ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode130 新たなる罠

バルダスと共に歩き続けて15分ほどたって、ようやくサンデルジュの砦がある高台が見えてくる。

バルダスと二人で行動しているので、魔物に見つかりやすくなったと思い、いつも以上に慎重に移動していたからだ。

高台に登り始めると、バルダスは砦に住んでいる人について教えてほしいと言ってくる。

 

「もうすぐ砦に着くけど、砦にはさっき言ってたアローインプ以外にどんな人が住んでるんだ?さっきは急いでて聞けなかったけど、教えてほしいんだ」

 

「ピリンっていう10歳くらいの女の子と、ゆきのへっていう鍛冶屋と、その弟子のヘイザンって人だ。みんな、一緒にアレフガルドを復興させてきた仲間だ」

 

俺はバルダスに、ピリンたちのことを話す。

あの3人なら、バルダスとも協力して砦を強化していけるだろう。

だが、バルダスは魔物である自分が人間と暮らしていけるのか不安だと言ってくる。

 

「そんな人たちが住んでるんだ。でも、雄也は良くてもその人たちはブラックチャックの僕と暮らしてくれるのか?人間の砦に向かおうと思いついた時から、それが一番の不安だったんだ」

 

ルミーラの時もそうだったけど、人間と魔物は本来敵対し合っている種族なので、そんな不安が生まれるのも仕方ないのかもしれないな。

今までも魔物の仲間を受け入れてきたみんななので問題ないと、俺はバルダスに言う。

 

「大丈夫だ。ルミーラ以外にも、俺たちは2匹の魔物の仲間がいるんだけど、そいつらのこともみんな大切な仲間だと思っている」

 

たとえどんな魔物であろうと、仲間は仲間だ。

俺がそう言うと、バルダスは安心して砦に向かって歩いていく。

 

「雄也がそこまで言うなら安心だな。みんなともすぐ仲良くなれるように頑張る」

 

砦に着いたら、みんなにバルダスのことを紹介しないといけないな。

俺もそう考えながら、高台を登ってみんなの待つ砦に戻っていった。

 

サンデルジュの砦に戻って来ると、さっそく俺はみんなにバルダスを紹介しようとする。

 

「みんな、新しい仲間を連れてきたぞ!」

 

俺がそう叫ぶと、部屋の中にいた4人が出てきて、俺たちのところに走ってきた。

 

「やっぱり仲間の魔物がいたのか。助けられてよかったな」

 

さっき仲間の魔物がいるかもしれないという話を聞いたゆきのへは、そんなことを言う。

ピリンたちも、新しい仲間が増えたことで嬉しい顔をしていた。

 

「また仲間が増えたんだ!これで暮らしがもっと楽しくなりそうだね!」

 

「厳しい戦況になっているが、これで少しは状況を覆せるかもしれないな」

 

「わたし以外にも人間との争いを嫌う魔物もいたんだね」

 

みんなから歓迎され、バルダスもとても嬉しそうな顔になる。

みんなが喜んでいるところで、俺はみんなにバルダスのことを話した。

 

「ブラックチャックのバルダスだ。魔物の群れに襲われていたところを助けて、ここに連れて来たんだ」

 

「みんな、宜しく頼んだ。魔物から砦を守れるように、出来る限りのことをするぞ」

 

俺の紹介に続いて、バルダスもあいさつした。

それを聞いて、みんなもバルダスに自己紹介とあいさつをする。

 

「よろしくね、バルダス!わたしはピリン!」

 

「ワシはゆきのへだ。厳しい戦況だが、お前さんとも協力して砦を守ってやるぜ」

 

「ワタシはヘイザン、ゆきのへの弟子だ」

 

「わたしはルミーラ。これから仲良くしていこう」

 

4人とも新たな仲間が増えたことをとても喜んでいるので、すぐにバルダスと仲良くなっていくだろう。

ゆきのへの言う通り俺たちは厳しい戦況の中にあるが、バルダスとも協力して砦を守り抜いて、今度こそ世界に平和を取り戻さなければいけないな。

自己紹介の後、バルダスはみんなと話をしながら砦の中に入っていく。

俺はさっきバルダスの声が聞こえて中断してしまった、砦の修復作業に戻っていった。

 

しばらくして砦の修復作業を終えた俺は、これから何をしようかと考えていた。

すると、さっきみんなと一緒に砦の中に入ったバルダスが出てきて、俺に話しかけてきた。

 

「雄也。みんなと話し合って、思いついたことがあるんだ」

 

バルダスは砦に入ってから、みんなといろんな事を話していたな。

この砦にある兵器のことについても話していたし、もしかしたら新しい兵器について思いついたのかもしれない。

もしそうならさっそく作りに行こうと、俺はバルダスの話を聞く。

 

「もしかして、新しい兵器について何か思いついたのか?」

 

「この砦にはいろんな兵器があるけど、大きな敵を足止めする兵器も必要だと思ったんだ」

 

バルダスはうなずくと、大きい敵を足止めする兵器が必要だと言う。

確かにこの砦にはアローインプ式大弓や大砲など、巨大な敵を攻撃するための兵器はいくつでもあるが、足止めするための兵器はひとつもないな。

それがあれば、この前みたいにゴールデンドラゴンの火球に苦戦することもなくなるかもしれない。

でも、大きな敵を足止めする兵器と言われてもなかなか思いつかないな。

 

「俺もあったほうがいいと思うぞ。バルダスはどんな感じの兵器を思いついたんだ?」

 

「地面に大きな穴を開けて、その下にたくさんの槍を置くんだ。それで、その穴が見えないように、薄く土を被せるんだ。その上を大きな魔物が通ったら、土は重みに耐えられない。そしたら大きな魔物は穴に落ちて、たくさんの槍が突き刺さる。足止めも出来て、大きな傷も与えられるはずなんだ」

 

足止めのために地面に掘った穴に落とす…つまりは落とし穴と言うことか。

深い穴に落ちてしまったら、確かに巨大な魔物でもしばらくは出て来れなさそうだ。

ドラクエビルダーズのオープニングムービーでも、ゴーレムを穴に落として攻撃するという場面があったはずだ。

それに、たくさんの槍を置けば巨大な魔物でもかなりのダメージを受けることになるだろうから、確かにこの砦を守るのに役立つ強力な兵器になりそうだ。

 

「確かにそれなら強そうだな。詳しい作り方は思いついたか?」

 

「もちろん。素材が集まったら、雄也のビルダーの力で作ってみてくれ」

 

詳しい作り方も考えているらしく、バルダスはさっそく教え始める。

俺のビルダーの力についても、みんなから聞いていたみたいだな。

次にいつ魔物が襲ってくるか分からないし、すぐに作って砦の前に設置しに行こう。

そんなことを考えながら、俺はバルダスの言う落とし穴の作り方について聞く。

 

「大きな魔物でも落ちて、簡単に出てこられないように、穴の大きさは3×3の9ブロック分、深さは2ブロック分で、穴の横と底は魔物に壊されないように砦のカベで固めるんだ。それで出来た穴の中にはがねインゴットで出来た槍を置いて、最後に穴が見えないように薄い土を被せるんだ。穴に落ちた魔物は槍が刺さって弱るはずだから、砦のカベは薄くてもいい」

 

槍ははがねインゴットで作るようだし、砦のカベの原料もはがねインゴットなので、今回もかなりのはがねインゴットを使うことにもなりそうだ。

サンデルジュに来てから本当にはがねインゴットを使う機会が多いし、今度また岩山に採掘に行ったほうがいいかもしれないな。

そう思ったが、まだ砦のカベもはがねインゴットも在庫はあるので、今回は取りに行く必要はなさそうだ。

俺はバルダスに言われた通りの落とし穴を頭の中に想像して、ビルダーの力を使う。

 

落とし穴…はがねインゴット4個、砦のカベ4個、土3個 神鉄炉と金床

 

土と砦のカベは薄くして使うので、あまり必要数は多くないな。

はがねインゴットにしても落とし穴一つにつき4つなので、かなりの数の落とし穴を作ることが出来そうだ。

 

「ビルダーの力で素材や必要な数を調べたんだけど、今すぐたくさん作れそうだ。さっそく作りに行って来るぜ」

 

俺はバルダスに必要な素材が分かったから、さっそく作りに行くと言った。

砦の中に入っていき、神鉄炉が置いてある工房に向かっていく。

 

工房に入ると、俺ははがねインゴット、砦のカベ、土を用意し、神鉄炉を使ってビルダーの魔法を発動させた。

ビルダーの魔法を発動させると、砦のカベが薄く変化して穴の横と底を作っていき、その穴の中にはがねインゴットの槍が作られていく。

穴と槍が出来ると、薄くした土がそれらを覆い隠し、落とし穴が出来上がった。

 

「これで落とし穴が出来たか。でも、今度も魔物の数はかなり多いだろうし、まだたくさん作らないといけないな」

 

落とし穴が一つ出来てからも、俺は続けてたくさんの落とし穴を作っていく。

次の防衛戦ではどのくらい大型の魔物が来るかは分からないが、かなりの数が襲ってくるのは間違いないだろう。

それで、俺ははがねインゴットの在庫が少なくなるまで作り続けて、20個もの落とし穴を完成させる。

20個めの落とし穴が出来た時、俺はそろそろ砦の前に設置しに行こうかと思う。

 

「これで20個も落とし穴が出来たか…はがねインゴットは大量に使ったけど、次の防衛戦は間違いなく勝ち目が上がっただろうな。今から設置しに行ってくるか」

 

俺はさっそく工房から出て、砦の前に向かった。

ゴールデンドラゴンの火球で砦を壊されるのも防ぎたいので、砦からかなり離れた場所に設置したほうが良さそうだ。

そうすれば、砦が火球の射程範囲に入る前にゴールデンドラゴンは落とし穴に落ちて、火球を放つことは出来なくなる。

砦のある高台を降りて、草原に出たところ辺りで、俺は地面に落とし穴を設置し始めた。

 

「この辺りに設置すれば、ゴールデンドラゴンが来ても火球を吐く前に落ちそうだな」

 

ビルダーハンマーを使って地面を掘っていき、一つ一つ落とし穴を設置していく。

明日の朝、昨日ほどのたくさんの魔物が襲ってくるかもしれないし、今日のうちに20個とも設置しておいたほうがいいだろう。

かなり時間はかかり、設置しているうちに昼ごろになってしまう。

でも、俺は休まずに穴を掘って落とし穴を設置して、夕方になる前には全ての落とし穴を置くことが出来た。

 

「これで全部置けたか。魔物に見破られることはなさそうだな」

 

落とし穴を設置し終えると、その設置した場所を眺めてみる。

落とし穴がある場所もまわりの地面と同じようになっており、見分けることは出来なかった。

飛び出し式トゲわなの時も大丈夫だったし、魔物に見破られるという心配はないだろう。

だが、落とし穴に関して一つ気になっていることがあった。

 

「心配なのは、人間や軽い魔物が落ちたりしないかだな」

 

アローインプやブラバニクイーンなどの小型の魔物が落ち、大型の魔物を足止め出来なくなることや、人間が落ちてしまうことが心配だ。

サンデルジュの砦のみんなには落とし穴のある位置を教えればいいので大丈夫だが、ラダトームの人がここに来た時に危ない。

 

「俺が確かめたらもしもの時危ないし、重い物を乗せて耐えられるか調べるか」

 

俺は金属製の武器やインゴットを落とし穴を設置した場所の上に置いていき、重さに耐えられるか調べてみる。

俺が直接確かめたほうが早いが、万が一崩れた時に危険だ。

慎重にいくつもの武器やインゴットを置いていき、合計の重さ人間の体重と同じくらいにする。

そして、重さに耐えきれず崩れることがないか、しばらく観察していた。

 

「崩れる気配は…ないみたいだな」

 

でも、しばらく観察しても崩れる様子はなく、小さな魔物や人間が落ちる心配はなさそうだった。

それを見て、大型の魔物でも落ちないのではないかとも思ったが、ゴールデンドラゴンなどの体重は人間の何倍もあるだろうから、恐らく問題ないだろう。

 

「これで事故の心配もなさそうだし、多分大丈夫だろうな」

 

落とし穴を使って、これからの戦いを有利に進めていくことが出来そうだ。

俺は落とし穴の上の土に置いた武器やインゴットを回収し、砦の中に戻っていく。

 

砦の中に戻ると、俺は落とし穴が完成したことを伝えるためにバルダスを呼んだ。

 

「バルダス、落とし穴を設置してきたぞ!結構強力な設備になりそうだ」

 

自分が考えた落とし穴が強力になりそうと言われて、バルダスは部屋の中から嬉しそうに出てきた。

バルダスは俺のところに来ると、どの位置に落とし穴を設置したのか聞いてくる。

 

「本当か?それならこの砦の役に立てて良かった。どの辺りに設置したんだ?」

 

「この砦がある高台の下辺りだ。そこに置けば、一番この砦を守りやすいと思ったんだ」

 

俺はさっき落とし穴を設置した場所を指差し、バルダスに教えた。

すると、バルダス自身も全くまわりと区別がつかないと言う。

 

「あの場所に作ったんだ。ボクにもまわりと全く区別がつかないし、穴に魔物を落とせそうだ」

 

自分で考え出した設備に、バルダスも満足しているようだった。

バルダスはこんな強い設備を考えたし、これからも協力していけばさらなる兵器も開発出来るようになるだろう。

闇の力の集合体…エンダルゴも倒せるようになるかもしれない。

 

「バルダスのおかげであんな強力な設備が作れたんだ。これからも協力して、魔物たちに立ち向かっていくぞ」

 

「もちろん。雄也やみんなが勝てるように、ここで頑張るんだ」

 

俺がそんなことを言うと、バルダスもこれからも頑張っていくと言う。

俺たちはもう少し話し合った後、砦の中に戻っていった。


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