ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode119 終末の気配(後編)

俺は岩山の城の通路の奥にある階段を降りて地下に行くと、見張りの魔物がいるだろうと思ってまずまわりを確認した。

だが、見回りをしている魔物は全くおらず、通路も広い一本道になっている。

通路の奥も見てみると、ラダトーム城やサンデルジュ砦よりも広そうな大広間があり、そこに魔物たちが集まっているのが分かった。

 

「地下の大広間か…あそこで魔物たちは何をしているんだ?」

 

魔物たちが何をしているのかは遠くからでは分からないので、大広間の近くまで行く必要がありそうだな。

大広間に近づくにつれてだんだんおぞましい気配が強くなっていくが、俺は恐れずに先に進んで行こうとする。

その途中、見張りの魔物はやはりいないのだが、俺は警戒を緩めずに歩いていった。

暗くて不気味な場所だし、罠が仕掛けられている可能性も考えられるからな。

でも、罠などは見つからず、俺は魔物たちが集まっている大広間の近くまで無事にたどり着くことが出来た。

 

「この距離なら中の様子もよく見えそうだな。奴らに見つかったら大変だし、ここから覗くか」

 

これ以上近づくと中にいる魔物に見つかる可能性があるので、俺はその位置から大広間の中を覗いて、奴らが何をしているのか突き止めようとする。

もし現時点で阻止できる計画ならば、世界が再び闇に包まれないように必ず止めないといけないな。

 

さっそく覗くと、大広間の中で数百体の魔物たちが魔法を唱えているような格好をしている、不思議な光景が広がっていた。

中にはさっき俺が尾行していたかげのきしたちもいたが、奴らも他の魔物たちと同じように、一心に魔法を唱えているように見えた。

だが、魔物たちは5日前からここに集まっているはずなので、呪文を唱えているのなら既に発動しているはずだ。

ドラクエ世界での最強呪文であるマダンテであっても、そんなに発動に時間はかからないからな。

 

「何か、魔物たちが呪文を唱えているみたいに見えるな…?でも、魔物の不穏な動きは5日前からあるんだし、呪文を唱えているのならとっくに発動しているはずだな」

 

呪文を唱えていないのであれば何をしているのだろうかと思い、俺は大広間の奥の方も覗き込んで見る。

すると、大広間の反対側にも通路があるのが見え、この岩山の城にはさらに奥があることも分かった。

 

「それに、この城にはまだ奥があるのか…分からないことだらけだな」

 

魔物の行動やさらに奥へと続く通路…気になることがたくさんあるがこれ以上近づくことは出来ないので、俺は今の場所で魔物の様子を観察し続けことにした。

 

そうしていると、呪文を唱えてはいないはずなのに、魔物たちが魔法を使って魔力を消費したかのように疲れている顔をしていることに気づいた。

集中しているのに疲れが顔に出ていると言うことは、魔力が残り少ない状態にまでなっているのだろう。

でも、呪文を使っていないのにそんなに大量の魔力を消費するなんて、魔物たちは一体何をしているんだ?

 

「呪文を唱えていないのに魔力を使うのか…まるで誰かに魔力を捧げているみたいだな」

 

魔物の様子を見続けていると、俺の頭の中にそんな考えも浮かんできた。

もしそうなら、闇の戦士が人類を滅ぼす力を得るために、魔物たちから魔力を吸収していることが考えられるな。

俺たちはサンデルジュの強力な魔物たちも倒して来ているので、このままでは自身も倒されてしまうと思ったのかもしれない。

でも、その予想では大広間より奥の通路があることや、ここにおぞましい闇の力が集まっていることへの説明がつかないのdr、恐らくは違うのだろうな。

 

「いろいろな予想は思いつくけど、この場では確かめようがないか」

 

俺はそれ以外の仮説も考えてみたが、魔物たちは集中していて会話をしておらず、確かめることは出来なかった。

詳しい計画は分からなくても魔物たちが怪しいことをしているのが分かったので十分な収穫ではあるが、俺はどうしても気になり、何とか確かめられないかと思う。

魔物の数が多すぎてこの場で阻止することは出来ないので、もし計画が成功してしまった場合、俺たちはどのくらい危険な状況に陥るのかも知っておきたいからな。

 

「もしかしたら、地上にいる監視の魔物たちなら話すかもしれないな」

 

そんなことを考えていると、俺はさっき城の1階で侵入者を監視していたしにがみのきしやだいまどうなどが、何かの話をしていたことを思い出す。

監視の魔物はかなりの数がいるので、侵入者がいてもすぐに見つけられると思っているだろうから、話しをしていても大丈夫だと思っているのだろうな。

奴らは計画を直接実行している訳ではないが、計画について何か知っている可能性はありそうだ。

なので、奴らの会話を盗み聞きすれば魔物たちが何を行っているのか確かめられるかもしれないな。

 

「計画について話すかは分からないけど、あいつらの会話を盗み聞きしてみるか」

 

俺は多くの魔物の拠点への潜入や、尾行を成功させてきているので、盗み聞きも多分成功するだろう。

俺はさっそく監視の魔物がいる場所に向かおうと、大広間の魔物たちに気づかれないよう音を立てずに通路を戻っていき、階段から地上へ登っていった。

地上に戻ってくると、俺はさっき監視の魔物たちを見たところへ向かって静かに歩いていく。

途中大きな目玉を持つ魔物であるコスモアイにも遭遇するが、奴らは喋れないので、見つからないようにしながらしにがみのきしなどがいた場所に向かっていった。

 

そして、コスモアイたちに見つからずに、しにがみのきしとだいまどうが1体ずついる場所にたどり着くと、俺は壁の後ろに隠れて奴らの会話を聞き始める。

 

「魔物たちの計画について話すかは分からないけど、待ってみるか」

 

奴らもさっそく会話を始めたが、最初にしにがみのきしは人間の発展を終わらせたいなど、他の魔物と同じようなことを言っていた。

だが、それを聞いてだいまどうが、今回の恐ろしい計画に関する話を始めた。

 

「人間がラダトームの復興を始めてからもう随分経っている…早く再び死と呪いの大地に戻したいところだな」

 

「大丈夫です。我らが滅ぼせなくとも、もうすぐ全てを闇に飲み込む者が現れるのだから、人類に未来はないでしょう」

 

その全てを闇に飲み込む者を目覚めさせようと、魔物たちは魔力を捧げていたのか。

そう言えばムツヘタは魔物たちが何かを目覚めさせようとしているのではないか?と言っていたが、その予想が当たっていたみたいだな。

魔物の動きについても予測できるとは、さすがは予言者だな。

だが、その全てを闇に飲み込む者って、一体どんな奴なんだろうな?

俺がそう思っていると、しにがみのきしたちは計画について詳しいことを言い出す。

 

「志半ばで散った竜王様や我らの仲間の魂に魔力を捧げ、一つの強大な闇の存在にして蘇らせる計画だったか」

 

「はい。あらゆる魔物の力を持つであろうその者なら、人間に勝ち目は全くないと言っていいでしょう。既にその者のための玉座も出来ているので、もうすぐ計画は達成されるはずです」

 

大広間のさらに奥の空間は、その者のための玉座が作られている場所だったのか。

それにしても、竜王や倒された魔物たちの魂を集め、魔力を捧げて一つの強大な魔物として蘇らせるか…そんなことが出来るのか?と思ったが、ドラクエ3のラスボス、ゾーマは死者の怨念の集合体であるという話もあったので、不可能ではないのかもしれない。

それに、もし本当にあらゆる魔物の魂が集まって出来た者が現れるとなれば、確かに今の俺にでも勝ち目はなさそうだ。

炎と氷の2属性を融合させ、全てを消滅させる威力を持つメドローアという呪文があるが、その最強の魔物は2属性どころか、全ての属性を融合させて放つかもしれないからな。

それに、死んだ魔物たちの怨念の力だけでなく、あの数百体の魔物たちの魔力も加わるので、今アレフガルドに生きている全ての人々の力を持ってしても勝てるか分からないほどだ。

まあ、だからこそ、魔力で竜王だけでなく、たくさんの魔物の魂も集めて、1つの最強の存在にしようと思ったんだろうな。

 

「現時点では阻止出来ないけど、闇の戦士を今度こそ倒して、必ず止めないといけないな」

 

大した計画ではないのではとも思っていたが、やはり恐ろしい計画だったようだ。

でも、集まっている数百体の魔物を全て倒すのは困難なので、計画を阻止するには、闇の戦士を倒してひかりのたまに完全な光を取り戻させるしかないだろう。

ひかりのたまが完全な光を取り戻せば、悪しき魔物は封印されるはずだからな。

 

「闇の戦士の捜索をより急ぐ必要があるし、戻ってムツヘタに話すか」

 

全てを闇に飲み込む者がいつ現れるかは分からないが、なるべく急いだほうがいいだろう。

そう思って俺はそこ魔物たちの話を聞き終えて、ラダトームへと戻ろうとした。

 

でも、早く戻りたいが魔物に見つかりたくはないので、行きと同じように慎重に歩いていき、45分くらいかけて岩山の城の出口へと向かう。

岩山の城から出た後は仮拠点にある青色の旅のとびらからラダトーム城のある地域へと移動していき、それから15分ほど歩いてラダトーム城へたどり着いた。

出発した時にはまだ朝だったが、戻ってきた時にはもう昼頃になっていた。

 

俺はラダトーム城に戻ってくると、さっそくムツヘタに調べたことを報告に行こうと、占いの間の扉を開けて中に入っていく。

すると、ムツヘタは俺が帰ってくるのが遅くて心配していたようで、無事に戻ってきて良かったと安心したような声を出した。

 

「そなたの帰りが遅くて少し心配しておったが、大丈夫だったようじゃな。それで、魔物たちは集まって何をしていたのじゃ?」

 

俺も岩山の城では何回か見つかりそうになったので、無事に戻って来れて良かったぜ。

ムツヘタは安心したようなことを言った後、魔物たちが何をしていたかを聞いてくる。

 

「それを調べるのに時間がかかっていたんだけど、あそこに集まっている魔物たちは死んだ竜王やその手下の魔物たちの魂に魔力を捧げ、一つの強大な存在として蘇らせようとしているみたいなんだ」

 

俺はムツヘタに闇の戦士の居場所の捜索を急ぐように頼まないといけないので、さっそく魔物たちが行っている計画について教えていった。

 

「奴らは何かを目覚めさせようとしているのではと思っていたのじゃが、まさか竜王や魔物たちの魂が融合した存在だとは。もしその存在が現れてしまったら、何が起こってしまうのじゃ?」

 

「強力な武器を持っている今の俺でも倒せないほどの強さになるだろうから、間違いなく全ての拠点が破壊されて、いずれはアレフガルド全域が死の大地になるだろうな」

 

ムツヘタが質問をしてきたので、俺はそう答える。

その最強の存在の中には竜王の魂が含まれており、竜王の目的は人類の絶滅ではなく人類から力を奪うことなので、人類の絶滅は免れるかもしれないが、美味しい物を食べたり、物を作ったり、整備された家に住んだりなどの人間らしい生活は、永久に送れなくなってしまうだろう。

そのことを話した後、俺は闇の戦士の居場所を早く見つけないといけないと伝える。

 

「防ぐ方法は、その最強の存在が現れる前に闇の戦士を倒して、ひかりのたまに完全な光を取り戻させることしかない。そうすれば、ひかりのたまの力で魔物たちは封印されて、魔力を捧げる者はいなくなる。捜索もかなり進んでいるだろうけど、なるべく急いでくれ」

 

「分かったのじゃ。世界が再び危機に陥るのならば、確かにその前に止めねばならぬな。今日からは夜も寝ずに闇の戦士の捜索を行うとしよう」

 

俺がなるべく闇の戦士の捜索を急いでくれと言うと、ムツヘタはそう話す。

老人であるムツヘタが一晩中起きて作業を行うのは大変だろうが、世界が再び闇に包まれるかもしれないと聞いて、がんばらなければと思ったようだ。

 

「ああ、頼んだぞ。俺も戦いの準備をするから、居場所が分かったら教えてくれ」

 

竜王を倒してからずっと、早く闇の戦士を倒さないといけないなと思っていたが、ついに決戦の時が近づいて来ているようだな。

俺はムツヘタにそう言った後、白花の秘薬を作るなどして戦いの準備を進めようと、サンデルジュの砦に戻っていった。


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