東方神殺伝~八雲紫の師~   作:十六夜やと

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コラボ6話目です。
もうちょっと戦闘シーンを派手にしたかったのですが……私は戦闘シーンを書くのは苦手でして;;

次回がコラボ最終回となります。


陸話 白馬の焔

side ヴラド

 

「ヴァルバトーゼ。一つ聞きたいことがある」

「ほぅ、珍しいな」

 

紅魔館の上空で神殺とババアの闘いを眺めながら、儂はヴァルバトーゼに聞いた。

ヴァルバトーゼは雷神の如く戦う神殺に目を輝かせていた。手を縦に振っただけで放たれる極太の雷撃に感嘆の声をあげる。どうせ自分も戦ってみたいと思っているのだろう。

 

ヴァルバトーゼの妖力は底が見えないので、神殺の限界突破ぐらいの火力でないと勝つのは難しいだろうよ。――いや、ヴァルバトーゼもそうだが、切裂き魔も壊神も本気は出さないだろうな。

幻想郷が壊れる。

 

「貴様はかつて儂に『疎外感を感じたことはないか?』と聞いたことがあるな?」

「確かに言った」

「ならば儂からも質問しよう。――なぜ貴様は人の心を求める?」

「………」

 

ヴァルバトーゼは押し黙る。

儂は構わず質問を続けた。

 

「儂の知っている魔帝は……100年前の貴様は、少なくとも心を求めるような奴ではなかったはずだ。7000年以上の生で、なにゆえ今更『心』なんて複雑な代物を欲しがる?」

「……ヴラド、我は『心の祝福』を得た」

「マジか」

 

思わず言葉が砕けた。

え、心って貰えんの?的な。

 

「エリザベートは元人間であった、と貴様に話したな」

「あぁ」

「我は義娘がいる。だが――我には娘の気持ちというものが理解できんのだ。人間が好きで観察などをよくした。良いところも悪いところも知っている。しかし、それを完全に理解することができなかった」

「だから心を求めたと?」

「他にもあるが……大体はそうだ」

 

なるほど、だからヴァルバトーゼほどの吸血鬼は人の心を求めたのか。神殺も『人の心を求める吸血鬼、ねぇ。んな面倒なものを欲しがるなんて物好きだなぁ』と述べていた。

娘の気持ちを知りたい、か。

儂にとっては孫にあたる二人の吸血鬼だろうが、彼女らも純粋な吸血鬼(どうほう)であるから、人の心など知らなくても問題はない。

 

妖怪(わしら)が人間の心を、か。人間の畏れから生まれた存在が人の心を求めるなぞ、素晴らしいほどに矛盾しておるのぅ」

「それもそうだ」

「しかし……『命の祝福』と『心の祝福』。むしろ神殺に必要な祝福かもしれぬよ」

「紫苑に?」

 

その理由を話せ、とヴァルバトーゼは催促する。

 

儂は笑いながらレミリアを援護しつつババアと互角に戦う紫苑を見ながら、大きくため息をついた。

 

「儂が小僧――ツルギが元人造人間であったと知ったときは驚いた。恐らく紫苑と似ているというのも一つじゃろうが、ツルギという男が紫苑よりも人間らしい(・・・・・・・・・・)ことが一番衝撃的であったわ。造られた人間が皆あぁなのなら話は別であるが」

「紫苑は人間らしくないと言うのか?」

「普通の人間は己の命を失うことに抵抗があるじゃろ? ツルギは『命の祝福』を自ら求めたが……紫苑なら杏弦奏の救いを拒むだろうよ」

 

その思考が問題なんだが。

お陰様で儂等の説得にも首を振ろうとせん。

 

儂の勘なのだが、あの神殺は『人の枠から外れた存在だから、せめて人間らしく生きて死にたい』と思っていそうな気がする。だから杏弦奏の祝福を受け取るとは思えないのだ。人という種族に固執している……というべきか?

 

 

 

人間になろうとする八雲剣。

人間であろうとする夜刀神紫苑。

 

 

 

ヴァルバトーゼは忍び笑いをする。

 

「つくづく人間とは面白いものだな」

「儂がつまらない奴らと一緒にいると思うのか?」

「ないな。……ところで紫苑を助けに行かなくてもいいのか?」

「必要ないじゃろう。どこかの人造人間(・・・・・・・・)も動いていることだし――何やらツルギ以外の人造人間らしき輩も入ってきたようだしのぅ」

 

後半部分はヴァルバトーゼには聞こえない声で呟いた。

儂の能力〔創造する程度の能力〕で幻想郷と現世の境の結界付近に置いた神話生物に見張りをさせていたのだが……不思議なことに結界を破って侵入してきた者共がいるらしい。こじ開けてきた感じ、杏弦奏や八雲紫が招き入れたわけではないのだろう。

この戦いに介入してくることはないだろうけど、警戒しておいて損はないはず。

 

後に――儂らが去った後に問題が起こるが……まぁ、儂には関係ないわ。

この問題はツルギが解決するじゃろうて。

 

 

   ♦♦♦

 

 

side 紫苑

 

夕暮れの空、どれ程の戦闘が続いただろうか。

 

もう紅魔館の半分ぐらいが倒壊し、ババアと俺は満身創痍だ。レミリアは俺の『少年』の化身、フランはレミリアの手加減で目立った外傷が見受けられない。

 

ババアはゴスロリをはだけさせてロリコン紳士共をノックアウトするような艶かしい出で立ちとなっているが、ぶっちゃけ俺からしてみれば『ババア無理すんな』という感想。

俺は口の中に残っていた血を吐き出しながら悪態をつく。

 

「……くっそ、いい加減くたばれよババア」

「……汝こそ死に晒せ」

 

ババアが諦めないのは『フランドール・スカーレットという切り札』があるからだろう。俺が罪のない金髪幼女を殺すわけがないし、いざとなれば人質としてレミリアと俺の同士討ちを狙うこともできる。だからこそ接戦を演じている(・・・・・)ように見せかけているのだが。

中途半端な強者に接戦演じるのは疲れるぜ。

 

ぶっちゃけフランじゃなかったらババアごと殺したのは内緒。俺は正義の味方でもなければ格好いいヒーローでもないので、街にいた時のように老若男女殺すことに躊躇いはない。ただ……見知った顔を殺すにはフランに情が沸いているのも確かだけどな。

 

 

 

 

さて、まずはフランをどうにかしようか。

 

フランはババアの能力を受けて支配されてるから、俺の『戦士』で支配を解くことはできる。しかし、そうなるとババアは違う奴を支配しようとするからジリ貧になってしまう。『戦士』の多重使用も気合と根性で何とかなりそうだが。

なんか上空で高みの見物してやがる吸血鬼(オタク)共を打ち落として、半強制的に手伝わせる手段もあるが、それはそれでババアに支配されたら面倒。

 

しかし――ババアは俺が攻撃の手を止めた理由なんてわかってないよな。

コイツの慢心は今に始まったことじゃないし。

 

 

 

 

 

ん? なぜ今のタイミングになってフランを助けようとするのかだって?

ババアが俺に集中している&疲労状態、レミリアとフランの激闘が膠着状態。このタイミングが一番だと思ったからさ。

それにフランドール・スカーレットを助けるのは俺じゃない。

 

 

 

 

 

古今東西。

 

 

 

 

 

「ババア、俺に構っていていいのか?」

「汝以外に脅威となるものがいるか。そこの吸血鬼も雑魚にすぎん」

 

 

 

 

 

捕らわれのお姫様(フラン)を救うのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王子様(しゅごしゃ)の役目だろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は第5化身『猪』を使用する。

この能力はフランの持つ〔ありとあらゆるものを破壊する程度の能力〕に酷似しており、対象物を内部破壊させる能力。とは言っても人体を破壊することはできず、俺は地面を破壊して絨毯爆撃みたいに相手の動きを止めるために使ったりする。地形破壊を何の苦もなく行えるので無暗に使用は控えているけどさ。

 

ババアの立っていた場所を粉砕した。

横に飛んだババアを視界にとらえた瞬間、俺は大声で叫んだ。

あらん限り。

 

 

 

 

 

「ツルギイイィィィィ! 今だあああああああああああああ!!!」

「分かった!」

 

 

 

 

 

来るなと言っても絶対に来ると踏んだ俺。

その予測通り紅魔館(だった瓦礫)の陰に隠れていたツルギは飛び出し、不意を突いてフランに駆け寄る。恐らくは〔0と1を行使する程度の能力〕を使ってフランの支配を解いたのだろう。その刹那にフランとツルギにも『少年』の化身で覆う。これでババアに支配されないはず。

能力を勝手に使われて気を失っているフランを助けるツルギ。

さながらお姫様を助ける王子様のように。慧音を助けた兼定と同じように。

 

 

 

――ところで皆さんはご存知だろうか?

0と1を行使するということは、ツルギは支配を正反対のものに変えたわけなのだが、『支配』の対義語は『開放』ではなく『従属』らしい。作者も驚いた。

そんなわけで――起きた後のフランは犬みたいにツルギに従順になるという事件が起こるわけだが……それはまた別の話。羨ましいね(他人事)。

 

 

 

「なぁ!?」

「ここにいるのは俺だけじゃないんだぞ? 幻想郷を守っているのは俺でもなければ切裂き魔でも壊神でも帝王でも詐欺師でもない。お前の最大の敗因は――俺に固執し過ぎたってコト」

 

レミリアとフランは加護の中。

上空で笑ってる吸血鬼2人組は――もう知らん。

 

俺は右腕を上に挙げる。

 

 

 

 

 

「さぁ、罪科の焔、耐えられるもんなら耐えてみやがれえええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

 

 

 

 

 

俺は大きく手を振りおろした。

 

これは第3の化身『白馬』。

『白馬』の能力は『太陽の顕現と焔の投下』。

勝利神の主たる太陽神の元へと馳せ参じるために白馬となって現れたことに由来する化身で、俺が持つ化身の中では一番殺傷能力が高い化身だ。ちなみに俺が酒を飲んで酔った時に建物を燃やした時に使ったのはこの『白馬』である。

 

吸血鬼の天敵たる太陽が夕暮れの空を昼間のように明るく照らし、摂氏数千度を軽く超える太陽の焔をババアにピンポイントで落とす。

 

「しま――」

 

ババアは回避しようとするが、いきなり現れたヴァルバトーゼの使い魔に足を取られて転び、ヴラドの禍々しい神話生物の巨体に押しつぶされて身動きが取れなくなった。それをババアは支配しようとするがもう遅い。ナイスオタク。

 

ババアは神話生物と使い魔ごと、俺の持ちゆるすべての神力を注ぎ込んで放った太陽の焔に飲み込まれる。

天まで上る火柱に見慣れない者たちは驚愕し、俺は己の能力で出した炎を無表情で見つめていた。

人類最悪の醜悪と呼ばれた西条摩可の偽物(クローン)の一人は断末魔の声を上げ、憎々しげに俺の名前を叫んだ。

 

 

 

 

 

「神殺がああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!! おのれぇえええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!」

「……あばよ、クソババア」

 

 

 

 

 

太陽の焔はババアを焼き殺しても止まらず、約1時間ほど紅魔館の地面を焼き尽くした。

 

 

 

こうして、後に人里で2つの太陽が観測されたことから『双陽異変』と呼ばれる、人類最悪が起こした事件は呆気なく幕を下ろした。

 

 

 

 




剣「なんか呆気なかったな」
紫苑「俺たちの戦いなんて短期決戦が常だよ。長引かせるほど神力消費が激しくなるし」
剣「そういうものなのか?」
紫苑「というか作者の文才が0だし」
剣「それ以上言ったらいけない」
紫苑「作者の表現力をツルギの能力でどうにかならない?」
剣「ゑ!?Σ(゜Д゜)」

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