どこぞの吸血鬼のキャラが少々崩壊しております。
撃っち先生すみませんm(_ _)m
side ヴラド
魔帝ヴァルバトーゼ。
かつて同族殺しとして名を挙げた最強の吸血鬼。儂の同胞も数人殺害した、儂にとっては仇と同義の相手。
その1000年の因縁のある最強の吸血鬼に連れられて来たのは、紅魔館と呼ばれる多きな館であった。赤い色が目にきつく、黒いペンキで塗り替えてやろうかと考えるほど紅い。
聞くところによると、ここにはレミリア・スカーレットという『スカーレットデビル』の異名を持つ吸血鬼が住んでいるという。
もしかしなくても儂の孫である。
まさか孫に会う前に異次元の同姓同名の孫に会うとは思わなかった。まぁ、予行演習だと思えば面白いだろうが。
「――っ!? 初めまして、私は紅魔館の主レミリア・スカーレットと申しますわ」
「そう固くならずとも良い。儂の名はヴラド・ツェペシュと言う。ヴァルバトーゼとは……その、まぁ、知人だ」
隣でニヤニヤしていたヴァルバトーゼにアッパーを喰らわせてやりたかった。恐らく切裂き魔のように避けられるだろうが、レミリアがいなければ実行していたであろう。
紅魔館の一室に案内された儂は、そこで紅茶を勧められた。
この部屋にいるのはヴァ以下略とレミリア、メイドとエリザベート、そして博霊の巫女がいた。
毒が入っていようが死した身である儂には何の効果もない。躊躇もせずにいつも通り優雅に紅茶を楽しむ。
そして、その味に驚いた。
まさか神殺以上の紅茶を飲めるとは思わなかったからだ。
儂は紅茶を淹れたメイド――十六夜咲夜に賛辞を送る。
「この紅茶、まったくもって素晴らしい」
「お褒めに預かり光栄でございます」
さっきから周囲の皆が固くなっているのはなぜだろうか?
ヴァルバトーゼは額に手を当てつつ、その理由を説明した。
「……帝王、貴様のカリスマ性は我を軽く凌駕する。皆が固くなるのも無理はないだろう」
「そうだったか。すまぬの」
儂はイラストレイター『てい☆おう』として活動していたときと同じような空気……つまりカリスマ減少状態にシフトチェンジする。
すると皆が息を大きく吐いた。
「で、何なのこの亡霊?」
「れ、霊夢! ヴァルバトーゼ卿の知人に向かって」
「よいよい、所詮は吸血鬼の亡霊じゃ」
博霊霊夢がこちらに指を指しながらレミリアに問う。
確かに無礼ではあるが、反抗期真っ盛りのような博霊の巫女も新鮮で面白い。あちらの霊夢は儂等に逆らおうと思っていないから、儂は思わず笑みがこぼれる。
レミリアを嗜めながら、儂はテーブルのクッキーを口に運んだ。
超美味いの。
ぱねぇ。
「まいうーじゃな」
「……カリスマある時と無い時の差が激しいな、帝王」
知らんがな。
「ところで貴様が幻想郷に来た理由は何だ?」
「少々……いや、かなりめんどくさい奴がこの幻想郷に逃げ込んできたのじゃよ。それを殺して連れ帰るために儂と神殺が足を踏み入れたと言うわけじゃ」
「それなら私が退治するだけよ」
博霊の巫女は当然といった面持ちで言い放つ。
儂は失笑を禁じ得ない。
「自惚れるなよ、小娘。そのめんどくさい奴はお主はおろか――ヴァルバトーゼすら捕まえることが困難な手練れじゃぞ?」
その発言に戦慄が走る。
皆はヴァルバトーゼの強さを知っているからこそ、儂の言葉が信じられないのだろう。
ヴァルバトーゼは目を細める。
「……ほう、その者は我より強いのか」
「いや、くっそ弱い」
「は?」
「儂は言ったじゃろう? 『捕まえることが困難』だと。別に殺すのならばエリザベートでも可能であろうよ。しかし――あのババアは易々とは捕まらん」
あの暗闇ですら頭を悩ませたババアじゃ。簡単に捕まるのならババアは暗闇が手元においておるわ。
「ふむ……我ですら難しいのならば、貴様はどうやってその者――ババアを捕まえると言うのだ?」
「確かにババアは逃げ足だけは気持ち悪いほど手練れておる。じゃから杏弦奏は神殺を幻想郷に呼び寄せたのだろうよ」
「神殺って……紫苑のことよね?」
エリザベートの言葉に頷き、話についていけないレミリアとメイド、博霊霊夢に説明する。。
そういえばヴァルバトーゼの義娘は紫苑と戦った経験がある。神殺の敵ではなかったとは思うが。
「そのような男が……」
「紫苑ならばババアを捕まえられるじゃろうよ。むしろ紫苑に勝てる者を見てみたい気もするが……あのツルギという少年ぐらいだろうか?」
「紫苑という者とは幻想郷で戦わなかったが……それほど強いのならば手合わせをすればよかった」
「止めておけ、貴様の敗北数が増えるだけじゃ。暗闇にすら一矢報いた勝利神じゃぞ?」
「暗闇?」
レミリアは不思議そうに首をかしげた。
その姿は全てのロリコンを憤死させる可愛らしさを放つ。儂の画力で表現できるかどうか……?
話を戻して儂は暗闇について説明する。
「暗闇というのは正式な名称ではない。儂らの街でも最強中の最強、生命というものが『畏れ』というものを抱いた瞬間に誕生した『闇』を司る最古の妖怪じゃよ。ギリシャ神話では『カオス』とも同一視され、齢は少なく見積もって2億はあるという」
「「「「に、2億!?」」」」
「奴の能力は『闇』。程度をつけるなど失礼な上に、あれは自然現象と認識しても良いかもしれんの。勝つことなど絶対に不可能だし、殺すなんてもっての他じゃ」
というか奴を殺したら世界が終わるわ。
闇がなくなれば光も相対的に消える。
そのような世界など崩壊しているに等しい。
だからこそ――それに傷をつけた神殺は街で一目置かれる存在となったのだ。『人の身でありながら神に挑んだ者』として。
よく考えれば紫苑は世界を崩壊させようとしたんじゃな。
無知とは恐ろしいものだ。
「ぜひ暗闇とは手合わせしたいな!」
「儂の話聞いておったか?」
馬耳東風かコイツ。
「その夜刀神紫苑って人は本当に人間なの?」
「生物学上は人間のはず……なんじゃがなぁ。ぶっちゃけアレを人間と呼んでいいのか迷う」
「ツルギと互角の戦いをしてたものね。遠距離では雷を飛ばしたり、近距離では格闘で対応したり……」
ツルギと互角。
レミリアたちは唖然とし、紫苑と互角に殺りあったツルギという少年に儂も驚く。
「それだけじゃないがな。太陽の焔で焼き尽くす芸当を持ち、自分に害のある能力を反射させることもできる。極めつけは――儂等の能力や特性までも無効化させる黄金の剣」
「我の使い魔も無効化されるというわけか。それは少々厳しい」
「神殺の能力は〔あらゆる障害を打ち破る程度の能力〕。所有している神力以上の力を強制的に引き出し、拝火教の勝利神に由来する十の化身を用いて、格上の相手に勝利するチート能力じゃ」
人間が持つには破格すぎる能力で、使いどころを誤れば世界を破壊させることもできる危険な能力。
夜刀神紫苑という男が持っていたからこそ、そこまで危険視しなかったのだが……悪用されれば何億の人間が滅びるのやら。
緊張した面持ちをした空気のなか、ヴァルバトーゼは呟いた。
「しかし――それなりの代償があるのだろう?」
「察しがいいな、魔帝。十の化身を自分の所有する神力の範囲内で使用するには害はないのじゃが、強制的に神力を引き出すには代償が必要じゃ。人間の体では耐えられぬ代償を、な」
「まさか……寿命か?」
「ご名答」
かつて2年前に暗闇が言った。
紫苑の能力は寿命を代償に限界突破すると。
2年前の状態では
つまり2年の間に限界突破を際限なく使ったのだろう、あのアホは。
だからこそ――暗闇は八雲紫に紫苑の居場所を教えたのだろうよ。あの街から紫苑を離すために。幻想郷ならば無闇に限界突破させるほどの敵なぞ存在しないはずだ。
「まさかツルギに似ている小僧だとは思っていたが、能力の代償まで同じとは予想外だ。ツルギは祝福の妖怪の力で寿命が伸びたが……紫苑という男の寿命は僅かなのだろう?」
「しかも限界突破を無意識にする上に、寿命の代償を躊躇しないのが神殺じゃ。幻想郷に来なければ1.2年で死んでおっただろうよ」
「どうして……紫苑は命に執着がないの?」
エリザベートの悲しげな声が儂の心に響く。
今までそんな質問をされなかったゆえ、儂は答えに詰まる。
「……なぜじゃろうな。儂等は『命』というものに執着しないから分からぬわ。感情というものが複雑で理解しづらいものなんてのは、むしろ貴様等のほうが詳しいのではないか?」
「……その紫苑様はツルギ様に似ておりますね。能力に代償があっても、迷いなく使うところが」
そこまで似ておるのか。
フランドール・スカーレットが救われていたという話だが、紫苑に似たような考えの奴がいるのなら、その話にも納得ができよう。
通夜のムードとなった紅魔館に、その空気を変えるように大声で笑い出す男がいた。
もしかしなくてもヴァルバトーゼだ。
「なに辛気くさい話をしている。どうせ切裂き魔や壊神という男たちも知っているのだろう? 我の使い魔を悉く殺した男共が、寿命の打開策を探さないはずがないだろうよ」
「ふん、悟ったようなことを言いおって」
忌々しいがヴァルバトーゼの言う通りだ。
その程度で諦めるほど、伊達に街では生きておらぬ。
「貴様のせいで空気が重いではないか。なにか面白いことをしろ」
「無茶ぶり甚だしい奴じゃな! ならば紙とペンを持ってこい! 貴様等に2次元の素晴らしさを教えてやろう!」
メイドが持ってきた紙にさらさらっとロリ美少女を描く。
ここ一年ほど絵を描いていなかったから、感覚を取り戻すことが難しいかったが、そこは2次元とロリの愛で乗り越える。
完成した絵を皆に見せる。
「す、凄い……」
「可愛いわ……!」
女子勢からは大好評。
「かかかっ、どうした魔帝! 2次元の素晴らしすぎて声にも出ぬか!?」
「………」
「お、お父様?」
魔帝は声を出さずに絵を睨んでいた。
というか息すらしてない。
数分後、ヴァルバトーゼは呻き出す
「くっ……この魔帝と呼ばれし最強の吸血鬼が……絵に描いただけの美少女に屈するなど……! いや、美少女に罪は……!」
「かかかっ! これでトドメじゃ!」
笑いながら描いた別タイプのロリ美少女を見せる。
儂等の世界にいる同胞全てを魅了したロリ神を!
「おい、帝王! その絵を言い値で買おう!」
「お、お父様!?」
――こうしてまた一人、迷える子羊を楽園へ導くのであった。
「……吸血鬼って皆ああなの?」
「言わないで、霊夢……」
紫苑「アイツの絵は事件に発展するからな」
剣「なんかヴァルも毒されてる気が……」
紫苑「コミケみたいなものを吸血鬼だけで開いてたこともあったし、こっちの世界の吸血鬼はノリが良かったんだろうなー」
ヴラド「このキャラをヒロインにした漫画を幻想郷で売る予定だが――」
ヴァル「なぬ!? 次元の壁を乗り越えてでも買いに行こう!」
紫苑「撃っち先生すみませんm(_ _)m」
剣「( ̄▽ ̄;)」