IS × AC ~空を駆る深緑の瞳~   作:幻想迷子

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一か月半近くとある理由で居なくなって捻り出したのは千文字短い一話のみ。

リンクスを名乗れないな、私。


第三話 染空の部屋

クラス代表や決闘云々の事案があった後、私は無事にその日の授業を終え、放課後の教室で静かに座っております。

 

他にも一夏君と箒さんが居ますが、お二人はどうやら決闘の日まで剣道の稽古をするようで、今はその予定を話し合っているようです。

 

ISで練習出来ないのかと一夏君は言ったのですが、訓練機の数は限られてますし、アリーナも予約があるでしょう、と私が言うと素直に諦めてました。

その時の箒さんの声色がどこか嬉しそうだったのは久々に幼なじみと竹刀を交えられるからでしょう。

 

教室で話し合っているのは訳がありまして(杖の事とは別件で)、三限目の終了後に山田先生が私と一夏君に放課後残るように言われたからです。

...決してなにか悪事を働いた訳ではありません、きっと、多分。

 

私は何をしているのかというと、ISに録音しておいた今日の授業を再生して振り返っています。

それ以外にできることなんて数えられる程しかありませんしね。

 

少しして、教室に二人分の足音が近づいてくるのが聞こえてきました。

山田先生と...織斑先生のようですね。

...何故か織斑先生は教室外で待機してますけど。

 

「織斑君、染空君、居ますか?」

 

「はい、揃っていますよ」

 

山田先生の声にそう答えると、右手を持たれて手の平になにかを渡されました。

 

「これは...鍵ですか?」

 

「はい、染空君と織斑君には今日から学生寮で暮らしてもらうよう政府に要請されているので...」

 

ふむ、政府の要請ですか。

私は元より寮生活をするつもりだったので問題ないのですが――

 

「あれ?俺、一週間は家からの通学って聞いてたんですけど...」

 

――一夏君はどうも違うようですね。

危機感がないというかなんというか。

 

「多分、一夏君の安全の確保の為だと思いますよ。唯でさえ、存在が貴重なのですから」

 

「...そうなのか?」

 

「男性でISを動かせる時点で、かなり」

 

そこまで言って自分の希少性を理解したのか、一夏君は納得したようで成る程、と言葉を漏らしました。

 

「あ、でも荷物を取りに行きたいので――」

 

「その必要はない、私が持ってきてやった。これだけあれば十分だろう?」

 

織斑先生が満を持して登場。

入ってこなかったのはサプライズのつもりでしょうか?

何故か一夏君が本日何度目かの絶望混じりの溜息を小さく吐いてますが。

私の荷物はどうなっているのでしょう?

 

「染空の荷物は既に部屋に届いている、安心しろ」

 

「...ありがとうございます」

 

心を読まれるのは安心出来ませんが、荷物に関しては安心できました。

本当になんで心が読まれるのか気になる所ですが、今は別に聞きたいことがあるので一旦区切ります。

 

「それより...私と一夏君は相部屋なのですか?」

 

これが今私が一番気になっていること。

まかり間違っても女生徒と同じ部屋などあり得――

 

「いや、染空と織斑は別部屋だ」

 

――るかもしれませんね、これは。

 

「え?じゃあ俺と思希はそれぞれ一人部屋ってことか?」

 

「いえ、織斑君は篠ノ之さんと相部屋です」

 

「なんだと!?」

 

あー、一夏君は篠ノ之さんと相部屋なんですね。

(悪名)高い『天災』の妹と『ブリュンヒルデ』の弟という注目度(面倒事)高い(多い)二人を纏めておこうとい魂胆でしょうか?

確かにお二人に何かあったら国が滅ぶと言っても差し支えないですしね。

...冗談ですよ、織斑先生。

なので睨まないで下さいお願いします。

 

「いやそれは流石に箒に悪い気がするんですが...」

 

「そ、そんなことはないぞ!それに今から部屋割りを変えるなど先生方に迷惑が掛かるだろう!」

 

「でもよ、幼馴染とはいえ男女が相部屋ってのは不味いだろ」

 

まぁ、一夏君の言い分も正しい、というより正論ですね。

花の女子高生と男子高生を相部屋というのは流石にどうなんでしょう...

 

「なに、そんなことになれば私が直々に『注意す()』る、問題ない」

 

「私の考えを読んだうえで恐ろしいことを言いますね、織斑先生」

 

これほど説得力のある発言ができる方は織斑先生以外に私は知りません。

 

「で、でも部屋は一か月後にはまた変わりますから」

 

「今ではないのですか?」

 

「織斑君と染空君の入寮が決定したのが急だったので、部屋を用意できなかったんですよ」

 

「それは...ご迷惑をおかけします」

 

先程、一夏君は入寮を初めて聞いたようですし、私も入学手続きは入学式の二週間前でしたからね。

教師陣の方々にはだいぶご迷惑をお掛けしたのでしょう。

 

「と、なると私は一人部屋なのですか?」

 

これが問題です。

一人部屋は何も問題ないのですが、もしも見知らぬ誰かと相部屋になってしまえばその方にご迷惑をお掛けしますし...私も色々と気にしなくてはいけなくなりますし。

いっそ一夏君達の部屋に泊まってしまった方が――

 

「あぁ、染空は私と相部屋だ」

 

――は?

 

「えっと...聞き間違いですかね、今、私は織斑先生と相部屋だと聞こえたのですが」

 

「いや、正しく伝わっているな。もう一度言うが、染空は私と相部屋だ」

 

...嘘...ですよね?

織斑先生と、相部屋?

『あの』織斑先生と?

 

「...一夏君」

 

「うん?なんだ?」

 

「骨は拾ってくださ――痛ッ!?」

 

「失礼なことを言うな馬鹿者」

 

ゴスっと嫌な音が頭頂で鳴り鈍い痛みがじんわりと...失礼なことは言いましたがもう少し手心を加えてほしいです...

 

「ほう、どうやら不服と見える。良いだろう、その心意気を正してやる」

 

「え、ちょっと――」

 

織斑先生、襟を掴んで何をする気ですか?

あ、このまま部屋に連れて行くと、成程。

...誰か助けてくれませんか?

私、死因がゴミに埋もれてっていうのはちょっと――あぁごめんなさい!

引きずらないで!せめて抱えるなりしてくださーい!

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

一方、二人が去って行った教室にて

 

「...大丈夫だろうか?」

 

「ん?あぁ、多分大丈夫だ。思希がいなくなってから千冬姉、頑張ってたからな」

 

「...どういう意味だ?」

 

「まぁ...機会があれば分かるさ」

 

そんな会話が交わされたという。

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

さぁ、やってきました寮長室。

織斑先生はどうやら学生寮の寮長のようで、ここに着く迄に多くの視線を感じ、立ち止まったということは目的地に辿り着いたということでしょう。

 

因みに、織斑先生に引きずられて居たのですが、教師という立場か、はたまた面倒になったからか途中からは引きずるのを辞め、私の手を取って先導してくれました。

 

前者が理由だった場合、一夏君への罰は如何なものかと思いましたが。

 

織斑先生が寮長室の扉を開いたようで、扉の開く音の後、また手を引かれたのでそれに従って足を動かし、少しだけ歩いてから織斑先生が私の手を離しました。

扉の閉まった音の後に施錠音が聞こえたので、織斑先生が気を利かせてくれたのでしょう。

 

確かに、()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()ですし。

 

「...思希、もう目を使ってもいいぞ。この部屋に盗撮や盗聴の危険はないからな」

 

ほら、やっぱり気を利かせてくれてました。

名前呼びになったのは、今はプライベートだからということでしょう。

私も名前呼びさせていただきましょう、いつまでも気を張ってるのは疲れますから。

 

「では、お言葉に甘えて」

 

まずは目隠しを外して瞼を開きます。

この時点では視界は0。

 

次に、首輪を指で二度叩いて私の専用機のシステムを起こします。

 

――『瞳』の制御を解除してください

 

≪指示を受諾、『瞳』を起動します≫

 

頭の中に女性の機械音声(COMボイス)が響き、真っ暗闇から少しずつ光りが広がるように、視界が開けていきます。

 

また少し待てば、今まで通り3()6()0()()視界が開けて、――未だに慣れない感覚に顔をしかめながら――部屋の状況や織斑先生の様子が確認出来ました。

 

千冬さんがどこか心配そうに私の顔を覗いていました。

多分、顔をしかめたのがいけなかったのでしょう。

 

「...そんなに心配そうにしないでください。私は大丈夫ですから」

 

「!...見えているんだな」

 

「えぇ、ですから、お気になさらず」

 

余計な心配を掛けたくないのでそう答えましたが、千冬さんが未だに不安げな顔をしているので、別の話題...を?

 

「...つかぬ事をお聞きしますが――この部屋の掃除はどなたが?」

 

「む、なんだ。その含みのある言い方は。...まぁいい、この部屋は私が掃除している」

 

360度見えているにもかかわらず首を動かして見渡し、千冬さんの言葉に驚き、向き直ってしまいました。

 

「...人は変われるものなのですね」

 

「失礼な事を言うな馬鹿者」

 

手刀を頂きました。

 

ですが仕方ないでしょう?

この()()()()()()()()()()()()()()()()()部屋を千冬さんが作り出したと言うのですから。

 

(三年前まで)の話になりますが、千冬さんは家事全般が非常に苦手でした。

料理をすれば炭を生み、掃除をすればゴミが増える...一体何度私と一夏君で千冬さんの部屋の大掃除をしたのか。

ひと月に少なくて一回、多くて四回でしたか。

 

ですが、この部屋にはそんな昔の惨状を引き起こしていた本人によって清掃されたと言うではありませんか。

 

――彼女は本当に千冬さんか?

 

そんな考えが脳を過ぎりましたが、冷たい視線に冷や汗が出て鳥肌が立ったのでこれ以上考えるのは辞めました。

 

私だってまだ命は惜しいのです。

 

「これなら、もう一夏君や私がお世話をしなくても大丈夫ですね」

 

「!?」

 

感心してそう呟くと千冬さんが驚いたようで、直後に少し悲しそうな表情を...何故?

 

「わ、私の世話は嫌だったのか?」

 

「?...三年前でしたら、確かに少しめんd――で、ですが千冬さんのお役に立てていたので、とても嬉しかったですよ!」

 

面倒くさかった、そう言おうとしてしまいましたが、千冬さんがこの世の終わりのような顔をしてしまったので急ぎ取り繕いました。

 

「ほ、本当か?」

 

「えぇ、本当です。貴方に、織斑家に受け入れられたときから、私は貴方と一夏君の役に立てることを、今でも嬉しく思っていますよ」

 

そう言うと、千冬さんはまた悲しそうに――今度は哀れむような視線で――私を見ました。

 

「...だから、あの時、お前は自分を捨てたのか?」

 

あの時――千冬さんの言うそれは、きっと三年前のことでしょう。

 

...私は、私の選択に後悔はありません。

千冬さんの世間体への名誉が守れたのなら、私はそれで満足です。

ですが...千冬さんの言いたいことは、きっと別でしょう。

 

「...私自身を大事にしろというのなら、既にそうしてますよ」

 

「どの口がそれを言う...思えば、思希はいつもそうだったな。私や一夏の為に、自分を犠牲にする節があった」

 

「そうでしたか?」

 

「あぁそうさ。あの時(三年前)に限ったことじゃない、それ以前から――私がお前を預かった時からか、お前がどこか自分を蔑ろにしていたのは...」

 




前書きの消えてた理由はACfaでNとHでオールS取ったり暗い魂やってたりその他もろもろしたから。

粗製にも程がある。

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