ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode118 終末の気配(前編)

白花の秘薬を作ってから3日間、魔物が襲撃してくることはなかったが、俺は砦の付近に生息している魔物に何か動きがないか毎日観察していた。

すると、やはりサンデルジュの魔物もラダトームの西の地域に移動しており、ムツヘタの言う通り何か恐ろしいことを計画しているのは間違いないようだった。

魔物の数が減ったことで砦の外の探索がしやすくなっているが、放っておく訳にはいかない。

俺は早く調べに行きたいと思っているが、魔物が集まっている場所の特定も闇の戦士の居場所探しほどではないが大変なようで、俺が思っているより時間がかかっていた。

 

だが、白花の秘薬を作った4日後、サンデルジュに来てから11日目の朝、ムツヘタの活動に進展があったらしく、城の兵士であるドロルのチョビがサンデルジュの砦に報告に来ていた。

 

「久しぶりデスね、雄也ドロル!ムツヘタにあなたヲ呼んデ来ルようニ言わレテ、ここニ来まシタ」

 

数が減っているとはいえサンデルジュには強力な魔物がたくさんいるので、ドロルの姿に戻ることが出来るチョビに俺を呼びに行かせたようだ。

チョビはルミーラと違って魔物の姿のまま拠点で行動したこともないので、他の魔物たちに裏切り者だとも思われていないだろう。

それにしても、ムツヘタの方からわざわざ俺を呼びに来ると言うことは、闇の戦士の捜索か魔物が集まっている場所の特定に大きな進展があったようだな。

 

「もしかして、ムツヘタが調べていることについて何か進展があったのか?」

 

「詳しくハ分かりマセンが、ドコに魔物が集まっテいるノカ特定出来タと聞いテいマス」

 

俺がそのことについて聞いてみると、チョビはそう言ってくる。

闇の戦士の居場所についてはまだのようだが、魔物たちが集まっている場所は特定することが出来たのか。

魔物が行っている計画を止められるかは分からないが、調べに行ったほうが良さそうだな。

 

「時間はかかったけど、確かに大きな進展だな。ムツヘタに詳しい場所を聞いて、魔物が何をしているか調べて来るぜ」

 

チョビは詳しいことは知らないと言っているので、魔物が集まっている場所はムツヘタ本人に聞かないといけないだろう。

俺はそう話すと、さっそくムツヘタと話すためにラダトームに向かおうとする。

放っておけば何が起こるか分からないし、調べるのはなるべく早いほうがいいからな。

 

「気ヲ付けテくだサイね、雄也ドロル!」

 

俺が砦から出て旅のとびらのところへ向かっていると、チョビはそう言って俺を見送る。

チョビもすぐにラダトームに戻るのかと思っていたが、サンデルジュまで歩いて疲れているようで、砦の中で休んでいた。

しばらくすると、ピリンたちがチョビに気づいて話しかけているところも見かけられた。

俺はそんなみんなの様子も見ながらサンデルジュの草原を歩いていき、10分ほどでラダトームに繋がる旅のとびらにたどり着いた。

 

旅のとびらを抜けてラダトーム城に着くと、俺はムツヘタと話すために占いの間に向かっていく。

途中で兵士のラスタンに出会ったが、彼もムツヘタが俺を呼んでいると言ってきた。

 

「また会ったな、雄也!チョビから聞いていると思うが、ムツヘタから大事な話があるらしいぞ」

 

「ああ、これから占いの間に話を聞きに行こうと思ってる」

 

ムツヘタが教えたのだろうが、もうチョビだけでなくラダトーム城のみんなもそのことを知っているのか。

俺はラスタンにそう言って城の中を歩いていき、占いの間の所に来ると中に入ってムツヘタに話しかける。

魔物が集まっている場所を特定できても、まだ闇の戦士の居場所を探さなければいけないので、彼は今もシャナク魔法台を使っていた。

 

「ムツヘタ、チョビから聞いたぞ。魔物たちが集まっている場所が特定できたんだってな」

 

「雄也よ、さっそく来てくれたか。時間がかかってすまなかったが、今日の朝チョビに伝えた通り多数の魔物の反応がある場所を突き止めたのじゃ」

 

俺が話しかけると、ムツヘタは一旦作業を中断して話し始める。

確かに俺が思っているより時間がかかっていたが、まだ恐ろしいことは起きていないので大丈夫だろう。

だが、今は大丈夫でもこれから何が起こるか分からないので、詳しい場所を聞いて調べに行こうとする。

 

「それなら、さっそく詳しい場所を教えてくれ。今日調べに言って来るぜ」

 

「場所はラダトームの仮拠点の南東にある岩山の中じゃ。おそらくは、岩山を掘って巨大な空間を作り、その中に無数の魔物がいるのじゃろう」

 

ラダトームの仮拠点の南西には浄化のふんすいが置いてある池があるので行ったことがあるが、南東には岩山しかないので行ったことがなかったな。

その岩山はかなりの大きさなので、巨大な空間を作ることも出来るだろう。

俺がそんなことを思っていると、ムツヘタは話を続ける。

 

「岩山のどこかに入り口があるはずじゃから、そこから入るといい」

 

入り口の場所はまだ特定できていないみたいだが、そのくらいならすぐに見つけらそうだ。

仮拠点に繋がる旅のとびらまでは15分くらいなので、そんなに時間もかからないだろう。

でも、これで魔物が集まっている場所と行き方は分かったが、どうして魔物たちはわざわざ岩山を掘って空間を作ったのだろうか?

 

「ありがとうな、これで調べに行けるぜ。でも、何で魔物たちは岩山を掘って空間を作ったんだ?」

 

そのことについて聞くと、ムツヘタは深刻そうな顔になった。

そして、魔物たちが集まっている場所から闇の戦士のようにおぞましい闇の力が感じられると言う。

 

「それはワシにも分からぬのじゃ。じゃが、魔物たちが集まっている場所から竜王や闇の戦士と同じか、それ以上強い闇の力が感じられるのじゃ」

 

今日ムツヘタが魔物たちの居場所を特定出来たのは、その闇の力が強くなったからなのかもしれないな。

俺はムツヘタと違って闇の力を感じることが出来ないので分からないが、多くの魔物が集まっているからではないのだろうか?

 

「それって、単純に魔物の数が多いからじゃないのか?」

 

「いや、いくら普通の魔物が集まってもあれほどおぞましい闇の力を放つことは無い。これはワシの想像じゃが、たくさんの魔物が集まって何かとてつもなく恐ろしい者を呼び起こそうとしている可能性があるのじゃ」

 

俺がムツヘタに魔物の数が多いからではと言うと彼は首を振り、その仮説を言い出した。

確かにそんな強力な魔物が現れれば人類は再び絶望に叩き込まれるだろうし、この前のムツヘタの予言は当たることになる。

でも、それほどまでに強力な魔物とは、一体どんな奴なのだろうか?

もしムツヘタの仮説が当たっていたら、そのことについても調べて来ないとな。

 

「分かった。もし本当にそうだったら、すぐに伝えるぜ」

 

俺はムツヘタの仮説を聞き終えると、さっそく魔物たちが集まっている場所に向かおうとする。

すると、ムツヘタはいつも以上に心配そうな声で俺を見送った。

 

「何が起きても大丈夫なように、気をつけるのじゃぞ…」

 

「ああ、分かってる」

 

そんなムツヘタの声を聞いて、俺はいつも以上に気をつけなければいけないと思いながら、ラダトームの仮拠点に繋がる青色の旅のとびらへと歩いて行った。

 

今は町の外をうろついている魔物の数は少ないが、それでも人間を警戒しているようなので、俺はいつものように体勢を下げながら進んでいく。

ラダトーム城周辺にはスライムやブラウニー、体の小さいかげのきしといった弱い魔物しか生息していないが、戦っていると時間がかかるからな。

奴らはそんなに目がいい訳ではないので離れた場所にいる俺を見つけることは出来ないだろうが、一応慎重に進んで行った。

そうやって15分ほど歩き続けて、俺は敵に見つからずに仮拠点に繋がる旅のとびらに着くことが出来た。

 

「ラダトームの平原の魔物には見つからずに済んだな。まずはここから仮拠点に行って、魔物が集まっている南東の岩山を目指すか」

 

ここから仮拠点のあるラダトームの西の地域に行けるはずなので、俺はさっそく中に入っていく。

一瞬目の前が真っ白になってから、旅のとびらを抜けると、仮拠点のレンガのような床の上に出た。

ラダトームの仮拠点はもう20日間くらい誰もいない状態だが、魔物に壊されておらず、わらベットが置かれている部屋も残っていた。

 

「魔物の活動が激しくなっているけど、人間がいない仮拠点は攻撃されなかったのか。それはともかく、魔物が集まっている空間の入り口を目指さないとな」

 

でも、ラダトーム城やサンデルジュ砦がある今はもう使わないだろうし、残っていても壊されていても気にしなくていいだろう。

俺はすぐに仮拠点を後にして、ムツヘタの言っていた南東の岩山に向かって行った。

仮拠点から岩山まではかなり近いので、5分ほどで着くことが出来るだろう。

 

するとその途中、元からこの地域に生息していたと思われるかげのきし数体が、岩山に向かって歩いているのが見えた。

 

「あのかげのきしたち、もしかしたら岩山の魔物が集まっている空間を目指しているのか?」

 

普通の魔物なら立ち止まっていたり人間を警戒して見まわっていたりするので、岩山を目指して歩くなんてことはしないだろう。

あいつらを尾行すれば、岩山の空間の入り口が分かるかもしれないな。

 

「自分で探したら時間がかかるだろうし、奴らを尾行して入り口を目指すか」

 

魔物を尾行なんて1度もしたことがないが、音を立てないように歩けば見つかることはないだろう。

俺はこっそりかげのきしの後ろへとまわり、気づかれないように背後をつけていった。

そうしていると、話すことが出来るかげのきしたちは、少し立ち止まって話を始める。

岩山の空間の中で行われていることについて何か分かるかもしれないので、俺は耳をすませて奴らの会話を聞こうとした。

 

「人間はオレたちの仲間だけでなく竜王様も殺しやがったが、これで奴らも終わりだな」

 

「空の忌々しい光も永久に消えるはず」

 

「竜王様が亡くなられた後、勇者と言われていた者がオレたちの味方になってくれてよかった」

 

「人間の愚かな希望の終焉は近いです、早く向いましょう」

 

かげのきしたちはそんな話をした後、再び岩山に向かって歩き始めていった。

あいつらの会話から考えると、やはり世界を再び破滅させるような計画をしているのは間違いないようだな。

 

「やっぱりあいつら、人間を滅ぼす計画をしているみたいだな。気になることは他にもあるし、尾行を続けるか」

 

それは分かったが、それはどのような計画なのか、現時点で阻止出来るのかも調べなければいけないので、俺は奴らの尾行を続ける。

奴らはその後も立ち止まって会話することがあったが、魔物たちの計画に関する詳しい情報は得ることが出来なかった。

そして、10分くらい気づかれないように尾行を続けると、かげのきしたちは岩山に掘られた巨大な洞窟のような場所に入って行く。

それは洞窟と言うより地下に隠された城であり、壁は全て竜王の城と同じ青黒い城のカベで覆われていた。

 

「ここに魔物たちが集まっているのか…思っていたよりも不気味なところだな」

 

ムツヘタが闇の戦士と同じくらいの闇の力を感じると言っていたが、近づくと彼のような特別な力がなくてもおぞましい力を感じることが出来る。

それに、竜王の城にもついていた明かりがほとんどついておらず、中は真っ暗だった。

 

「何が起こるか分からないし、気をつけて進まないとな」

 

恐ろしい場所ではあるが魔物たちの計画を調べない訳にはいかないので、俺は気をつけながら岩山の城の中に入っていった。

すると、やはり中には侵入者を監視しているしにがみのきしやだいまどうが歩いているのが見えてくる。

奴らの動きは今まで何度も見てきているので視界に入らないことは難しくはないが、それだけではなく、初めて見る魔物であり、メーダやメーダロードの上位種であるコスモアイも城の中を見まわっていた。

 

「コスモアイもいるのか…やっぱりいつも以上に慎重に動かないといけないな」

 

コスモアイは大きな目玉を持つ魔物なので視界も広いので、見つからずに進むのは難しそうだ。

だが、怪光線なども使う強力な魔物であり、まわりの魔物も呼ばれるだろうから戦いを挑むのは得策ではないだろう。

なので、俺はコスモアイが近づいて来ると壁に隠れて視界から外れると、奴が戻ってくる前に音を立てないように奥へと進んでいった。

 

「コスモアイには見つからずに済んだけど、これからも警戒して進まないとな」

 

その後も何体もコスモアイが現れて、俺はその度に壁にかくれてやり過ごした後、戻ってくる前に一気に進んで行く。

しにがみのきしやだいまどうが現れても同じ方法でやり過ごしていき、どんどん城の探索を進めていく。

だが、この岩山の城はかなり複雑に作られており、道を間違えて引き返さなければいけないこともあった。

 

「せっかく魔物を避けても、複雑な通路だからなかなか先に進めないな」

 

引き返す時にも魔物を避けて進む必要があり、今までの魔物の拠点への潜入の中で一番緊張するな。

魔物を避けながら正しい道を探して行くのには時間もかかり、気づくと長い時間岩山の城の中を探索し続けていた。

 

だが、2時間近く探索を続けることで、何とか俺は城の通路の一番奥だと思われる場所に着くことが出来た。

そこには地下に降りる階段があり、下からは竜王の間と同じくらいおぞましい気配を感じる。

 

「地下に降りる階段か…この先に魔物たちが集まっているんだろうな」

 

何があるかは分からないが、この先で魔物たちが人間たちを破滅に追いやる計画を行っていることはは確実だろう。

ムツヘタも俺を心配しているだろうし早く調べたいと思い、俺は見張りの魔物がいないか確かめてから、岩山の城の地下へと降りていった。

 


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