ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode131 王都の監視塔

落とし穴を作った2日後、俺がサンデルジュに来てから18日目の朝、今日も砦の外を見て草原に生息している魔物の様子について観察していた。

魔物の活動は日に日に激しくなっていき、今日も魔物たちは人間に寝返った魔物がいないか監視しているようだった。

人間に寝返った魔物を全て殺すまで、この動きは続くのだろう。

 

「活動が激しいだけじゃなくて、新手の魔物も出てきてるのか…」

 

また、魔物の活動を見ながら草原の奥の方を見てみると、ラダトームの南の城で戦ったことのある巨人の魔物、ボストロールの姿が何体か見かけられるようになった。

裏切り者の魔物を殺すにしても、人間の砦を破壊するにしても、今まで以上に強力な魔物が必要だとエンダルゴは判断したのかもしれないな。

もしボストロールが砦に迫って来たら、この前以上に苦戦することになりそうだ。

 

「ボストロールは強いけど巨体の魔物だから、落とし穴で止められそうだな」

 

でも、人間の数倍もの巨体を持ったボストロールは間違いなく落とし穴に落ちるだろうから、この砦に近づかれることはなさそうだ。

新手の魔物でも食い止められそうなので、落とし穴を作ってよかったと俺は改めて思う。

次の防衛戦は、この前よりも勝ち目が上がったかもしれないな。

 

「でも、万が一近づかれた時のことも考えておくか」

 

だが、ここで油断はせず、もし砦に強大な魔物が近づいてきた時のことも考えなければいけないとも俺は思う。

今の設備では対処しきれるか分からないので、また新しい兵器を考えた方がいいだろう。

俺は今日も新設備についてみんなに相談しようと、砦の中に戻ろうとする。

 

するとその時、サンデルジュの砦に1匹のカタツムリの魔物、ドロルが近づいて来た。

でも、サンデルジュにはドロルは生息していないはずだし、そいつは俺たちを襲って来るような気配もなかった。

 

「ん?あいつはチョビか…?ここに来たってことは、ラダトームで何かあったのか?」

 

ラダトームの兵士となったドロルのチョビだろうが、どうしてサンデルジュに来たのだろうか?

強大な魔物が生息しているサンデルジュにまで俺を呼びに来ると言うことは、ラダトームで何か起きたということだろう。

そんなことを考えながら、俺はチョビが来るのを待つ。

チョビは砦に入ると呪文を唱えて人間の姿に化けて、俺に話しかけてきた。

 

「久しぶりデスネ、雄也ドロル!」

 

「こっちこそ久しぶりだな。でも、チョビがここに来るってことは、ラダトームで何かあったのか?」

 

俺はさっそく、ラダトームで何が起きたのか聞く。

この前チョビがサンデルジュに来たのはラダトーム城の西で魔物たちが不穏な動きを始めた時だが、今回もラダトームで恐ろしいことがあったのだろうか。

するとチョビは、暗い顔になってラダトームの現状を話してきた。

 

「ハイ…実ハ昨日、またラダトーム城二魔物ノ軍勢が押し寄せテ来たのデス。ワタシたちデ何とか追い払ったのデスガ、城ヲ大きく壊さレテしまいマシタ。姫ノいる玉座の間モ、傷を受けてしまいマシタ」

 

エンダルゴの住む城も近くにあるし、ラダトームもサンデルジュと同じくらい魔物の動きが活発になっているみたいだな。

この前は強力な兵器を持つサンデルジュの砦でも一部を破壊されたので、ラダトームにあの数の魔物が襲撃すれば甚大な被害を受けるのだろう。

このままもう一度襲撃を受ければ、ラダトーム城は陥落してしまいそうだ。

 

「そんな大変な状況になっていたのか…。それで、城を強化を頼みに来たんだな」

 

「ハイ。雄也ドロル二、作るのヲ手伝ッテ欲しい物ガあるノデス」

 

チョビは城の強化をするために、俺に作ってほしい物があると言ってくる。

ラダトーム城もみんなと共に復興させてきた大切な場所なので、俺としても魔物に壊されたくはない。

 

「俺もラダトーム城を壊される訳にはいかないし、もちろん聞くぞ」

 

「今回ノ戦いデ城ガ大きな被害ヲ受けたノハ、魔物ノ襲撃二気づクのガ遅かッタからダトワタシたちハ考えマシタ。気づイタ時にハ、魔物ハ砦ノすぐ側マデ来ていタノデス」

 

俺たちもラダトーム城を復興させている時、襲撃に気づいたのは魔物たちが城のすぐ近くまで来てからだったな。

ラダトーム城はサンデルジュと違って高台にある訳ではないので、遠くの魔物の行動は見えにくい。

魔物の活動が激化している今、チョビの言う通り城に近づかれてから迎撃していては防衛が間に合わない恐れもある。

 

「そこで、雄也ドロル二作っテ欲しいノハ、遠く二いる魔物ノ動きモ見ルこと出来る監視塔デス。マダ魔物ガ城から離レタところ二いる時二迎え撃てば、城ノ被害モ抑えラレルと思うのデス」

 

監視塔か…メルキドでも、ゴーレムが来た時のためにロッシが見張り台を作ってほしいと頼んできたことがあった。

確かに監視塔があれば遠くの魔物の動きも見えるようになり、襲撃の時に早めに対応することが出来るだろう。

作りに向かう前に、俺はどんな感じの監視塔にするのかチョビに聞く。

 

「確かに監視塔があれば、城を破壊される前に迎え撃てるかもしれないな…それで、どんな形の監視塔にするんだ?」

 

「城ノみなさんト一緒二設計図ヲ書いテ来まシタ。これノ通り二作っテみテ下サイ」

 

すると、チョビは監視塔の設計図を手に取り、俺に渡してきた。

サンデルジュに来てからは一回も設計図を使ったことがないし、設計図を使うのはエルの教会以来になるな。

その設計図には、監視塔は高さ10メートルで、城のカベを使って作ると書かれている。

メルキドの見張り台の倍くらいの高さだが、同じように上にはかがり火を置いてあった。

また、登るためにはつたではなく、はしごを使うと書かれていた。

 

「はしごは作ったことがないな…今の素材で作れるのか?」

 

はしごはまだ作ったことがないので、今持っている素材で作れるのかビルダーの力で調べる。

素材が足りないのだったら、集めに行かないといけないな。

 

はしご…木材3個、ひも1本 石の作業台

 

木材とひもだけで作れるみたいだな…これならラダトームの大倉庫に入っているはずだし、すぐに作ることが出来そうだ。

素材も揃っているし、早めに作ったほうがいいと思い、さっそく作りに行こうと俺はチョビに言う。

 

「素材も揃っているし、この高さがあれば遠くの魔物もちゃんと見れると思うぞ。いつ魔物が来るか分からないし、今から作りに行こう」

 

「ありがとうございマス。ワタシはモウ少し休みタイのデスが、ラスタンたちト共二城ヲ修理しなケレばいけないノデ、雄也ドロルと一緒二ラダトーム城二戻りマス」

 

チョビも城を修理しなければいけないので、サンデルジュの砦で休まずに俺と一緒にラダトーム城に向かうといった。

城がかなり大きく破壊されているので、修理も急がないといけないみたいだな。

 

「分かった。魔物に気をつけながら、旅のとびらに向かうぞ」

 

チョビはドロルの姿に戻り、俺はその後ろに隠れながらラダトーム城に繋がる緑の旅のとびらを目指してゆっくり歩いていく。

多くの魔物が監視を行っているところを進んでいくので、これまで以上に時間がかかってしまう。

旅のとびらに着いた時には、サンデルジュの砦を出てから25分もたっていた。

 

旅のとびらを抜けると、そこにはチョビの言う通り魔物の攻撃で大きな被害を受けたラダトーム城が広がっていた。

城の前の方にある占いの間は半壊しており、奥のほうにある玉座の間や姫の寝室もかなり破壊されている。

 

「話には聞いていたけど、ひどいことになってるな…」

 

全壊まではしておらず、みんな生き残っているのは良かったが、せっかく復興してきた町を再び壊されてしまうのはやはり悲しいな。

そう思いながら城の中を眺めていると、修復作業を行っていたラスタンが俺とチョビに気づいて話しかけてきた。

 

「雄也、来てくれたのか…チョビから聞いているとは思うが、先日の魔物の襲撃でラダトーム城はこのような有り様になってしまった…」

 

ラスタンもさっきのチョビと同じように、暗い口調で話している。

ラスタンも兵士として、守るべき城を壊されてしまったことを悲しく思っているみたいだな。

また、ラダトーム城に俺を呼び出したことを申し訳なく思っているようだった。

 

「最初は私たちだけで城の修理も監視塔の建設も行うつもりだったのだが、それでは時間がかかり過ぎると思ってお前を呼ぶことになった…お前にはサンデルジュの防衛という大切な役目があるのに、悪いな…」

 

「気にしなくていい。エンダルゴ…闇の力の集合体を倒すためにはラダトーム城の強力も必要になるだろうし、俺に出来ることなら何でもするぞ」

 

確かにさっき俺は、今日もサンデルジュの砦を防衛するための設備を考えようとしていた。

強力な兵器があればあるほど、魔物たちに勝てる可能性は高まるからな。

だが、エンダルゴの軍勢を倒して世界に完全な平和を取り戻すには、ラダトームのみんなの力も不可欠だろう。

だから、ラダトーム城を強化することもサンデルジュの強化と同じくらい重要だ。

俺はラスタンに気にしなくていいと言った後、どこに監視塔を作ればいいか聞く。

 

「それで、監視塔を城に作って欲しいんだろ?城のどのあたりに作ればいいんだ?」

 

「監視塔は城の横に作ってほしい。本当は城の中に作りたいのだが、場所がなくてな」

 

ラスタンは城の中ではなく、城の横に監視塔を作って欲しいと言ってきた。

監視塔はもともとラダトーム城にはない物だし、そうするしかないみたいだな。

でも、城の横でも襲って来る魔物は見れるので、問題はないだろう。

 

「分かった。チョビから設計図は貰っているし、今から作ってくるぞ」

 

「本当にすまないな…どのくらい遠くまで見えるのか気になるから、出来上がったら見せてくれ」

 

俺はラダトームのためにも何でもすると言ったが、ラスタンはまだ申し訳なく思う気持ちがあるようで、そんな言い方をした。

だが、みんなに平和な世界を見せるためには、ラダトーム城も守り抜かなければならないので、俺はすすんで監視塔を作りに行く。

チョビとラスタンは城の修復作業に戻り、俺は監視塔を建てるのに必要なもの、はしごとかがり火、城のカベを作るために工房に向かった。

 

工房も魔物の攻撃によってかなりの被害を受けており、壁や扉がなくなっていた。

だが、石の作業台はまだ壊されておらず、必要なものをすぐに作ることが出来そうだ。

 

「はしごを作るためには…木材とひもだったな」

 

俺はまずポーチから大倉庫に入っているひもと木材を取り出し、はしごを作ろうとする。

二つの素材を石の作業台の上に置き、ビルダーの力を発動させていった。

すると、木材とひもは一つだけでなく、いくつものはしごに変わっていく。

ビルダーの魔法を発動し終えたときには、10個ものはしごが出来ていた。

 

「一度に10個も出来たのか…監視塔の高さは10メートルだったし、ちょうどだな」

 

はしごの長さは1つ1メートルなので、10個あれば10メートルの高さの監視塔を作るのに十分な数だ。

はしごが出来ると、同じように大倉庫から素材を取り出していき、かがり火や城のカベを作っていく。

 

「城のカベは結構な数が必要になるけど、ラダトームの大倉庫には大量の素材が入ってるし、大丈夫か」

 

大量の鉄のインゴットや石材が必要になるが、大倉庫にはラダトームを復興させている時集めていたものが残っているので、集めに行かなくてもよさそうだ。

ビルダーの魔法で次々に城のカベ・地や城のカベを作っていき、必要な数が出来上がると監視塔を建てにラダトーム城の横に向かっていく。

 

「これでたくさんの城のカベも出来たし、早めに監視塔を建ててこないとな」

 

俺は一度城を出て城の横に向かい、監視塔を建て始める。

 

まずは1段目に城のカベ・地を置いて、その上に城のカベを積み重ねていく。

降りれなくなったら困るので、一段積んでいくごとにはしごをかけていった。

8段目くらいになるとかなりの高さだが、俺は高いところが苦手ではないので、そのまま設計図の通り10メートルの高さまでブロックを積み上げていく。

 

「これで10メートルの高さになったな、あとはここにかがり火を置いたら、監視塔の完成だな」

 

俺は10段目のところに床を作っていき、その上にかがり火を置く。

そして最後に、落下防止のためにまわりを城のカベで囲み、監視塔を完成させた。

 

「これで監視塔が出来たな。ここからなら、遠くの魔物でも見えそうだぜ」

 

完成した監視塔の上で、俺は魔物の活動が激しくなっている今のラダトーム平野を眺める。

すると、前まではスライムや小型のかげのきしくらいしかいなかったところに、たくさんのしにがみのきしやだいまどうがうろついていた。

ラダトームの他の地域には、さらに強力な魔物もいるかもしれないな。

そう考えると、魔物の襲撃を遠くからでも知ることが出来る監視塔を作ってよかったぜ。

 

「ラダトーム城の周辺にあんな強力な魔物がいるのか…でも、この監視塔があれば城を守れる可能性も上がりそうだな。みんなにも、完成したことを伝えるか」

 

俺はしばらくラダトーム城周辺の様子を見た後、監視塔が完成したことをみんなに伝える。

 

「みんな、監視塔が出来たぞ。結構遠くの魔物も見えるし、襲撃に気づけるようになったと思うぜ」

 

俺の声を聞いて、ラスタン、オーレン、チョビの3人のラダトームの兵士が出来上がった監視塔のところにやってくる。

この監視塔で魔物の様子を見張るのも、この3人になるのだろう。

年寄りであるムツヘタは、はしごを登るのが大変だろうからな。

 

「ラスタンから雄也さんが来てくれたことは聞きましたが、高くて役立ちそうな監視塔になりましたね。本当にありがとうございます」

 

さっきは会っていなかったオーレンも、俺に感謝の言葉を言った。

3人はしばらく下から監視塔を見た後、はしごを使って上に登ってくる。

 

上から遠くを眺めた3人は、これなら魔物の襲撃にも事前に気付けるだろうと話をする。

 

「これが監視塔から見たラダトーム周辺の眺めか…あの距離まで見えるのなら、魔物が来ても城に近づかれる前に対応出来るぞ」

 

「城が再び崩壊すると言う、最悪の事態は避けられそうですね」

 

「助かリまシタ、雄也ドロル!次二いつ魔物ガ来るかハ分かりマセンが、被害ヲ最小限二抑えテ見せマス」

 

ラダトームでの魔物の襲撃がどの程度なのかは分からないが、3人の言う通りこの城を守りきれる可能性は上がったわけだし、本当に良かった。

 

「また困ったことがあったら、いつでも呼びに来てくれ」

 

俺は3人にそう言った後、監視塔から降りてラダトーム城に戻り、旅のとびらからサンデルジュに向かっていった。


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