ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode114 深森の軍勢

サンデルジュに来て5日目、俺は昨日作ったメタリックハンマーをゆきのへに渡しに行っていた。

渡すのは魔物との戦いの時でいいのだが、彼の弟子のヘイザンが思い付いた武器なので、そのことを知らせておいたほうがいいだろう。

ゆきのへは部屋の外を歩いており、俺は話しかけてハンマーを見せた。

 

「ゆきのへ、魔物に対抗するための新しい武器を作ってきたぞ」

 

「すごく頑丈なハンマーだな···お前さんが考えたのか?」

 

俺がそう言うと、ゆきのへは強そうな武器だと言ってメタリックハンマーを手に取った。

だが、ヘイザンが考えたものだとは思っていないようだな。

「いや、昨日ヘイザンから教えてもらったんだ」

 

ヘイザンが考えたということを聞くと、ゆきのへはとても驚いた顔をした。

 

「ヘイザンが···?あいつももうここまで強い武器を思い付くようになったのか」

 

そして驚いた顔をした後、ゆきのへはとても嬉しそうな表情になる。

今まで弟子であったはずのヘイザンが一人前になったのだから、喜んでいるのだろう。

 

「俺もあいつがこんなに強い武器を考えるとは思ってなかったな」

 

「ワシには子供がいないから不安になっていたが、伝説の鍛冶屋の技術はヘイザンが受け継いでくれそうだぜ」

 

メタリックハンマーを見終わった後、ゆきのへはそんなことを言う。

最初に出会った時から思っていたが、やはりゆきのへに子供はいなかったようだな。

荒廃した世界なので子供を作る相手が見つからなかったのだろうし、もうかなりの高齢なので今から作ることもできない。

でも、伝説の鍛冶屋ゆきのふの血筋が途絶えても、技術は受け継がれていくことになりそうだ。

 

「そこでだな、お前さんに伝えたいことが···」

 

弟子のヘイザンの成長を知って、ゆきのへは何か俺に伝えたいことがあるようだった。

 

だがその時、後ろからアローインプのルミーラの声が聞こえてきた。

 

「2人とも、すぐに来て!わたしたちの砦の近くに魔物が近づいているみたい」

魔物が来たという言葉を聞いて、俺たちはすぐに話を中断する。

確かに魔物の足音が聞こえており、俺もゆきのへもすぐに拠点の外を見てみた。

 

「話の途中だったというのに、また魔物が襲って来たのか」

 

この前魔物が来た方向を見てみると、敵のアローインプが12体、ブラバニクイーンが8体、キースドラゴンが4体、巨大なエビルトレントが1体の合計25体の魔物がサンデルジュの砦に迫ってきているのが見えた。

 

「最近魔物の活動が激しくなっていたけど、敵の種類も数も増えているな」

 

「ああ、ヘイザンの考えたこの武器があるが、一筋縄ではいかないはずだぜ」

 

ゆきのへの言っていたことも気になるが、今はそれどころではないようだ。

ここまでの大群で来ることは予想の範囲内ではあったが、厳しい戦いになりそうだ。

それでも何とかこの砦を防衛しなければいけないので、俺たち武器を構えて魔物の群れへと向かっていくことにする。

ここで勝たなければ、闇の戦士を倒すことも出来ないからな。

 

「種族の裏切り者も人間たちも、ワタシたちが滅ぼしてやろう!」

 

「ワタシたち魔物の新たな指導者に逆らうことは許さない!」

 

砦の外に出ていくと、アローインプが俺たちを撃ち抜こうと弓を構え始めていた。

アローインプの矢を避けながら近づくのは難しいので、俺はこの前作ったサブマシンガンを取り出す。

「お前たちに撃ち抜かれる前に、俺がこれでお前たちを倒してやるぜ」

 

俺がそう言うと、怒り出した敵のアローインプたちは麻痺の矢を放ち出す。

アローインプは12体もいるが、ゆきのへとルミーラを狙っている奴もいて、距離も離れているので、俺はジャンプでかわすことが出来た。

 

「かなり素早い矢だけど、避けれないほどじゃないみたいだな」

 

すぐに再び矢が飛んでくるので、俺はサブマシンガンの引き金を引いてはがねの弾丸を撃つ。

ゆきのへはブラバニクイーンの群れに殴りかかっていき、ルミーラは俺と同じように遠距離攻撃でアローインプの群れを壊滅させようとしていた。

サンデルジュの砦の2回目の防衛戦が始まった。

 

俺が放った最初の弾は前衛のアローインプへと当たり、奴の体を貫いていく。

はがねの弾丸の威力は高く、奴は一撃では死なないにしても大きく怯んでいた。

サンデルジュの強力な魔物に銃弾が効くか少しは不安になっていたけど、少なくともアローインプの軍団は倒せそうだな。

俺はそう思いながら、他のアローインプの矢を避けながら怯んでいる奴に追撃をかけようとする。

 

「遠距離攻撃が出来るアローインプは厄介だから、早めに倒しておかないとな」

 

俺は体勢を立て直す前に倒そうと、怯んでいるアローインプにはがねの弾丸を連射した。

奴も必死に起き上がろうとするが、俺はその隙を与えないように次々に弾を撃ち込んでいく。

そして、さっきの攻撃と合わせて5発ほど撃つと、奴は生命力が尽きて倒れていった。

 

「まずは1体を倒せたな。このまま残りの奴らも倒していくぜ」

 

はがねの弾丸は100個用意しているので、このままアローインプの軍団を壊滅させられそうだな。

俺はすぐに次のアローインプに向かってサブマシンガンを構えて、弾を発射していく。

 

「おのれビルダーめ···!よくもワタシたちの仲間を倒したな!」

 

「あいつを集中的に攻撃するんだ!」

 

奴らも俺を狙って攻撃してくるが、俺はガライヤでのキラーマシンとの戦いで矢を避けるのには慣れているので、かわしながら反撃することが出来ていた。

どのアローインプも大ダメージを受けていき、もう少しで倒せるところまで追い詰められていった。

 

それを見たブラバニクイーンたちは、アローインプを助けようと俺のところに向かってくる。

だが、ハンマーを持ったゆきのへが立ちはだかって、奴らの動きを止める。

 

「お前たちをワシらの砦に近づけることはさせねえ。ヘイザンの考えたこのハンマーで叩き潰してやるぜ!」

 

ブラバニクイーンは突進してゆきのへを突き飛ばそうとしてくるが、彼は攻撃をかわしたり受け止めたりしながら奴らにメタリックハンマーを叩きつけていた。

ゆきのへは俺より力が強いので、強力な魔物の攻撃も受け止めやすいみたいだな。

だが、それでも8体の動きを止めるのは難しいだろうから、アローインプを倒したらゆきのへを援護しに行かなければいけない。

 

「ゆきのへもあの数を相手にするのは大変だろうし、早く助けにいかないとな」

 

そのためにも早くアローインプを倒そうと思い、俺は動きを見極めながら銃を撃ち続ける。

体を何度も貫かれた奴らは次々に倒されていき、残りも少なくなっていった。

 

「これでアローインプは残り少しになってきたな」

 

「ワタシたちも人間どもなどに倒される訳にはいかない···!」

 

残ったアローインプたちは激しい攻撃を続けるが、俺の後ろにいたルミーラも奴らを攻撃してさらに弱らせていく。

ルミーラもアローインプであり、同じ種族同士で戦うのは嫌かもしれないが、俺たち人間に協力することになったので仕方のないことだろう。

そして、俺はルミーラの攻撃で瀕死の動けない状態になったアローインプたちにサブマシンガンでとどめをさしていった。

 

「これでアローインプの軍団は倒せたな。今度はゆきのへを援護しに行くか」

 

アローインプを倒した後にゆきのへの方を見ると、彼はブラバニクイーンだけでなく、後衛のキースドラゴンとも戦っているようだった。

援護しようと思っていると、ゆきのへが押さえきれなかった6体のブラバニクイーンが俺やルミーラのところへ突進してきた。

だが、キースドラゴンと戦っているゆきのへを助ける必要もあるので俺はルミーラにこう伝える。

 

「ルミーラ!俺はブラバニクイーンを止めるからあんたは麻痺の矢でゆきのへを助けてくれ」

 

「あなたなら負けないと思うし、そっちの敵は任せるね」

 

ルミーラはそう返事をして、ゆきのへと戦っているキースドラゴンに麻痺の矢を使っていく。

ゆきのへに当てないように気を付ける必要があるが、ルミーラなら大丈夫だろう。

 

だが、ブラバニクイーンたちはキースドラゴンを守るために攻撃のターゲットをルミーラに変える。

弓は溜めるのに時間がかかり、敵に接近されると危険なので、俺はブラバニクイーンたちを横から斬りつけてルミーラに近づけないようにした。

奴らはしつこくルミーラを狙っていたが、何度も斬りつけることで俺を倒さなければルミーラも倒せないと思ったのか、俺に向かって突進してこようとしていた。

 

「うまく引き付けられたな。あとは飛び出し式トゲわなに誘導するか」

 

6体と同時に戦うのも不可能ではないだろうが、ここは飛び出し式トゲわなを使った方がいいな。

俺は床用スイッチがあるところまで移動して、ブラバニクイーンが突進してくるのを待つ。

そして、奴らが突進してきてトゲわなの上を通ったと同時に俺はスイッチを踏み、トゲを飛び出させた。

 

不意に飛び出して来たトゲで刺され、生命力の高いブラバニクイーンでも大ダメージを受ける。

だが、この前のブラックチャックと違って動きは止まらず、再び突進をしようとしたり、ギガデインの呪文を唱えようとしたりしていた。

 

「ダメージは与えたけど動きが止まらなかったか。でも、ギガデインの呪文は防がないといけないな」

 

1発でも高い威力を持つギガデインを何度も使われれば砦のカベでも破壊されるのは免れないだろうから、何とか防がなければいけないな。

二刀流での回転斬りを使えば止められるだろうが、突進をしてくる奴もいるので腕に力を溜めることができない。

どうしようかと思っていると、俺の目に入ったのはこの前砦の前に設置した大砲だった。

 

「間に合うか分からないけど、大砲を使うしかないか」

大砲なら敵に飛び出し式トゲわな以上のダメージを与えられるので、動きを止められそうだ。

俺は突進をするブラバニクイーン避けながら大砲に近づいていき、ポーチから取り出した大砲の弾をセットした。

その頃にはもうギガデインの呪文が放たれる寸前だったので、俺は即座に大砲を発射して、奴らを吹き飛ばそうとする。

 

「これならどうだ、ブラバニクイーン!」

 

大砲の弾が炸裂した衝撃により、そこまで大きな体を持っている訳ではないブラバニクイーンたちは少し吹き飛ばされる。

それと同時に突進や呪文の詠唱も中断され、今度こそ奴らの動きは止まる。

そこで俺はすぐに奴らに近づいていき、おうじゃのけんやメタルのけんを降り下ろして斬り刻んでいく。

トゲわなと大砲によって弱っていたブラバニクイーンたちは俺の剣が致命傷となり、全員倒れていった。

 

「これでブラバニクイーンも全滅か。大砲があってよかったぜ」

 

大砲はマイラ復興の時にとても活躍したが、サンデルジュでも役に立つものになりそうだ。

俺がそう思っていると、ルミーラもキースドラゴンを弱らせ、ゆきのへは今はエビルトレントと戦っていると言ってきた。

 

「そっちは全部倒したみたいね。わたしもキースドラゴンを弱らせたから、残る強敵はエビルトレントと2匹のブラバニクイーンだけ」

 

6体のブラバニクイーンたちを倒し、今度こそ俺は助けに行けるのでゆきのへの方へ向かう。

ゆきのへはブラバニクイーンたちの攻撃を避けながらエビルトレントをハンマーで叩きつける。

だが、エビルトレントも自らの葉を刃のように飛ばしてゆきのへを斬り裂こうとしていた。

ブラバニクイーンの攻撃にも気をつけなければいけず、ゆきのへは葉を避けきれずにいくつも傷を負っている。

 

「まずはまわりの奴らを倒して、それからエビルトレントに斬りかかるか」

 

彼のいるところに着くと、ルミーラがさらに矢を撃つことでキースドラゴンが青い光に変わっていくのが見えた。

これで残りの敵は3体になったので、俺はルミーラに感謝しつつブラバニクイーンに斬りかかる。

 

「ゆきのへをこれ以上傷つけはさせないぞ」

ゆきのへを狙っていたブラバニクイーンは俺に気づかず、背後から斬られて大きな傷を負う。

奴らはすぐに狙いを俺に変えて突進してくるが、もう動きに慣れているので俺はジャンプをしてかわした。

 

「今まで何度も戦ってきたし、お前らの動きにはもう慣れてるぞ」

 

ギガデインを唱える隙もなく、さっきのゆきのへとの戦いで弱っているので、ブラバニクイーンはもう少しで倒せるだろう。

奴らは再び突進をしてくるが、俺はもう一度かわして、次の攻撃が来る前に思いきり斬り裂く。

そこでブラバニクイーンも力尽きて倒れ、残りはエビルトレントだけになった。

 

「後はエビルトレントを倒せば今回の戦いも終わりだな」

 

俺はゆきのへを助けてエビルトレントを倒すために、奴に近づいて両腕の剣を叩きつける。

 

「ゆきのへ、少し時間がかかったけど助けに来たぜ」

 

「あとはこのデカい木の魔物だけのようだな。ワシも少しは傷を与えたから、手伝ってくれ」

 

鋭い剣を2本も降り下ろされ大きな傷を負ったエビルトレントは、俺に向かって腕に相当する巨大な枝を叩きつけてきた。

動きはブラバニクイーンより早く、俺はかわしきれずに両腕の剣で防ぐことにした。

奴の攻撃力はかなり高く、押し返すのは無理だが、受け止めることは出来たのでゆきのへがその間に側面からメタリックハンマーを叩きつける。

俺もだんだん腕が痛くなってきたが、エビルトレントも大分弱ってきているだろう。

 

「お前みたいな木の魔物に、ワシらの作った砦を壊すことは出来ないぜ」

 

ゆきのへはそう言いながら、エビルトレントを何度も攻撃していく。

 

だが、追い詰められた奴はさっきと同じように葉を刃のように飛ばしてきた。

 

「くっ、弱らせたと思ったらまたこの攻撃を使って来たか」

 

それも、さっきより激しい勢いなので俺たちは近づくことが出来ずエビルトレントから離れる。

エビルトレントが一度に飛ばせる葉の量には限度があるが、俺とゆきのへの接近を防ぐのには十分な量だった。

俺は次々に飛んでくる葉を避けながらサブマシンガンを撃っていくが、奴の固い樹皮に防がれてあまりダメージを与えることが出来なかった。

 

「少しはダメージを与えてるんだろうけど、このままだと弾切れになるな」

 

サブマシンガンでも倒せないことはないだろうが、その前に弾切れを起こしそうだ。

砦の近くにいるルミーラも俺たちを助けようと何度も麻痺の矢を撃ち込むが、はがねの弾丸と同じようにあまり効果がないようだった。

 

「ルミーラの持っている矢が無くならなければいいんだけどな···」

 

でも、彼女の持っている矢が無くならない限りは勝ち目があると俺は思っていた。

しかし、俺たちが攻撃できないのを見てか、エビルトレントは砦に向かって強大な呪文を唱える。

ピリンたちがいる砦に向かって、奴はドルモーアの呪文を使おうとしているようだった。

 

「くそっ、今度はドルモーアの呪文か!?このままだとピリンたちが危ないな」

 

ドルモーアが使われれば、マッドウルスの時のリムルダールの町と同じようにサンデルジュの砦も破壊されるだろう。

だが、葉の刃のせいで近寄ることが出来ず、攻撃して詠唱を止めることは難しそうだった。

そう思っていると、ルミーラが何か思い付いたのか俺たちのところに走ってくるのが見えた。

ルミーラは俺のところに着くと同時に左腕からメタルのけんを取っていき、エビルトレントの動きを引き付けようとしていた。

「わたしが引き付けるからあなたは早く呪文を止めて!」

 

いきなり俺からメタルのけんを取っていったので驚いたが、ルミーラも葉の刃の量に限界があると気づいたみたいだな。

ルミーラはメタルのけんでエビルトレントを引き付けるが、弓を使うのに特化したアローインプの体では素早く動き回れず、いくつもの傷を負っていく。

 

「ああ、分かった!」

 

でも、今はドルモーアを止めるのが最優先なので、俺はそれだけの返事をしてエビルトレントに向かって思いきりおうじゃのけんを突き刺し、深くえぐる。

はがねの弾丸を防ぐ樹皮もさすがにおうじゃのけんを防ぐことは出来なかったようだな。

だが、エビルトレントは瀕死の状態になってもまだドルモーアの詠唱を続ける。

呪文はもう放たれる寸前だったが、ゆきのへとルミーラもそれに気づいてそれぞれの武器を使ってエビルトレントにとどめをさして止めた。

そして、エビルトレントが死ぬと同時に闇の力もなくなり、砦の壊滅を防ぐことが出来た。

 

「危ないところだったけど、何とか防げたみたいだな」

 

「ああ、今回もやっぱり厳しい戦いになったぜ」

 

「明日から、魔物の攻撃はさらに激しくなるかもしれないね」

 

俺とゆきのへはエビルトレントを倒した後今回も拠点を守れたと一安心する。

しかし、ルミーラの言う通り明日にはさらに危険な魔物が出現する可能性もあるな。

 

戦いの後、ゆきのへとルミーラは傷ついた体を治すために先に砦の中に戻っていき、俺もその後に中に入っていった。




活動報告の方で第5章後半以降の展開についてのアンケートをとっているので、そちらも見てくださるとありがたく思います。

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