「ガンス中隊長、暗号通信が・・・」
「どこからだ?」
ザクタンク(砲撃仕様)のコクピットで、二人の男が会話をかわす。
複座型に改造されたザクタンクは、戦場への指示と砲撃を担当するガンス・ジルヴァと、操縦及びガンズの補佐を担当するシェイド・アルサルフの二人で運用していた。バックパックにアンテナを搭載し、指揮能力を上げている。
シェイドは困惑した表情で言った。
「その・・・連邦のMSから、ジオン残党の周波数で・・・」
一部では名指揮官と言われるガンスも、目を見張った。
「・・・・・・内容は?」
「その、『我、ヴァイス・トート隊隊長、セリエズ・シュテイン。連邦ノMSを強奪シタ、至急合流スル。』との事ですが・・・、罠でしょうか?」
「連邦のMSを強奪して脱出・・・あいつらなら出来るが、罠の可能性もある。新たに出撃するMSに関しては様子を見つつ、敵か味方かを判断する。警戒は怠るなよ」
「了解」
そう言ってシェイドは、戦闘を続けるパイロット達にガンスからの指示を通した。
ドワッジが、弾切れになったジャイアントバズ改を投げ捨て、ヒート・サーベルに持ち変えた。
陸戦型ジムが、ミサイルランチャーを構えドワッジに向けて撃つ。
ホバー特有の機動で回避するが、左肩に被弾。
「・・・っ!」
コクピットに衝撃が走るも、そのまま陸戦型ジムに向け、胸部の閃光弾を放つ。
相手が一瞬動きを止めた隙に、ドワッジはヒート・サーベルを横薙ぎに振る。陸戦型ジムの胴体にヒート・ソードが食い込み火花を散らし、やがて陸戦型ジムは両断された。
コクピットから、歩兵が慌てて脱出するのを見つけたドワッジは、歩兵に向けてバルカンを連射する。MSの武装の攻撃に晒された歩兵は、やがて被弾すると粉々に砕け散った。
「一機撃墜、敵兵の排除を確認っと」
ドワッジに搭乗していたワズリ・リムゲルはそう呟き息を吐くが、
「やべっ!」
ドワッジを咄嗟にバックブーストさせる。
その瞬間、さっきまで彼がいた位置を砲弾が直撃した。
「量産型ガンキャノンか・・・粋なマネしてくれるじゃんかよぉ?」
量産型ガンキャノンは、なおも砲撃を続けようとするが、真横から連射されたガトリングによって装甲にいくつもの穴が開く。
グフ・カスタムがガトリングを撃ちつつ、ヒート・ソードを抜刀する。
量産型ガンキャノンは、右のキャノン砲だけをグフカスタムに向けて撃つ。左側のキャノンは先ほどの攻撃で使えなくなったようだ。
「隙だらけぇ!」
ドワッジがヒート・サーベルを真っ直ぐに突く。同時にグフ・カスタムのヒート・ソードを振り下ろす。
コクピットに直撃したらしく、量産型ガンキャノンは動かなくなった。
「リジェイス、テメーの助けなんざイラネーよ、一人で充分だっての」
ワズリがグフ・カスタムのパイロットに文句を言う。
「ふっ、嘘つくなよ、あのまま無視したら撃たれてたぜ」
グフカスタムに搭乗しているリジェイス・アルバがバカにしたように言った。
ドム・トローペンがシュツルム・ファウストを片手に取り、ジム・キャノンに向けて構えた。
ジム・キャノンがそれを見て咄嗟に回避するが、回避した先はザク・デザートタイプの目の前だった。
「今だ、やれ」
ドム・トローペンのパイロット、フィラク・シグマが言う。
ザク・デザートタイプはヒートホークを大きく振り降ろす。
左腕が胴体の一部と共に切り落とされるが、ジム・キャノンはそれでも至近距離でキャノン砲を撃とうとする。
しかし、真横から、ドム・トローペンのシュツルムファウストが直撃した。
ジム・キャノンの残骸をよそに、フィラクはガンタンクⅡの頭部にヒート・サーベルを突き刺しつつ、ジム改をMMP-80マシンガンで蜂の巣にする。
ザク・デザートタイプのパイロット、サガン・ルリスは驚きの声を挙げた。
「天才パイロットと言われるだけありますね・・・」
「サガンは俺と二人で戦うのは初めてだったな」
「そうなんですよ・・・」
現在、基地を強襲した部隊は二つに分かれ、基地の南側と東側で戦闘を展開している。
ワズリのドワッジ、リジェイスのグフ・カスタムは東側、フィラクのドム・トローペンとサガンのザク・デザートタイプは南側で。
南東から、ザクタンクがそれを支援していた。
セリエズの装甲強化型ジムは、倉庫を出ると、基地の南側へと出た。
だが、基地の外へ出た瞬間、ドム・トローペンが斬りかかってきた。
「なっ!?」
驚きながらそれをかわすセリエズ。
体勢を立て直す暇など与えずに来る連撃を、セリエズは右手でいなした。
そして、ドムトローペンに接触回線を開く。
「やめろ!こちらはヴァイス・トート隊のセリエズ・シュテインだ!基地から聞いてないのか?」
フィラクは驚いた。
「ヴァイス・トート隊が来るとは聞いたが、連邦のMSで来るなどと聞いてはいない」
「ああ・・・そうだよなぁ、誰だって疑うよな、俺が悪かった」
セリエズは、軍歴証明書のデータをドム・トローペンに送る。
「こいつで信じてもらえるかな?」
フィラクは偽造の可能性を考えたが、少し思考をめぐらせた後、今は信じる事にした。
もし敵で、こちらを騙す気なら、こちらに攻撃して来るだろうが、今の所その様子はないし、もし攻撃してきたらその時は潰せば良いだけの事。
「・・・わかった」
とフィラクは返答した。