機動戦士ガンダム0084 ―砲撃戦線―   作:リゼルC型

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第15話「狂気」

ビームサーベルとビームサーベルが激突する。

Ⅰフィールド同士が干渉し、プラズマが走る。

だが、ホバー機能が裏目に出て、セリエズの装甲強化型ジムが押され始める。大地に踏ん張る事が出来ない分不利なのだろう。

「ちっ・・・」

セリエズは素早くホバーを「OFF」にし、バックパックと脚部のスラスターを吹かせる事で押し返す。

勢いに押され陸戦型ガンダムが一歩後退する。MSの重量を受け、足元の地面に砂煙が立つ。

その内、陸戦型ガンダムがバランスを崩した・・・かに見えた。しかし。

そのまま押し込もうとした装甲強化型ジムに、陸戦型ガンダムが蹴りを叩き込む。追撃しようとした勢いが乗っていたところにカウンターが入ったのだ。

コクピットに衝撃が走り、セリエズと共に乗っていたユイが声にならないうめき声を発する。

陸戦型ガンダムのビームサーベルが袈裟切りに振り下ろされるのを、ビームサーベルの角度を斜めにすることで受け流すセリエズ。しかしグレモリーは、左手のビームサーベルで追撃を繰り出す。

バックブーストで間一髪交わした所に、陸戦型ガンダムが腰に装着していたロケットランチャーを右手に持ち替えて放つ。装甲強化型ジムは爆炎に包まれた。

「これで終わりだとしたらつまんねぇぜ!?」

だが、爆炎の中から装甲強化型ジムが飛び出す。ダメージによってリアクティブ・アーマーが剥がれた状態になりながらも、ビームサーベルの攻撃の鋭さはより一層増していた。

「そうだ、そう来なくちゃなあぁっ!!」

「グレモリィィィーッ!」

装甲強化型ジムのビームサーベルが真っ直ぐに振り下ろされるのを陸戦型ガンダムが左に回避し、隙を狙ってビームサーベルを振る。それを装甲強化型が受け止め、蹴りを入れようとする。陸戦型ガンダムが飛びはなれ、バルカンを連射するが、機体のダメージをものともせずにセリエズが突っ込む。ダメージによってリアクティブ・アーマーが剥がれるごとに、機体そのものは軽くなるため、機動性が上がる。ビームサーベルを振っては受け止め、かわし、受け流し・・・それは一瞬の油断が「死」に繋がる戦で、だからこそ・・・

「セリエズ・シュテイン!なかなか楽しませてくれる!だが!」

「黙れ、黙れ、黙れぇ!」

激突が激しさを増していった。

 

「入り込む隙すらない・・・」

ドムトローペンに乗ったフィラクが、ジム改にゼロ距離でバズーカを撃ち込みながら呟いた。

彼には、セリエズ達の邪魔をしようとする敵をサガンと共に撃退することしか出来ない。天才と呼ばれた彼がだ。

その時、砲撃音が轟いた。

それと同時に、異常な速度で接近するMS。

「基地からの増援・・・二機か」

先ほどの砲撃は、陸戦型ジムの180mmキャノン、異常な速度で接近して来たのはジム・コマンドライトアーマーだ。

「ボク達だけ基地で居残りなんてつまんないーっ!隊長が出てるんだしぃ、ボク達も遊びたーぃ!ねぇねぇ、ボクと遊んで死んでってぇ♪」

ジム・コマンドライトアーマーのパイロット、グラナートロート・ルシファー隊のアマレロ・フリージアが少女のように高いはしゃいだ声で言った。

彼は本来、男ではあるのだが、少女のような可愛らしい外見をしているためよく性別を間違えられる。中身は毒蛇なので、手を出した物は全員嬲り殺しにされたが。

「さて・・・狩りと言う名の虐殺を始めようか」

陸戦型ジムのパイロット、ハイドレインジャ・イドラゲアが冷徹に言った。

 

フィラクがジム・コマンドライトアーマーに向けてラテーケン・バズを放つ。

だが、フリージアはあろうことか、バズーカの砲弾をビームサーベルで切り裂いた。

爆炎の中、高い機動性を生かし接近するジム・コマンドライトアーマー。

ドム・トローペンが即座にMMP-80マシンガンに持ち替え連射する。しかし、全弾かわされた。

ジム・コマンドライトアーマーが斬りつけてくるが、ドムトローペンは機体を回転させてかわし、そのままタックルを入れる。

「いったぁーい!何すんのさぁ!」

フリージアのかん高い声に、フィラクが思わず顔をしかめる。

ヒート・サーベルはグレモリーに溶断され使えない。フィラクは左手でジム・コマンドライトアーマーを殴りつける。さらに、右手を手刀にして叩き込もうとするが、即座に体勢を立て直したフリージアに両断された。

「キャハハッ!甘いね♪」

ドム・トローペンの脚部に砲撃が直撃。右足のホバー機能が破壊され、関節そのものも破壊されたため動けなくなった。

「何だと?味方機の射線上に誘い込んだか」

「そうだよぉ!じゃ、バーイバイッ!」

フリージアのビームサーベルが高々と振り下ろされる。

(天才と呼ばれた俺が・・・やられる・・・!?)

時が遅くなった気がした。

ビームサーベルが、迷うこと無くドム・トローペンのコクピットへ振り下ろされていく。

(くっ・・・!)

フィラクが半ば諦念すら覚えた瞬間。

ジム・コマンドライトアーマーすら凌駕する速さで戦場に接近するMS。

「この俺が遊んでやる!お前の相手はこの俺だーっ!」

眩いほどの、閃光。

だが、光に惑わされる事無くジム・コマンドライトアーマーが飛び離れる。

フリージアがはしゃいだように言う。

「その声・・・アレシア君!またボクと遊んでくれるんだね♪」

「ああ・・・遊んでやるぜ?何度でも付き合ってやるよ、お前が死ぬまでな!」


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