彼女は生き物に好かれやすい   作:彼岸花ノ丘

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余談弐 悪食の猿

「お鍋をしましょう」

 学校からの帰り道にて、何気なくといった様子で提案をしてきたのはフィアだった。

 発言を聞いたのは花中とミリオン、それからミィ。一人と二匹は揃って目を点にした。

「……なんで、鍋? 冬なら分かるけど、今はもうすぐ夏休みになるぐらい夏真っ盛りなんだけど」

 最初にツッコミを入れたのはミリオン。指摘されたフィアは誇るように胸を張る。

「ふふん実はお鍋をすると親交が深まると先日テレビでいっていましてね。当然私と花中さんはそんな事をせずとも最高に仲良しでありますがしかしこれ以上親交が深まればどうなるのかというのも好奇心がそそられる話でありまして」

「OK、分かった。要するに、なんとなくやりたくなったのね」

 長々としたフィアの言葉を、ミリオンは一言で纏め上げる。自慢気に語った文章の大半を削られたフィアだが、寸分変わらず不遜な笑みを浮かべていた。

 はてさて、友人から鍋パーティーを提案された訳だが――――当然、花中は目を耀かせた。

 鍋。それは日本の家庭を彩るお料理。

 日本で食べられている料理は数多くあれど、鍋ほど和気あいあいとした品目はそうあるまい。ましてや友達と一緒にやるとなれば、正しくフレンドリーな行いと言えよう。友好大好きな花中に、鍋への精神的耐性は皆無であった。

「わ、わたしは、やりたい、ですっ」

 訊かれる前に、花中は些か興奮気味にそう意思表示をしていた。勢いに任せた自らの行いに赤面するが、しかし前のめりの身体は引かない。

「……まぁ、私も反対理由なんかないけどね。興味はあるし」

「え。あなたも参加する気だったのですか? 私は花中さんだけを誘ったつもりだったのですが」

「あなたねぇ……」

 心底嫌そうなフィアに、花中に同意していたミリオンは呆れ混じりの顰め面を浮かべる。

 一見して一触即発な雰囲気は、されど今ではすっかり見慣れたもの。どうすれば丸く収まるかを花中はよく知っている。

「えと、わたし、みんなと一緒にやりたいなぁ」

「ふん。花中さんの慈悲に感謝するのですね」

「あ、それならあたしも参加するー」

 花中のボソッとした一言であっさりとフィアは折れてくれた。ついでにミィも参加の意思を表明したので、これにて一人と三匹で鍋パーティーを行う事となる。

 さて、話が決まれば次は計画だ。花中は早速鍋パーティーの詳細を考える。

 場所、は自分の家で良いだろう。日取り、も明日が丁度休日なのでその日で問題あるまい。とんとん拍子に計画は立っていき、残すは『何鍋』にするかだけになる。

 ところがここで考えが詰まってしまった。

 悩んでいるのは、どんな鍋ならみんな喜ぶのか、という点ではない。これは直接訊けば済む話であり、大した問題ではないからだ。最大の問題はもっと根本的なところ。

 即ち、何鍋ならみんなで()()()()()()()

 生命は、種によって食べる物が異なる。

 それは何十億年と続けられた進化の中で獲得した『能力』の差によるもの。例えば人間は腐った果物を食べたらお腹を壊すが、ショウジョウバエの幼虫はそれを主食に出来る。逆に人間が食べる焼肉などは、ショウジョウバエにとって食料となり得ない。

 つまり異種の生物と食事をしようとすると、誰かは食べられるが誰かは食べられないものが生じるのだ。いや、食べられないだけならまだマシである。例えば猫はネギやタマネギを食べると、赤血球が破壊されて溶血性貧血を起こしてしまう。最悪死に至る重篤な症状だ。人間が食べられるから他の動物も大丈夫、とは言えないのである。

 おまけにフィア(フナ)などは、何がダメなのかよく分からない。フナにタマネギや鶏肉、牛肉やキャベツを与えるとどうなるかなど、聞いた事もないのだから。

「あ、そうだ。どうせなら、みんなの手料理をはなちゃんに披露してみない?」

 どうしたものかと頭を抱える花中であったが、救いの手はミリオンから差し伸べられた。

「……手料理を、ですか?」

「ええ。種が違うから、みんな食べられる物が違うでしょ? だからみんなで一つの鍋となると、具材が限られちゃう。ならそれぞれ食べられる物を使って、小さなお鍋を何種類も用意する方が楽しめると思わない? で、それをはなちゃんに食べてもらうの。人間は雑食性だから、こっちから提供する方が制限は少なくなるし」

「あたしはそれで良いよ。参加したのに一口も食べられないとかごめんだし」

「私も賛成します。花中さんに私の手料理を振る舞うというのは中々面白そうです」

 ミリオンの言葉に、動物達は次々と賛同。それから揃って花中の顔色を窺ってくる。

 言うまでもなく、花中に拒否する気など毛頭ない。友達が料理を作ってくれるなんて、そんなフレンドリーな事を何故拒めるのか。今だってスキップしたくなるぐらい胸が弾んでいるのに。

 ――――では何故即座に頷かないのかと言えば、小さな不安が胸の中を蠢いていたから。

 何しろ人と暮らした時期の長いミリオンは別としても……数ヶ月前まで野生動物だったフィアとミィに料理の経験があるとは、思えないのだから。

「あ、あの……みんな、料理の経験は……」

「勿論ありません」

「ないよー」

 訊けばフィアもミィも堂々と答えてくれる。確かに恥じる事ではない。誰にでも、どんな事にも『初めて』の瞬間は存在するのだから。

 が、花中はその『初めて』を味あわされる側。果たして人間(じぶん)に食べられる、食べても大丈夫な物が出来上がるのか……心の片隅に生じた不安は、根を張り、ゆっくりと成長していく。

「大丈夫よ、私が監督しておくわ」

 その不安の芽を摘まんだのも、ミリオンだった。

「監督、ですか?」

「万が一にもはなちゃんに死なれたら困るもの。料理自体に関しても、火事とか起こさせないよう見ておくわ。まぁ、私には味覚がないから出来上がった代物が美味しいか不味いかなんて分からないし、死なない程度の『毒』なら許容するけどね」

 基本は放任だが、本当に危険なものは出させない、という事か。

 それなら左程悪い事にはならないと、不安が一気に萎む。美味しくない料理を食べる羽目になるかも知れないが、食事というよりも遊びだと思えば大した問題ではない。遊びで大事なのは『楽しさ』だ。多少美味しくなくとも、笑える思い出になればそれで良い。

 これならば、断る理由なんてない。

「……そうですね。それなら、思いっきり、楽しめそうです。やりましょう!」

「おっ、花中もやっと乗り気になったね」

「えへへ。ちょっと不安もありましたけど、ミリオンさんが見てくれるなら、酷い目には、遭わないかなーって」

「……それってつまり、あたしらの料理が不味いって言いたい訳?」

「むむむっ! それは聞き捨てなりませんよ花中さん! 確かに初めての料理ではありますがビギナーズラックという言葉もあるではないですか! いざ食べたらビックリするぐらい美味しくて腰を抜かしても知りませんよ!」

「えー? ほんとに大丈夫かなぁ?」

 自信満々な二匹に対し少し意地悪く、煽るように花中は訊き返す。不安が拭えた反動に加え、日々の食事を自炊している『料理人』としてのプライドからか。普段らしからぬ、挑発的な態度を取ってしまった。

 するとフィアとミィはムスッと唇を尖らせた。それから二人は顔を合わせると、息ぴったりに頷きあう。

「良いでしょう! そこまで言うならぎゃふんと言わせてみせます! 『最高の食材』を使って!」

 そして代表するかのようにフィアが宣言。

 瞬間、花中は血の気が引いた――――恐ろしく嫌な予感がしたので。

「え、ちょっと待」

「そうと決まれば野良猫早速食べ物を採りに行きますよ!」

「おうとも! 明日を楽しみに待ってなよ、花中ぁ!」

 引き留めようとする花中の言葉を無視し、フィアは近くにあったマンホールから下水へ、ミィは瞬間移動の如く速度で何処かへ行ってしまう。

 恐らくは、『最高の食材』とやらを捕まえるために。

 彼女達は『野生動物』であり、普段から美味なる獲物を求めている生粋のハンターなのだから。

「……あの……」

「さっきも言ったけど、本当に危ないものはちゃんと止めるわよ」

 つまり、危なくなければ止めない訳で。

 ほんのちょっぴりでも調子に乗った報いがこれだとすると、些か厳し過ぎはしないかと花中は思う。思うが、何処かに行ってしまった人外二匹を追い駆ける事は、ただの人間である花中には叶わない。

「明日が楽しみね、はなちゃん♪」

 参加者の一体であるミリオンの言葉に、花中が頷く事はなかった。

 

 

 

 かくして迎えた翌日。

「第一回、鍋パーティーを始めまーす♪」

「「おーっ!」」

 楽しげなミリオンの一声と共に、ついに鍋パーティーが開かれた。フィアとミィも拳を突き上げ、楽しげな声を上げる。

 今日の天気は快晴。降り注ぐ日差しで肌が痛くなる、夏らしい日だ。

 会場として選ばれたのは大桐家の庭。木製の床など自重で簡単にぶち抜くミィがいるので、足場に配慮した結果だ。時刻はお昼真っただ中で、朝ごはんはすっかり消化されて腸に送られている頃。今なら大抵のご飯は美味しく頂けるだろう。

 そしてそのご飯を食べる側である花中は――――庭の中心で、椅子に座らされていた。

 動物達曰く、花中は今回の主賓だからそこで偉そうにしておけ、との事。夏の日差しの真下に居るが、周囲に霧散している微細なミリオン達が大気の熱を吸い取り、花中の周りはエアコンでも利いているかのように涼しい。

 更に花中の手には既にお箸と取り皿を持たされ、取り皿にはタレであるポン酢醤油が入っている。両手が塞がった状態では手伝いなど出来ず、庭に出てから花中は完全なお客様待遇を受けていた。おもてなしされて嫌な気持ちになどなれる筈もないが……庭に居ては、家の中にあるキッチンの様子は窺い知れない。

 故に、フィア達が持っている鍋の中身を花中は全く知らない訳で。

「……み、みんな、どんなお鍋を作ってくれたの、かなぁ……?」

 頑張って言葉だけでも楽しく振る舞うも、心臓の高鳴りは嫌なものしか感じない。監督役であるミリオンが許可を出しているので食べてはいけない物は出てこない筈だが……

「はなちゃんの準備は良いかしら?」

「……お腹の方は」

「それなら大丈夫ね。たくさん胃液を出しとけば、大概のモノは消化出来るから」

 察してくれるかな、と思い遠回しに言ってみたが、ミリオンは分かった上で無視してきた。

 どうやら諦めるしかないらしい。

「は、はは……お腹、壊さないと良いなぁ」

「よーし、それじゃあ一番手は……」

 乾いた笑い声を浮かべる花中の声は、ミリオンの活気ある声に掻き消され――――

 

 ―――― フィアの場合 ――――

 

「ふっふっふっ。やはり花中さんの一番の友達である私こそが先発に相応しいというものでしょう!」

 一番手を名乗り出たのは、フィアだった。片手には小さな土鍋が乗せられていて、お鍋からは白い湯気が昇っている。

 鍋から漂う湯気は花中の方まで漂い、鼻の奥をくすぐった。悪いものではないが、奇妙な香りだ。このような匂いを放つ食材に、花中はとんと心当たりがない。

 それは好奇心をくすぐるのと同時に、不安を掻き立てる。小心者である花中の中でどちらの感情が成長著しいかは、語るまでもないだろう。

「実のところ料理には興味がありましてね。初めての調理でしたが我ながら上手くいきまして全く自分の多才ぶりが恐ろしいです」

「そっかー。興味あったなら、言ってくれれば、色々教えたのになぁ。わたしの好物とかー」

 自信満々なフィアに、花中はぼそりと後悔の念を呟く。

 花中は知っている。フィアの『好物』を。

 花中は知っている。フィアが他者の都合など一片も考えない性格であると。花中(じぶん)に喜んでもらいたい ― 正確には、喜ぶ花中の顔を見たい、であるが ― のは本心からだが、その『喜び』の基準が自分の中にしかない事を。

 であるならば、その鍋の具材は一つしかない訳で。

「はいどーんっ!」

 威勢良く開けられた鍋を、花中は目を細めながら覗き込み――――

 ……浮かんでいたのは、肉団子のようなものだけ。特段、変なものは見当たらなかった。

「あ、あれ? 普通……?」

「……何か勘違いされてるかも知れませんが一応花中さんと私の好みが違う事は知っていますから。それなりに配慮はしています」

「あ、そ、そう、なんだ……」

 だったら申し訳ない反応の仕方だったかな、と思う反面、まだ何か罠があるような……とも考えてしまう花中。

「さぁさぁ花中さんどうぞお食べくださいな♪」

 しかし悲しきかな、フィアは持っている鍋を花中の方へと突き出し、食べるよう促してきた。のんびりじっくり考える時間はくれないらしい。

 基本小心者な花中は流されるまま、震える手で箸を掴み、改めて鍋と向き合う。

 ……第一印象の通り、鍋自体に不穏さはない。

 スープは透き通っており、色は出ていない。どうやら水炊きのようだ。ぷかぷかと浮いている肉団子はどれも表面が非常に滑らかで、元の食材が何かは判別が付かない。正体が分からない物を口に運ぶのは恐ろしいが、具体的な代物……例えば『足』とかも見当たらないので、視覚的不快感を覚える事もなかった。

 それでも身体が動かないのは、鍋から放たれる圧倒的プレッシャーの影響か。いや、何故鍋にプレッシャーがあるのか分からないが、兎に角本能が警報を鳴らしている。迂闊に手を出せばどうなるか……

 等と警戒していると、ふと、鍋の底の方に緑色の物体がある事に花中は気付いた。まさかイモム……とまで考えたが、よく見ればそこまで太くない。丁度、春菊ぐらいの大きさか。恐らくは野菜の類だろう。仮に野菜でなくとも、植物には違いない。

 植物確定の物体と、得体の知れない肉団子。

 どうせ食らうならば前者の方が人間的にはマシである。論理的道筋を立てれば最早怖いものなどない。花中は箸を鍋に突っ込み、緑色の救世主を引き上げた。

 クロモだった。

「……………は?」

 呆気に取られて何度か瞬きしたが、箸が摘まんでいるのは何時まで経ってもクロモだった。

 クロモとは、日本原産の水草である。外来種であるカナダモと形態的に似ており、現在はそのカナダモに生息地を追われているとされる水草だ。ちなみにアメリカなどでは逆に侵略的外来種として猛威を振るっている水草として有名である。

 つまるところ、水草である。

 ……何故水草が鍋に入っているのか?

「……え、何コレ?」

「ふふん。人間は肉ばかりでは飽きてしまう贅沢な生き物のようですからね。個人的には好みではありませんが生まれ故郷の池にあった水草を入れてみました。まぁワカメみたいなもんだと思ってください」

 水草は被子植物、ワカメは藻。動物で例えるとクジラとウミウシぐらい違う。料理人がクジラ肉と言ってウミウシを使ったら詐欺だし、子供がウミウシを捕まえるノリでクジラ漁を始めようとしたら全力で止めねばなるまい。

 いやいやしかし世の中には代替魚のような、種は違うが味や食感が似ている食材もある。もしかしたらクロモとワカメだって――――等と蜘蛛の糸より細い希望に縋る花中だったが、クロモを鼻に近付けたところドブ臭さが漂ってきた。コレはどう料理したところで野菜の領域には達しない、水草でしかない『物体』だと本能的に察する。

 食べ物じゃない。食べられるかも知れないが、断じて『食材』ではない。

 だけどフィアは、花中に食べてほしくてコレを用意した訳で。

「……………食べなきゃ、ダメ?」

 駄目元で訊いてみれば、フィアは首を傾げる。

「……食べてくれないのですか?」

 それどころか不安そうに、なんだか泣きそうにも見える眼差しを向けてくる始末。

 色んな意味で心が脆い花中に、これを突っぱねる精神的強度などある筈もなく。

「たた、た、食べるよ! はむっ!」

 殆ど無意識に、水草を口の中に放り込んでいた。そして力いっぱい噛み砕く。

 ……総評から言えば、普通に不味い。

 不味いが、しかし食べられないほどかと言えば、そこまで悪くもない。シャキシャキとした歯応えは嫌いになれないし、ぶっちゃけ味は殆どない。欠点らしい欠点がドブ臭さしかなく、それさえも悶絶するほど強烈という訳でもない。正直、罰ゲームや闇鍋でこれを食べても拍子抜けするだけだろう。抵抗するように強張る喉を無理やり鳴らし、どうにか胃に押し込めた。

 これぐらいなら、まだ食べられる。

 少しだけペースを取り戻した花中は、今度は茶色い肉団子を箸で掴む。先程よりはいくらか冷静で、クロモの時はすっかり失念していたポン酢醤油に浸ける事が出来た。それを小さく、だけど味が分かるぐらいには囓る。

 今度は、意外と美味しかった。

 滑らかな舌触りに、とろける食感。それだけでなくプリプリとした歯応えの素材が練り込まれており、噛んでいて楽しい。例えが浮かばない独特の風味があるものの、花中的には面白くて興味深い。味に関しては、全体的にエビのような感じで案外好みだ。自然ともう一口囓り、じっくりと味わう。ポン酢醤油との相性も良く、ここに白いご飯があったなら……と想像したら涎がじわじわと口の中に溜まってきた。

 欠点を挙げるなら、塩味などがしないので味に締まりがない事か。野生動物であるフィアに、塩分や糖分の添加は思い至らなかったのだろう。今のままでは料理と言うより、練り潰した食材に火を通しただけである。しかしこれでも十分に美味しい。調味料で味を整えれば、間違いなく『美食』の域に達する。何より既知から逸脱した味覚に、心が小躍りした。

 しかし、一体これはなんだ?

「うん、これは美味しい……でも、なんだろうコレ? エビっぽいけど……」

 抱いた疑問は思わず口から出ていて、

「スズメガのサナギです」

 フィアはすぐに答えてくれた。

 ……答えを聞いて、花中は凍り付いた。

「……さなぎ?」

「はいっ! 花中さんに是非とも食べていただきたく昨日一日町中の土を掘り起こして一生懸命集めました!」

 ああ、一生懸命集めたんだ……微笑ましい言葉になんとか笑みを浮かべようとした花中だったが、口元が引き攣るだけ。上手く笑えない。

 挙句胃袋が嫌なうねり方をしている。

 込み上がる衝動に身を任せれば、楽にはなるだろう。しかし今この瞬間に()()()()訳にはいかない。これはフィアが一生懸命、自分のために作ってくれた料理なのだから。幸いにして使われた『食材』は想定内の品物。それにスズメガは東南アジアでは食材として親しまれていると聞く。大体味は良かったのだ。調理前の見た目だけで料理の価値を決めるなど愚の骨頂。食とは、食べてなんぼである。

「そ、そうなんだ……うん、お、美味しかった、よ。その、よく、固められた、ね。サナギの中身とか、ドロドロ、してそう、なの、に」

「ふふん。ちょっとした工夫がありましてね」

「……工夫?」

「ナメクジをつなぎとして入れてみました!」

 訊かなきゃ良かった。

 調子に乗った数秒前の自分を叱責したいが、生憎花中の身体にそんな余裕はなかった。胃袋がブレイクダンスを始め、乙女的思考回路が暴徒化し、口の中が駆け上る濁流に慌てふためく。本能が必死に全身を宥めているが、日本的文明社会に浸って十五年の理性は言う事を利かない。

 それでも気合いと根性でどうにかこうにか抑えていたが……フィアが語り始めてしまった。やれ「ナメクジを山盛りで捕まえた」とか、「ぬめりを取った後の個体はぶつ切りに」とか。自慢話の宿命か無駄に詳細で、お陰でフィアの行った『調理工程』が脳裏に浮かんでしまう。胃袋の中を、殻のないでんでん虫が這い回るイメージが湧いてくる。

 耐えられたのは、三十秒に満たなかった。

「おろろろろろろろろろろ」

「!? 何故吐くのです!?」

 胃の中身を盛大に吐き出すのを以て、『一番の友達』から振る舞われた初料理は終わりを告げるのだった。

「……なんで花中、吐いてるの?」

「さぁ? それにしてもスズメガ団子って美味しいわねぇ。ナメクジのほのかな風味が食欲をそそるわ」

「アンタ味覚ないって言ってたじゃん。まぁ、美味しいのは同意するけど。あたしも小さい頃はよく食べたもんだよ。懐かしいなぁ、この香り」

「……猫って甲殻類は食べちゃ駄目だったと思うんだけど。昆虫は系統的に甲殻類に近いから、オススメはしないわよ」

「食べ過ぎなきゃ平気だし、加熱すると駄目な成分は分解されるから大丈夫……多分」

 尚、人外達には好評だった模様である。

 

 ―――― ミィの場合 ――――

 

「うう……フィアちゃん、ごめんなさい……」

「いえ口に合わなかったのなら仕方ありません。次はもっと美味しいものを用意しますね」

「……期待しておくね」

 苦笑いを浮かべつつ、フィアがあまり気に留めていない事に花中は安堵した。一生懸命作った物を吐かれたのだから、もしかしたら酷く落ち込むのではと心配だった故に。『次回』への不安はあるが、自分が精神的に鍛えれば乗り越えられるだろう。一応昆虫は、人類史的には『食材』なのだから……ナメクジについてはノーコメントだが。

「今度はあたしの番ね」

 さて、一悶着が終わり花中が水で口をゆすいでいると、今度はミィが花中の前に立った。

 彼女もその手には湯気を昇らせている小振りの土鍋を持っている。フィアと違い『地肌』に熱々の鍋を乗せているミィだが、身体機能の操作によって放熱量の調整も自由自在な彼女。百度ぐらいの物体なら平気で持てるのだろう。

 湯気は風に運ばれ、花中の鼻に到達。嗅いでみると肉の香りがした。花中とて育ち盛りのお年頃。特段好物というほどではないが、良質のタンパク源であるお肉には幾らか惹かれるものがある。

 これは、もしかすると期待出来るかも?

「見て驚くんじゃないよ……それっ!」

 興味を持った花中を見て、ミィはしたり顔を浮かべながら鍋の蓋を開けた。ほわっと溢れた湯気と共に露わになったのは……灰色の具材がたくさん浮かぶ光景。

 なんだろうと思い覗き込めば、その灰色の物が肉だと分かった。スープの色は無色透明で、恐らくフィアと同じく水炊きなのだろう。茹でたお肉は白っぽくなる。なんて事はない、ごく自然な変化だ。

 ただ、鍋の中に肉がぎっちりと詰まっているのはどうなのか。いや、そもそもこのお肉、何肉なのか? 湯気の中にある香りは、鶏でも豚でも牛でもない独特なものだった。恐らく、市場では中々お目に掛かれない動物だと思われる。

「えと、これは……?」

「鹿だよ」

 試しに訊いてみれば、ミィからはそのような答えが返ってきた。

「泥落山でね、捕まえたんだ。あそこは他にもイノシシとかクマとかヘビもいるけど、最初に見付けたのが鹿だったからね。新鮮で美味しいよ!」

 つまり、見付けた動物次第ではクマ肉やヘビ肉だったかも知れないのか……等という不穏な考えを振り払い、花中は再び鍋の中身に目を向ける。

 鹿肉を食べるのは、花中には初めての経験である。

 とはいえスズメガやナメクジと違い、鹿は獣である。豚や牛を日常的に食べている花中からすれば、食材と認識しやすい生物だ。それにジビエ料理は最近流行っているらしく、少し興味があった。

「ほほう鹿ですか。どのような味でしょう」

「下準備はしてたみたいだし、臭みとかはなさそうね。まぁ、私には分からないものだけど」

 フィア達も関心があるようで、ミィの持つ土鍋を覗き込む。花中が箸で肉を一つ摘まむと、続いてフィア達も『素手』で沸き立つお湯に指を入れ、肉を取る。

「えと……では、いただきます」

 そして花中の『号令』に合わせ、一人と二匹は同時に鹿肉を口へと放り込んだ。

 もぐもぐと、しっかりとお肉を噛み砕く。

 分厚く切られた肉からは、たっぷりと肉汁が溢れてくる。家畜ではなく野生の獣なので油分は少なく、獣臭さは強いが、この辺りは好みの問題だろう。それよりも肉の味が濃厚で、市販の安物肉とは比較にならない。ポン酢醤油にも良く合い、これまたご飯が進みそうである。

 不満点など何処にもない。

 ……何処にもないのだが、しかし。

「普通ですね」

「普通ね」

「え? あ、えと、お、美味しかった、です」

「刺激がないと言いますか面白味がないと言いますか」

「見栄えも良くないわよねぇ。やっぱ彩りがないと」

「いや、あの、な、何事も、凝り過ぎると、万人受けしない、ものです、し」

「というかこれは料理なのですか? 鹿を茹でただけのような」

「どこぞの離島のサルは、食べ物を海水に浸けて味付けするらしいわよ。味に関して言えば、それ以下ね」

「そ、素材の味を前面に出した、大変、上品なもので……」

「うん、花中ありがとう……でもなんか、余計惨めになるからもう止めて」

 なんとかフォローしようとする花中だったが、ミィに止められ言葉が途切れる。

 そう、このお鍋――――普通なのだ。

 フィアのお鍋が未体験の感覚を味わえたのに対し、ミィのお鍋は拍子抜けするほど普通だ。鹿肉を味わうのは初めてではあるが……「ああ、わたし今、鹿肉を食べてるんだぁ」以上の感想が出てこない。吐きたい訳ではないが、あのような刺激を体感した後では些か『退屈』である。

 更に言えば、肉しか入っていないので味が単調なのもよろしくない。人間は均一な味を好まないもので、もう少し具材の種類がないと……言い方は悪いが、飽きる。

 要するに、

「……ごめんなさい。フィアちゃんのお鍋が、色んな意味で、強烈で……その、地味?」

「ちっくしょおおおおおおおおっ!」

 料理とは、食べる順番も大事なものである。

 

 ―――― ミリオンの場合 ――――

 

 無事で済むとは思っていなかった。

 しかしながら被害を受けるのは専ら花中(じぶん)で、ミィがどんよりと落ち込むとは思っていなかったが。

「うぅ……地味って……地味って……美味しいのに……」

「えと……ご、ごめんなさい……」

 謝ってはみたが、ミィは中々立ち直ってくれない。どうやらミィとしてはかなりの自信作だったらしい。

 そう言えば、猫は人間と比べ味蕾 ― 味を感じる細胞の名称だ ― が極端に乏しいと聞く。食べ物で重要なのは味ではなく、匂いらしい。成程、確かにあの鹿鍋の香りは良いものであった。ミィにとっては、さぞ()()()()()であった事だろう。

 ただ人間、特に現代人は複雑な味覚が食の基本となっている。ミィのシンプル・イズ・ザ・ベストな『料理』とは、相性が良くなかった。

 ……はてさて。

 フィアの料理が終わり、ミィの料理も終わり。残すは生物ですらないモノが一体。

「うふふ。真打ちは最後にビシッと登場しないとね」

 ミリオンは上機嫌に、花中の前へと躍り出た。

 その手にはやはり小さな土鍋が乗っていた。湯気も漂っている。登場時の見た目は、先の二匹となんら変わりない。

 されど一つ、確かな違いがある。

 湯気に含まれている香りだ。フィアのお鍋は知らない ― 今思えばメインであるスズメガのものなのだろう ― 香りで、ミィのは肉の香り。どちらも素材の色が全面に出ていた。

 しかしミリオンの鍋から漂うのは、それら素材一辺倒の匂いではない。勿論素材が分からなくはないが、多種多様な匂いが混ざり合い、複雑にして深みのあるものを作り上げている。

 これぞ正しく、料理の香りだ。二度に渡って出てきた『素材に火を通した』だけの代物とは明らかに違う。

「さぁ、これが私の手料理よ」

 満を持してミリオンが蓋を開けると、鍋からもわっと白い湯気が溢れる。勿体ぶるように中身を覆い隠すそれは、やがて静かに消えていく。

 そして明かされる、真っ赤なスープ。

 鮮やかな赤色に浮かぶ具材の数々。そして鼻をくすぐる酸味のある香りは間違いなく――――

「ふわぁ……! トマト鍋、ですねっ」

 お洒落で女子力の高い鍋の登場に、花中は自然とテンションが上がった。魚であるフィアは『正体』を調べようとしてか念入りに匂いを嗅ぎ、ミィは花中と一緒に鍋を覗き込む。

 浮かんでいる具材は野菜とお肉がバランス良く、多様な種類が確認出来た。色合いも考えられているようで、最早芸術品にも通じる美しさだ。漂う香りは一瞬でそれがトマト鍋だと知らせるのと同時に、じっくり堪能すればその奥底にある野菜の甘味と肉の旨味を感じ取れる。いや、見えている素材だけではここまでコクと深みのある香りは作れまい。恐らく何種かの香草も隠し味としてブレンドしている。沸騰寸前の熱さなのかコトコトと微かに聞こえてくる音も耳障りが良く、煮崩れしてない具材は歯応えも楽しめよう。

 五感全てを満たしてくれるに違いない料理を前にして、胃袋がはしゃぎ、生唾を飲んでしまう。独り暮らしの身なので花中も頻繁に料理はするが、ここまで魅力的な料理は作れた事がない。感動や尊敬の念を抱き、だがそれ以上に沸き立つ食欲が抑えきれない。

「ふふん。私は恋する乙女よ? これでもあの人が生きていた頃は毎日手料理を作ってたんだから。味覚がないから味見は出来ないけど、分量はちゃんと覚えてるから味は再現出来た筈。あの人も美味しいって言ってくれたし、腕前は保障するわよ」

 すっかり食欲に飲まれた花中を見て、ミリオンは満足げに胸を張る。その誇らしげな態度に相応しい料理を前にして、最早花中も我慢の限界。否、どうして我慢する必要があるのか。この料理は自分に出された物だ。自分にはこの料理を頬張り、堪能し、全てを胃に収める権利がある。

「あ、あの、食べても、良い、ですか?」

「勿論。お腹を空かせた子供に意地悪するような趣味はないもの」

 子供呼ばわりされた花中であるが、そんなのはどうでも良い。名誉やプライドなど、三大欲求の前では吹けば崩れる砂上の楼閣だ。今はこの料理を味わうのが最優先。

 そんな花中の気持ちを見越してか、ミリオンがすっと手渡してきたのはオタマ。成程これでスープと具材を一緒に掬うのかと、花中は有難く受け取っておく。そして即座に鍋の底へとオタマを突入させた。

 ――――この時、花中がもう少し冷静だったなら。

「あのー花中さんなんだか嫌な予感がするので一旦コイツから詳細を訊いた方が」

 せめてフィアのこの言葉を聞き取れるぐらいには、落ち着いていたなら。

 或いは未来は変わったかも知れない。しかし花中は友からの忠告に耳を傾けもせず、欲望のまま鍋に沈めたオタマを持ち上げ、

 底に溜まっていた、ドロリとした赤褐色の『何か』を掬い上げてしまった。

「……へ?」

 思わず出る、呆けた声。

 オタマから伝わるずっしりとした重みは、その『何か』が水を主成分とした表層のトマトスープよりも遙かに高密度である事を物語る。今までコイツが鍋底の熱を一身に引き受けていたのか、オタマの中でゴポゴポと沸騰していた。さながらマグマのようである。

 そして弾けた気泡から漂う湯気が花中達の鼻に到達

「だわろぶっ!?」

 した瞬間、ミィが吹き飛んだ。比喩ではなく、本当に。

「えっ!? どうじびっ!?」

 困惑する花中だったが、一拍置いて自身の全身が総毛立つ。目には涙が浮かび、鼻水がどばどばと溢れ、口からは噴き出した涎がこぼれ落ちる。血管が萎縮し、内臓が逃げるように暴れる。やがて全身の細胞が、ある一つの結論を導き出した。

 辛いっ!

 鼻を直撃したのは、『辛み』だった。恐らく唐辛子を主体にしつつ、様々な香辛料をブレンドしたもの。これ自体は女子力の高さを物語るだけだが……しかしながら問題はその濃さだ。

「あば!? ごっ! おっ! ンゴゲアァァァアアアッ!?」

「うわぁなんか酷い声が出てますよアイツ……死ぬんですかね?」

 ミィが、人智の及ばない苦悶の叫びを上げていた。嗅覚が著しく退化したと言われる花中(人間)ですら、怯み、泣いてしまったのだ。人間の数万~数十万倍の嗅覚を誇る猫には、この化学兵器染みた臭いは耐えられなかったようである。同じく嗅覚に優れるフィアが顔を顰めつつも平然としているのは、哺乳類と魚類の違い故か。

「うふふ。早速それを見付けるなんて、はなちゃんもお目が高い。本当はちょっとずつスープの味が変わるように仕掛けたものだけど、今回はお鍋も小さいから、いきなりそのスープで味わっても良いわよ」

 目の前で地獄絵図が繰り広げられているに関わらず、ミリオンはおっとりぽわぽわしたまま。年頃の乙女らしく微笑んでいる。どうやらこの危険物体Xは、純粋な好意から出来上がったものらしい。

「な……んなのごればぁぁぁ……! 油断じでっおもっおもっきりすいごっおごごごっ!?」

「何って、私特製のオリジナルスープよ。ハバネロをメインに、その他色んな香辛料を混ぜ込み、煮詰めて作ったの。『あの人』もこれが大好きだったのよ♪」

 悶絶するミィが問い詰めると、ミリオンは照れたように身体をくねらせながら答える。

 花中は驚愕した。だって、どう考えても()()()()()、人の食べ物ではないのだから。

「えっ……た、食べさせていたの、ですか? コレを?」

「勿論。初めて作ってあげた頃は涙と鼻水を流しながら美味しいって言ってくれたのよ。まぁ、十年も食べ続けていたら流石に泣かなくなったけど、毎回残さず食べてくれたから、気に入ってくれてたみたい」

 頬を赤らめ、思い出を語るミリオン……シチュエーションさえちゃんとしていれば少しはしんみりとなったろうに、目の前で刺激臭を漂わせる煉獄料理があっては涙など枯れてしまう。

 しかしながらミリオンの『想い人』も、中々どうして逞しい。恐らくミリオンを傷付けまいとして吐いた嘘なのだろうが、それを十年続けた ― 以降はついに慣れたのか、それとも演技が上手くなったのか ― のだから驚愕である。ミリオンの愛は最早狂気の域だが、相手も同じぐらいミリオンを愛していたようだ。

 ……ちなみに、花中にそこまでの『愛』はない。愛はないが、しかし恋する少女の思い出をぶち壊す勇気もない。愛する人に食べさせていた料理が、実は危険物だったなんて伝えられるものか。

 いや、それだけではない。

 この料理は、ミリオンの『愛する人』が想いを貫いた結果だ。最後まで守り通した幻想であり、例えこの世を去ろうと残り続ける愛が形となったもの。しかし守り手がいなければ、愛はやがて露と消える。

 ならば自分が、この愛の守り手になろう。

 人は亡き人の想いを引き継ぎ、力に変えて、前へと進んできたのだから!

 ……ここまで本気で格好付けないと、煉獄を掬ってしまったオタマをこれ以上動かせそうになかった。

 恐る恐る、花中はオタマを取り皿の上まで運び、静かによそう。が、緊張と恐怖のあまり手が震え、べちゃりと落としてしまった。

 ただそれだけの刺激で、肌が痛くなるほどの『香り』が辺りに漂う。

 やはりどう考えても、人の食べ物ではない。

「(お、お、お、おち、落ち着けぇぇぇ……唐辛子の辛味成分であるカプサイシンは、温度が高いほどその効果が高くなる。つまり冷ませばある程度は辛味を抑えられる。そもそも辛味とは口の中で感じる痛み、即ち痛覚だから、限界まで冷やして口の神経を麻痺させれば感じなくなる筈……!)」

 生命の危機に直面した脳細胞はフル稼働。辛味を抑える方法を模索する。

 花中はフィアに箸と取り皿を預けると、庭から駆け足で家の中へと戻り、台所へと向かうや冷凍庫を開けて氷を口に突っ込む。手など洗わない、そんな暇はない。口を窄め、氷と口内全てを密着させて急速冷却。あまりの冷たさに身体が色々悲鳴を上げるが気にも留めない。

 限界まで口を冷やしたら、氷を噛み砕きながら庭へと帰還。キョトンとするミリオンを一瞥したのも束の間、フィアからお皿と箸を返してもらうや全力で皿の具材に息を吹き掛ける。湯気が見えなくなるぐらい冷ますと、いよいよ花中は箸を構えた。

 口にはまだ砕いた氷が残っていて、感覚のない舌を冷やし続けている。料理は気温程度には冷ました筈なので、これ以上時間を掛けても『対策』とはならない。むしろ口内の氷が残っているうちが最良条件だ。

 躊躇すればするほど、自分の寿命は縮んでいく。

「い、いた、だき、ま、ふっ!」

 箸で摘まんだ、出来るだけ小さな肉片を花中は口の中へと放り込み、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悲鳴が、町の彼方まで轟いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、おこちゃま達には厳しかったのかしら?」

「花中さんも野良猫も見た目からして子供ですからねぇ。この刺激的な味は早かったのでしょう……んっふぅぅぅ……結構なお味でした。ごちそうさまです」

「え? 残り、全部食べちゃったの?」

 ちなみに唐辛子に含まれるカプサイシンは、種を磨り潰して食べてしまう哺乳類向けの『対策』だと考えられている事を付け加えておく。




魚がカプサイシンを大量摂取して平気かは知りません(ぉぃ) 鳥が平気なのは知ってるのですが、魚は調べても良い感じの情報が見付からなくて……
一応民間療法的な感じに、飼ってる魚の消毒に使う時があるとかないとか。なので弱くはなさそうですが、しかし食べ物の消化が悪くなるという話も。魚は喋ってくれないので、案外地獄の苦しみに浸っているかも知れませんね。

さて、次回は第五章【母なる者】の第一話。
1/29(日)投稿予定です。

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