機動戦士ガンダム0084 ―砲撃戦線―   作:リゼルC型

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第9話「砂塵が渦巻く嵐の中で」

「なんだ、今の衝撃は!」

連邦兵の一人、恐らく指揮を執っていたであろう兵が叫ぶ。

連邦兵は明らかに混乱していた。

それを見たセリエズが口元に笑みを浮かべる。

(連中にとっても予期せぬ事態と言うこと・・・推測が合っていれば今のは・・・)

リーシュが、ちらりとセリエズを見て、ユイとアイコンタクトを取った。

混乱している連邦兵の方へと、一人の連邦兵が駆け寄った。恐らく索敵担当だろう。

「今のは・・・砲撃です!距離、約二万三千!」

セリエズがちらりとアレシアに視線を送る。頷いたアレシアが立ち上がって、連邦兵達に言った。

「さあどうする?うちの援軍が来たぜ?お前らに勝ち目があるかな?」

これはハッタリだった。セリエズ達は自分達が向かうジオン基地の兵力に関しては詳しく知らないのだ。だが、余裕の表情で言い放ったアレシアに、連邦兵達は動揺した。

「黙れジオンが!おい、MS隊を発進させろ、一機たりとも基地に寄せるなよ!」

上官と思わしき兵が叫んだ。MSパイロットでは無いのであろう兵達が残り、セリエズ達に銃を突きつけた。

「お前たちはジオンに渡さんさ。『エース部隊』だって話だしな?」

一度、おとなしくする素振りを見せるか・・・と考えていたセリエズが、その言葉に反応し、鋭い目でその兵を見据えた。

「おい・・・そいつをどこから聞いた?」

 

一方、連邦軍基地から約2キロ・・・

「第一射、弾着確認。第二射、発射と同時に突撃部隊を行かせろ」

ザクタンク(砲撃仕様)のコクピット内で、ジオン軍アリゾナ砂漠基地MS中隊隊長、ガンス・ジルヴァは言った。

「了解。第二射、発射。」

それと同時に、ドム・トローペン1機、ドワッジ1機、ザク・デザートタイプ2機、グフカスタム1機からなる突撃部隊が、連邦軍基地目掛けて走行を開始する。

機動性の高いドム・トローペンとドワッジが先頭に出て、ラテーケン・バズとジャイアントバズ改を発射する。轟音と共に、弾丸が放たれ、基地の滑走路に着弾した。

同時にバズーカの後方から吹き出た、高熱を伴う空気に吹き飛ばされて砂漠の砂が舞い上がる。

ザク・デザートタイプの一機が、腕部の3連装ミサイルポッドを撃ちつつ前進する。もう一機は立ち止まり、腰に搭載された2連装ミサイルポッドを撃った。

その着弾地点の炎の中から、連邦のMSが現れる。

「来やがった!」

グフカスタムが、モノアイを光らせ、シールドガトリングを撃ちつつ走行する。距離を詰めたグフカスタムに、ジム改がビームサーベルを抜いて応対する。

MS同士の戦闘が始まった。

 

ユイが、連邦兵の一人の腹部にパンチを叩き込む。

だが、真横から別の兵に銃を向けられる。

「しまっ・・・」

「やらせるか!」

アレシアがその兵を殴り飛ばす。

セリエズが抵抗をして始まった乱戦は、セリエズ達の不利に進んでいた。

地の利も、数の利も、違いすぎる。

「くそっ・・・!」

「隊長、大丈夫ですか!」

「なんとかな・・・」

リーシュとセリエズが背中合わせになりながら銃を撃つ。

だが、長くは保たなかった。

追い詰められかけたそのとき、窓の外から何発もの銃弾が撃ち込まれた。

連射された銃弾は、明らかに連邦兵たちを狙っている。

セリエズが振り返ると、割れた窓の外に、「ワッパ」が浮いていた。


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