新たに出現したパワード・ジムが、セリエズ機の視界に映る。
「残るはヒート・ホークのみか・・・」
そう呟き、セリエズが加速する。
パワード・ジムはハイパー・バズーカ改をセリエズの機体に向け、数発撃ってきた。
「くっ・・・!」
数発の砲弾は、セリエズ機の回避を封じるような位置に向けて放たれている。セリエズは、砲弾と砲弾のギリギリの隙間を抜けるようにして突っ切った。
第二射が、同じように放たれる。
避けられない。
そう直感したセリエズは、ついさっき撃破したMSの装甲板がすぐ側に浮いているのを手に取り、バズーカの砲弾に投げつけた。
砲弾が爆発する。その中を、シールドを前面に出すようにして突き進み、接近戦へと持ち込んだ。
パワード・ジムが、真横へとブーストしつつ、武器をビームサーベルに持ち替える。
「動きが今までと違う・・・」
セリエズが呟く。
セリエズの機体は、ヒートホークを手にパワード・ジムへと一直線に接近し、格闘攻撃の範囲に入るか入らないかのギリギリのラインで左へ飛びのいた。パワード・ジムが振ったビームサーベルが空振りする。
「横ががら空き・・・!」
ザクⅡF2型が右手でヒート・ホークを振る。
だが、パワード・ジムは手首を切りかえし、ビームサーベルでそれを受け止めた。
「くっそ・・・!」
ヒート・ホークがビームの刃に切断された。
セリエズのザクⅡF2型が、空いている左手でパワード・ジムの腕をアッパーで殴りつける。衝撃で、パワード・ジムの手からビームサーベルが離れた。
セリエズはブースターを全開にし、肩のトゲを前に突き出しタックルした。
これには相手も驚いたらしい。
「なっ・・・!?」
セリエズは、弾かれた敵機の右腕を掴んだ。
接触回線が開き、セリエズは叫んでいた。
「何故、今さら出て来た!」
パワード・ジムが、左手でセリエズ機の頭部を殴りつける。
「貴様一人落とせない奴など、ティターンズには要らないからだ!」
「だったら貴様も・・・!」
セリエズはパワード・ジムの腹部を蹴りつける。
ザクⅡF2型は、パワード・ジムのビームサーベルを柄の部分が浮いているのを手に取り、パワード・ジム自身の腹部に突きつけ、叫んだ。
「要らない人間だなあぁっ!」
「はぁ・・・はぁ・・・」
セリエズは、乱れる息を整えながら、大気圏へと向かうコムサイに向けて加速した。
「間に合え・・・間に合ってくれ・・・!」
8機を相手に1機で戦うのは初めてだった。
朦朧とする意識の中、セリエズはコムサイに向けて手をのばす。
そして、記憶が途切れた。