ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode9 特技の伝授

俺がメルキドに来て9日目、昨日はロロンドが頼んだ大倉庫を作った。今日はもっと素材を集めたり、全員の個室を作ったりしようと思っていたが、今度はケッパーが俺に話したいことがあるらしい。

 

「そういえば、ロロンドから聞いたよ。君は、あの伝説のビルダーなんだって?」

 

ケッパーには話してなかったな。みんなビルダーのことを知っているのか。ビルダーの伝説ってかなり有名なんだな。

 

「そうだ。ルビスって精霊からアレフガルドの復興を頼まれたんだ。」

 

「君は、この前の魔物との戦いで頑張っていたけど、戦いが専門じゃない君には、これからの戦いは厳しいと思うんだ。」

 

ビルダーは建築士って意味だから、戦闘は確かに専門じゃないけど、これからの戦いは厳しいかもって、失礼だな。

 

「ビルダーだからって、弱いわけじゃないんだぞ」

 

「ごめん、別に君のことが弱いなんて言ったわけじゃないんだ。次の戦いに備えて、ちょっとした技を覚えてもっと強くなったらいいんじゃないかと思って」

 

それなら最初からそう言って欲しい。あの言い方だと俺が弱いように言われている感じがする。

 

「技って、どんなやつだ?」

 

「見せてあげるから、ちょっと下がっていてくれ」

 

ケッパーの言う通り、俺は少し離れた。ケッパーは回りに何もないことを確認して叫んだ。

 

「回転斬り!」

 

ケッパーは叫んだと同時に剣を振り回し、回りを360度なぎはらった。一回転して敵をなぎはらうから回転斬りと言うんだろうけど、そのまんまな名前だな。

 

「それを、俺も使えるようになればいいってことか?」

 

「そういうこと。回転斬りは自分の近くを一回転してなぎはらうから、ブロックを壊すときにも使えるんじゃないか?」

 

最近自分の持っている土ブロックが残り少なくなってきている。一気にブロックを最終出来れば、調達するとき楽になるだろう。

 

「ならケッパー、俺に回転斬りの方法を教えてくれ」

 

「いや、僕は人に教えることが苦手なんだ。でも、この技は魔物の攻撃を見て、それを真似してできるようになったんだ。」

 

ケッパー本人からは教えてもらえないのか。でも、その魔物に会うことができれば、俺も回転斬りを覚えられるかもしれない。

 

「じゃあ、その魔物はどこにいるんだ?」

 

「てつのさそりって言う魔物なんだけど、僕がいた小島より奥の山岳地帯にいるよ。それを倒すのとついでに、覚えてこればいい」

 

てつのさそりか···結構強力な魔物のはずだな。黄色いさそりの魔物、おおさそりの上位種だ。そのおおさそり自体も、まだ見たことがない。そんなに強いやつなら、動きだけを見て戻ってこればいいのに。

 

「倒す必要はないんじゃないか?今の武器だと厳しいぞ。」

 

「いや、このてつのさそりは竜王軍の一員だからね。奴等の戦力を削るという意味で、倒しておいたほうがいいと思う。もし逃したら、今度の襲撃で一緒に襲ってくるかもしれない。倒すなら、奴が単独行動をしている今だと思うんだ。」

 

確かに、集団で襲われると危険だ。でも、次の襲撃が来ることはケッパーの中では確実らしい。出来れば来ないで欲しいのだが。

 

「まあ、そうだな。危険なことを避けていたらアレフガルドの復興も出来ないからな。倒しに行ってくる」

 

「頑張ってくれよ」

 

俺はてつのさそりを倒しに、旅のとびらに入り、メルキドの山岳地帯に行った。途中に現れた、スライムベスを倒しながら進んだ。しばらく行くと、ブラウニーやがいこつなど、町を襲った強めの魔物も姿を現した。

 

「戦って倒すのは大変だな、隠れて行こう」

 

俺はメルキドに来て二日目に作った、草地の箱を取り出した。ここは草地ではないが、少しは魔物に見つかりにくくなるだろう。草地の箱をかぶって少しずつ動いていくと、土ブロックで出来た山と、白い岩のブロックで出来た山の境目にある、小さな谷にたどり着いた。

 

「崖だな。本当にこの山岳地帯は探索しにくい。」

 

俺は愚痴を吐きながら崖の下を見た。すると、ケッパーが言っていたてつのさそりがいた。てつのさそりは俺が思っていたよりでかい。体長は3~4メートルくらいあるだろう。俺はそいつと戦うため、そこにあったつたを使って、崖を降りた。

 

「正面から戦ったら勝てなさそうだな。背後から襲おう。」

 

てつのさそりの行動も見る必要もあるが、普通に斬っても一撃では死なないだろうから、回転斬りも覚えられる。てつのさそりと言う名前の通り、かなり体が固そうなので、胴体ではなく少しでも切れやすそうな脚を狙うことにした。

 

「ゆっくり動いて、見つからないようにしないとな。」

 

俺は物音を立てず目立たないよう、スネークのような匍匐前進でてつのさそりの背後に回った。うまく気付かれずに近づけたので、俺はどうのつるぎを振り上げ、てつのさそりの脚を切り裂いた。てつのさそりの脚の一本をを落とすことに成功したが、やはりてつのさそりはまだ死ななかった。

 

「俺の予想どおり、かなりの生命力があるようだな」

 

俺は、反撃に備えて後ろにジャンプした。脚を切り落とされたことに怒ったてつのさそりは、するどいはさみで俺を攻撃してくる。

 

「まあ、俺に勝てるほどではないだろうけどな!」

 

実際俺も勝てるかどうか不安な敵だが、弱気になってはいけない。俺はてつのさそりが攻撃するときに奴の側面にまわり、少しずつ傷を負わせていく。どうのつるぎではあまりダメージを負わせられないが、何度も切られればその硬い殻も破られるだろう。そして、敵の動きが一瞬止まった。

 

「動きが止まった、かなりダメージを受けているようだな」

 

俺はてつのさそりの顔面にどうのつるぎを叩きつける。顔は胴体よりも耐久力が弱いらしく、深い傷を負わせた。だが俺は敵の動きが止まったため油断していた。てつのさそりは突然体を回転させ、俺をなぎはらった。

 

「くっ!これがケッパーの言ってた技か。」

 

全力で回りをなぎはらう技。俺は剣で受け止め、直撃は避けられたが、数メートル吹き飛ばされ、地面に体を叩きつけられた。俺の背中に激痛が走ったが、なんとか耐えて立ち上がる。

 

「やっぱりこいつ強いな。動きが止まったら回転攻撃の前兆、覚えておかないと」

 

今度は油断しないように気を付けよう。俺は敵の前に立たないよう、また横から攻撃し始める。攻撃も速いので、気を抜くとすぐにくらってしまう。

 

「この固い装甲があるせいで倒せないな。なんとか破れればいいんだけど」

 

これまでの攻撃で、てつのさそりの装甲にヒビが入って来ているが、未だ砕ける気がしない。しかも、奴はまた回転攻撃の前兆を見せた。

 

「またあれが来るな」

 

今は一旦動きが止まった後、おそらくは力を溜めた後に回転攻撃が来ることが分かっているので、俺は後ろに退いた。俺の予想通り、てつのさそりは回転攻撃を行った。溜めた力を解き放ち、周りにいる敵を斬り裂く。俺もてつのさそりの行動を見て、だいたいは覚えた。回転攻撃の後、少し隙が出来たので顔面を斬りつけ、またすぐに飛び退く。

 

「もう装甲も弱っているはずだ。俺が回転攻撃を使えれば、倒せるかもな」

 

俺は腕に力を込めながら、もう一度隙が出来るのを待った。てつのさそりは俺にハサミや尻尾で攻撃してくる。そして俺は避けきれず、てつのさそりのハサミで傷を負ってしまう。だが、攻撃の直後にはわずかな隙が出来る。完全に隙を与えずに連続で攻撃することは非常に難しい。チャンスは今しかないと思い、俺は痛みに耐えながら渾身の力で剣を回転させ、てつのさそりの装甲を引き裂いた。

 

「お前の攻撃を見て覚えた、回転斬り!」

 

俺の回転斬りでついにてつのさそりは装甲が破れ、内臓がむき出しになる。俺は鉄のさそりの内臓にどうのつるぎを突き刺し、力いっぱい引き裂いた。てつのさそりは、断末魔の叫びを上げてついに倒れ、青い光になった。

 

「強敵だったけど、なんとか倒せたな。回転斬りも覚えられたし」

 

この技があればこれからの戦いも乗りきれそうだ。俺は帰る前に、てつのさそりが落とした物を拾った。てつのさそりの頭に生えていた角のようだ。

 

「てつのさそりの角か、何に使うんだろうな?」

 

何かの役には立つだろうから、俺はそれをポーチに入れた。大倉庫のおかげで、ポーチはすっきりしている。

歩いて帰ると1キロメートル以上あり、怪我もしているので俺はキメラのつばさを使ってメルキドの町に戻った。3つあったキメラのつばさもあと1つしかない。作ろうと思えば何時でも作れるけど。

 

「傷を負ってしまったけど、何とか町に生きて戻れたな」

 

ハサミでの攻撃を受けた時は、ものすごい痛みがあって死ぬかと思った。

 

「雄也、てつのさそりを倒してきてくれたのか?」

 

ケッパーが俺が帰ってきたことに気付き、話しかけてくる。

 

「結構強かったし、怪我もしたけど、何とか倒せた」

 

「怪我をしてしまったのか。そうだ、僕が拾ってきたこれを使って!」

 

ケッパーは薬草のような物を俺に渡した。それを食べると、傷はまだ直らなかったが痛みは引いてきた。きずぐすりより傷を直す力が高そうだ。痛みが引いてきたので、ケッパーとの話を続けた。

 

「それで、奴が使う回転攻撃はおぼえられたか?」

 

「ああ、もちろんだ。今から見せる」

 

俺はさっきのケッパーのように周りに何もない、誰もいないことを確認し、剣に力をため、なぎはらった。

 

「回転斬り!」

 

ケッパーは、俺がうまくできていたからか、拍手をしていた。

 

「すごい、うまく出来てるね。これで特技を覚えられたね!この技があれば、魔物に負けることなんてないだろう」

 

確かに、てつのさそりをも倒せる回転斬りなら、強い魔物でも倒せそうだ。

 

「ああ、強い魔物に会ったら使ってみるぞ」

 

俺はケッパーと別れた後、寝室に戻った。今日はまだ昼だが、傷を負ったのでゆっくり休むことにし、明日また作業を行うことにした。明日も何か頼まれるかもしれないが。

その日から5日間、特に何事も起こらず、メルキド録の解読にも進展はなかった。俺たちはその間に素材を集めたり、全員分の個室も作った。それと、ロッシは長居する気はないと言っていたが、この町を去る気はなさそうだった。なので、あまり居候されても困るのだが、彼の分の個室も作っておいた。

 

「ロッシはこの前ひどいことを言っていたが、結局あいつは仲間になる気はあるのか?」

 

俺、ピリン、ロロンド、ケッパーはこの町の発展のため頑張っているが、ロッシにはそんな姿が見かけられなかった。


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