姫様を危険な目に合わせる訳にはいきません」
「ですが、私はどうしてもあの人に会って、直接話したいのです!みなさんが止めたとしても、私は必ず雄也様と共に向かいます」
俺たちはローラ姫に城に残るように言うが、彼女はどうしても元勇者のところへ向かいたいと言い続けた。
揉めている間に、早くしなければいけないとゆきのへが大声で言う。
「揉めてる場合じゃねえぞ!早く向かわねえと、ルビスが危ねえんだろ」
ローラ姫を止めたいが、確かにそんなことをしている時間もない。
彼女を連れていくしかない状況になってしまっているが、彼女の説得もあれば、少しはルビスを殺す計画を止められる可能性が上がるかもしれない。
「もう準備を始めないといけないし、仕方ない…分かった。ついて来てもいいけど、戦いになったらすぐに逃げてくれ」
「ありがとうございます…あの人を止められるように、必死に思いを伝えます」
俺はブロック集めを始めるために、ローラ姫について来てもいいと言った。
姫との話を終えると、俺たちはすぐにラダトーム周辺にある灰色の土を集め始める。
「これで話は終わりだ。みんな、急いでブロックを集めるぞ!」
みんなは剣やハンマーを使って、次々にラダトーム城周辺の地面を削っていった。
ドラクエビルダーズのムービーではレンガを積んで空に登っていたが、今はブロックなら何でもいい。
俺はまほうの玉や大砲なども使って、たくさんのブロックを集めていった。
しばらくして大量のブロックが集まると、俺たちは城の真ん中に集まる。
「雄也、みんな大量の土を集めて来たぜ。これで足りるか?」
みんなたくさんの土を集めて来ており、全部合わせるとポーチがいっぱいになるくらいだった。
このくらいあれば、ルビスと闇の戦士のいる竜王の城上空に行くことが出来るだろう。
「みんなありがとう。これなら、多分足りると思うぞ。闇の戦士を止めに、ひかりのたまのところに行ってくる」
もうみんなと話している時間もなく、俺はブロックを受け取るとすぐに出発する。
ひかりのたまは竜王の城の上空にあるので、まずは虹のしずくを使って、竜王の島に向かおうとした。
俺が虹のしずくを掲げると、俺とローラ姫の体は浮き上がり、竜王の島へと飛んでいく。
竜王の島に来るのは久しぶりだが、魔物の様子を見ている時間はない。
俺はみんなで集めた灰色の土ブロックを積み上げていき、ルビスに加勢しようと空へと向かって行った。
「間に会うか分からないけど、なるべく急がないとな…」
竜王を倒した時ひかりのたまが昇ったところまでブロックを積み上げると、ひかりのたまの前で剣を持った赤い髪の女性と、この前と同じで醜い姿をした闇の戦士が戦っているのが見えてくる。
赤い髪の女性がルビスだろうが、ルビスは闇の戦士の攻撃を受けて、かなり傷を受けていた。
二人が戦っているところには、ルビスの大地の精霊の力でか、俺たちが乗ることが出来そうな足場が出来ている。
「ルビスはまだ無事か…でも、早く助けに行こう」
俺はブロックを置く手を止めず、灰色の土とルビスが作った足場を繋げていった。
二人が戦っているところにたどり着くと、ルビスも闇の戦士も手を止めて、俺たちの方を見てくる。