ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
ドルモーアによって落とし穴が破壊されると、トロルキングは砦に攻め込むために、目の前に立ち塞がっているゆきのへたちを攻撃し始めた。
「その程度の兵器では、我らを倒せないと言っただろ。人間ども、砦もろともこの棍棒で砕いてやる!」
そう言いながら、トロルキングは3人に向かって巨大な棍棒を叩きつける。
奴は攻撃力が相当高いようで、離れた場所にいる俺のところにも地面と棍棒がぶつかる音が聞こえた。
俺やゆきのへの力や武器があっても、受け止めるのは難しいだろう。
だが、速度は他のトロルたちよりは速いにしても、反応するのがそんなに難しいほどでもないので、ゆきのへたちに棍棒が当たることはなかった。
攻撃を避けた後、ゆきのへはメタリックハンマーを使ってトロルキングに反撃しようとする。
「我の棍棒を避けることは出来るか…だが、囲まれたらどうしようもないだろう」
しかし、トロルキングの指示で、後ろにいたエビルトレントやキースドラゴンたちもゆきのへたちに攻撃を始めた。
エビルトレントは固い枝で殴りかかり、キースドラゴンは鋭い爪で引き裂こうとする。
戦いが得意なゆきのへやルミーラでも、大量の強敵に囲まれたら危険だな。
ゆきのへもここで戦うのは危ないと思ったようで、一旦砦の方に退却しようとルミーラたちに言う。
「囲まれるのはまずいな…一旦雄也のいるところまで引くぞ!」
魔物たちを砦に近づけることになってしまうが、囲まれてしまえば勝ち目はないので仕方ない。
ゆきのへたちは魔物の攻撃を避けながら、砦のほうに走ってくる。
その間に、魔物の群れは隊列を変えて、前衛に4体のボストロールが出てきた。
「砦に近づかれる前に少しでも魔物の数を減らそうと思ったけど、ボストロールたちが邪魔だな…」
さっきと同じように、はがねの矢でエビルトレントやキースドラゴンが倒されるのを防ごうとしているようだな。
エビルトレントが砦に近づけば、ドルモーアの呪文で大きな被害が出てしまう。
ボストロールの棍棒は20発はがねの矢を当てれば砕くことも出来るので、俺は何とか前衛のボストロールたちを倒そうとするが、20発もはがねの矢を撃っているうちに魔物たちはの近くにやって来てしまった。
「20発もはがねの矢を撃つのは時間がかかるし、間に合わないか…」
1体の棍棒を砕くことは出来たが、残り3体は棍棒を持ったまま砦に歩き続けた。
トロルキングは砦のすぐそばにまでやってくると、笑っているような顔で俺たちを見てくる。
「追い詰められたな…人間ども。砦が壊され、仲間が殺されていくのを見ながら我らに逆らったことを後悔しろ」
奴がそう言ったと同時に、エビルトレントたちも再びドルモーアを唱え始めた。
ボストロールたちも砦に向かって歩き続け、このままでは棍棒と魔法の両方で砦が壊されてしまうな。
何とか侵攻を止められないかと思い、俺は砦の前に設置されている大砲を使おうとする。
「…かなりまずいことになって来たけど、大砲なら奴らの動きを止められそうだな」
大型の魔物は生命力も高いので大砲を当てても一撃では死なないだろうが、動きを止めることは出来るはずだ。
大砲の爆発は範囲が広いので、魔物の群れの中心に着弾すれば後ろのほうにいるエビルトレントにもダメージを与えられるだろう。
俺はすぐにポーチから大砲の弾を取り出して、魔物たちに向かって発射した。
放たれた弾は、トロルキングたちの頭上を飛んで魔物の軍勢の中心に向かって飛んでいく。
「無駄な抵抗だと言っているだろ」
しかし、大砲の弾がトロルキングの頭上に来ようとした時、奴はそう叫んで棍棒で大砲の弾を叩きつける。
すると、魔物の群れの中心で炸裂するはずだった大砲の弾が、トロルキングの頭上で爆発してしまった。
棍棒を叩きつけたトロルキングやその横にいたボストロール、前の方にいたエビルトレントはダメージを負ったが、本来の着弾地点よりも前で爆発してしまったため、後ろにいたエビルトレントは怯まずドルモーアを唱え続けている。
「人間の砦を破壊するためならば、我らは多少の傷を受けても構わん。もう抵抗は諦めるんだな」
トロルキングたちも、もう俺の目の前にまで来てしまっていた。
このトロルキングには、アローインプ式大弓だけでなく大砲も通用しないのか…。
俺はそう思ったが、大砲の弾を叩きつけたトロルキングの棍棒に傷がついているのも見えた。
「もう1発撃てば、あの棍棒を壊せるかもしれないな…」
もう1発大砲の弾を当てれば、トロルキングの棍棒を破壊することが出来そうだ。
ボストロールが奴をかばうかもしれないが、ボストロールの棍棒を破壊したとしても敵の戦力を減らせるのに変わりないな。
俺はなるべく奴らの戦力を減らそうと、もう1発大砲を放っていく。
すると、やはりボストロールの1体がトロルキングの前に立ち塞がり、棍棒を大砲の弾に叩きつけた。
ボストロールの棍棒はトロルキングの物に比べて耐久力がなく、大砲の弾が爆発した瞬間に砕け散る。
「トロルキングの棍棒は砕けかなったけど、ボストロールの棍棒は砕けたな」
これで棍棒を持っているボストロールは2体になり、あと3発大砲を放てばトロルキングの棍棒も破壊することが出来るだろう。
しかし、3発目の大砲を放つ前に、奴らは俺がいるところまで到達してしまった。
「しつこく抵抗しやがって…でも、もうこれは使えないぞ」
そう言いながら、ボストロールのうちの1体が大砲を叩き壊す。
大砲が使えないとなると、トロルキングたちを倒して、エビルトレントのドルモーアを阻止するのが難しくなるな。
だが、俺はここで諦めようとはせず、さっき作った火炎放射器を取り出す。
「大砲がなくても、火炎放射器でお前たちを倒してやるぜ」
火炎放射器はさっき作ったばかりで、どのくらいの火力なのかは分からない。
だが、今はこれを使わなければ砦を破壊されてしまうだろう。
俺はボストロールたちの棍棒を避けながら、奴らに向けて火炎放射器の発射ボタンを押した。
すると、ダースドラゴンの吐く炎くらいの勢いの火炎が、奴らの体を焼き尽くしていく。
「炎を吐くだと…!人間どもめ、まだ抵抗手段を残していたのか!」
大砲の弾の爆発でも怯まなかった奴らなので、火炎を浴びても怯むことはなかったが、確実にダメージは与えられているはずだ。
炎はボストロールたちの体に燃え移り、奴らは苦しそうな顔になる。
しかし、奴らも体を焼かれる痛みに耐えながら、俺に向かって棍棒を叩きつけ来た。
棍棒を失った2体のボストロールは、俺を太い腕で殴りつけて来る。
「だが、その程度の炎で我らは焼き尽くせん!ビルダーを叩き潰してやる!」
ボストロールたちの攻撃は激しいが、俺も攻撃を避けながら奴らの全身に炎を放っていく。
途中で燃料がなくなることもあったが、その度に燃料を補充しては奴らに火炎を浴びせていった。
だが、5体の魔物の猛攻を避け続けるのは大変で、その様子を見たゆきのへたちが助けに入ってくる。
「お前さんだけでは厳しいだろうし、ワシらも援護するぜ!」
ゆきのへたちに敵の攻撃を引き付けてもらえば、今より楽にボストロールたちを焼き尽くすことが出来そうだ。
しかし、砦を守ることから考えれば、ボストロールたちは俺一人で戦って、ゆきのへたちにエビルトレントのドルモーアの阻止を頼んだほうがいいかもしれない。
5体の猛攻を避け続けるのも不可能ではないので、俺は3人にエビルトレントと戦うように指示を出す。
「待ってくれ。俺は一人でこいつらと戦うから、みんなはエビルトレントたちを何とかしてくれ。そうしないと、砦が壊されてしまう」
俺が指示を出すと、ルミーラは一人で戦えるのか心配そうに聞いてきた。
「雄也、一人でも大丈夫?」
俺も不安ではあるが、砦をこれ以上壊される訳にはいかない。
「多分大丈夫だ。エビルトレントのところに急いでくれ!」
俺が大丈夫だと言うと、3人はエビルトレントのところへ向かっていく。
もちろんエビルトレントを守ろうと動いたボストロールもいたが、俺は奴に集中して火炎を放ち、全身を焼き尽くす。
そのボストロールは内臓までが燃やされ、倒れて青い光に変わっていった。
他のボストロールやトロルキングもエビルトレントを守ろうと動いたが、俺はそいつらの体も次々に燃やしていった。
「火炎放射器のおかげて、トロルたちもだいぶ弱ってきたな」
残り3体のボストロールは瀕死になり、トロルキングも弱ってきているようだった。
そこで奴らは、火炎放射器を何とかしなければエビルトレントを守れないと考えたようで、再び俺に集中して猛攻を仕掛けてくる。
だが、さっきより数が減っているので、避け続けるのが少し楽になっていた。
「数も減ったし、このまま避け続けられそうだぜ」
エビルトレントと戦っている3人は、バルダスが枝での攻撃を防ぎ、ゆきのへとルミーラが攻撃するという戦法をとっていた。
エビルトレントを倒すことはまだ出来ていなかったが、何体かのドルモーアの詠唱を中断させることが出来ている。
奴らを砦に近づけてはしまったものの、これ以上砦の被害を広げずに済むかもしれないな。
しかしそんな時、トロルキングたちとの戦いに集中していた俺のところに、後衛のキースドラゴンたちもやってきた。
キースドラゴンも砦のすぐそばにやって来たのを見て、トロルキングは命令を出す。
「キースドラゴン、我らの仲間を焼き殺したビルダーを襲え!…必死に抵抗したみたいだが、残念だったなビルダー」
トロルキングの命令で、10体のキースドラゴンはトロルキングたちと共に俺を囲んで爪で引き裂こうとして来た。
キースドラゴンはボストロールと比べれば弱い魔物だが、囲まれると危険だ。
だが、さっき魔物に囲まれそうになったゆきのへたちは砦のほうに退避することで危機を脱していたが、今はすぐ後ろに砦があるので退避することが出来ない。
「くそ、もう少しで倒せると思っていたのに、キースドラゴンも来てしまったのか」
俺は火炎放射器でキースドラゴンを倒そうとするが、奴らはドラゴンだから炎に耐性があるようで、なかなか倒すことは出来なかった。
少しはダメージを与えられているものの、倒すのには時間がかかりそうだ。
そうしているうちに、10体のキースドラゴンは俺を囲んでしまう。
俺のその様子を見たゆきのへが、援護に戻ろうかと聞いてきた。
「キースドラゴンも来ちまったようだが、本当に大丈夫なのか?必要なら、すぐにでも援護に戻るぜ」
俺は援護してもらわなければ厳しい状況だが、ゆきのへたちはまだ全てのエビルトレントのドルモーアを阻止出来てはいなかった。
もうすぐドルモーアが発動するだろうし、今俺の救援に来れば砦が破壊されてしまう。
ダメージは少ないものの、キースドラゴンにも火炎放射器は聞いているので、救援は必要ないとゆきのへに答えた。
「大丈夫だ。みんなはドルモーアの阻止に集中してくれ!」
そう言うと、ゆきのへは不安そうな顔をしてエビルトレントとの戦いに戻る。
俺も火炎放射器を使って、ボストロールやキースドラゴンたちに炎を放ち続けた。
しかし、10体のキースドラゴンと3体のボストロールとトロルキングという14体の魔物の攻撃を避け続けて、俺の体力にも限界が来てしまう。
「大丈夫だとは言ったけど、もう体力の限界だな…」
そしてついに、俺はキースドラゴンの爪をよけられず、腕に深い傷を負ってしまった。
その衝撃で、持っていた火炎放射器もその場に落としてしまう。
怯んだところを見て、トロルキングは手下に俺を殺すように指示する。
「忌まわしきビルダーが兵器を落としたぞ!今のうちに殺せ!」
俺は痛みに耐えて攻撃を何とか避け続けるが、もう長くは持たないだろう。
「このままだと殺されるな…どうしたらいいんだ…?」
そう思っていると、俺の左にいた3体のキースドラゴンが突然怯んで動きを止める。
他の奴らの攻撃を避けながら左を見てみると、ゆきのへたち3人がエビルトレントへの攻撃をやめて、キースドラゴンに攻撃していた。
「大丈夫だとは言っていたが、さすがにまずいと思ってな…援護に来たぜ」
ゆきのへたちはそれぞれが攻撃していたキースドラゴンを倒して、奴らの数を残り7体に減らす。
俺はキースドラゴンが倒れて消えたところを通って、囲まれている状況から抜け出す。
しかし、俺は助かったが、このままではドルモーアで砦が壊されてしまう。
エビルトレントはまだ6体が生きていて、3体がドルモーアの呪文を唱え続けていた。
「でも、ドルモーアを止めないと砦が破壊されてしまうぞ」
「確かにそうだが、生き残ることが最優先だ。壊れた物なんて、いくらでも後で直せるからな」
ドルモーアを止めないといけないと言うと、ゆきのへはそう返してきた。
そう言えばマッドウルスとの戦いの時でも、ゆきのへは壊れた町なんていくらでも直せると言っていたな。
ここまで厳しい戦いとなれば、砦を守ることよりも、生き残ることを最優先にしなければいけないのかもしれない。
「…分かった。厳しい戦いになったけど、必ず生き残らないとな」
生き残らなければ、エンダルゴを倒すことも、人々に平和な世界を見せることも出来ない。
俺が魔物に囲まれた状況を抜け出して、ゆきのへたちと合流していると、ついにエビルトレントのドルモーアが発動した。
砦の中央にある銀色の希望のはたに傷がつき、奥にある寝室までにも被害が出ていた。
「この砦は終わりだな…仲間に助けられたようだが、今度こそは仕留めるぞ」
砦には大きな被害が出たのを見て、トロルキングは俺たちにそう言ってきた。
今までドルモーアを唱えていた、エビルトレントたちも俺たちへの攻撃に加わる。
だが、俺たちも何とかして奴らに打ち勝とうと、武器を構えた。