彼女は生き物に好かれやすい   作:彼岸花ノ丘

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女神の美食10

【グルアアアアアアアッ!】

 麗しい乙女の、猛々しい咆哮が市街地に轟く。

 咆哮は十数キロ彼方まで届き、空気や建物をビリビリと震わせる。その咆哮に負けず劣らずの大きさで、アスファルトで舗装された道路が砕ける音と、建物が圧し潰れる音も響いていた。道路は多量のコンクリート片へと変貌し、次々に一軒家が押し潰されていく。

 何故なら市街地のど真ん中で、体長二十メートル近いナメクジもどきと、同等の体躯を誇る半透明なナマズ顔の両生類が、取っ組み合いの争いを繰り広げているのだから。

【オオオオオオオオオッ!】

 ナマズ顔の両生類……怪物へと変貌したフィアは、体当たりを喰らわしてきた巨大ナメクジもどきことオオゲツヒメを押していく。パワーではフィアに分があるらしく、オオゲツヒメの巨体を簡単に押し返していった。

 オオゲツヒメは踏ん張っているのか全身を硬直させているが、アスファルトで舗装された道路はまるで砂のように呆気なく捲れ上がり、怪物達の動きの妨げにもならない。フィアの歩みは止まらず、オオゲツヒメごと前へ前へと突き進む。

 例えその行き先にあるものが、人々が穏やかな生活を送っている小さな民家だとしても。

 フィアはなんの躊躇もなくオオゲツヒメを突き飛ばし、正面に建つ民家にぶつけた! 体重五十トンを超えるフィアと取っ組み合いが出来るほどの重量だ。木製の民家など呆気なく潰れ、オオゲツヒメの巨躯が横たわる。潰れた家は一軒に留まらず、数軒が巻き込まれた。

 尤も、オオゲツヒメはこれで息絶えた訳ではない。

【ゴアァ!】

 跳ねるように飛び起きたオオゲツヒメは、フィアに超音速の頭突きを喰らわせる!

 押し合いでは勝ったフィアも、不意の突撃をどてっぱらに受ければ体勢を崩してしまう。転んだ拍子に大地を揺さぶり、ここまでの激戦の余波で脆くなった民家を幾つか崩落させた。

 されどフィアもただでは転ばない。体当たりを喰らわせてきた、即ち至近距離までやってきたオオゲツヒメの頭を水掻きの付いた両手で抱え込むや、勢いよく投げ飛ばす! 距離にして自身の体長の倍近く、四十メートルもの距離をオオゲツヒメは飛んでいく。

 オオゲツヒメは住宅の真上に墜落し、轟音と木片と土煙を撒き散らした。噴煙はさながらキノコ雲のように舞い上がり、その衝撃が強烈な爆撃に値するものだと物語る。

 その煙の中からゆっくりと這い出てくるオオゲツヒメ。ナメクジのような見た目相応の防御力しかないのか、その身体には鉄筋や家屋の柱が突き刺さっていた。しかしそれらはずぶずぶと肉の蠢く音と共に動き出し、数秒と経たずに全身から排出される。柱が抜けた後のオオゲツヒメの身体に傷跡は残っていない。自慢の再生力で傷は治ってしまったようだ。全身がバラバラになった状態から平然と回復してみせるほどの再生力である。身体に棒状のものが刺さった程度の傷なら、左程エネルギーを使わずに治せると考えるべきだろう。

 相対するフィアにも怪我はない。出来る訳がない。ナマズ染みたこの巨大で半透明な身体は水で作り上げた『入れ物』に過ぎないのだから。例え頭部を砕かれようと、フィアの本体にダメージは一切届かない。そして五十トン程度の水を操る事は、フィアにとって大した労力ではない。体力は殆ど消耗していなかった。民家を破壊し続けた事による精神的疲弊も、好きでもない人間に興味なんてないフィアには無縁である。

 つまり二体ともまだまだ健全。戦闘直前とコンディション面では殆ど差がない、といっても過言ではない。

 少なくともフィアには、ここで軽口を一つ叩くぐらいの余裕は残っていた。

【ふん。やはり下等生物ですねしぶとくて嫌になる】

【おなか、スイタ……あああああ、おナカがスキましたワぁぁぁぁぁ……!】

【……ついに頭まで下等生物になりましたか】

 怪物姿のまま肩を竦めるフィアだったが、その際に隙を見せるような愚は犯さない。知性はあるならそれに越した事はないが、ないならないで()()()()()()……それがフィアの考えだ。むしろ理性ではなく本能に身を任せた分、無駄のない精練された動きへと『成長』する可能性すらあると考えている。

 知性を重要視しないフィアにとっては、むしろ我を失ったオオゲツヒメの方が警戒すべき存在。

【でしたラ私も……本当に本当の本気ヲ見セテアゲマスヨオオオオオ!】

 故にフィアも全力を出すべく、理性を頭の片隅に投げ捨てる。

 二体の猛獣が、先とは比較にならない勢いでぶつかり合う! 衝撃波が、振動が、市街地を瓦礫の山へと変えていった。

 砕けて剥き出しとなった家屋の材木に、未だ衰えていない火が燃え移っていく。業火は走るように広がっていき、フィア達を完全に包囲するが、彼女達は気にも留めない。高々数百度しかない炎では、自分達に火傷一つ負わせられない事を知っているのだから。そしてこの場に本来の主である人類の姿はない。人間如きの耐熱性ではこの高温の中を生き延びる事は出来ないのだから。

 例え彼女達にその気はなくとも、彼女らの力と存在は、人間から容易く世界を取り上げてしまうのだ。

 フィアは頭から突き上げるようにオオゲツヒメに突進。さながらアッパーのような重たい一撃に、オオゲツヒメの身体が浮かび上がった。瞬間フィアは背中から無数の水触手を生やし、その身を勢い良く捻って鞭のように振るい、オオゲツヒメの身体の側面に叩き付ける!

 無論ただ叩き付けるだけでは、オオゲツヒメの表面を覆う粘液、そこに含まれる消化酵素によって分解されてしまう。

 そこでフィアは近くに散らばるコンクリート片や材木、更にはマンホールや釘などを取り込み、水触手の表面をコーティングしていた。オオゲツヒメの消化酵素は多様かつ強力で、コンクリートも木材も、果ては金属すらも分解したが、その酵素はあくまで粘液に含まれているもの。つまり多種の酵素を混合した場合、粘液一グラム中に含まれる『酵素一種あたり』の量は減っていく事になる。酵素の量が少なくなれば、当然分解速度も落ちる。

 即ち、多種多様なコーティングを施した攻撃ならば、分解しきる前にオオゲツヒメへ打撃を届かせられる筈だ。

 ()()()()()()()()効果は覿面。水触手はオオゲツヒメの身体に、小さな民家など簡単に薙ぎ払えるだけの衝撃を与えた。尤も、家の強度など比較にならないパワーを誇るオオゲツヒメは、水触手の打撃を受けても倒れはしなかったが。

 それどころかオオゲツヒメの身体は怒張し、肉体に筋張った繊維が浮かび上がる。さながらその姿は、フルパワーを発揮する筋肉のよう。否、正しく全身を筋肉へと変化させているのだ。全身を自在に再生させる能力という事は、細胞を神経や血管、そして筋肉へと自由に分化させられるという事。応用すれば、全身の肉体を筋肉へと再構成する事も難しくない。

 五十トンもの肉がほぼ全て筋肉へと置き換わり、容赦なく放たれた際の破壊力は、想像するまでもない。

【グギオオオオオオオオ!】

 跳ねるようにオオゲツヒメは突進。その圧倒的なパワーにより、水触手達は物理的衝撃によって粉砕されてしまった。それでもオオゲツヒメの力は衰えず、そのままフィア目掛けて突っ込む!

 オオゲツヒメが全身筋肉の塊に変貌する理屈などさっぱり分からないフィアだが、本能的に自身に迫るエネルギーの巨大さを察知。フィアは即座に大股開きの体勢を取り、尾を地面に打ち付けて三本目の足として大地を踏み締める。そして凄まじい勢いで突撃してくるオオゲツヒメを、真っ正面から受け止めた。

 瞬間、生じた爆音と衝撃波は道路をクレーターのように抉り、周りにあった家を粉々に吹き飛ばす!

 人智を超えた力同士の、再度の激突。さながら水爆が炸裂したかのような破壊を生み出す、しかし科学など頭の片隅にもない本能剥き出しの取っ組み合い。

 此度の力比べは、オオゲツヒメが勝っていた。

【ヌグウウゥウゥウゥゥウウ……!】

 唸りを上げながら背中から何十もの水触手を生やし、アスファルトが消えて剥き出しとなった地面にアンカーの如く打ち込むも、フィアの『身体』はオオゲツヒメを押し止められず後退していくばかり。一本、また一本と水触手が千切れていく。

 先程とは明らかに馬力が違う。フィアはなんとか押し返そうとするが、あくまでフィアの能力は水を操る事。本体がどれだけ気合いを入れたところで、『身体』が発揮する力はさして変わらない。

 ついには押しきられ、フィアの『身体』は大地に横たわってしまう。この隙を突くようにオオゲツヒメは細長い身体をしならせ、フィアの『身体』に巻き付いた。のたうつように暴れるフィアだが、オオゲツヒメの馬力と素早さに敵わず、締め上げられてしまう。

 フィアの身動きを封じたオオゲツヒメは、口を大きく開く。その口はまるで獰猛なオオカミのように裂け、内側にびっしりと生えている歯と、何百とひしめく舌を露わにした。人間であれば正気が吹き飛びそうなほどおぞましい姿。そして正気など持ち合わせていないフィアまでもが身震いを起こす。

 何しろ眼前の口は『本能』を露わにしているのだから。

 オオゲツヒメはその口で、素早くフィアの腕に喰らい付いた!

 途端、じゅうじゅうとフィアの腕は音を鳴らし始める。水分解に特化した消化酵素を使っていると察したフィアはすぐさま微粒子まで粉砕したコンクリートや金属で表層をコーティングするも、分解されていく音は鳴り止まない。コーティングはあくまで分解速度を遅くし、打撃を本体に届かせるためのもの。抑え付けられ、じわじわと分解されている時の防御には使えないのだ。

 抵抗虚しく、フィアの腕は呆気なく千切れてしまう。フィアのコントロールから外れた水は形を保てず崩れるが、オオゲツヒメは口を素早くバクバクと動かし余さず腹に収めようとしていた。

 そして喰らったものがただの水であるにも拘わらず、にんまりとした笑みを浮かべる。

 余程腹が空いていたのだろうか。オオゲツヒメの心境など興味のないフィアだが、彼女の考えは自然と読めた。同時に、彼女がこのまま自分を貪り食うつもりである事も察する。

 生憎誰かを喰うのは構わないが、喰われるのはごめんだ。

 フィアは『身体』から針のように鋭くした水触手を射出。多数のコーティングを施したそれらは、易々とオオゲツヒメの身体を貫いた――――が、オオゲツヒメは怯みもしない。あろう事か針がより深く突き刺さる前へと進み、今度はフィアの『頭』へと齧り付いた。痛覚など持ち合わせていないのか、それとも食欲が何よりも優先されているのか。いずれにせよオオゲツヒメには、自傷に対する躊躇いなんてものはないらしい。

 腕をもがれようと頭を噛み砕かれようと、フィアの本体には関係ない。だがこのまま分解されていく事は、『身体』を構成する水の量が減っていく事を意味する。フィアの『身体』が発揮する力は用いた水の総量に由来しており、水の量が減っていく事はパワーの低下を意味していた。このままではじり貧である。

 フィアは一旦『身体』を構成している水分子の結合を弛め、個体としての振る舞いを止めた。元の緩さを取り戻した水は当然ながら液体としての性質を発揮し、オオゲツヒメの拘束をするすると抜けていく。

 しかし損失も少なくない。オオゲツヒメの纏う粘液には水分解の効果があるのだ。液状と化した事でコーティングは崩れ、粘液によりかなりの量の水が分解されてしまう。三十メートルほどオオゲツヒメから離れた位置で再構成した時、フィアの『身体』は脱出前よりも一回り小さくなっていた。

 ただし、この程度なら挽回は容易だが。

【調子ニ乗ルンジャアリマセンヨコノ虫ケラガァ……!】

 ずどん、ずどんと地団駄を踏むように、フィアは足下の地面に自身の足を()()()()

 そして周辺の土壌に、自らが操る『水』を四方八方へと這わせた。

 半径数キロ圏内の土壌水分を一気に吸い上げ、自らの『身体』に取り込んでいく。急激な土壌体積の激減により、フィアを中心とした一帯で次々と地面の崩落が発生。何十、否、百を超える家屋の残骸が悲鳴のような音を奏で、地の底へと沈んでいく。何百もの人々の営みが、ほんの十数秒で跡形もなく消えていった。

 代わりに、フィアの『身体』は更に栄える。

 土壌水分の一割も吸えば、先程失われた分の水は十分に補えた。家々が巻き込まれる大規模崩落も防げただろう。けれどもそれではオオゲツヒメを倒すには足りない。故にフィアは大地の水を全て奪い取った。人間の生活など考慮にも値しない。目の前の『不埒者』を叩き潰すためなら人間の犠牲などどうでも良い。

 事が済むのに一分と掛からない。周囲の大地が砂のように干からびた時、フィアが操る巨躯は倍近い大きさへと変貌を遂げていた。

【グルアアッ!】

 圧倒的力を得るやフィアは躊躇なく、先程とは比較にならないパワーを伴った平手をオオゲツヒメの真上へと振り下ろす!

 重量を増し、馬力をも強化したフィアの平手は、最早オオゲツヒメの反応速度では避ける動作すら取れない速さを誇る。粘液に含まれた分解酵素も、大質量かつ高速の一撃故に処理が間に合わない。

 直撃を受けたオオゲツヒメの頭は砕け、そのまま大地に叩き付けられた。ぐしゃりと肉の潰れる生々しい音がするも、衝撃で噴火が如く舞い上がる粉塵と轟音に紛れて消える。揺れは数十キロ四方へと広がり、大陥没を免れた家々を震えさせ、倒していく。

【ガアッ! フヌッ! ヌンッ! グルゥ!】

 されどフィアは手を弛めず、何度も、何度も、獣の咆哮を上げながらオオゲツヒメを滅多打ちにする。オオゲツヒメの再生力の強さは嫌というほど見たのだ。完膚なきまでに、細胞一つ残さず潰そうと、狂気すら感じさせる力で打ちのめす。

 フィアの猛攻を受けるオオゲツヒメの身体は、流石の生命力というべきか頭を叩き潰されてもピンピンしていた。のたうち回り、残骸と化した家屋を薙ぎ払いながら、フィアの攻撃から逃れようとする。しかしながら『体格』で上回ったフィアのスピードはオオゲツヒメよりもずっと上。逃げられる道理などない。分解酵素による防御も、質量とスピードで強引に押し切られてしまう。

 やがて胴体が潰され、オオゲツヒメの動きが鈍くなる。それでもフィアは叩き続け、すり潰し、一片の油断も容赦もなくオオゲツヒメの命を削り取る。ついにはオオゲツヒメの姿が完全に崩れ、液状と化したが、フィアはまだまだ打撃を止めない。この程度ではまだコイツは死んでいないという、本能の訴えがあったがために。

 フィアが攻撃を止めたのは、オオゲツヒメだった肉の汁さえも土に混ざり消えてしまってから。ただしフィアの『目』には、未だ闘争の炎は宿ったまま。

 ――――やはりこの程度では仕留めきれないか。

 そのような感情のこもったため息がフィアの『口』から溢れ出た、のと同時にフィアの背後側の地面が大きく盛り上がる。

 やがて弾けるように大地は裂け、中から巨大なナメクジ……オオゲツヒメが姿を現す。

 身体が液状化しても細胞自体は死滅せず、地中に潜って移動したのだろう。正しく呆れるほどの生命力だと、フィアは苛立ちを通り越してある種の尊敬すら抱き始める。

 ……叩き潰す前よりも()()()()()()()()のは気の所為だろうか?

 違和感を覚えるフィアだったが、悠長に考えている暇はない。あれだけ痛い目に遭わせたのに、オオゲツヒメから怯えは感じ取れないのだ。恐らく何かしらの手をまだ隠している。

 それを使わせたなら、ただでさえ面倒な輩がますます面倒になる。

【イイカゲンアキラメナサイッ!】

 フィアが三度激突するのを躊躇う筈もなく。

【アアアアアアアアアアアッ!】

 理性のないオオゲツヒメが判断なんてする訳もなく。

 怪物達の取っ組み合いが、またしても繰り広げられる事となった。

 ……怪物達は人間の事などお構いなしに暴れ続ける。彼女等は好き勝手に暴れ回り、投げたり突き飛ばしたりで、戦闘領域は常に移動している。被害は際限なく広がり、今でも留まる気配がない。疲労の色も見えないため、まだ当分続くであろう事は容易に想像が付く。

「はなちゃん。辛いなら、気絶してても構わないわよー」

 付いてしまうがために、フィア達の戦いを空より見下ろしている花中は、抱えてくれているミリオンが優しい言葉を投げ掛けてくるぐらい顔色を悪くしていた。しかし花中は首を横に降り、ミリオンの提案を拒む。

 確かに、もう気絶してしまいたいほどの惨事だ。

 ミュータント同士の戦いを見るのは初めてではない。が、例えば旧校舎だったり、広大な自然公園だったり、大海原だったり……何時も人の住処から離れた場所だった。例外は『妖精さん』ぐらいだが、あの時は相手のテリトリーが河川に面しており、主な攻撃もレーザー光線という直線的なもの。今回のような肉弾戦ではない。

 彼女達が本気で暴れ回ればどうなるか、想像しなかった訳ではない。しかし此処まで滅茶苦茶になるとは考えが及ばなかった。人間への被害は、今や当初の想定を大きく上回っている。倒したいという自らの決断に対する後悔と自責の念は、刻々と大きくなっていた。

 同時に、ここでオオゲツヒメを止めねばならぬ決意も大きくなっていたが。

 フィアが度々繰り出した『知的』な行動……表面をコーティングした多様な水触手による同時攻撃は、花中からの入れ知恵だ。ミリオンを介して伝えた。だが、オオゲツヒメはこの程度ではまるで止まらず、それどころかどんどん力を増大させている。おまけに肉体が液状化しても簡単に復帰するときた。想像していたよりもオオゲツヒメはずっと強い。

 人類が通常兵器を用いたところで、オオゲツヒメは難なく生還するだろう。戦車など簡単に食い尽くし、空爆の雨を気にも留めず、軍艦を次々と腹に収めるに違いない。破れかぶれになって核兵器を使ったところで、何百万もの市民の命と引き換えに爆破したとしても、オオゲツヒメは乗り越えてしまうかも知れない……そんな『非常識』な予感を本能が感じていた。

 人類ではオオゲツヒメを止められない。故にどれほどの破壊をもたらそうと、フィアが倒す事を祈らねばならないのだ。

 しかしそれも、あまりに儚い祈りかも知れない。

「……あの、ミリオンさん。頼んでいた、事は……」

「やっておいたわ。はなちゃんの予想通りよ……最悪ね」

 尋ねれば、ミリオンは顔を顰めなながら答える。具体的な言葉ではない。だがその意味を察し、花中は更に顔色を悪くする。

 ――――花中がオオゲツヒメの力への理解を深めていた時と同じくして、地上で戦うフィアもまたオオゲツヒメの力がどのようなものか、自力で分かり始めていた。

【グヌウオオオッ!】

 地響きを伴う突進を真っ正面からぶつけ、オオゲツヒメを突き飛ばす。

【ガアッ! ヌアッ! アアアアアァッ!】

 起き上がる暇など与えない。太くて重たい足で何度も何度も、オオゲツヒメを踏み付ける。

【ニガスモノデスカァ!】

 それでも足を持ち上げたほんの僅かな隙にした身動ぎを見逃さず、金属のコーティングを施した水触手で縛り上げる。

【クタバリゾコナイガアアアアッ!】

 そして身動きの出来なくなったオオゲツヒメの尾を掴んで、さながら鞭のようにその長大な身体を地面に叩き付けた。何度も何度も、がむしゃらに。

 驚異的な再生力を誇るオオゲツヒメに切断技は通じない。

 そのためフィアがお見舞いするのは、打撃のオンパレード。全身に伝わる衝撃は確実に細胞を破裂させ、摩耗させていく。喰らえば喰らうほどに、オオゲツヒメの身体は磨り減っていく筈なのだ。

 だが、

【ゴオオオオアァッ!】

 フィアは身体を大回転させながらオオゲツヒメを振り回し、最も勢い付いたところで尾を掴んでいた手を離す。常識外れのパワーが生み出した遠心力はオオゲツヒメの身体を音速の数倍にまで加速し、怪獣染みた巨体を市街地だった場所で何百メートルと転がした。

 ――――おかしい。

 投げ飛ばされたオオゲツヒメはむくりと、平然と起き上がる。次いで迷った素振りもなく、あれだけの攻撃を喰らわせたフィアにゆっくりと近付いてくる。

 死なない事は不思議ではない。呆れるほどしぶとい事はとうの昔に分かっている。解せないのはそこではない。

 解せないのは、間近にまで迫ったオオゲツヒメの体長が、四十メートルを超えていたフィアよりも()()()()()()事だ。

【……ジュル】

【ッ!】

 接近したオオゲツヒメは舌なめずりをするや頭部を四つに割き、フィアの胴体に喰らい付いた! フィアは両腕で突進してきたオオゲツヒメの身体を抑え込み、二本の足と尻尾で大地に踏み止まろうとするもまるで敵わない。転ばないようにするのが精いっぱいで、一気に何百メートルと押し込まれる。

 挙句、掴んでいた『腕』と噛まれた『胴体』が溶け始めた。分解酵素による影響だが……フィアが気に留めたのは、そこではない。

 オオゲツヒメが、じゅるじゅると溶かした部分を啜っていたのだ。

【(コイツさては今まで喰ってましたね!)】

 今までひっそりと起きていた事態を察し、フィアは忌々しげな舌打ちをする。

 オオゲツヒメは消化酵素によってあらゆるものを分解し、取り込んでいたのだ。恐らくフィアの『身体』を作る水だけでなく、家々の材木やコンクリートさえも。そうして辺りのものを手当たり次第に喰らい、少しずつだが成長していたのである。

 体格が増大したのだから、パワーが大きくなっているのは当然だ。むしろ問題は、ここでオオゲツヒメの巨大化が止まる保証がない……否、間違いなくまだまだ底には程遠いという『予感』。

【グヌギギギイイイイイ……!】

 どうにか堪えるフィアを余所に、オオゲツヒメはその長大な尾を振り回し、辺りに散乱する廃屋の角材を巻き取る。と、尾の先に小さな頭が作られ、角材に喰らい付き、バキバキと音を立てて貪り始めた。そうして噛み砕かれた材木が飲み込まれる度に、オオゲツヒメの力が僅かずつだが強まっている事をフィアは感じ取る。

 対するフィアも負けじと、新たな水を吸い取るべく地面に突き刺した尾や足から四方に糸のように細い水触手を伸ばすが……殆ど、水がない。既に一度、この辺り一帯半径数キロの水分を吸い尽くしてしまったのだから当然だ。なんとか遠方まで伸ばして吸い上げるが、効率はあまりにも悪い。

 体格差はどんどん広がり、力の差は開く一方。どうにか堪えようとするが、まるで歯が立たない。

【フヌグアアアァッ!】

 フィアはガリガリと、オオゲツヒメの体表面に『爪』を立てて肉を抉ろうとする。しかし立てた爪は即座に分解され、オオゲツヒメの身体にまでは届かない。

 それでも何度も何度も突き立て、溶かしきれないほどの質量と速さでようやく表皮を抉れたが……傷痕は即座に塞がれ、なかった事にされてしまう。何度も何度も引っ掻き、無数の傷痕を刻み込んでも結果は変わらない。

 この程度の悪足掻きでは足止めにもならなかった。

【グガアアアッ!】

 ついには我慢ならないとばかりに、フィアはオオゲツヒメの身体に『拳』をぶつける!

 強力なストレートパンチ。速度と質量が分解能力を勝ったのか打撃は粘液を貫き、オオゲツヒメの身体に破滅的破壊力を伝える。身体が波打つ中、予想外だとばかりにオオゲツヒメの獰猛な目が微かに揺らめいたように見えた。

 が、こんなものでは今のオオゲツヒメは止まらない。力が弛んだのはほんの一瞬でしかなく、すぐにフィアを押し倒さんとしてくる。対するフィアは、これ以上の抵抗が出来なかった。

【ゴガァッ!?】

 ついにフィアは、再び大地に膝を突く。

 オオゲツヒメに訪れる再度のチャンス。しかし今度の彼女は、フィアを締め付けようとはしない。

 代わりに自らの身体をどろりと溶けたかの如く扁平にし、フィアの真下へと潜り込んできた。オオゲツヒメの思惑に勘付くフィアだったが、オオゲツヒメの動きが速く、対応が間に合わない。

 フィアの真下に来たオオゲツヒメは、一気にその平坦な身体を起こす!

 さながら風呂敷のように、オオゲツヒメは自らの身体を以てフィアを包み込もうとしたのだ。『腕』や『手足』に平べったい身体を巻き付け、包み込んでしまう。これでは『身体』を液状に戻して抜け出す事も出来ない。

 四肢を振り回しなんとか振り切ろうとするが、オオゲツヒメは『身体』を隙間なく包んでいく。ついには頭以外の全てが包まれた時、オオゲツヒメはフィアを包む身の一部から生えるようにナメクジに似た身体を作り出した。

 そしてフィアの目の前で、彼女はばっくりと口を開く。フィアの頭ぐらいなら、丸呑み出来るぐらい大きく、蕾が花を咲かせるように。

【グ……オオオオオオッ!】

 傍から見ても明らかな『殺意』を放つオオゲツヒメに、フィアは咆哮と共に全身から棘のように鋭くした水触手を生やす! 水触手は薄く伸びたオオゲツヒメの身体を易々と貫き、穴だらけに……するも脅威の再生力の前ではやはり無意味。即座にオオゲツヒメの身体は蠢き、水触手に纏わり付いて消化してしまう。

 どれだけの抵抗をしようと、オオゲツヒメの拘束は決して揺らがない。一切の隙間を許さず、フィアを捉え続ける。

【イタダキ、マス】

 それはこの言葉をぼそりと呟いてからも変わらず。

 ばくりと、オオゲツヒメはフィアの頭に齧り付く! 否、囓るというよりも丸呑みというべきか。花のように開いた口はフィアの頭をすっぽりと覆い尽くしてしまった。

 フィアはバタバタと暴れるが、オオゲツヒメの身体はゴムのように伸縮するだけで破れる気配すらない。その間もオオゲツヒメはゆっくりと、着実に、包み込む自らの身体ごとフィアを喉の奥へと押し込んでいく。

 やがてその口が地面と接した時、オオゲツヒメは身体を千切り、頭を高々と持ち上げた。オオゲツヒメの口の中にある大きな『膨らみ』が、重力に従いじわじわと落ちていく。『膨らみ』は時折ぼこぼこと蠢くが、その動きは沈むほどに弱く、小さくなる。

 『膨らみ』はオオゲツヒメの腹の辺りで止まるが、その頃にはもう、元の胴体の太さと大差ないまでに萎んでいた。オオゲツヒメは満足したように大きなげっぷを吐き出し、舌舐めずりをして汚れていない口周りを拭う。

【……ゴチソウサマ】

 最後に感謝の言葉を呟くと、オオゲツヒメはその瞳に爛々とした喜びと、聡明なる理性を戻す。

 直後にオオゲツヒメは空を――――浮遊するミリオンと、抱えられた花中が居る場所を見上げる。花中はオオゲツヒメが自分を見た事に気付くとビクリと身体を震わせ、オオゲツヒメは四つに裂けた口を歪ませて『笑み』を浮かべた。

【さぁ、今度はあなた達の番ですわ……ああ、どんなお味なのかしらぁ】

「あら? 私達を食べられると思ってるのかしら? 生憎、私はあなたと戦う理由なんてないわよ。さかなちゃんを助けようとも思わないし」

【何がなんでも逃がしませんわ。だってわたくし、どうしても花中ちゃんの味を堪能してみたいんですもの。ミリオンさんの味にも、興味はありますけど】

 ミリオンと軽口を叩き合うと、オオゲツヒメは背中からトンボの翅のようなものを六つも生やしてみせた。そしてその翅を花中(人間)の目には見えない速さで羽ばたかせ始める。

 すると周囲の瓦礫を吹き飛ばすほどの爆風が起こり、ゆっくりとオオゲツヒメの身体が浮かび上がった。

 強靱なパワーを用いた、なんとも強引な飛行方法。とはいえ、これで空は安全地帯ではなくなってしまった。形態を自在に変えられる点を考慮すれば、戦闘機のような姿となり、超音速飛行をしてくる可能性も否定出来ない。ミリオンなら振りきれる、と楽観視する訳にはいかないだろう。

 何より問題なのは、オオゲツヒメが纏う粘液には耐熱性酵素が含まれている。直接触れる事で対象を加熱する、ミリオンの攻撃はほぼ無効化された状態……ハッキリ言って最悪の相性だ。勝ち目が見えない。

 そしてミリオンにオオゲツヒメを倒せないという事は、花中がどれだけ願ったところで、食べられてしまったフィアを助ける術はないという事。

 花中は静かに、深く項垂れる。

 されどすぐに頭は横に振られ、花中は前を向き、オオゲツヒメを真っ直ぐに見据える。と、オオゲツヒメは首を傾げた。それから警戒するように、自らの身を構成する筋肉を怒張させていく。

 オオゲツヒメは気付いたのだ。花中の目に、絶望や恐怖が浮かんでいない事に。

 代わりに満ちているものが、信頼である事にも。

「あら? 勘付かれたみたいだけど」

「いえ、もう、手遅れです」

【……なんの話ですの? あなた方、何を企んでいるのかしら】

「残念だけど、企みはもう終わったのよねぇ……どうしてもっていうのなら、その企みの実行者に訊けば良いんじゃないかしら?」

【実行者?】

 誰の事だ? と訊きたげにぼやくオオゲツヒメ。しかし彼女からの問いに、花中は口を噤み、ミリオンはくすくすと小さく笑うのみ。眉などない顔を顰めてオオゲツヒメは怪訝さを見せるが、それでも花中達は答えない。

【そりゃあ勿論この私の事ですよ】

 答えたのは花中とミリオン以外の声。

 その声は、オオゲツヒメの()()()から聞こえてきた。

【……え?】

【やれやれ間一髪でしたねぇ。花中さんが閃くのがあと少し遅かったら本当にお陀仏でしたよ。まぁ案がなかったらそもそもあなたに食べられてあげませんでしたけど】

【この声、フィアちゃん? まだ生きていましたの? とっくに消化されたと思ってましたのに……】

【んふふー】

 腹の中のフィアが、上機嫌に笑う。その声に焦りはない。勝利を確信した、余裕と自信に満ち満ちていた。

 喰われていながらあまりにも余裕を見せるからだろうか、オオゲツヒメは首を傾げる――――が、不意にその動きがギチギチと、まるで油の切れたブリキ玩具のように鈍くなった。羽の動きも止まり、大地を揺らす勢いで墜落。その鈍さは意図するものではないらしく、オオゲツヒメの身体はガタガタと、箱の中に居る『誰か』が暴れるかのようにぎこちなく揺れる。

【……あ、ら……? わた、くし、の、か、らだ……】

 ぎこちなさは口にまで及んでいるらしく、出てきた言葉はあまりにも拙い。

 そんなオオゲツヒメの腹の中から、ケラケラとフィアの笑い声がした。

【いやはや愉快愉快。あなたの間抜けな声が聞けたお陰で少しは胸がスッとしましたよ。出来れば(ツラ)の方も拝見したかったですけどね】

【あな、た、何、して】

【まず最初に……食べられたのはわざとです。あなたはしぶといですからねぇ殴っても踏み潰してもあまり効果はありませんでした】

 あたかも動きが鈍くなったオオゲツヒメを嘲笑うように、オオゲツヒメの質問を無視してフィアは喋りたい事を猛烈な早口で語る。

 切り刻もうが貫こうが、打撃を与えようが踏み潰そうが、難なく甦る再生力……恐らくは本当に、細胞一つ残さず潰さない限りオオゲツヒメは簡単に甦る事が出来るのだろう。多種多様な酵素がなくとも、この再生力だけでも相当厄介だった筈だ。正しくミュータントの『能力』と呼ぶに相応しい力である。

 これほどの生命力を誇る生物を殺すには、どうすれば良いのか? 答えはたった一つしかない。

 細胞一つでも残せば甦るのだから、細胞一つ残さず粉砕すれば良い。

【私の操る『水』をあなたの全身に張り巡らせました。ええあなたの体液を介し細胞一つ一つの隙間に浸透させたのです。最早あなたの身体は私の制御下あなたが分裂しようとしても私の水があなたを細胞を縛り付けます。あなたには逃げ場などない。そしてこの状態ならあなたの細胞を一つ残さず絞り潰す事が可能です】

【あ、り得な、い。わたく、しの、胃、水、ぶ、んかい、する】

【そうですねぇ確かにあなたの胃液にはそーいうものがたっぷり含まれていましたよ】

 懐かしむようなフィアの同意。そこには焦りなどなく、オオゲツヒメの疑問が自分の置かれた状況とは無縁であるかのよう。少なくともフィアにとっては、もうどうでも良い事なのだ。

 乗り越えてしまった脅威など。

【あなたがなんという動物かは分かりません。ですがそれほどの生命力なのです恐らくは原始的な軟体生物の類なのでしょう? どれだけ下等でも昆虫や甲殻類の再生力はしょぼいですし私のような高等な生き物であれば再生力はかなり低いですからねぇ】

【……………】

【そしてそういう生き物は大抵乾燥に弱い。なのに水なんか分解したら干からびてしまいます。まぁ仮に軟体動物でなかったとしても生き物である以上水は重要な物質でしょうけど。水を分解する酵素はとても危険なものなのです。だとしたら何かしらのコントロール方法がないといけませんよねぇ?】

 押し黙るオオゲツヒメを無視するように、フィアはべらべらと喋っていく。

 如何にも自分が閃いたかのような自信に満ちた語りだったが、実際にはミリオンを通して伝えられた、花中からの受け売りだった。

 他者に何かしらの危害を与える物質というのは、基本的には自分にとっても有害だ。自分だけ対象外、なんて都合良くは中々いかない。そのまま扱えば自らにも悪影響が及ぶ可能性がある。

 故にそういった物質を使う時、生物はなんらかの制御機能を持たねばならない。例えば普段は比較的無害な二種の物質に分けておき攻撃時に合成する仕組みを持つだとか、頑丈な『袋』に入れて保管しておくだとか、効果を発揮する状況を限定しておくだとか……

 オオゲツヒメがどのような方法を採用しているかは分からない。だが生命にとって欠かせない水を分解してしまう酵素なのだ、なんらかの制御を行わなければ、危なっかしくてとても使えたものではない。その効果を利用すれば、水分解能力を無効化出来る可能性がある。

 そしてオオゲツヒメが軟体生物である可能性が高いと踏んだ花中は、その制御機能が表皮、或いはその内側から分泌される『粘液』にあると考えた。

 予感は的中した。フィアが何度も爪を立て、削り取った表皮には酵素による水分解を妨げる効果があったのだ。フィアが表皮をいくらか取り込み、細胞を磨り潰したものを混ぜ合わせたもので『拳』を形成。()()()打ち込んでみれば効果は覿面だった。拳を形成していた水の分解を抑え、一撃喰らわせる事に成功したのである。

 無論拳を届かせてもオオゲツヒメに効果はない。が、粘液さえ突破出来たなら、体組織の中に水を浸透させ、身体を満たしている体液と接触出来る。

 そして心臓があるかも分からない生物で、最も体液が集まる場所は……生きるための栄養を取り込む器官。即ち胃である筈だ。

【要するにあなたの細胞を一片たりとも逃さないために最も体液が集まりかつ全身の隅々まで行き渡る経路がある場所にお招きいただいた次第です。さぁてこれからどうします?】

 フィアからの嫌みったらしい問いに、オオゲツヒメは何も答えない。

 代わりとばかりに彼女は凄まじい剛力を以てして、フィアによって拘束されている身体を四方八方へと伸ばし、

【残念。それなら私の方が早い】

 フィアはオオゲツヒメの『逃走』を見逃さない。

 千切れるようではなく、ひび割れるような亀裂がオオゲツヒメの全身に走る。ひびは最初大きく、段々と細かな場所まで入り込み、オオゲツヒメの色を断面と同じ朱色に染め上げた。

 全身隅々、細胞一つ一つまで浸透した『水』がオオゲツヒメの身体を引き裂こうとしていた。

【ではさようなら。あなたを食べられなかったのは少し残念でしたがね】

 そしてぼやかれたフィアの心残りと同時に、オオゲツヒメの身体は粉のような粒となって弾け飛ぶのであった。




体内から爆殺はモンスター退治のお約束。
……あれ? これ能力バトル小(ry)
ちなみにダイナマイトを放り込んだぐらいでは、オオゲツヒメは美味しくいただくだけです。

次回は7/15(日)投稿予定です。

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