機動戦士ガンダム0084 ―砲撃戦線―   作:リゼルC型

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第16話「救済の弓矢」

アレシアが戦場に駆けつける、少し前・・・

 

カティスのワッパが基地へとたどり着く。

だが、ヴァイス・トート隊のメンバーを全員回収しなければ作戦は終わらないのだ。

「悪いけど、もう二人の回収が済むまで、ここで待機してて。悪いけど、基地の案内は後でいい?」

カティスが言う。

が・・・

「冗談じゃない、他ならぬ俺たちの隊長の脱出作戦なのに、俺たちをのけ者にするってのか!?」

「落ち着け、アレシア。だが、アレシアのいう事も一理あるだろうな」

アレシアとリーシュの抗議を受けて、カティスが顔をしかめた。

「あんた達ならそう言うと思ったけどね・・・、今から行ったって、間に合う確証は無いのよ!?」

カティスが言い返す。動きに合わせてショートカットの髪がひらひらと揺れた。

「戦力は不足しているんだろう。だったら増援は好ましいはずだ」

リーシュが言い募る。

カティスがため息を吐いた。

「もう勝手にして。空いてるMSは・・・さっき撃墜されたワッパに乗ってたパイロットのザク・キャノン。もう一機はドム高機動試作機。名称に関しては高速実験機とも言うけどね。あとはギガンだけど・・・さすがに使わないでしょ。で、格納庫はあっち側、あんた達とも顔なじみの整備兵がいるから、そっちに話を通しておいて。」

「了解、感謝する」「ありがとよ、カティス」

二人はそう言って格納庫に駆け出した。

その背中を見送って、カティスは目線を上げる。

そこには、ドム・トロピカルテストタイプの姿があった。

 

「まさか・・・ガイリッシュ?ガイリッシュ爺さんじゃねぇか!」

アレシアの驚いた声が格納庫に響く。

「おうよ、アレシア。元気にしとったか?ま、その様子じゃ元気そうだがな。リーシュも変わりないようで何よりじゃ」

整備長のベルスト・ガイリッシュは豪快に笑った。

「んで、ザク・キャノンとドム高機動試作機だな?今すぐ出せる状態になっておる、安心せい」

「さっすが爺さん、空き機体の整備にも余念が無いっすね!」

アレシアが調子に乗る。

「ま、アイツらが空き機体になったのには、事情があってな。使ってやれば前のパイロットも喜ぶだろうさ」

ガイリッシュの視線に、何かを感じた二人がしばし無言になる。

「そんなら、前のパイロットの無念を晴らす活躍をしてやんないとな!」

アレシアが、場を明るくしようと発言する。

「そうだな、その通りだ」

ガイリッシュのしわだらけの顔に、笑みが刻まれた。

 

そして・・・現在。

出来る限りの速さで駆けつけたアレシアが、ジム・コマンドライトアーマーと対峙する。

フィラクが驚きに目を見張る。

「あの機体・・・アブロン隊のドム高機動試作機!?しかし、アブロン隊は全滅したはずじゃ・・・」

同時に、通信画面から声が響く。

『その声・・・アレシア君!またボクと遊んでくれるんだね♪』

『ああ・・・遊んでやるぜ?何度でも付き合ってやるよ、お前が死ぬまでな!』

「アレシア・・・?ヴァイス・トート隊のメンバーのアレシア・ネイス軍曹では?」

サガンがフィラクに語りかける。

「そう・・・だな。」

 

180mmキャノン装備の陸戦型ジムの足元を、爆風と衝撃が揺らす。

ザク・キャノンの砲撃が足元に直撃したのだ。

「ふん、狩りの獲物は活きが良いほうが愉しいからな」

陸戦型ジムのパイロット、ハイドレインジャ・イドラゲアがにやりと笑って呟く。しかし、そんな彼に通信が入る。

「余裕の表情をしていられるのも今のうちだぞ、ハイドレインジャ」

「ほう、リーシュ・クリエルか。面白い。今日こそ貴様を狩ってやろう」

陸戦型ジムが180mmキャノンをリーシュの機体の方へ向け、撃つ。

それを・・・

ガインッ!

リーシュはキャノン砲で撃ち落した。

風向、重力の影響、お互いの弾速。全てを理解し、それを実行してのける離れ業。

「そうだ、そうだ、そうだ!獲物はそうでなきゃァァァ!」

ハイドレインジャが狂ったように叫ぶ。

「いつも通りの貴様で何よりだな」

リーシュが、腰に装着されたミサイルポッド『ビッグ・ガン』を撃ちながら応えた。

 

シィィッ!

空気が切り裂かれる音。

ドム高機動試作機のヒートランサーを、ジム・コマンドライトアーマーが綺麗にかわす。だが、かわした先を読んでアレシアがタックルを入れる。

フリージアは咄嗟に、両手を機体の前面に出しそれを防いだ。

しかし、衝撃までは殺しきれず、機体の足が砂の上を滑った。

「愉しいねぇ!最高の気分だよぉ、またアレシア君と遊べるなんてねぇっ!」

ジム・コマンドライトアーマーがビームサーベルを振る。しかし、ドム高機動試作機の回避の方が速かった。

お互い、接近し格闘を叩き込む隙をうかがい、しかし自らの隙を見せないようブーストで常に位置を変え続ける。

「今っ!」

「アハハハハハハハハっ!」

お互い、相手の機体に向かって突っ込んでいく。

ドム高機動試作機のヒートランサーの大質量の一撃は、姿勢を低くしたジム・コマンドライトアーマーの頭部を横薙ぎになぎ払った。

ジム・コマンドライトアーマーのビームサーベルの蜂のような一撃は、ドム高機動試作機の左腕を斬り落とした。

ゴゥ・・・ンという音と共に、ドム高機動試作機の左腕が砂漠の砂の上に落ちた。

大質量の前に弾け飛んだジム・コマンドライトアーマーの頭部は、少し離れた地面に、ひしゃげた姿で転がった。

ドム高機動試作機の全身のダクトから熱風が排熱される。

相打ちだった。


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