「くっ・・・」
セリエズが身体を起こす。
墜落したワッパの残骸が、彼の視界に入った。
「危なかった・・・」
「そうね」
墜落寸前で、ワッパを飛び降りたセリエズとユイは、周囲を見渡した。
「まだ連邦基地の敷地内かよ・・・」
そう呟くと同時に、連邦兵が視界に入り、とっさに身を隠す。
「どう脱出する?」
ユイの問いに、セリエズはしばし考え込んだ。
「手段はある。が、行けるかな・・・?」
「全員殴り飛ばして出てくとか?私それならできるよ?」
「ユイにできても俺には無理、というかユイでもさすがに無理だろ。」
「冗談冗談。で、脱出の手段って?」
「さっき管制室で基地の全体像を見たろ?この辺なら、少し行けば第3MS格納庫に着くはず。ただ、少し走る必要があって・・・見つからないかが問題なんだよ」
「それ以外の手段がないならそれで行くしかないんじゃない?向こうの兵が集まってこないって事は、私達の乗ったワッパの墜落地点をまだ割り出せてないって事だから・・・」
「わかった。じゃ、隙を見て合図を出すから、一気に斜め左の方に駆け抜けるよ」
「了解」
アレシアとリーシュはワッパでの脱出に成功、無事にガンスの元までたどり着いていた。
「久しぶりだな・・・と言いたい所だが、今は無理だ。セリエズ、ユイの二人も回収しなければならん。あの二人なら大丈夫だとは思うが・・・」
ガンスの言葉に、カティスが頷きながら言う。
「一年戦争以来だし、再会を喜びたい所ではあるんだけどね」
「そんな堅苦しいのどうでもいいって。それより基地まで何kmほどある?」
「20km程だ、カティス、この二人を基地まで送ってくれ。俺は二人を待ちつつ支援射撃を続ける」
「了解。さ、二人とも行くよ」
アレシアとリーシュがワッパに捕まるのを確認して、カティスはワッパを発進させる。
その後ろで、砲撃音が轟いた。
「無事・・・着いたな」
「そうね」
MS格納庫のコンテナの陰に隠れながら、セリエズは上を見上げた。
そこには、RGM-79[GRS]、通称「装甲強化型ジム」の姿があった。
「コクピットまで無事たどり着ければいいが・・・整備兵に見つからずにたどり着くのは・・・」
「私が囮になる。セリエズはその隙にMSを起動させて、私を拾って」
「ユイ・・・!駄目だ、危険すぎる!」
「セリエズ・・・大丈夫、私は帰ってくるから。あなたの為に」
そう言ってセリエズの額にキスし、ユイは飛び出して行った。
呆然としたセリエズだけが、一人コンテナの陰に取り残された。
「今・・・ユイ・・・」
唖然とした表情のまま呟いたセリエズの表情が、少しずつ真剣な表情に変わる。
セリエズは、コクピットへと続く通路へ駆け出した。
「あ~あ、隠し通せなかった。隊長どう思ったかな・・・」
ユイが駆け出しながら呟く。
「敵兵!?格納庫に侵入者だ!」
どこかから声が聞こえてくる。
数人の兵がこちらへ銃を構えるのを見て、ユイが手近にあったコンテナの影に飛びこみ、時折コンテナの陰から撃ち返す。
(食いついてくれた、あとはこちらに気を引かせてセリエズの起動を待つだけ・・・)
もう一度、コンテナの陰から撃ち返す。今のユイはMS庫へ向かう際に倒した連邦兵から入手したアサルトライフルを使用していた。
再び数発撃って弾装を交換する。
ユイは自分の感情が落ち着かないのを感じていた。それが隙になった。
「・・・っ!」
ユイが人の気配を感じて振り向き、咄嗟にその場を飛びのこうとする。
鮮血が散った。