今後はノーマルのペースになります。
といってもしばらくは訳あって投稿できないのですが。
ワッパの射撃によって割れた窓から、砂塵を含む風が舞いこんだ。
「飛び乗って!脱出する!」
ワッパのパイロットが、窓の外からそう叫ぶ。女性の声だった。
セリエズは、はっと我に返った。
「ワッパに4人も乗せられない!」
「大丈夫、もう一台来る!」
その言葉と同時に、もう一台のワッパが来た。それを見てセリエズはリーシュ達に指示を出した。
「リーシュとアレシアは一台目に!ユイと俺で二台目に乗る!」
その言葉に従い、リーシュとアレシアは、窓に近づく。
だが、強風が吹いているせいか、窓とワッパの距離は安定しない。
アレシアが息を吞み、そして歯を食いしばる。
「落ちるなよ・・・!」
そう言ってアレシアがワッパに飛び乗った。
追いかけてきた兵をユイが引きつけ、その隙にリーシュも飛び乗る。
だが、運が悪く、特に強い風が吹きつけ、リーシュが足を踏み外す。
「・・・っ!」
落下しそうになるリーシュ。その手をアレシアがしっかり掴んだ。
「握ってろ!」
ワッパのパイロットが機体のバランスを建て直し、リーシュとアレシアはワッパに飛び乗ることに成功した。
そしてユイとセリエズが二台目に飛び乗ろうとした時、ワッパに基地の砲台から放たれた機関銃の銃弾が浴びせられた。
「がっ・・・」
二台目のワッパのパイロットが、頭に直撃を受ける。
頭部は一発で消し飛び、首の動脈から血が吹き出る。そのままパイロットはバランスを崩し、ワッパから落ちていった。
操縦者が無くなったワッパもバランスを崩しかける。
ここは最上階で、階段は敵兵に占拠されている。
そこまで一瞬で考えたセリエズは、バランスを崩しかけたワッパに飛び乗った。
急いで操縦桿を握り、姿勢を立て直す。
「ユイ、乗って!」
セリエズが窓に向かって手をのばす。
その手をユイが握り、ユイがワッパに飛び乗った。
「後部ローターが損傷してる・・・さっきの被弾か!」
セリエズは歯ぎしりした。このままでは長くは飛べない。
加えて、先ほどの砲台が再び機関砲を撃ち始めた。
一時攻撃が止んだのは、仕留めたと思ったからだろうか。
ワッパの小回りと最大限に活かしそれを回避するが、またしても後部ローターに被弾した。
今までバランスを保っていたワッパがついにバランスを崩す。
「ち・・・くしょっ!」
「ひゃ・・・!」
地上に落下していくワッパを、出来る限りバランスを保つようにする。
だが、落下を食い止めることは出来ず、ワッパは地面に擦り付けられるように墜落した。
「カティスのワッパより通信。ヴァイス・トート隊の二人は確保、残りの二人は行方不明だそうです」
ガンスはそれを聞き、むぅ・・・と唸った。
本来、MS隊が基地を攻撃、囮になっている隙に二機のワッパによってヴァイス・トート隊のメンバーを回収、という流れになる予定だったのだが、ここに来て流れが狂ってしまった。
少し考えた後、ガンスは指示を出す。
「MS隊はそのまま戦闘続行だ」
「よろしいので?」
「しばらく待っても音沙汰無しなら、二人は戦死したものとする。だが、待てるだけ待とう」
ガンスは、砲撃仕様のザクタンクの中で指示を出しながら、援護射撃を続行した。
「戦闘続行だ!」
グフカスタムが、ジム改のコクピットにヒート・ソードを突き立てながら、他のパイロットに指示を伝える。
突き立てた瞬間、オイルとも血ともつかない液体が噴き出し、グフカスタムに付着する。
ザク・デザートタイプの一機が、ミサイルポッドが弾切れになった事で、ヒートホークを構えて突っ込む。
「バカ、やめろ!」
ドワッジのパイロットが叫ぶ。
突っ込んでいったザク・デザートタイプは、ジム・キャノンの砲撃によって脚部を撃ちぬかれる。バランスを崩したまま、不自由な姿勢でザク・マシンガンに持ち替えようとするが、目の前に量産型ガンキャノンの100mmマシンガンが突きつけられる。
「ひっ・・・」
それが最後の声になった。
100mmマシンガンを胴体に集中的に食らい、ザク・デザートタイプは鉄屑と化した。