ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode115 鍛冶屋の伝承

サンデルジュに来て6日目の朝、俺は起きるといつも通り外を見ようと部屋から出ていく。

昨日も戦いがあったので、今まで以上に強力な魔物が現れるようになったかもしれないからな。

でも、外を眺めに歩いている途中に、ゆきのへが俺に話しかけてきた。

 

「なあ、雄也。これからお前さんに話したいことがあるんだが、時間はあるか?」

 

昨日ゆきのへはメタリックハンマーを見た後、もう一つ話したいことがあるようだったな。

魔物の様子を見に行こうとしていた途中だったが、すぐに奴らが襲って来る訳でもないので、俺はゆきのへの話を聞くことにする。

 

「もちろん時間はあるぞ。昨日言おうとしていたことか?」

 

「ああ、ヘイザンの考えた武器で配下の魔物を倒しやすくはなったが、親玉である闇の戦士を倒すにはもっと強い武器が必要だと思うんだ」

 

確かに正気を取り戻した闇の戦士は竜王を遥かに凌ぐ強さであろうから、おうじゃのけんとメタルのけんの組み合わせでも勝てる可能性は低そうだな。

それに、ヘイザンの師匠として、弟子に負けてはいられないという気持ちもありそうだ。

とても固いメタルゼリー製を超える武器とは、どんなものなのだろうか?

 

「あれより強い武器って、どんなものなんだ?」

 

俺がそう聞くと、ゆきのへは彼の家系に代々伝わる最強のハンマーがあると話し始める。

 

「数百年前から先祖が代々語り継いできた最強の武器でな、ビルダーハンマーというらしいんだ」

 

伝説の鍛冶屋の子孫が伝えてきた武器というのならば、確かにすごく強そうだな。

おうじゃのけんと同じくらいか、それを超える強さを持っていることは間違いないだろう。

だが、どうしてまだビルダーである俺がいない時だったのに、ビルダーハンマーという名前を付けたのだろうか?

 

「ビルダーハンマーか···数百年前の人が考えた武器なのにどうしてビルダーってついてるんだ?」

 

そのことについて聞くと、ゆきのへは数百年前から人々は世界を建て直す者であるビルダーの出現を待ちわびていたと言った。

 

「お前さんは聞いたことないかもしれないが、実はビルダーの伝説というのは数百年前から語り継がれていたんだ」

 

アレフガルドを復興させている間に出会った人々の多くがビルダーのことを知っていたけど、さすがに数百年前からビルダーの伝説があったとは思っていなかったせ。

そんなことを考えている間に、ゆきのへはビルダーハンマーの名前について話す。

 

「それで、ワシの先祖はビルダーが竜王や世界を裏切った勇者を倒しに行く時のために、最強のハンマーを考えた。その時に、伝説の勇者ロトが世界を救うのに使った剣はロトのつるぎと言われているのだから、ビルダーが世界を救うために使う武器はビルダーハンマーという名前がいいと考えたらしいんだ」

 

ゆきのへの先祖は、ビルダーハンマーがロトのつるぎのような世界を救う武器になってほしいと願っていたのか。

それなら、世界に平和を取り戻す最後の戦いにふさわしい武器だと言えそうだな。

しかし、裏切り勇者だけでなく竜王を倒すための武器でもあったようなのに、どうしてゆきのへは今まで教えてくれなかったんだ?

 

「ビルダーハンマーという名前の意味は分かったけど、どうして今まで教えてくれなかったんだ?」

 

すると、ゆきのへはビルダーハンマーの作り方がサンデルジュに隠されているからだと言ってきた。

 

「親父からビルダーハンマーの作り方が書かれた書物はサンデルジュに隠されていると教えられてな。アレフガルドにそんな場所があると思っていなかったワシは、その話を信じていなかったんだ」

 

サンデルジュは人間も魔物もいなかった場所なので、重要な物を隠すには最適だったのだろう。

ゆきのへはサンデルジュという地名に聞き覚えがあるみたいだったが、こういう理由だったのか。

俺も最初ムツヘタからサンデルジュの話を聞いた時は驚いたので、ゆきのへが信じられなかったのも無理はなさそうだ。

 

「でも、サンデルジュの地に来たことで、先祖の話が本当だったって分かったんだな」

 

「ああ。だからお前さんに最高の武器で挑んでほしいと思って、ビルダーハンマーの話をしたんだ」

 

俺がそう言うと、ゆきのへはうなずいてから話す。

ビルダーハンマーの作り方がサンデルジュのどこに隠されているのか分からないけど、俺も準備は万全にして戦いに行きたいのでそれが分かったらすぐに探しに行くか。

俺は詳しい隠し場所が分からないかと、ゆきのへに聞いてみる。

 

「それならさっそく作り方の書かれた書物を探しに行って来ようと思うんだけど、サンデルジュのどの辺りに隠されているのか分かるか?」

 

「親父の話では、サンデルジュの峡谷にある洞窟の中に隠されていると聞いたぜ」

 

峡谷か···ムツヘタの話ではそこに闇の戦士がいると言っていたな。

配下の魔物も生息している可能性が高いが、いつものように隠れて進めば安全だろう。

闇の戦士との戦いまではまだ時間があるだろうが、配下の魔物との戦いにも役立つだろうからさっそく俺は探しに行こうとする。

 

「分かった。峡谷に行くのは初めてだけど、ビルダーハンマーの作り方が書かれた書物を探してくるぜ」

 

「ああ、書物を手に入れたらすぐにワシに見せてくれ」

 

俺はゆきのへとの話を終えると、峡谷に向かおうと砦の外に出ていく。

 

砦の外に出ると、俺はまず魔物の動きがどうなっているかを見てみた。

さっきはゆきのへに話しかけられて見ることが出来なかったからな。

すると、やはり魔物の活動も激しくなっており、人間が近くにいないか常に警戒しているように見えた。

 

「やっぱり魔物の動きも活発になってきているのか」

 

魔物の種類や数は変わっていないが、いつもより隠れて進むのは難しそうだな。

でも、ビルダーハンマーがあれば戦いの勝ち目は上がるはずなので、俺は慎重に動きながら峡谷へ向かっていく。

 

「いつもより慎重に動かないとすぐに見つかりそうだな」

 

見つかりそうになったら落ちている大きな石の裏に隠れて、奴らの視界から外れるようにする。

視界に入っていない時も、足音で気付かれないようにゆっくりと歩いていった。

そして、普通なら10分ほどで着く距離なのに、30分もかかってようやくサンデルジュの峡谷にたどり着くことが出来た。

 

「時間はかかったけど無事に着いたな。ここがサンデルジュの峡谷なのか」

 

峡谷は砦や森よりもさらに深いところにあり、少なくとも200メートルはある岩山に囲まれている。

そのため昼でもほとんど日が当たらず、とても暗くなっていた。

 

「気味が悪いけど、さっきよりも隠れて進みやすそうだな」

 

でも、その分草原よりも魔物に見つかりにくそうなので、俺はさっきより速く歩いていく。

峡谷にはブラバニクイーンという草原にもいる魔物も生息していたが、ダースドラゴンの上位種であるゴールデンドラゴンも見かけられた。

でも、やはり暗い場所では奴らも遠くが見えにくいらしく、俺は見つからずに進んでいくことが出来た。

 

「やっぱり魔物たちも、暗い場所では人間を見つけにくいようだな」

 

峡谷を探索していると、見たこともない鉱物が埋まっている鉱脈も見つかった。

その鉱物は非常に数が少ないが、オリハルコンよりも固く、透明で美しいものだった。

 

「ダイヤモンドみたいだけど、今は採掘出来なさそうだし使い道もないな」

 

俺も実物を見るのは初めてだが、恐らくはダイヤモンドの原石だろう。

でも、ダイヤモンドはとても固いが炭素で出来ているので、まほうの玉を使って採掘すれば燃え尽きてしまうだろうし、炉で武器に加工することも出来そうにない。

希少な鉱物だが採掘手段も使い道もないので、俺はダイヤモンドの鉱脈から離れて峡谷の探索を続けることにした。

 

「ダイヤモンドは手に入れてみたいけど、今は峡谷の探索を続けるか」

 

その後、俺は再び魔物から隠れながらサンデルジュの峡谷の奥へ進んでいく。

峡谷にはダイヤモンド以外の鉱物もたくさんあったが、今は集めずに探索を続けていく。

そして、しばらく進み峡谷に入って10分くらい歩き続けたところで、人が入った形跡のある洞窟を発見することが出来た。

 

「洞窟の中にカベかけ松明が置いてあるけど、ここがゆきのへの言っていた場所なのか?」

 

その洞窟にはいくつもカベかけ松明が置いてあり、明らかに人が入った痕跡だった。

サンデルジュの地に他に入った人がいるとは考えにくいので、ここがビルダーハンマーについて書かれた書物が眠っている洞窟なのだろう。

 

「結構深い洞窟だし、ここなら書物が魔物に見つかっていることもなさそうだな」

 

洞窟は荒らされていないので、魔物に書物が奪われている心配はなさそうだ。

なので、俺はさっそくビルダーハンマーについて書かれた書物を手に入れようと洞窟の中を調べていく。

中に魔物はいないのでいつもの普通の速さで歩くことができ、深い洞窟だがすぐに奥へ進むことが出来た。

 

「洞窟の中には魔物がいないから探索がしやすいな」

 

途中からはカベかけ松明がなくなったが、一本道なので迷うことはなかった。

10分くらい歩いて洞窟の最深部に着くと、そこに宝箱が置いてあるのが見えてきた。

恐らくその中にビルダーハンマーの作り方が書かれた書物が入っているだろうから、俺はその宝箱に近づいてふたを開ける。

開けてみると、宝箱の中には数百年前に書かれたと思われる古い紙が何枚か入っていた。

 

「これがビルダーハンマーについて書かれた書物か···砦に戻ったらゆきのへに見せないとな」

 

その紙には見たことのない形のハンマーが書かれており、恐らくこれがビルダーハンマーなのだろう。

俺は早くゆきのへに見せようと書物をポーチにしまって、洞窟から出ていった。

洞窟から出る時も魔物がいないか警戒して出ていき、慎重に歩いて砦へと歩いていく。

そして、45分くらい魔物に見つからないように歩いて、俺はゆきのへたちの待つサンデルジュの砦にたどり着くことが出来た。

 

サンデルジュの砦に戻ってくると、俺はさっそく書物を見せようとゆきのへを呼び出す。

 

「ゆきのへ、魔物がいて時間がかかったけど、ビルダーハンマーの作り方が書かれた書物を取って来たぞ」

俺の声を聞くと、ゆきのへはすぐに部屋の中から出てきて書物を見に来ようとした。

 

「やはり先祖の話は本当だったのか。雄也、さっそくワシにその書物を見せてくれ」

 

「ああ、これが手に入れてきた書物だぞ」

 

俺が書物を手渡すと、ゆきのへはすぐに作り方が書かれている部分を読み始める。

数百年前に書かれた紙なので一部ボロボロになっている部分もあったが、文字が読めないほどにはなっていなかった。

しばらく読み進めてビルダーハンマーの作り方が分かると、ゆきのへは俺に必要な素材を伝える。

 

「この書物によると、ビルダーハンマーを作るのには鉄のインゴット、はがねインゴット、オリハルコン、金の4種類の素材が必要らしいぞ」

 

「おうじゃのけんは6種類の素材を使ったのに、ビルダーハンマーは4種類でいいのか?」

 

その話を聞くと俺は最強のハンマーなのにそんなに少ない素材で作れるのか···?と思い、ビルダーの力を使って必要な素材を確かめることにする。

ビルダーハンマー···オリハルコン3個、鉄のインゴット1個、はがねインゴット1個、金1個 神鉄炉と金床

それでも、ゆきのへの言う通り4種類の素材だけで作れると出てきた。

もしかしたら、少ない素材で強い武器を作るというのも、鍛冶屋の技術なのかもしれないな。

 

「ワシも少しは驚いたが、先祖が少しでも作りやすいようにと思ったんだろうぜ」

 

ビルダーの魔法を使っている間に、俺の言った発言に対してゆきのへはそう答える。

最強の武器であり、なおかつ作りやすいハンマーを考えるなんて、本当にゆきのへの先祖はすごいな。

鉄のインゴットとはがねインゴットは今持っているし、オリハルコンと金もラダトームの大倉庫から取って来ればよさそうだな。

 

「それだったら、後はオリハルコンと金をラダトームの大倉庫から持って来れば作れるな」

 

ラダトームにならすぐに行けるし、今日中にビルダーハンマーを作ることが出来そうだ。

 

「今日はまだ時間があるし、これから取りに行ってくるぞ」

 

「分かった。戻って来てすぐに大変だが、頼んだぜ」

 

ゆきのへの言う通り大変だが、俺はビルダーハンマーを完成させるためオリハルコンと金を取りにラダトームに行こうとする。

ついでに、ムツヘタに闇の戦士の居場所探しに進展がなかったか聞くことにもした。

さっきのように魔物から隠れて15分ほど歩き続けて俺は旅のとびらにたどり着き、そこからラダトーム城へと入っていった。

 


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