ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode127 早朝の激戦

闇の力の集合体が現れた翌日、サンデルジュに来てから15日目の朝、まだ寝ている俺の耳に誰かの大声が聞こえてきた。

俺はまだ眠かったが、その声に反応して目を開けてみる。

 

「おい、雄也、起きろ!大変なことになっちまったぞ!」

 

すると、明らかに焦った表情をしているゆきのへがベットの横に立っていた。

そうしているうちにも、ゆきのへは大声で俺に話しかけ続けるので、俺の眠気はすぐに吹き飛んでしまう。

 

「早く起きてくれ!この砦に危機が迫ってんだ!」

 

こんな朝早くに焦って起こしに来るなんて、何かがあったみたいだな。

俺はベットから出て立ち上がると、ゆきのへに何が起きているのか聞いた。

 

「ゆきのへ、そんなに急いでどうしたんだ?」

 

「まだ新設備を考えている途中なのに、もうこの砦に魔物が襲ってきやがった!それも、今までにないほどの大軍だ!」

 

闇の力の集合体が現れてからまだ一日しかたっていないのに、もう魔物が襲撃を仕掛けてきたのか!?

それに、今までにない大軍って、どれだけの魔物がいると言うんだ?

 

「今までにない大軍?どれだけの魔物が来たんだ?」

 

「ざっと数えて、80体はいるだろうな…マズいことになったが、今すぐ迎え撃ちに行くぜ!」

 

80体もの魔物が襲ってきたと告げると、ゆきのへは寝室の外に出ていく。

マイラの8回目の防衛戦の時もすごい数の魔物が来ていたが、今回はそれをも上回っているのか···。

こちらが新たな兵器を開発する前に、一気に潰そうということなのかもしれない。

だが、昨日作ったアローインプ式大弓を使うなどして何とか迎え撃たなければ、この砦は滅ぼされてしまう。

そう思いながら、俺もおうじゃのけんやビルダーハンマー、サブマシンガンを持つと、寝室から出て砦の前へと向かっていった。

 

「雄也、遅い!早くしないと、この砦が危ない!」

 

「やっと来たか、雄也。朝早く大変だが、全力でこの砦を守るぞ!」

 

砦の前に出てみると、ゆきのへだけでなくルミーラも魔物を迎え撃つ準備をしており、遅れてきた俺にそんなことを言った。

 

「遅れてごめん。でももう準備は出来てるから、すぐに戦いに入れるぜ」

 

俺は二人に遅れたことを謝ってから、迫ってくる魔物の様子を見る。

すると、ゆきのへが言った通りの非常に多数の魔物の姿が見かけられた。

アローインプとブラックチャックが24体ずつ、ブラバニクイーンが16体、キースドラゴンとエ ビルトレントが8体ずつ、ゴールデンドラゴンが6体の、合計86体の魔物だ。

先頭と最後尾に巨大なゴールデンドラゴンがおり、その間に84体の魔物が並んでいると言う形だった。

 

「くそっ、数が多いだけじゃなくて、強力な魔物も結構いるな…」

 

戦ったことのある魔物がほとんどだが、ゴールデンドラゴンは初めて戦う相手だ。

だが、ゆきのへのこの前言っていた通り、俺たちは今までいくつもの困難を乗り切ってきた。

今回も、何とかして乗り切らなければいけない。

 

「正面から斬りかかっていっても勝ち目はなさそうだし、俺はまず昨日作った大弓で魔物の数を減らしていくぞ」

 

俺は魔物たちを迎え撃つために、アローインプ式大弓のところへ向かっていく。

 

「分かった。ワシもこのメタリックハンマーで、出来る限りのことをするぜ」

 

「必要があったらわたしの麻痺の矢で援護するね」

 

ゆきのへやルミーラも、それぞれの武器を構えて魔物と戦う態勢をとった。

サンデルジュの砦の、3回目の防衛戦が始まった。

 

魔物の群れはすで砦のある高台に登り始めており、先頭の巨大なゴールデンドラゴンやその後ろにいるブラックチャックたちは、もう砦のすぐそばに来ていた。

ブラックチャックはそこまで強くはないが、ゴールデンドラゴンの攻撃は強力だろうし、砦のカベでも破壊される可能性がある。

 

「まずはあのゴールデンドラゴンを倒さないとまずいな…」

 

だが、ブラックチャックも24体いるため、囲まれたら危険な状況になりそうだ。

ここはみんなにブラックチャックを任せて、俺がアローインプ式大弓でゴールデンドラゴンを倒した方がいいな。

 

「みんなはブラックチャックを倒してくれ!俺がその間にゴールデンドラゴンを撃ち抜く」

 

「分かったぜ。お前さんもあの金色のドラゴンに、新兵器の威力を見せてやれ」

 

ルミーラは麻痺の矢で左側の12体のブラックチャックを撃ち、ゆきのへはハンマーで右側の12体のブラックチャックを叩き潰していく。

ブラックチャックも二人の攻撃をトゲ付きの棍棒で防ごうとするが、ルミーラは防がれていない部位を正確に狙っていき、ゆきのへはハンマーの威力で棍棒を弾き落とし、奴らを追い詰めていった。

 

俺はその様子を見て、ゴールデンドラゴンに向かって5本の矢を放っていく。

5本も大型の矢が刺されば、ゴールデンドラゴンも無事では済まないだろう。

奴もすぐに矢が飛んできたことに気づくが、巨体なのでかわしきることが出来ず、次々と体に矢が刺さっていった。

すると、俺の思っていた通りゴールデンドラゴンはかなりのダメージを受けたようで、大きな叫び声を上げて怯む。

 

「やっぱりこの大弓は強いな。もう一発撃てばあいつも倒せそうだぜ」

 

まだゴールデンドラゴンとは距離があるので、このまま砦に近づかれる前に倒すことが出来そうだ。

俺は奴にとどめを刺そうと、再び5本のはがねの矢を大弓から放とうとする。

だがそんな時、ゴールデンドラゴンは体勢を立て直し、俺に向かって巨大な火球を飛ばしてきた。

 

「くっ!もう少しで倒せると思っていたのに…あんな巨大な火球を吐くことも出来るのか!?」

 

メラゾーマに匹敵するほどの大きさであり、それを連続で放ってくるので、俺は避けるのに精一杯でアローインプ式大弓に近づくことが出来なくなる。

俺が攻撃出来ない間にも、ゴールデンドラゴンはだんだんと砦に近づいてきていた。

 

「あの炎に苦戦してるようね…わたしがゴールデンドラゴンを引きつけるから、雄也は今のうちに!」

 

その様子を見て、ルミーラは麻痺の矢で狙う対象をブラックチャックからゴールデンドラゴン変える。

左側のブラックチャックはまだ6体残っているが、このままではゴールデンドラゴンに砦を破壊されると考えたのだろう。

ゴールデンドラゴンは体が大きく麻痺しにくいだろうが、それでも何十発も受ければ麻痺してしまうので、奴は火球をルミーラに向かって吐くようになった。

だが、俺に大きな隙を晒すことはなく、俺に向かっても火球を吐いてきた。

でも、さっきのように回避しか出来る行動がないという状況ではなくなり、俺はアローインプ式大弓に近づき、ゴールデンドラゴンに5本の矢を放つ。

 

「隙は小さいけど、今のうちに倒さないと砦が危ない…!」

 

これで合わせて10本ものはがねの矢が刺さり、ゴールデンドラゴンは瀕死になったのかその場に倒れ込む。

だが、この先頭のゴールデンドラゴンは他の個体よりも大きいからなのか生命力も非常に高いようで、まだ青い光にはならなかった。

 

「まだ倒れないのか…!でも、あと1発撃てば今度こそ!」

 

しかし、さらなる矢を撃とうとしている時、アローインプ式大弓がある俺のところに、10体のブラックチャックが棍棒で殴りかかって来た。

 

「ビルダーめ、これ以上は撃たせないぞ!」

 

「人間どもが作った弱々しい兵器なんて、オレたちが全部叩き壊してやる!」

 

ゆきのへが抑えきれなかった4体と、さっきまでルミーラと戦っていた6体がアローインプ式大弓を使う俺を止めに来たみたいだな。

だが、メタリックハンマーを持ったゆきのへがブラックチャックを抑えきれないというのは、何かあったのかもしれない。

そう思ってゆきのへの方を見ると、さっきまで魔物の大軍の真ん中辺りにいたブラバニクイーンたちが、ゆきのへに襲いかかっているのが見えた。

 

「ゆきのへはブラバニクイーンと戦っているのか…あいつはかなりの強敵だから、囲まれると危険だな」

 

ゆきのへは8体のブラックチャックを倒した時にブラバニクイーンの軍勢に襲われたようで、彼の元にはブラックチャックは残っていなかった。

だが、16体ものブラバニクイーンを必死に食い止めようとしている状態であり、より危険な状態になっているのは間違いない。

ブラバニクイーンの突進は高速かつ高威力であり、ブラックチャックと比べると危険度がかなり高い。

ゆきのへの援護や先頭のゴールデンドラゴンの討伐…しなければいけないことはたくさんあるが、俺はまずは目の前のブラックチャックを倒さなければいけない。

 

「こいつらを倒して、みんなを援護しにいかないとまずいな…」

 

ブラックチャックに当たらないようにか、ゴールデンドラゴンは俺のほうに火球を吐かなくなっている。

だが、それはルミーラが集中攻撃を受けているということでもあり、安心することは出来ない。

早く救援に行こうと、俺はブラックチャックの棍棒をおうじゃのけんで弾き落とし、体勢を立て直す前にビルダーハンマーで頭を叩き潰していく。

両腕を使ったものの、竜王を超える力を持つ闇の戦士の攻撃を受け止めたことのある俺にとっては、ブラックチャックの棍棒を弾き落とすのはそこまで難しくなかった。

また、棍棒を叩き落とすだけでなく、背後に回って頭から斬りつけるという攻撃でも、ブラックチャックの数を減らしていく。

 

「闇の戦士様に匹敵する力を持つビルダー…ここまでの力とは…!」

 

「でも、お前たちはここで滅びる運命なんだ!」

 

ブラックチャックは残り4体になったが、奴らはまだ俺を倒そうと殴りかかってくる。

だが、このままいけば倒すのにそんなに時間はかからないだろう。

しかし、ここで俺の攻撃を阻害し、ゆきのへたちの戦況をさらに悪化させる事が起きてしまう。

 

「ビルダーめ!無駄な抵抗はやめて、大人しく殺されるがいいさ」

 

「ハゲた男も種族の裏切り者も、ここで撃ち抜いてしまえ!」

 

魔物の大軍の後方にいたアローインプも砦にかなり近づき、弓で俺たちを狙い始めたのだ。

俺は相手しているのが4体のブラックチャックだけであり、弓を使う敵とは何度も戦ったことがあるので、避けるのは容易であり、サブマシンガンでアローインプたちを撃ち抜くことが出来そうだ。

だが、強敵であるゴールデンドラゴンを相手にしているルミーラは、避け続けるのが難しいかもしれない。

さらに、大量のブラバニクイーンを相手にしているゆきのへにとっては、非常に危機的な状況だ。

ゆきのへは昔、ハゲと言った魔物に怒って強力な一撃を叩き込んだことがあったが、今はそんなことをする余裕はまったくない。

二人とも危険な状況ではあるが、特にゆきのへが危ないな。

 

「このままだとゆきのへが危ないな…何とかあの状況から抜け出させないと」

 

俺はブラックチャックたちと距離を取り、矢を避けながらアローインプたちをサブマシンガンで撃ち抜きながら、まずはゆきのへを何とか助け出せないか考える。

ゆきのへはブラバニクイーンの突進とアローインプの矢を避け続けて、体力の限界になっているようだった。

俺はゆきのへを狙っているアローインプを優先的に倒しているが、それでも16体のブラバニクイーンを何とかしない限りゆきのへは危機的状況のままだ。

 

「ブラバニクイーンたちを引き寄せて、飛び出し式トゲわなで突き刺すか」

 

ブラバニクイーンを倒すには、飛び出し式トゲわなを使うしかないだろう。

今までも、飛び出し式トゲわなでブラバニクイーンを突き刺したことがある。

だが、ゆきのへはブラバニクイーンに完全に包囲されているため、誘導のために砦の近くに向かうことすら出来ない。

 

「サブマシンガンで一体を倒せば、残りの奴らに包囲されるまでのわずかな間に砦に走って来れそうだな」

 

でも、ブラバニクイーンを1匹サブマシンガンで撃ち殺せば、その隙にゆきのへを砦の近くまで走らせることは出来るだろう。

ブラバニクイーンは生命力もそれなりにあるが、サブマシンガンで連射すれば倒せるはずだ。

俺はアローインプたちの弓や、俺を追いかけてくるブラックチャックたちの棍棒を避けながら、力を溜めてゆきのへに突進しようとしているブラバニクイーンにサブマシンガンを向ける。

そして、10発以上のはがねの弾丸を、奴の頭に向かって撃ち続けた。

 

「助かったぞ、雄也…」

 

突進しようとしていたブラバニクイーンが倒されたのを見て、ゆきのへはそう言う。

だが、俺はそれを遮って早く砦に向かって走ってくれと叫んだ。

飛び出し式トゲわなと言ってしまうと、どんな仕掛けがあるのか魔物たちに気づかれて、回避されてしまうからな。

 

「話は後でだ、砦に向かって走ってくれ!」

 

1体倒したとは言え、まだ15体のブラバニクイーンが残っているので、またすぐに包囲されてしまう。

今はブラバニクイーンたちも急に仲間が射殺されたことに驚いているので、チャンスは今しかない。

ゆきのへは突然の俺の声に戸惑いそうになっていたが、俺が何をしようとしているのか分かったのか、一直線に砦に向かって走ってくる。

 

「あのハゲ男を逃がすな!撃ちまくって追い詰めろ!」

 

「何をするつもりかは分からんが、お前たち人間に勝機はないぞ!」

 

アローインプたちも、砦に向かったゆきのへに向かって多くの矢を放っていく。

ゆきのへはブラバニクイーンを食い止めるのに体力を使っているので、奴らの矢を避けきれないということも考えられるので、俺はサブマシンガンでゆきのへを狙っているアローインプを次々に撃ち抜き、数を減らしていった。

ゆきのへの後ろにはブラバニクイーンが走ってきており、誘導も成功している。

ゆきのへが砦の前までたどり着くと、彼はブラバニクイーンを飛び出し式トゲわなが刺さる位置に誘導していった。

 

「ゆきのへは分かってくれたみたいだな。スイッチを踏んで、魔物たちをトゲに突き刺してやるぜ」

 

俺たちは今までも魔物を砦の近くに誘導して、飛び出し式トゲわなで突き刺すという作戦を使ってきているので、ゆきのへも今回もその作戦を使うと分かったのかもしれない。

飛び出し式トゲわなで4体のブラックチャックたちも倒そうと思っているので、ゆきのへが来たのを見ると俺は奴らを誘導しながらスイッチに向かう。

そして、ブラバニクイーンとブラックチャックたちがみんなトゲが飛び出す場所に来た瞬間、俺はスイッチを思い切り踏んだ。

 

ゆきのへに向かって突進しようとしていたブラバニクイーンも、俺に棍棒を叩きつけようとしていたブラックチャックも、一斉に体を貫かれて、動きを止める。

そして、さっきまでの俺との交戦でダメージを受けていたブラックチャックは倒れ、ブラバニクイーンたちもかなりのダメージを受けたようだった。

 

「うまくいったな、今のうちに出来るだけ数を減らすぞ!」

 

「ああ、お前さんに急に走れって言われた時は驚いたが、この前の襲撃の時も使っていたんで、ウサギどもを倒すために罠を使うんじゃねえかと思ってな」

 

俺とゆきのへは、怯んでいるブラバニクイーンたちにとどめを刺していく。

ゆきのへは危機的状況を脱したし、飛び出し式トゲわなを使おうとしているのが伝わって本当によかったぜ。

ブラバニクイーンたちが起き上がった時には、奴らは残り7体になっていた。

まだ魔物の軍勢の中には強力な魔物が多いが、何とかしてこの砦を守り抜かないとな。


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