ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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今回は今までと比べて、結構短いです


Episode136 避けられぬ崩壊

サンデルジュの砦の4回目の防衛戦の後、俺とヘイザンは白花の秘薬を飲んで傷を癒してから、みんなと一緒に砦の修理を行っていた。

みんなと一緒に作業をしているので、一人でする時よりもずっと早く進んでいく。

そんな作業の途中、ゆきのへが暗い顔で、みんなに話しておきたいことがあると言ってきた。

 

「みんな、少し作業を止めてくれないか。辛いことになるんだが、話しておきたいことがある」

 

俺だけでなくみんなに話すということは、それだけ大事な話だと言うことみたいだな。

辛いことだと言っているが、どんな話なのだろうか?

 

「辛いことって、何だ?」

 

ゆきのへも今日の戦いが終わった後、不安そうな顔をしていたので、恐らくは砦の防衛に関することなのだろう。

みんなの動きが止まると、ゆきのへは話を始めていく。

 

「ワシらはいくつもの強力な兵器を開発してきたが、今日の戦いはみんな苦戦したし、ピリンやヘイザンも危険に晒すことになっちまった…。この先もっと魔物の活動が激しくなれば、もうワシらに勝ち目はねえと思うんだ」

 

ゆきのへの言う通り、今日の時点でも相当魔物に苦戦しているのに、これからも魔物の活動は激しくなっていくはずだ。

砦を守るための今以上に強力な兵器と言うのもなかなか思い付かず、ゆきのへもそれで悩んでいるのだろう。

今回は砦の被害だけだったが、次は俺たちの命が奪われるかもしれない。

でも、必ず世界に平和を取り戻すと言ったので、ここで諦める訳にもいかないな。

 

「確かに魔物との戦いは厳しいけど、ここで諦めたくはない」

 

「ワシも諦めるつもりはねえ。だが、魔物たちに打ち勝つには、この砦だけでは戦力が足りねえんだ」

 

ゆきのへも諦めるつもりはないようで、戦力を強化すれば魔物たちに勝てるかもしれないと言った。

だが、エンダルゴの命令で人間の味方の魔物の多くが殺され、生き残っている者も隠れているので、協力を頼むことは出来そうにない。

生きている人間も、これ以上見つかることはないだろう。

 

「でも、新たな仲間になってくれそうな奴なんてもういないぞ?どうやって戦力を増やすんだ?」

 

俺がをう聞くと、ゆきのへは戦力不足を解決するために、ある方法を提案する。

しかしそれは、俺たちが絶対にしたくないと思っている方法であった。

 

「…サンデルジュの砦を放棄する。それで、ラダトーム城の者と一緒に戦うんだ。それでも勝てなかったら、アレフガルドの全ての人々を、一つの拠点に集める」

 

サンデルジュの砦を捨てて、ラダトーム城で魔物との戦いを行う。

それでも勝てなかったら、アレフガルドの全ての人々を一箇所に集める…確かにそうすれば戦力は増えるので、魔物との戦いに勝てる可能性も上がるだろう。

人が多ければ、それだけたくさんの兵器も思いつくかもしれない。

しかしそのために、今までせっかく復興させてきた拠点を捨てるなんてな…。

町や砦は何度でも作り直せる物ではあるが、人がまったくいなくなってしまえば、復興の象徴である希望のはたは折られ、魔物の住処に変えられてしまうだろうから、簡単に再建が出来なくなってしまう。

 

「この砦を捨てちゃうの…?せっかくみんなと楽しく作り上げて来て、魔物に壊されても頑張って直そうとしているのに…」

 

サンデルジュの砦を捨てるという話を聞き、ピリンは泣きそうな声でそう言う。

一緒にこの砦で暮らしてきたみんなも、さっきより暗い顔に変わっていた。

だが、誰もゆきのへに怒鳴ったりしないのは、みんなも他に魔物たちに勝つ方法が思いつかないからだろう。

ゆきのへ自身も、本当はサンデルジュの砦を捨てたくないと言った。

 

「ワシだって、お前さんたちと一緒に作り上げて来たこの砦を捨てたくはねえ。壊されたとしても、何度でも修理して魔物に立ち向かって行きたいと思ってるぜ。だが、このままここで戦い続けたら、世界を救う前に死んでしまうぜ」

 

死んでしまえば、アレフガルドに平和を取り戻すことが出来なくなる。

俺もそうなるのは嫌なので、サンデルジュを捨てて戦力を1ヶ所に集めるのも仕方ないのかもしれないと思ってはいる。

だが、今すぐこの砦を捨てるという決断も、俺には出来なかった。

 

「確かに、魔物たちを倒すためなら、この砦を捨てるしかないのかもしれない…。でも、すぐにそんなことを決めることは出来ないな…」

 

もしかしたら、サンデルジュの砦を大幅に強化出来る設備を思いつけるかもしれない、魔物の活動がこれ以上激化しないかもしれない、などと考えてしまう。

俺がそう言うと、ゆきのへもすぐに決める必要はないと言ってきた。

 

「ワシもすぐに決めろとは言わねえ…もしかしたら、魔物の勢力が弱まるかもしれねえからな。だが、この砦を捨てなければいけなくなるかもしれねえってことは、覚えておいてくれ…」

 

「ああ…」

 

ゆきのへも、俺と同じように奇跡が起こることを祈っているみたいだな。

恐らく、俺とゆきのへ以外のみんなも、同じ気持ちになっていることだろうな。

 

俺たちは話を終えた後、砦を捨てなければならないかもしれないという暗い気持ちを持ったまま、砦の修復活動を再開させていった。

今回は被害が大きかったし、俺たちの気持ちも暗くなっているので、寝室を元に戻したところで休むことにする。

その日の夜俺は、奇跡が起こることを祈りながら眠りについていった。

 

しかし、それから2日間の間、やはり魔物の活動は収まることがなく、砦の防御力を大幅に上げるような強力な設備も思いつくことは出来なかった。

みんなの協力もあって工房も修復することが出来たが、強力な魔物が来ればまた壊されてしまうだろう。

もし次に魔物の襲撃を受けたら、サンデルジュの砦を捨てるしかない…そう言った状況に、俺たちは追い込まれて来ていた。

 

 

 

ラダトーム城の西 エンダルゴの城…

 

そしてついに、サンデルジュの4回目の防衛戦の3日後、雄也がサンデルジュに来てから23日目の朝、砦の様子が玉座の間にいるエンダルゴの間に伝えられた。

森の中から砦の様子を見ていたアローインプが、エンダルゴに報告を行う。

 

「エンダルゴ様。人間の砦を見て参りましたが、新たに作られた兵器はございませんでした。人間にも限界が訪れて来ており、次に襲撃すれば砦を破壊し、人間たちを殺すことが出来るでしょう」

 

アローインプは、もう一度攻めこめばサンデルジュの砦を滅ぼせると考えていた。

2度の戦いによって魔物たちもかなりの損害を受けてはいるが、エンダルゴの城の中にはまだ無数の魔物がいる。

エンダルゴも、人間の砦が強化されていないのであれば、その魔物たちを送り込めば確実に滅ぼせるだろうと思っている。

また、今砦を滅ぼさなければ、また人間は新たな兵器を作ってくるだろうと考えていた。

 

「放っておけば、また設備を強化してくるかもしれないな…分かった。人間の砦を攻めるために、強力な魔物を出来る限り呼んでこい!」

 

「了解致しました、エンダルゴ様」

 

戻ってきたばかりのアローインプだが、エンダルゴの命令を受けて再び城内を走り回っていった。

アローインプの呼びかけに応じて、トロルキング、ゴールデンドラゴン、コスモアイなど、次々に強力な魔物たちが玉座の間に集まっていく。

今回はサンデルジュの魔物だけでなく、ラダトーム地方の魔物であるしにがみのきしもサンデルジュへの攻撃に参加しようとしていた。

100体を超える強力な魔物たちが玉座の間に集うと、エンダルゴは大声で彼らに言う。

 

「よく集まってくれたな…聞いているとは思うが、今回はビルダーと仲間たちを殺す絶好の機会だ。貴様たちは今まで2度も砦の破壊に失敗したが、今回こそ失敗は許されない。力を合わせて砦を攻め、人間どもを皆殺しにして来い!」

 

エンダルゴの命令が終わると、100体を超える魔物たちは、一斉にサンデルジュの砦へと向かっていった。

今度こそビルダーを殺すことが出来ると、魔物たちは全員確信していた。


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