機動戦士ガンダム0084 ―砲撃戦線―   作:リゼルC型

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第3話「地獄の業火の上で」

「何だ・・・何だアイツ!」

ジム・キャノンⅡのパイロットが叫ぶ。

現在残る4機は、ジム・キャノンⅡ、ジムコマンド、ジム改、ジム・クゥエルだった。

「落ち着け!十字砲火を仕掛ける、各自散らばれ!」

ジムコマンドのパイロットが叫ぶ。

彼らは、セリエズのザクⅡF2型を取り囲むように移動した。

セリエズが小さく笑う。

「誤射しないよう位置取りしているが・・・」

そうすると、セリエズは、ジム・キャノンⅡとジムコマンドの間を抜けるようにブーストを吹かせて移動した。

それを追うように、ジム・キャノンⅡとジムコマンドが射撃を続ける。

セリエズ機を挟んで、ジム・キャノンⅡとジムコマンドが一直線に並んだ瞬間、セリエズは真上にブーストした。

二機の間にいたセリエズ機がいなくなった事で、結果的にジム・キャノンⅡとジムコマンドの撃った弾がお互いに当たる。

「こう動けば自滅するだろ?十字砲火の位置取りは常に変えていくもんだ」

セリエズがそう言うと同時に、ジムコマンドが爆散する。

ジム・キャノンⅡは、持ち前の装甲で耐えていた。

セリエズは、そのジム・キャノンⅡのキャノン砲に、ジムカスタムから奪ったジムライフルを撃ち込み、迎撃手段を減らして接近する。

ジム・キャノンⅡのバルカンを掻い潜り接近すると、今まで撃ってきたジム改とジムクゥエルの射撃がぴたりと止まった。

既に数機が、意図的に引き起こされた誤射で破壊されている。当然の判断だった。

セリエズは、ヒートホークを取り出し、慌ててビームサーベルを持とうとしたジム・キャノンⅡの肩関節に叩き込んだ。

頭部にもヒートホークを叩き込み無力化すると、セリエズはコクピットにジムライフルの銃口を押し付けた。

「味方殺しは連邦だろうと軍法会議だろ?だからさ、俺が人思いに殺してやるよ。感謝して死にな」

「なっ!?お前が・・・」

接触回線で相手の声が聞こえるのを無視して、セリエズは残ったジムライフルの弾を、コクピットに全弾撃ち込んだ。

 

「大気圏突入まであと3分・・・!」

ユイが告げる。

圧倒的な実力を見せ付けることで、敵MSの注意は全てセリエズ機に向いている。リーシュは出来る限り落ち着いて、大気圏突入の手順をこなしていった。

「隊長なら戻ってくる」

リーシュが焦るユイにそう言ったが、彼自身も内心では焦りを感じていた。

大気圏での戦闘は何より時間が大切だった。時間内に戻れなければ、燃え尽きて死ぬ運命となる。

「隊長なら戻ってくるよ・・・」

もう一度、リーシュは呟いた。

 

「残るは二機・・・」

セリエズが呟く。

ジム改とジムクゥエルが射撃武器を向けてくるが、気にはしなかった。

「残りはシュツルムファウストとグレネード、そしてヒートホーク・・・」

武装が減り、機体が軽くなっている為か、機動性が多少上がっている。

ジム改がバズーカを撃つが、左へと回避する。

続いて発射されたジム・クゥエルのビームライフルを、最小限の動きでかわすのと同時に、セリエズはフットペダルを踏み込んだ。

ジム改とジム・クゥエルの間を抜ける軌道で移動する。

セリエズ機とジム改、ジムクゥエルが一直線に並ぶと同時に、両機が射撃をやめる。

同じ手は食らわないと思ったのだろう。

「その瞬間が隙になるんだよ」

セリエズ機は、ジム改のコクピットハッチをヒートホークで剥ぎ取り、ザクⅡF2型のグレネードを、コクピットの中に直接叩き込んだ。

「やめろおおお!」

それが、ジム改のパイロットの最後の声になった。

ジム改が爆散する。バズーカの弾頭に誘爆して、それまでより大きい爆発が広がった。

爆炎の中に必死でビームライフルを撃つジムクゥエル。

だが、爆炎の横から飛び出していたセリエズは、クゥエルの背後に回り込んでいた。

ジムクゥエルのバックパックにシュツルムファウストを撃ち込む。

ジムクゥエルは爆発した。

「敵機を殲滅・・・帰還する」

だが・・・

「たかが一機の残党機も落とせないのか、まったく」

新たに現れたパワードジムが、セリエズ機の視界に映る。

 

大気圏突入まで、残り1分。


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