機動戦士ガンダム0084 ―砲撃戦線―   作:リゼルC型

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第21話「フィラクのこだわり」

シミュレーター内に再現されたアリゾナ基地周辺地域に、セリエズのザクⅡ改フリッツへルムと、フィラクのドム・トローペンが立つ。

セリエズの武装はザク・バズーカをシールドに懸架、MMP-80マシンガンを腰の後ろに懸架、右腰にグレネードと、左腰にシュツルム・ファウスト、ヒートホークを装備している。

フィラクはラテーケン・バズを腰の後ろに懸架、MMP-80マシンガンを手持ちし、シュツルム・ファウストとグレネードを腰に装備し、背中にヒート・ソードを装備している。

お互い、殆ど同じ装備だった。

相手がどこから来るかも分からないため、お互い索敵となる。

「・・・で?何故、模擬戦を提案したのか、理由を聞かせてくれるか?どうもただ実力を上げたいといったような様子じゃなかったが」

セリエズが音声のみの通信画面で質問する。

「俺は、『エース』と呼ばれてた人を知ってる・・・」

「質問の答えになっていないな」

「セリエズ・シュテイン。お前が『エース』の名に相応しいか確かめたかったからだ!」

語気を強めてフィラクが言う。それは彼自身の、こだわりのような物なのだろう。だが・・・

「なんだ、くだらない。」

セリエズはそれを一言で全否定した。

「な・・・っ!」

フィラクも怒りのせいか言葉に詰まる。そのままセリエズは通信を切ってしまった。

フィラクのドム・トローペンは、砂煙が派手に上がらないよう低速で移動していた。

セリエズが、基地内部の滑走路を歩行しているのを発見したフィラクは、武装をMMP-80マシンガンからラテーケン・バズに持ち替える。

その時、セリエズの機体の動きが、格納庫の近くで止まった。

その場で立ち止まったのだ

「バズーカの的だ・・・!」

相手がわざわざ動かない対象になってくれるとは好都合。

セリエズがラテーケン・バズを放った。

 

(誘いに乗った・・・!)

基地内部の滑走路を歩行していたセリエズは、フィラクがこちらを狙っているのに気付くと格納庫の側で立ち止まった。

フィラクが放ったバズーカの砲弾をMMP-80マシンガンで撃ち落とし、ブーストを吹かせて格納庫の扉を突き破り、その勢いのまま格納庫の裏側の壁にヒート・ホークで穴をあけて裏側へと出た。

アリゾナ基地は、滑走路を中心に大小多数の建造物がいくつも建っている他、多数のコンテナが置かれ、地下にMSが通れる通路が平面上で入り組んでいる構造になっている。地下の通路にも、コンテナが積み上げられており、本来は車が行き来できる道路だったらしいが、コンテナだらけなので

地上の構造物の隙間を通っていくのと大して変わらない状態だった。本末転倒なのだが、物陰も多くなっており連邦からの攻撃を受けてもそこら中の物陰から奇襲をかけることが出来る。

格納庫の裏を突き破ったセリエズは、物陰を通り地下へと続くスロープ状の入り口へと向かった。

だが・・・

その頭上に、ドム・トローペンが飛翔する。

セリエズが爆発にまぎれてどこかへ隠れた事に気付いたフィラクは、建物の上をホバーで伝い、建物から建物へ飛び移る際はホバーの出力を急激に上げてその勢いで飛び移りつつ、セリエズを探したのだ。

「見つけるのが速い!?」

セリエズが驚愕する。

セリエズの頭上を跳び越し、後方へと着地したフィラクはホバーと遠心力を生かして急激に方向転換、ヒート・ソードを両手で持ち突きを一閃する。

カィン!

その一撃は、振り向くと同時に、セリエズがヒートホークで間一髪受け流され右上にそれた。

先程格納庫を突き破った際、ヒート・ホークを使用したために既に手持ちの状態だったのだ。

攻撃が受け流されると必ず、そこに一瞬の隙が出来る。

受け流した勢いのままセリエズはヒート・ホークを振るが・・・。

ガッ!という音と共に、ヒート・ホークを振った腕が上方に跳ね上がる。

「なっ・・・」

フィラクがヒート・ソードを持っていた手を片方だけ放し、肘打ちで腕に攻撃し上方へ跳ね上げたのだ。

フィラクはそのままザクⅡ改を殴ろうとするが、セリエズはブーストで飛び離れ、地下通路へと入りすぐに角を曲がった。それを追いかけようとしたフィラクだが、少し戻ってコンテナを手に取った。

(角を曲がったのは誘いだな・・・)

そして、曲がり角にコンテナを放り投げる。

案の定、飛び出したコンテナに反応したセリエズのザク・バズーカによってコンテナは爆炎に包まれる。

「コンテナッ!?」

驚くセリエズに本能的な恐怖が走る。

爆炎の中から飛び出したフィラクがヒート・ソードを横薙ぎに振るが、コンテナが囮だと反射で感じたセリエズが後ろに飛びのいた事で、紙一重の差でセリエズには届かなかった。そのザクⅡ改の手にはグレネードが握られている。その手から投げられたそれは、フィラクの頭上を跳び越し・・・

「しまっ・・・!」

フィラクが気付いた時には遅かった。

崩れたコンテナがドム・トローペンを襲い、身動きが取れなくなる。

セリエズは地下通路の奥へと進み、道路と道路がいくつも合流して広場のようになっている所を、最寄りの出口に通じている部分へと進んでいた。

崩れたコンテナを払いのけたフィラクが後に続く。

地下通路を出た瞬間にザク・バズーカの砲撃が飛んできたが、フィラクは難なく回避する。

砲弾の飛んできた方向にドム・トローペンを旋回させ、MMP-80マシンガンを連射する。

弾丸が地面にいくつもの跡を穿ち、ザクⅡ改へと殺到する。

セリエズは右へ、左へとザクⅡ改を動かしそれを回避するが、ドム・トローペンがMMP-80マシンガンの弾倉を素早く替え、撃ち続けながら追いすがる。

そして、射撃をかわし続けたセリエズのザクⅡ改の背中が、基地の外壁とぶつかる。

「壁際・・・っ!?」

「誘い込んだぞ!」

フィラクの叫びと共に、ラテーケン・バズが放たれる。

それは行き場を失ったザクⅡ改へと一直線に飛び・・・

爆発が起こった。


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